第15回:大人のロードスター、BMW Z3に乗る!
旧3シリーズ「E30」ベースのオープン2シーター
BMW・Z3のデビューは1995年。ベース車は当時すでに旧型だったE30型3シリーズで、北米向け「E36型」3シリーズと同じ米国サウスキャロライナ州スパータンバーグ工場で生産をスタート。当初、北米とドイツでの人気に生産が追い付かず、日本とUK向け右ハンドル車の生産は1年以上遅れた。
1.9リッター直4でスタート
日本上陸は1996年秋。BMWジャパン創立15周年記念モデル「アニバーサリー」(5MTと4ATで限定900台、税抜378万円)として登場し、すぐに完売。翌97年1月から1.9リッター直4(140ps)の左ハンドル・5MT(税抜348万円)と右ハンドル・4AT(税抜358万円)の導入が本格的に始まった。
98年10月には、E36型M3後期型と同じ3.2リッター直6(321ps)を積む「Mロードスター」および「Mクーペ」(いずれも税抜730万円)が登場。クーペと言っても正確には2ドアハッチバックの個性的なスタイルを持つ。また、ジェントルな性格の2.8リッター直6(193ps)を積んだ4AT・右ハンドルの「Z3ロードスター2.8」および「Z3クーペ 2.8」(いずれも税抜490万円)も用意された。
1999年の小変更でマッシブなスタイルに
99年11月にフェイスリフト。リアフェンダーが2.8同様に膨らみ、リアランプをL字形に変更。全体に抑揚が強まり、質感も向上した。また、1.9リッター直4は2リッター直6(150ps)に換装された(★今回のサンプルカーはこのモデル)。
翌2000年8月には、2.8リッター直6を3.0リッター直6(231ps)に換装。同年12月には、2リッター直6を2.2リッター直6(170ps)に換装した。同時に、オートマチックが4速から5速に格上げされているのも、Z3シリーズ最終バージョンの特徴だ。その後、2003年1月に後継の新型Z4へバトンタッチした。

グラマラスかつコンパクト
Z3の初期モデルは全長4035mm×全幅1690mm×全高1275mmと完全に5ナンバーサイズで、ユーノス・ロードスターより少々長いだけだった。フェイスリフト後のモデルや2.8/3.0、Mモデルになると、幅は1740mmある。盛り上がった「峰」は60年代の名スポーツカー、シェルビーACコブラみたいにマッチョだ。
後期モデルにはロールバーが付く
前期と後期を識別点は、リアランプの形状だ。それがL字型なら後期モデルで、日本仕様のエンジンは全て6気筒。Mロードスターと後期モデルには、標準でロールバーも備わる。ボディの前後左右に「青い空、白い雲、プロペラ」のマークがあり、誰が見てもビーエムダブリューと分かる。
スポーツカーらしい低いシートポジション
サンプルカーは右ハンドル・ATなので、ウインカー位置だけ気を付ければ国産車からの乗り換えでも気を使わない。ドアインナーノブやライトスイッチにはメッキ処理され、夜間でも光を反射して位置が分かる。シートポジションは低いが、スポーツカーの割に乗降性や座り心地は良い。幌にもちゃんと内張りがある。
幌の開閉は手動だが簡単
Z3の幌は基本的に手動だ(後期ではオプションで電動も選べた)。幌を開ける時は左右のロックを外し、後ろに折り畳むだけ。初代ユーノス・ロードスターのようにリアウインドウ用のファスナーは無く(ユーノスでもファスナーを開けずにオープンにするのは可能)、簡単と言えば簡単だ。シートに座ったままでも出来る。この構造なら、オプションの電動にこだわる必要はない。SLKのようなメタルトップよりも、場合によってはこうした簡単な構造のソフトトップの方が気楽にオープンに出来るし、オープンカーならではの「たたずまい」が楽しめる。幌については下の「チェックポイント」でも触れる。
ユーノスより使いやすい荷室
助手席に人を乗せることが多い場合、純粋な2シーターだとトランク容量は無視できない。その点、Z3はスーツケース1個くらいなら飲み込む容量があり、形状も使いやすい。オープンカーには珍しく、トランクリッドにオープナーがあるのも便利。
会話や音楽を楽しみたい
サンプルカーは2000年の2リッター直6(150ps)・4AT車。2000年の1年間だけ販売された2リッター6気筒で、「パワーは要らないけど6気筒は欲しい」という人には、ちょうどいいモデルだ。
まずは幌を閉じたまま走り出す。いかにも直6・FRの走りには、最近のクルマにはない味がある。エンジン音はボーと大きめだが、重低音のおかげで助手席ではちゃんとスポーツカーな感じがする。もちろん4気筒のような振動やノイズがないのは大きな長所だ。トルク感やレスポンスは特に優れていないが、これはオートマの特性だろう。目を三角にしたスピードやコーナリングではなく、同乗者との会話や音楽を楽しみたくなるクルマだ。
ロングドライブが苦にならない
足回りとシートが路面の凹凸をほとんど吸収するので、乗員、特に同乗者にとっては「快適なスポーツカー」だ。5年と2万3000kmを経過したサンプルカーでもフロア剛性がしっかりしているので、幌を閉めれば高速道路での長距離ドライブにも出かけやすい。ドライバーもパッセンジャーも心拍数を上げず、安心して過ごすことができる。
