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Uカー試乗記

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第12回:AP Uカー試乗記:奇跡のマイクロカー、スマートに乗るなら今だ!

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安全性、燃費、楽しさを備えたマイクロカー。そんな理想を全長2.6メートルの強靭なボディで実現したのがスマートだ。

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【1994年】メルセデスとスウォッチの共同プロジェクト

2001年頃までの前期型スマートはシャープな目付きのヘッドライトが特徴。写真は2002年6月に発売されたリミテッド(写真:ダイムラー・クライスラー日本)

1994年にプロジェクトが発表されたスマートは、ダイムラー・ベンツとスイスの時計関連企業SMH社(※)の合弁会社であるMCC社(マイクロ・コンパクト・カーGmbH)が企画・開発した。コンセプトは環境・エネルギー問題や都市部の慢性的な駐車スペース不足を解消すること。そして大人2人とビールケース2個を運べること。smartという車名は、もちろん「賢い」も意味するが、元の由来は「Swatch Mercedes ART(スウォッチとメルセデスの作品)だったという

※SMH社:スイス・コーポレーション for マイクロエレクトロニクス&ウォッチメーキング・インダストリー:98年以降はスウォッチ・グループに改称

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【1998年】欧州で販売スタート

photo_2.jpg 後期型はヘッドライトが涙目タイプになり、燃料タンク容量が33Lにアップ(写真:ダイムラー・クライスラー日本)

1998年に欧州で発売。同時に日本への並行輸入も国内数社によって行われ、かなりの台数が国内に上陸した。大型車と同等の衝突安全性を確保するため、「トリディオン・セーフティ・セル」と呼ばれる強靭なボディ構造を採用。フロント部はクラッシャブルゾーンとし、リア床下にメルセデス・ベンツ製の3気筒600ccターボエンジンを搭載した。工場はフランス・ロレーヌ地方のハンバッハに新設され、当初は販売店もスマート専用に展開した。

欧州での実績は、生産コストと販売価格の高さが響き、事前の計画を大きく割り込む。結局、SMH社は事業から撤退。MCC社はダイムラー・クライスラーの100%子会社「マイクロ・コンパクト・スマート」社(2002年以降はsmart GmbH)となった。

【2000-2002年前半】日本への正規輸入がスタート

2002年以降は、軽自動車扱いのスマートKが販売主力に。写真は2003年11月のスマートKリミテッド(写真:ダイムラー・クライスラー日本)

日本への正規輸入は2000年12月にスタート。販売はシュテルン、ヤナセ、クライスラー、三菱系で行われた。2001年4月に足回りを改良。同年5月にオープンタイプの「カブリオ」、10月に右ハンドル仕様車、および日本の軽自動車規格に合わせてリアフェンダーと後輪サイズを手直しした「スマートK」を追加した。

【2002年後半】燃料タンクが33リッターに

2002年には中身が大きく進化。6月にマイナーチェンジされたスマートKは、先のカブリオに倣ってヘッドライトが「涙目」になり、燃料タンク容量は50%アップの33Lになった。8月にはクーペにも同様の変更が施された他、馬力が55psから61psに向上した。9月にはカブリオの燃料タンク容量と馬力も同仕様に。

【2003年】クーペ/カブリオレは700ccに。ブラバスが登場

クーペとカブリオがベースの高性能モデル「ブラバス」は2003年8月に登場。75psの高出力エンジンや16インチタイヤを装備する(写真:ダイムラー・クライスラー日本)

2003年8月には、クーペとカブリオの排気量が700ccにアップ(馬力は61psのまま)。同時にメルセデス系のチューニングメーカーであるBRABUS社が仕立てた高性能モデル「スマート クーペ ブラバス」および「スマート カブリオ ブラバス」が発売された。ブラバスのエンジンは75psとなり、16インチホイールやスポーツマフラー等を備える。また、この時から坂道発進時に後ずさりするのを防ぐ「ヒルスタートアシスト」が全車に装備された。

【2004-2005年】「スマート フォーツー」に名称変更

スマートは世界中の様々な場所で活躍している。写真は米国ミシガン州のデトロイト市消防局に寄贈されたもの(写真:ダイムラー・クライスラー日本)

2004年には4ドアの「フォーフォー」導入に伴い、従来の「スマート」は「スマート フォーツー(smart fortwo)」へ名称変更。同時にクーペ/カブリオレにEPS(電動パワーステアリング)が付いた(Kにはオプション)。また、翌2005年6月に限定70台で発売された「スマート フォーツー クーペ ブラバス」にはステアリングパドルシフトが付いている。

排気量600cc時代に生産したエンジンを使って生産されていたスマートKはエンジンの在庫が無くなった時点で生産終了、すでにラインナップから外れている。

 

