第37回:走りも楽しめる! ブランド力も抜群のスポーツワゴン
BMWのスタイリッシュさをそのままにワゴン化
イメージの面でも、経営の面でも、BMWを支えている大黒柱が3シリーズ。「スポーティセダンの基準」として世界から絶賛されているが、そのワゴンモデルが「ツーリング」だ。初代デビューは「E30」時代の1987年。BMW初のワゴンで、ツーリングの名称は「02」シリーズ(1968~75年)の3ドアに由来するものだった。つまりライバル車よりも歴史の長いプレミアムワゴンなのだ。にも関わらず、そのイメージがいまひとつ希薄なのは、「E36」時代に日本への正規輸入(アルピナは除く)が途絶えたからだろう。
ワゴンには、実用重視のモデルと、スタイリッシュさや走りの気持ちよさにこだわったモデルとに大別できるが、いうまでもなくBMWは後者。ワゴンではなく、ツーリングと名乗る理由もそこにある。今回紹介するツーリングは98年にデビューした「E46」型のセダンから1年遅れて登場した3代目。BMWの持つスポーティさをそのままに、セダンよりも全長をプラス10mm、全高をプラス20mmアップ。優れた積載性と高いボディ剛性による上質な走りがウリだ。
わずらわしい変遷。「318i」を名乗るが……
E46型3シリーズのツーリングは、1999年11月に「318i」と「328i」の2グレードで日本発売が始まった。前者は1.9リッター直4SOHCエンジン(最高出力118馬力、最大トルク18.3kgm)+4AT、後者は2.8リッター直6DOHCエンジン(193馬力、28.5kgm)+5ATを搭載する。その1年後、燃費とクリーン性能を向上させた2.5リッター直6DOHCエンジン(192馬力/25.0kgm)+5ATの「325i」が加わり、328iはラインナップから外れた。
2001年6月、両グレードに「Mスポーツ」という仕様が加わった。MスポーツはBMW全モデルに設定されている、パッケージモデルだ。エアロパーツやスポーツサス、カーボン調パネルなど、プラスαの付加価値を生み出している。同年10月、マイナーチェンジが実施され、外観上のフェイスリフトと同時に、318iのエンジンが2.0リッター直4DOHCに変更された。ちなみにエンジンが1.9でも2.0でもグレード名は「318i」である。

日本の道路事情にマッチしたサイズ
E46のボディサイズは全長4480mm x 全幅1740mm x 全高1435mm。比較的コンパクトな作りで、欧州で言うところのDセグメントに属する。一方、現行型は全幅が一気に1815mmまでに拡大しており、さすがにここまで広いと裏道などの取り回しに気を遣う。E46は「日本市場に適した最後の3シリーズ」と言ってもいいだろう。
マイナーチェンジ(2001年10月)による大きな変更点は、ヘッドランプまわりだけと思われがちだが、実はボンネットやフェンダー、トレードマークであるキドニー(腎臓)グリルに至るまでリファインされている。その顔つきは、猛禽類の目を連想させるものだ。マイナーチェンジの前と後ではUカー相場の価格差が大きくなっているので、この点についてはしっかり把握しておきたい。
長年の使い込みにも耐える建て付けの良さ
内装は比較的オーソドックスで、BMWらしいスポーティさとドイツ車らしい質実剛健さが漂う。メーター回りをコンパクトに設計しつつもインパネ全体を水平基調にすることで、視覚的な広々感を演出。デュアルエアバッグはもちろん、サイドエアバッグを標準装備。エアコンやオーディオの操作性も良い。強いて不満点をあげるとすればカップホルダーがないことぐらいか。
ラゲッジ容量は5名乗車の状態で435リットル、6:4の分割可倒式リアシートを両方倒したときの最大値は1345リットルとなる。ワゴンとしては平均的な数値だが、シートバックから側面・床面全体が上質なカーペットで覆われているのは好印象。実際にトノカバーを取り外したり、ラゲッジネットを色々イジってみると、ひとつひとつの操作感がカッチリしていて、長年の使い込みにも耐えられそうな感触だ。
快適性と操縦する楽しさを融合
セダンとの違いは車重が40~60kg重く、サスの設定が積載を考えた安定寄りになっていること。そのため、走り味はマイルド、重厚である。しかし、その違いは、それなりの経験を持つ人が、セダンと乗り比べてはじめて分かるほど微妙なもの。ライバルと比べてみると、ハンドリングの素直さ、上質さは際立つレベルで、本気の走りも楽しめるワゴンに仕立てられている。それでいてセダンには望めない多用途性を備えているのだから、ツーリングの才能は輝かしい。中身がギッシリと詰まっているような濃密な感触こそ、このクルマ最大の魅力といえよう。
今回の試乗車は「318i」を名乗るが……積まれているのは1.9リッター直4。マイナーチェンジ前のモデルで、ベーシックなSOHCエンジンに4ATという組み合わせ。後期型はDOHC+バルブトロニック+ダブルVANOSに加え、排気量は100ccアップ。ATも5速化されている。なるべく細かくギアを割り振ることで、エンジンのおいしいところしっかり味わえるようにという狙いだ。特にバルブトロニックと呼ばれる吸気制御技術は革新的なもので、吸気バルブの開閉タイミングとリフト量を無段階に制御することでスロットルバルブを不要とし、低負荷時の吸気損失を大幅に減少。実用域の燃費を約14%も改善している。かなり食指が動く内容だが、留意したいのがギア比だ。