ドライバーの視点に戻ると、中立付近のステアリングのレスポンスはBMWらしくゆったり。見た目に反してヒラヒラ軽快に曲がる感じはなく、勢いよくコーナーに入っても落ち着き払って素直に曲がる。Z4のような高いボディ剛性によるシャープさがないのは設計年次から言って仕方ないだろう。
オープン走行についてだが、まず風の巻き込みに関してはエアロボードの無い初代ユーノスによく似た感じで、要するにけっこう巻き込む。サイドウインドウを上げてもこれは変わらない。風の巻き込みをほぼ完璧にコントロールする今の流儀ではないが、「風を浴びてこそオープン」と考える人や、たまに開けて爽快感をしっかり味わうにはいいだろう。
車名:BMW Z3 Roadster 2.0(2000年モデル)
型式:GF-CK20
寸法:全長4060mm x 全幅1740mm x 全高1280mm
ホイールベース:2445mm
車重:1330kg
駆動方式:FR
エンジン:2.0リッター直列6気筒DOHC
最高出力:150ps/5900rpm
最大トルク:19.4kg-m/3500rpm
トランスミッション:4AT
使用燃料/容量:レギュラーガソリン/51L
10・15モード燃費:9.9km
タイヤ:前・後:225/50R16
発売時期:1999年11月(Roadster 2.0)
当時の新車価格:388万円(消費税抜き)
試乗車スペック
初年度登録:2000年9月
販売価格:218.4万円(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間 距離無制限)
走行距離:23000km
ボディカラー:コスモスブラック
試乗日:2006年2月
基本的にはメンテナンスフリー
エンジンに関しては定評のあるBMW。特に150ps前後の1.9リッター4気筒や2.0/2.2リッター直6といった出力の小さいユニットは、基本的に頑丈だ。Z3は全車カムチェーンなのでタイミングベルトの交換は不要。ただし国産車でも同様だが、ウォーターポンプは10年または10万kmまでに交換し、合わせて周辺を点検。むしろ心配なのはオートマチックで、距離が多いクルマ(5万~10万km以上)は変速ショックやスリップを要チェック。最新国産車よりは元々ショックは大きめだから、エンジンが温まってからでもそれが許容範囲かどうか、くらいの判断でいいだろう。1996年~2000年までは4ATで、2001年~2002年モデルは5ATなのも、購入時の判断材料だ。
2.8リッターや3.0リッター車は、パワーに比例して熱量や重量も格段に増えるので、エンジンマウント、冷却系、ミッション、足回りのブッシュやダンパーにそれなりの負荷がかかる。「M」の3.2リッターならなおさらだ。オートプラネットでは1年間・走行距離無制限の保証が付くのでこの点は安心だ。
幌の耐久性は十分。ウインドウは消耗品と考える
Z3のリアウインドウは透明ビニール製で、折り畳んだ時はビニールに折り目が付く。その際、幌と幌が擦れて傷も付きやすく、零下になるような寒い日には折り目から割れることもある。しかし、予備知識をもって丁寧に扱えば驚くほど長持ちするし、ウインドウ部分だけの交換も可能だ。Z3に限らず、幌の耐久性は一般に思われている以上に高い。フィッティングが出来ていれば、雨漏りの心配もほとんどない。
今買うなら2000年以降が狙い目
Z3の場合、マニュアルだと自動的に左ハンドルになるが、国産車ユーザーでも2~3日で慣れるはず。MTならBMWならではのシャーンと回るエンジンや、優れた重量バランスがすっきり味わえるはずだ。1.9リッター直4か、2.0/2.2リッター直6かは難しいところだが、2000年以降のロードスター(6気筒のみ)にはロールバーが備わるし、スタイリングも迫力を増すから、現時点ではやはりやはり2000年以降の「ストレートシックス」が狙い目になる。
軽快な加速より、イージードライブが優先なら、もちろんATで乗るのも悪くない。今選ぶなら、2001年以降の2.2リッター直6もしくは3.0リッター直6のステップトロニック付き5ATがベストの選択だ。
オープンカー試乗のコツ
最後に、オープンカーを試乗する時の簡単な「コツ」を。購入を決める直前の最終的なチェックのためなら、幌を開けてぜひ試乗を。寒い日は風の巻き込みを強めに感じ、逆に暑い日は感じにくくなるのも覚えておこう。いずれにしても、スカッと気持ちよくハンコが押せるはずだ。
一方、冷静にクルマの良し悪しや自分との相性、実用性をチェックしたいなら、少なくとも最初はきっちり幌を閉めて試乗すべき。セールススタッフの「オープンにしましょうか」の申し出も有難く断ろう。天気のいい日にオープンカーで走れば、気分がいいに決まっている。エンジンノイズもロードノイズもすべて風に吹き飛ばされ、ボディの建て付けの良し悪しを見分けるのも、まず無理と言っていい。どんなにオープン好きの人でも、購入後はほとんどクローズド状態で走ることになるのをお忘れなく。
文・写真:DAYS・Niwa


