掲載日 : 2006年12月24日
2001 シトロエン サクソ VTS
第39回:サクソVTSで、気分はセバスチャン・ローブ
プジョー106とは双子関係
実質的にシトロエンAX(1986~98年)の跡を継ぐ形で登場したサクソ(1996~2003年)は、3ドアないし5ドアの、フランスではごくポピュラーなコンパクト・ハッチバックだ。同じPSAグループに属するプジョーの106(1991~2003年)とは、双子車の関係にある。
日本へは97年にまず「シャンソン」の名で上陸。1.6リッターOHC(90ps)の3ドア「SX」と5ドアの「V-SX」というラインアップで、当初は3速ATの街乗りイージードライブ仕様だった。
99年からサクソVTSに。早くも00年に後期型へ
車名が本来の「サクソ」となったのは1999年。導入グレードは1.6リッターDOHC(120ps)、5速マニュアル、左ハンドル仕様のスポーティグレード「VTS」1本に絞り込まれた。このVTSは小粒なホットハッチとしてすでに人気を不動にしていていたプジョー106「S16」と基本設計やメカニズムを共有する双子車の関係。ちなみにシトロエンでは、最も高性能なモデルに「VTS」、パワー控えめのスポーティモデルには「VTR」のグレード名が付く。
翌年の2000年3月には、早くもマイナーチェンジして後期型に切り替わった。つまり「サクソ」の導入が遅れた日本では、前期型VTSは最初の1年しか販売されなかったわけだ。後期型はメカニズムを踏襲しながら、外観デザインが丸みを帯びたものになっている。価格も前期型サクソVTSの229万円(消費税別 以下同じ)から198万円にプライスダウンし、お買い得感が高まった。日本市場ではこの後期型がサクソVTSの大半を占める。
2003年に生産終了
WRC「スーパー1600」仕様のサクソ。市販車がベースだが、トレッドは大幅に拡大され、自然吸気1.6リッターエンジンは200馬力までチューンされた
(画像:CITROEN SPORT)
モデル末期の2003年4月には、日本向けVTSの最終生産分をベースにした60台限定車「サクソ スーパー1600」(207万9000円)が導入された。15インチアルミホイール(標準は14インチ)、専用リアスポイラー、シトロエン・スポールのアルミ製フューエル・リッド、アルミ製ペダルカバー、オリジナルステッカーなどの専用装備を持つ。ボディカラーは赤(ルージュ アルダン ※スーパー1600専用色)、黒(ノアール オニキス)、金色(ジョーヌ エリオドール)の3色だった。グレード名はWRC (世界ラリー選手権)の入門カテゴリーである「スーパー1600」(2003年に「ジュニアWRC」に改められた)に因んだもの。サクソはこの最終モデルをもって、プジョー106と共にその生産を終えた。
なお、日本でのシトロエン正規販売は2002年4月以降、それまでの新西武自動車販売(旧西武自動車販売)から、本国シトロエンの100%日本法人であるシトロエン・ジャポンに移管されている。(2007.01)

基本骨格は106と同じ
デビューの早いプジョー106がベース、という言い方も出来るが、要するにこの2つのモデルは基本設計もメカニカルパーツもほとんど同じ双子車だ。ボディサイズ(106 S16比)も全長3735mm(+45)、全幅1620mm(同)、全高1360mm(-10)とほとんど同じ。ホイールベースの2385mmも共通だ。ボディの補強やサスペンションのチューニング等、独自の仕様はあるようだが、最大の違いは内外装のデザインと言っていいだろう。106に比べて丸みのあるデザイン処理が後期型サクソの特徴だ。106同様、コンパクトでスポーティなスタイルが魅力だ。
向こうが「角」なら、こっちは「円」
「角」の106に対して、「円」をモチーフとするサクソのインテリア。広々とした空間そのものは同じながら、パーツの多くはそれぞれ専用品。共通かな、と思えるのは、メーターパネルやシフトレバー奥の小物入れくらいだ。シートも98年式以降の106がレザー/アルカンタラなのに対して、サクソは幾何学模様入りの柔らかなモケット地。どっちがいいかは純粋に好みだが、サクソの新車価格が106より30万円近く安かったのはこのあたりが理由の一つだろう。
安全装備は106に遜色なく、デュアルエアバッグ、ABS、プリテンショナー機構付フロントシートベルト、リア左右3点式シートベルト、イモビライザーを装備する。106同様に、2002年以降は前席サイドエアバッグを備えている。
後席は(当然)106に限りなく近い
立派なリアシートはフレーム構造やクッション形状も106と同じと思われる。ただしヘッドレストだけは明らかに丸みを帯びたものに代えられている。足元こそ狭いが、前席の人がシートを前に出してくれれば少しは楽になりそうだ。乗り心地と静粛性はそれなりなので、長距離ドライブ時には気遣いが必要。法的には5人乗りが可能だ。
何と自転車が入ってしまった!
