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Uカー試乗記

Uカー試乗記

掲載日 : 2006年04月04日

2002 BMW 745i

第19回:BMW 7シリーズは今、最高に旬のハイエンドカーだ!

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クリス・バングルのデザインで大変身を遂げた南ドイツの名門BMW。その4代目7シリーズ「E65型」前期は高級セダンの常識に挑みつつ、根っこの部分では高い完成度を誇るドライバーズセダンだ。

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1977年デビューの最高級セダン

94年の3代目「E38型」7シリーズは、今もUカー市場で主役の1台。BMWらしい端正なスタイリングとスポーティな走りが特徴 (画像:BMW・ジャパン)

モーターサイクルや小型サルーンの分野ですでに地位を確立していたBMWが、初めてメルセデス「Sクラス」に対抗して作ったクルマ。それが1977年の初代7シリーズ(E23型)だ。好評のうちに1986年には2代目「E32型」へ、そして94年に3代目「E38型」へと進化。共通していたのはスポーティさや端正なデザインを売りとする高級ドライバーズセダンという点だ。

挑戦的、独創的、革新的な4代目

劇的に変身した4代目「E65型」7シリーズ。メルセデスの旧Sクラス(W140型)に匹敵する大きなボディから言っても、かなりの高級志向だった (画像:BMW・ジャパン)

2001年9月のフランクフルトショーに登場した4代目7シリーズ「E65型」(745Liは「E66型」)は、紹介するのに最も骨が折れるクルマの一つ。歴史的に見て、これほど何から何まで新しく、凝った設計のセダンは、他にシトロエンのDSくらいしかない。挑戦的な外観デザインは、BMWの端正なイメージをひっくり返すもの。シフトレバーなど従来の操作系に取って代わった「iDrive(アイドライブ)」も物議を醸した。またV8エンジンとしては初の、スロットルバタフライの役目を吸気バルブが行う「バルブトロニック」を採用。その他、技術的トピックは数え上げればキリがない。

2002年からデリバリー開始

2005年のマイナーチェンジで登場した「E65型」後期モデル。前後デザインが大人しくなったほか、V8エンジンの排気量をアップ、各部をリアファインした (画像:BMW・ジャパン)

日本で正式に発表されたのは2001年10月で、実際のデリバリーは翌02年から。3.6リッターV8の「735i」(830万円 ※消費税抜き)、4.4リッターV8の「745i」(990万円 ※同)、745iのロングホイールベース版「745Li」(1080万円 ※同)の3グレードでスタート。全車6速ATを装備し、ハンドルは左右あった。2003年1月には6.0リッターV12の「760Li」(1580万円 ※同)を追加。その年の11月にはホワイトターンインジケーターの採用やiDriveコントローラーへのメニューボタン追加といった小変更が施された。

そして05年5月にビッグマイナーチェンジを実施。ボディの前後を常識的なデザインに変更(ドア、ルーフ、リアフェンダーは変更無し)し、内装デザインにも手を入れた。さらにエンジンの排気量をアップ、シャシーや6ATの変速プログラムも再チューニング。ラインナップはV8の「740i」、「750i」、「750Li」、V12の「760Li」の4種類になった。

 

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強烈な押し出しと伝統的なスポーティさ

予定調和を打ち壊すデザインがE65の真骨頂だが、真横から見たスタイリングは意外にもオーソドックス

ボディサイズは全長5029×全幅1902×全高1492mmと堂々たるもの。写真では分かりにくいが、駐車場やガレージに入れた時の迫力は相当のものだ。一方、スポーティなサイドビューは歴代BMWおよび7シリーズの伝統通り。この5年間で見慣れたせいか、BMW伝統の4灯ヘッドライトがギョロリと目を剥く奇抜な顔も、今では適度な斬新さに思える。


 

おそらく10年先でも古びて見えないと思えるスタイリング。このクラスのドイツ車で、これほどアクの強いセダンが出てくることはしばらくないだろう

ホイールベースは2990mmと長く、3列シートミニバン並みだ。Lモデルはさらに140mm長い(全長も)。トランクリッドがダックテール状に突き出た「バングルバット(butt=お尻)」は世界中のセダンに真似された意匠だ。リアコンビランプのデザインは「トランクが半開きに見える」と海外の某ジャーナリストに酷評され、マイナーチェンジではついに廃止されてしまったが、今見るとこちらの方がユニークだ。

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操作系を革新するiDrive

水平基調のダッシュボード、巨大なセンターコンソール、ドイツ車らしく作りのいいシートなど高級感は十分

それまでのBMWとは流儀の違う、左右対称で弓なりに反ったダッシュボード。センターコンソールのiDriveコントローラー、ステアリングコラムの右に突き出た「コラムシフター」、ダッシュボード端(左ハンドルなら左端)のパーキングブレーキ「ボタン」など、知識が無いと全くお手上げになる。