BMWはドイツ生まれゆえ、超高速域まで伸びる高いギア比を採用しているから、日本の道路で活発に走るには5速の出番は少ないのである。しかもその下の4速は、超高速追い越し用にと5速とクロスしており、3速とのギャップが大きめ。だから峠道を攻める際には少々ギコチナイ走りになってしまう。市街地での走りも同様だ。このあたりを考慮すれば318i前期型の走りは秀逸。もちろん加速のパンチ力は後期型や直6モデルに劣るが、それでも騒音を含めて不満がないレベルだし、BMWならではの気持ちのいいフィーリングも健在だ。剛性感の高いコンフォートな乗り味は、同世代のライバル車の中では間違いなくトップクラスだと断言できる。
車名:BMW 318i TOURING (2000年モデル)
型式:GF-AL19
寸法:全長4480mm x 全幅1740mm x 全高1435mm
ホイールベース:2725mm
車重:1430kg
駆動方式:FR
エンジン:1.9リッター直列4気筒SOHC
最高出力:118PS/5500rpm
最大トルク:18.3kg-m/3900rpm
トランスミッション:4AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/63L
10・15モード燃費:- km/L
タイヤ:205/55R16
発売時期:20010年
当時の新車価格:432.6万円(消費税別)
試乗車スペック
初年度登録:2000年
販売価格:207.9万円(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:29,000km
ボディカラー:シルバー
試乗日:2006年10月
内容の把握と目標を決めることが重要
3シリーズツーリングのUカー選びは、まずグレード展開、搭載エンジン、そしてマイナーチェンジの時期を把握することがスタート地点となる。これらを押さえておかないと、例えば目ぼしい1台をピックアップしても、それが高いのか安いのか把握できず、根本的な判断を狂わせるのだ。これをクリアしたら、グレードや年式を実際に絞る込むのだが、ここでは何が重要で、予算はいくらなど、きっちり決めることが大切となる。そうした条件を設けることで、より具体的なターゲットを見つけ出すことができる。例えばコストパフォーマンス重視なら318i、程度優先なら後期型の325i、といった具合だ。
「認定中古車」という手厚いサービス
アプルーブドカー(認定中古車)とサービス・フリー・ウェイ(SFW)の有無も忘れてならない。アプルーブドカーという名前を定着させたのはBMWであり、それだけUカーの安心度は高い。アプルーブドカーに選ばれるのは「新車登録6年以内かつ走行距離9万km以内のディーラー車」というのが最低条件。そのサービス内容は82項目の納車前整備、1年間・走行距離無制限の保証(有料で最長2年の延長プランあり)などがある。アプルーブドカーの相場は20万円前後、SFW付きの相場は5~10万円程度高くなるが、アフターサービスや整備など維持費のことを考えれば、けっして高くはない。もちろんアプルーブドカーではないクルマの場合は、信頼できるショップで購入するのが賢明。なお、今回の試乗車はアプルーブドカーの対象ではないが、オートプラネット保証として1年間・走行距離無制限の保証が付く。走行距離も2万9000kmとかなり若い。コストパフォーマンスと合わせてお勧めだ。
ずば抜けて高いリセールバリュー
セダンも含めれば3シリーズの流通量は全年式で多い。ただ、これがツーリングだけに絞ってみると、とたんに少なくなる。それでもツーリングの引き合いは多く、需要が供給を上回る状況が続いている。結果として高値維持の傾向が強いのだが、言い換えればリセールバリューも期待できるということ。買取専門店で聞いた情報では、国産車を含めた全モデルの中でも、3シリーズツーリングのリセールバリューは抜群なのだとか。相場としては200万~450万円で、セダンより20万~50万円高となっている。この価格差は新車の場合とほぼ同じと思っていいだろう。
BMWといえばやっぱり直6……か!?
BMWの魅力のけっこうな部分を占めるのがエンジン。BMWといえば、もちろん直6だ。直6を搭載するクルマが絶滅しつつある昨今、BMWの直6はますます存在価値が高まっている。直6は各シリンダーの動きが完全にバランスするので、振動や音の面で有利な形式。でも、前後重量配分の話をするなら、長くて重い直6より、短くて軽い直4のほうが有利なのも確か(詳細は試乗インプレッション)。にもかかわらず直6が人々を惹きつけるのは、あまりにその世界が美しく完結しているからだろう。走りそのものの機動性なら直4、でも直6独特の世界観も捨てがたい……。ようは何を重視するか。ハンドリングを重視すれば直4の318i。エンジンの味を重視するなら直6の325iもしくは328iとなる。
ライバル比較。ルックスで差をつけるならMスポーツ
長距離をクルマで移動することが当たり前のヨーロッパにおいて、ワゴンの需要は日本より高く、それだけ高性能なモデルも多い。ライバル車はメルセデスベンツCクラスワゴンやアウディA4アバント、アルファスポーツワゴンなど、そうそうたる実力車が目白押しだ。Cクラスは明瞭な視覚的記号性が魅力だし、アルファはいかにもイタリアンなカッコ優先の個性を醸し出しているし、A4はクワトロという4WDを最大の武器としている。なら、3シリーズは? スポーティさとエレガントさを融合させたキャラクターは、無難なまとまりだが、その分、万人に好まれるのではなかろうか。同じ3シリーズのなかで、少しでも差をつけたいのであれば、「Mスポーツ」がお勧めだ。
文・写真:DAYS・Kondo