6:4の分割可倒式リアシートの片側を倒さないと、「パワーマックG5」の箱(横60×奥行き60×高さ40cm)が入らなかった106。サクソの荷室も同様だが、今回は趣向を変えてスポーツ自転車(ロードバイク)を積んでみた。6:4分割の後席を倒せば、前輪を外すだけで余裕で積めるのは想像通り。驚いたのは、前後輪を外すだけでサクッとロードバイクが通常時のスペースに入ってしまったことだ。さすがコンパクトカーとツール・ド・フランスの国のクルマだ。
動力性能は106に限りなく近い
試乗したのは2001年式(約6年落ち)。走行距離は7万kmで、サクソ/106系らしく各部がモディファイされている。スピードライン製ホイールはお約束のアイテムだが、マフラー、ブレーキパッド、エアクリーナーも社外品だ。前のオーナーがそれらしく元気に走らせていたことがうかがえる。
エンジンは106 S16と共通の1.6リッター直列4気筒DOHCだが、なぜかスペック上は2psと0.2kg-m 多い120psと14.7kg-mを発揮する。これは表示上の違いと言われており、その証拠に発生回転数は全く同じだ。車重もまったく同じ960kgで、パワーウエイトレシオも同様にほぼ同じ8kg/ps。ウワッと驚くほど速くはないが、気持ちよく走らせるにはちょうどいい。クラッチは重くはないが、サンプルカーのタッチはやや曖昧。半年ほど前に試乗した2002年式の極上106(走行2万1000km)に比べて、多少の疲れが見えるのは仕方ないところだ。
「サクソ」とはサクソフォンのこと
エアクリーナーとマフラーが社外品だったせいか、サンプルカーの低速トルクはいま一つ。もともと低回転が得意なエンジンではないが、本来のコンディションなら不満ないところだ。しかし4000回転あたりから上の吹け上がりは文句なし。ファーーーンと澄んだ音をキャビンに響かせて、(それほどパワフルではないゆえ)息の長い加速をみせる。なるほど、これなら確かにマフラーを替えたくなる気持ちも分かる。ちなみに車名のSaxoとは、楽器のサクソフォン(Saxophone)が由来だ。
その他、走りに関しては以前試乗したプジョー 106 S16 Limited(2002年モデル)に詳しいので、そちらもご参照いただきたい。
車名:Citroen Saxo VTS(2001年モデル)
型式:GF-S8NFS
寸法:全長3735mm x 全幅1620mm x 全高1360mm
ホイールベース:2385mm
車重:960kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直列4気筒DOHC
最高出力:120ps/6600rpm
最大トルク:14.7kg-m/5200rpm
トランスミッション:5MT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/45L
10・15モード燃費:- km/L(未公表)
タイヤ:185/55R 14
発売時期:2000年3月( Saxo VTS 後期型 )
当時の新車価格:198万円(2001年モデル、消費税抜き)
試乗車スペック
初年度登録:2001年
販売価格:93万4500円(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:70,000km
ボディカラー:ブラン・バンキーズ
備考:社外アルミホイール(speedline製)
試乗日:2006年12月
チェックポイントも共通なら、部品も共通
目に見える部分はほとんど専用パーツのサクソ/106だが、これがメカニカルな部品となると共有できるものがほとんど。これは大いなるメリットで、例えば106用のチューニングパーツ(エンジン回りやサスペンションなど)の多くがサクソにも使えてしまう。
シンプルなクルマなので、トラブルも単純なものが多い。106のメンテナンス情報が流用できる場合も多いので、それも踏まえて、専門誌や書籍、インターネットを当たってみるのがいいだろう。基本的にエンジンは丈夫だが、カム駆動はタイミングベルト式なので、走行7万km以上の車両なら交換記録があるかどうかチェック。もしされた形跡が無ければウォーターポンプを含む一式の交換を行ないたい。エアコンの効きも要チェックだ。「自分なりにクルマを仕上げたい」「イニシャルコストを安く抑えたい」という人なら、あえて少し手がかかるクルマを選ぶのも悪くないと思う。
モディファイされた車両多し
一方、マニアックなクルマゆえ、自己流のメンテナンスやモディファイが施された車両の購入には注意が必要だ。場当たり的な作業がされたままだと、後でトラブルの原因となりうる。エンジンの調子やノイズなども、デフォルト状態(=新車状態)を知らない初心者はトラブルか否かの判断を誤りがち。常識的なアドバイスだが、やはりビギナーや、自分で整備する自信や時間がない人は、プロの手でちゃんと整備されたユーズドカーを購入するのがいい。オートプラネット名古屋には、同じ系列にシトロエン正規販売店があるほか、シトロエン専任のメカニックを配置したメーカー認定のサービス工場もある。購入時からアフターまで、シトロエン車をよく理解するスタッフを見つけて、まずは話を聞いてみるといいだろう。
106ではなく、サクソを選ぶ理由とは?
さて、このクラスのホットハッチをフランス車から選ぶ場合、候補に上がるのは今回のサクソのほか、プジョー106やルノー・ルーテシア(2リッターモデルのRSが主となるが)あたりだろう。日本での多数派は周知の通りプジョー106だが、フランス本国での人気はシトロエン・サクソも引けをとらない。DSやCX、XMといった高級車の存在も手伝ってシトロエンのブランドイメージは極めて高いが、それに加えて同社はモータースポーツにも昔から積極的に参加している。特にWRC (世界ラリー選手権)の入門カテゴリーである「スーパー1600」では多くのチームがサクソを使用。ちょうど今回のサンプルカーが販売された2001年から2002年にかけて圧倒的な強さを発揮し、2年連続でチャンピオンを獲得している。市販車とは掛け離れた内容のWRカー(WRC用車両)とは違い、ベース車両の性能がモノを言うスーパー1600で勝利を収めたことは、とても意味のあることだ。
そして何を隠そう、2001年のドライバーチャンピオンを獲得したのが、当時まだ新人だったセバスチャン・ローブだ。言うまでもなくその後ワークスカーの「クサラWRC」を駆り、連戦連勝を飾ることになる、その人である。ラリーが好きで、ローブの華麗な走りに魅了された人なら、選ぶべきクルマはおのずと決まってくるだろう。(2006.11)
文・写真:DAYS・Niwa