「iDriveコントローラー」を使いこなす

美しいデザインのiDriveコントローラーだが、動作はやや不安定で時にフリーズする。エアコンは通常のスイッチで基本的な操作が可能。欧州車に珍しい大型カップホルダーは便利だ

7シリーズのiDriveは、大きく二つに分かれる。一つはクルマの運転に関係するもの。電子制御シフトレバーやパーキングレバーがそうで、この7シリーズの後に出た5シリーズや3シリーズには採用されていない。

もう一つが銀色のiDriveコントローラーで操作するオーディオやナビ、そのほか車両設定に関する操作だ。こちらはBMWの他モデルにもある。コントローラーの基本操作は、「回す」「スライドさせる」「(下に)押す」の3つ。パソコンのマウスと言うより、ジョイスティックダイアルに近い操作感だが、生き物のような独特のフィードバックがある「回す」以外、操作感はグニャリとしたタッチでやりにくい。液晶モニターもこの初期のものは小さくて、不鮮明だ。

使い方を知らなくても、とりあえず困ることはないが、ナビの操作には必要だ。使いこなすには操作ロジックや階層を理解しながら慣れるしかないが、2、3日でマスターするのは難しい。仕様変更後のモデルは、かなり使いやすくなっている。

横方向に余裕のある後席

特に横方向に余裕がある後席。写真では足元が広くないように見えるが、シートのサイズ自体が大きいせいもある

全長が5メートルを越えるクルマゆえ、当然ながら後席の余裕は十分。特に室内の幅とシートの大きさは1000万円クラスに相応しいものだ。Lモデルはホイールベースが140mm長く、後席フットルームも広くて装備も豪華だが、ドライバーズカーらしさは薄れる。オーナー自身で運転するなら標準ボディで十分だ。

抜群に広いトランク

トランクリッドの開閉は電動。国産高級車ならいざ知らず、ドイツ車としてはかなり進んだ装備。床下にフルサイズのスペアタイヤが備わる

500Lというトランク容量はこのクラスでは「並み」でしかないが、同時代のSクラス(W220型:461リッター)よりは明らかに広い。写真はマッキントッシュのデスクトップ機「G5」が入っていたダンボール箱(横60×奥行き60×縦40cm)だが、奥行きの深さに注目されたい。

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「iDrive」の操作方法は・・・

普通のコラムシフトと違い、右側に突き出る「コラムシフター」。停止中に先端のボタンを押せばいつでもパーキングに入る

今回のサンプルカーは、新車時から4年落ちの2002年モデル。走行45,000kmのワンオーナー車だ。

この型の7シリーズに試乗するのは今回が3度目。最初は2002年に745i、2度目は2003年に760Liで、いずれも取材でじっくり試乗した。にも関わらず、やはり久しぶりのiDriveには戸惑った。なにしろ現行5シリーズや3シリーズは本格的なiDriveを採用していないので、なかなか触れる機会がないのだ。

さて、走行系iDriveの操作方法は次の通り。
1、ブロック型キーをスロットに入れる
2、ブレーキを踏みながらスタートボタンでエンジン始動
3、ダッシュ端(左ハンドルなら左端)のボタンを押してパーキングブレーキを解除
4、ステアリングコラム右の小さなレバー「コラムシフター」のボタンを押して
「P(パーキング)」から「N(ニュートラル)」を選択。
5、さらにコラムシフターを指で軽く引き下げて「D(ドライブ)」を選択。

これでアクセルを踏めば、普通のAT車同様に走り出す。コラムシフターのポジションはR-N-D-Pの4つ。ストロークは短く、力は全く必要ない。要するに完全な電子制御シフトレバーで、実は一番これに近い操作感覚を味わえるのがトヨタの2代目プリウス(2003年~)だ。

説明すると複雑なiDriveだが、慣れれば便利なシステムだ。ギアシフトやパーキングブレーキがスイッチ一つで出来るのは大変スマート。一度覚えれば、意外と短時間で慣れてしまえる。

新車時に限りなく近い走り

スポーティかつ重厚な走りは国産高級セダンでは得られないもの

さて試乗した印象だが、感心したのがサンプルカーにユーズドカーらしいヤレがほとんど無かったこと。7シリーズにとって4万5000kmなど、慣らしが終わった程度に過ぎないかもしれないが、タイヤ(おおむね5分山くらいで、1回ローテーションしたようだ)さえ新品に戻せば、ほとんど新車同様か、と思えるほど。これくらいの高年式車でも、全体の剛性感やステアリングフィール、足回りのダンピング性能が落ちてしまうクルマは少なくない。新車時の試乗では分からなかったしっかりした作りに感心した。