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ベンツSクラス1台分のスペースに3台

スマートKは涙目ヘッドライトの後期型が多い。ナンバーが無い状態でもトリディオンセーフティセルがブラックなので、Kと分かる。

サンプルカーであるスマートKのボディサイズは全長2540mm×全幅1470mm×全高1550mm。全幅が1515mmあるスマートクーペの樹脂製リアフェンダーを張り出しの少ないものに変更。後輪を175/55R15から145/65R15にサイズダウンして軽自動車枠に収めている。フロントフェンダーは同じだが、前輪は145/65R15から135/70R15にサイズダウン。

全長が日本の軽自動車より860mmも短いのは、路上駐車する時のスペース効率を考えたため。道路に対して直角に停めればメルセデス・ベンツの大型セダン1台分のスペースに、スマート3台が停められる。

極めて強固なモノコックフレーム

ブルーに塗られている部分はすべて柔軟性のある樹脂製で、傷が付きにくい。交換も工具があれば割と簡単だ

トリディオン・セーフティ・セルと呼ばれる鋼鉄製のシャシーを採用。一般的なモノコックシャシーは開口部がたくさんある「箱」だが、これは卵の殻のように丸く、しかも骨格部分が太い。高張力鋼板を約33%に使用し、前後にスチール製のクラッシュボックス(衝撃吸収構造物)を備える。メルセデス・ベンツAクラスと同様のサンドイッチ構造(二重フロア)を採用し、正面/側面/後面の衝突に備える。ベンツの大型セダンと50km/hでオフセット衝突してもキャビンは潰れないという極めて強固な構造だ。

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パズルのように巧みな空間

「リミテッド」仕様には、通常ならオプションのエンジン回転計と時計が備わり、デザイン的なアクセントにもなっている

二人乗りと割り切り、パズルのように空間を巧みに使ったインテリア。シートの背もたれは強化スチール製モノコックフレームという凝ったもの。衝突時には変形して衝撃を吸収するほか、後方や側面からの侵入物から乗員を守る。助手席は運転席より155mm後方にオフセット配置され、衝突時に乗員同士がぶるつかるのを防ぐ。助手席のシートはリクライニングもスライドもしないが、座り心地はとてもいい。

 
左右のシートは155mm前後にずれて据え付けられ、お互いの広々感にも貢献している
スマートKの室内は、カラフルなクーペと違って簡素な仕立て。内装色はグレーで、天井もクーペの全面ガラスではなくスチール製だが、カタチ自体はスマート共通のポップなものだ。

人間2人とビールケース2個

小さなクルマでは、狭さを工夫でカバーするのも楽しみの一つ。荷室床下にエンジンが収まる。

ラゲッジはまずリアガラスを上に開けて(オープナーか鍵を使用)、さらにロアゲートを降ろす「レンジローバー」式だ。開いたロアゲートはテーブル代わりに使える。

荷室容量は通常時で150L、奥行き40㎝ほど。確かにビールケース2個が積めるスペースだ。助手席の背もたれを前に倒せば363L(一般的なハッチバック車の荷室に相当)になり、スポーツ自転車も積めるらしい。倒した背もたれは、ドライバー用のドリンクホルダーとトレイ付きテーブルになる。

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キーはセンターに。エンジンは意外に静か

サンプルカーは02年式のスマートK。マイナーチェンジ直後のモデルで、ヘッドライトは涙目、燃料タンクは33リッターのタイプだ。翌年から白ナンバースマート(クーペおよびカブリオレ)は700ccに排気量アップしているが、スマートKはもちろん600cc(55ps、8.2kg-m)のままだ。

スマートにはほぼ全モデルに取材で試乗しており、大体の勝手は分かっている。まず、サーブのように?キーをセンターコンソールに差し、エンジンを始動。エンジンは背中のすぐ後ろだが、音・振動はよく抑えられている。同じようにリア(正確にはミッドシップ)にエンジンを積むホンダ・ビートよりずっと静かだ。吸気音やメカニカルノイズが小さいこと、ターボの消音効果などのせいだろう。

セミATのショックは考え方次第

セミATなのでクリープは無いが、アクセルを普通に踏み込めばアクチュエーターが自動でクラッチをつなぎ、ブォーンと滑らかに発進する。「A」(オートモード)ではスマートで有名なシフトアップの遅さや「しゃっくり」と言われる前後の揺れが出るが、これはこれで慣れてしまえるもの。アクセルコントロールやマニュアルシフトで、ある程度はカバーできるし、700ccモデルではもっと緩和されている。助手席では、運転が上手じゃない人のマニュアル車よりマシという印象で、ドライバーが心配するほど気にならない。

ポルシェのような?剛性感

トリディオンセーフティセルは、セル(細胞、小部屋)と言うより、シェル(殻)のような頑丈さを感じさせる。ポルシェファンの方には「そうかあー?」と言われそうだが、個人的には空冷911のガチッ、カチッとした硬質な金属感に例えたくなる。リアエンジン・リア駆動というレイアウトが共通のせいかもしれない。セーフティセル自体はおよそへたりそうになく、エンジンと足回りをオーバーホールしながら何十万kmも走れそうだ。