 
街乗りで少々気がかりなのが1902mmもある全幅か。狭い道でのすれ違いは気を使うが、小回りはFR車だけに申し分ない

745iのエンジンは4398cc・V型8気筒(333ps、45.9kg-m)。車重は1945kgもあるが、運転していて車重を意識することはまずない。ダブルVANOSとバルブトロニック付きのV8は、全回転域でいかにもBMWらしくスポーティに吹け上がる。高回転までクァアーンと回せば、羽根が生えたように加速。0-100km/hはこの745iで6.3秒、最高速はリミッターで250km/hだ。当時世界初だった6速AT(ZF製6HP26)の変速マナーも悪くない(マニュアルモードへの切り換えはしにくいが)。100km/h巡航時のエンジン回転数はわずか1700回転。高速域では乗り心地も静粛性も最高レベルだ。

オプションのダイナミックドライブ(電子式油圧制御のスタビライザー)のおかげでハンドリングはボディサイズから想像できないほどスポーティだ。ステアリングの反応は素早く、ロールもほとんど感じない。現行3シリーズのような圧倒的な剛性感ははないが、リラックスできるのはもちろんこっちだ。このクラスでこれだけスポーティな操縦性のクルマは、現行新型車でも数少ないだろう。

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車名:BMW 745i ダイナミック コンフォートパッケージ(2002年モデル)
型式:GH-GL44
寸法:全長5029mm x 全幅2132mm x 全高1491mm
ホイールベース:2990mm
車重:1945kg(標準車)
駆動方式:FR(後輪駆動)
エンジン:4.4リッターV型8気筒DOHC
最高出力:333ps/6100rpm
最大トルク:45.9kg-m/3600rpm





トランスミッション:6速AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/88L
10・15モード燃費:9.2km/L
タイヤ:245/55R17
発売時期:2001年10月
当時の新車価格:990万円(消費税抜き ※オプションパッケージ無し)

 

試乗車スペック

初年度登録:2002年3月
販売価格:516万6000円(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間 距離無制限)
走行距離:45,000km
ボディカラー:チタングレー
備考:ダイナミック・コンフォートパッケージ付 1オーナー
試乗日:2006年4月

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走行系の信頼性は高いが、細かなトラブルには寛容な対処が必要

ダブルVANOSやバルブトロニックなど新機軸満載のV8エンジンの信頼性は高い

4代目7シリーズの前期型がデリバリーされていたのは、2002年から2005年前半までの3年半の間。現時点(2006年5月)で最大4年落ち余と、まだまだ新車の香りがするモデルだ。なので経年劣化が少ないのは当然で、走行によるヤレも極めて少ない。また、V8エンジン車の走行系に関しては、信頼性も高いようだ。iDriveというインターフェイスのおかげで電子制御のかたまりのように見えるが、根幹部分は意外にオーソドクスな設計なのだ。

ただし、ナビゲーションシステムのハードウエア的な安定性やバージョンアップ性には課題があり、この部分が初期にデリバリーされたE65型の弱点だ。「純正ナビがちゃんと動いて操作しやすいのは当然」と考える人には正直勧めにくいが、逆に「現在地が分かればいい」「おれは7の『クルマ』の部分に惚れたんだ」と思い切れる人なら、ナビに関しては寛容になるべき。そんな弱点など優に補うだけの価値があるクルマだ。なお、2003年の改良後のナビはかなり安定性を増している。

 
オートプラネットに並ぶBMW・745i

予備知識として、リコール関係も分かっている分だけ下に挙げておく。オートプラネットの車両はもちろん全て対策済みだ。初期トラブルへの対処方法が分かってきた時こそ、Uカーの「旬」の始まりだ。

  • 00年12月~02年7月生産分:パワステオイルの漏れ(03年3月届け出)
  • 01年11月~03年4月生産分:エンジン制御コンピューターのバグ(03年7月届け出)
  • 02年12月~03年11月生産分(760Li):エンジンオイル逆流防止弁(ノンリターンバルブ)
    の構造不適切(04年12月届け出)
  • 03年4月~04年4月生産分:シートヒーターの電気配線不適切(05年1月届け出)

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クルマとしての魅力が抜群

結論から言うと、この「E65型」前期型7シリーズ、最高にお勧めだ。超アバンギャルドなデザインのおかげで乗る前から拒絶している人も多いだろう。しかしそうした世間の不当な評価は、実に喜ばしいこと。なぜなら、このクルマが誰からも好かれるクルマになって、Uカー相場が高騰でもしてもらったら面白くないから。今回のサンプルカーの車両価格は516万6000円と、新車時(990万円+消費税で1039.5万円)の約半分。これはクルマの実力からすれば、ものすごくお買い得。お勧めはV8モデルだ。

とにかくこのE65型、クルマとして素晴らしくよく出来ている。おそらく初心者でも運転すれば一発でそれが分かるだろう。「新車で1000万円ならこれくらい当たり前」では決してない。思うに、同じBMW傘下のロールスロイス「ファントム」(4000万円を軽く越える)に次ぐのがこの7シリーズだ。狭苦しいヒエラルキーのないことが、こうした浮世離れの理由かもしれない。このクラスのセダンをお探しの人には、下手なニューカーより断然お勧めしたい。iDriveに関しては根気よく付き合うか、無視するかだ。

文・写真:DAYS・Kei Niwa

 


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