操縦性はリアエンジン車らしい、フロントの接地感が少ない独特のもの。しかし、その感覚に慣れれば、運転自体はとても面白く、工夫する余地がある。その点で、前輪駆動車と対照的だ。クルマ好き、運転好きには、スマートの方が発見があって面白いはず。

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車名:Smart K Limited(2002年モデル)
型式:GH-MC01K
寸法:全長2540mm x 全幅1470mm x 全高1550mm
ホイールベース:1810mm
車重:750kg
駆動方式:FR
エンジン:0.6リッター直列3気筒SOHC・ターボ
最高出力:55ps/5250rpm
最大トルク:8.2kg-m/4500rpm


トランスミッション:6速MT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/33L
10・15モード燃費:19.0km/L
タイヤ:前:135/70R15 後:145/65R15
発売時期:2002年(smart K Limited)
当時の新車価格:133万円(消費税抜き)

 

試乗車スペック

初年度登録:2002年
販売価格:96.6万円(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間 距離無制限)
走行距離:17000km
ボディカラー:スターブルー
試乗日:2005年12月

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お勧めは2001年、2002年、2003年以降

前期型スマートとスマートKの排気量は600cc、後期型スマートは700cc

スマートは毎年のように改良され、進化を繰り返している。シンプルなクルマだけに、ちょっとした改良や装備が使い勝手に与える影響も多い。その点を踏まえて自分にあった年式(仕様)のスマートを選ぶのがいい。

まず、正規輸入の始まった2000年以前の並行輸入車は一般的にお勧めできない。理由は正規輸入以前のスマートは、まだまだ未完成な部分が多く、正規ディーラーでも修理を受けつけないからだ。

あとは、とにかく一年でも新しければ、装備や仕様が良くなってくる。2002年途中以降のモデルは燃料タンク容量が22Lから33Lになるし(走行距離が多い人は無視できない)、クーペ/カブリオレなら2003年途中以降の700ccモデルが乗りやすい。注意したいのは、改良次期はグレードによってマチマチで、しかも初年度登録年=モデルイヤーではないこと。クルマに付属する取扱説明書の諸元や車検証記載の「車両形式」で確認するのが確実だ。

右ハンドルか左ハンドルか

個人的には気にならないが、右ハンドルのペダル配置の不自然さを指摘する声もある。左ハンドル仕様(おおむね2001年式まで)は、アクセルとブレーキが共にオルガンペダル式(これもかつての空冷ポルシェ911と同じ)だが、右ハンドルではアクセルだけ吊下げ式になり、ステアリング位置も若干オフセット(ドライバー正面からずれる)するようだ。しかし、右ハンドルしか知らなければ、そう違和感はないと思う。また、2004年途中までスマートにはパワステ(電動)が無く、据え切りは多少重めだが、これも特にこだわる必要はないだろう

白ナンバーと黄色ナンバー

トリディオンセーフティセルの色でもクーペかスマートKかが区別できる。シルバーなら前者、ブラックなら後者だ(ブラバスを除く)

もう一つ注意したいのは、本来は「白ナンバー」(普通車登録)のクーペなのに、登録時のみフェンダーを付け替えた「黄色ナンバー」(軽自動車登録)車があることだ。そのほとんどは並行輸入車で、登録後に元のフェンダーに戻し、納車されている。軽登録のまま次回車検を通すことも可能だが、それはあくまで見逃し。もちろん正規ディーラーでは車検も整備も受け付けない(原則として)。オートプラネットでもユーザーの便宜やアフターサービスの点を考えて取り扱っていない。

さて、そこで悩むのが「白ナンバーか黄色ナンバーか」だが、結論を言えばどちらも一長一短で、それぞれに良いところがある。大まかに言って、スタイル(ガラスルーフを含む)を取るか、維持費を取るか、ということになるだろう。

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途方もない理想を描いたクルマ

オートプラネットに並ぶスマート

スマートは、マイクロカーでモータリゼーションに革命を起こそうという、途方もない理想を描いて生み出されたクルマだ。それゆえ生産コストも高く、結果として車両価格も予定より高くなってしまった。逆に言えば、クルマ自体はオーバークオリティと言っていいほど凄い作りだ。トリディオンセーフティやモノコック構造のシート、ガッチリした作りのペダル、サスペンションアームなど、ほとんど一生モノと言いたくなる贅沢な設計。どこかのクルマのように7~10年乗ったら終わり、というクルマでは全くない。

マンハッタンの中心にあるニューヨーク近代美術館(MoMA)には、ピカソやゴッホといった名画と同じ建物の中に、2002年からスマートが所蔵されているそうだ。カタチだけでなく、思想が優れているからこその名誉だろう。現在生産中のクルマとしては唯一だそうだ。

名画に比べれば、スマートを買うことはそう難しくない。しかも、スマートは毎日乗れて、触れて、人に見せて楽しませ、役にも立ってくれる。なるほど確かに「Swatch Mercedes ART(スウォッチとメルセデスのアート)なのだった。

文・写真:DAYS・Niwa

 
 

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