Volvo850 2.5 20V エステート
掲載日 : 2007年05月26日
第41回:四角いだけじゃない、ボルボらしさの農耕の1台
主力モデルで初の前輪駆動車
「850」(ハチゴーマル 1991~96年)は、ボルボの主力セダンおよびエステート(ステーションワゴン)。ベストセラー車だった240シリーズ(1974~93年)や700シリーズ(1982~92年)に続くモデルだが、それらと同じFR(フロントエンジン・後輪駆動)ではなく、このクラスのボルボ車で初めて前輪駆動を採用した。
ボルボが米国フォード傘下となったのは1999年で、80年代に開発された850にその影響はない。デザインは700シリーズを踏襲する直線基調。新開発の直列5気筒エンジンを、フロントに横置する特異なレイアウトによって、クラッシャブルゾーンを確保した。安全性は言うまでもなく、ボルボらしい頑強で素朴なクルマ作りの伝統が、分かりやすい形で残るモデルだ。
850は日本を含む世界中で大ヒット。レースの世界では、市販車ベースで戦う「英国ツーリングカー選手権(BTCC)」に、あえてエステートで参戦。1980年代の「ヨーロッパ・ツーリングカー選手権(ETC)」を2連覇した「フライング・ブリック(空飛ぶレンガ)」こと、240ターボの活躍を再現した。
2434ccのNAと2318ccターボの2種類
日本発売は1993年10月。当初は2434cc・直5(140psと170ps)と、2318cc・直5ターボ(225ps)でスタートし、日本から出荷されたアイシン製4ATと組み合わされた。セダンもあったが、日本ではやはりエステートが主流だ。
ややこしいのは、この850エステートが1997年2月のビッグマイナーチェンジと同時に「V70」に改称されたこと。大幅に改良を受けているが、基本設計やデザインはほぼ同じだ。初代V70はその後、2代目V70(2000年~)にフルモデルチェンジした。(2007.02)

80年代テイストの直線基調デザイン
V70と似てはいるが、こうして見るとクラシカルな850。フロントの雰囲気は'80~90年代のボルボそのもので、具体的には700/900シリーズの流れを汲む直線基調だ。それに対して、現行2代目V70はもう1世代前の240シリーズ(これも名車だ)から受け継ぐ「角」と「丸」のミックスと言える。
全長4710mm x 全幅1760mm x 全高1460mmと3ナンバーサイズだが、今の基準からすれば手頃な大きさだ。今の2代目V70のボディ幅は1805mmもあり、この「気持ちナロー」なところに惹かれて昔のボルボがいいと思う人は多いだろう。
素朴で味があるインテリア
明るいウッドパネルがいかにもボルボ。サンプルカーは96年の850最終モデルだが、コンディションは極めて良く、気になるヤレはない。いい味が出た状態、と言える。メルセデス・ベンツとボルボは旧い方がいい。
内蔵式チャイルドシートを装備
FF化の恩恵をもっとも得たのが後席のスペースだ。足もとからヘッドルームまでFR時代よりもぐんと広くなった。乗員は強固なサイドインパクトバーやシート骨格、衝撃吸収材によって守られる。センターアームレスト内蔵の「インテグレーテッド・チャイルドシート」のガッシリした作りが素晴らしい。
自然吸気でも十分なパワー
サンプルカーは96年式の「2.5 20V」。エンジンは2434cc・直列5気筒DOHC・4バルブ(計20バルブ)で、販売の主力だったモデルだ。車重は1490kgと現代の基準からすれば軽く、170psと22.4 kg-mのパワーは十分。アクセルを踏み込むと、「デュゥオーン」とボルボの直5独特のサウンドを響かせて穏やかに、グイグイと加速。まるで低圧ターボのように力強い。これだけトルクに余裕があれば、4ATでも不足はない。
ちなみにこの直5は、同時期にボルボが960用に開発した2921cc・直6から1気筒取り去ったものだが、吸排気周辺の設計、および走行実験と開発の一部をポルシェ社が行なった。
今も昔も変わらない
走行距離が5万4000kmに過ぎないせいか、足腰は10年落ちとは思えないほどしっかり。これこそがボルボが誇る耐久性ゆえなのか、あるいはこのクルマ固有のものなのか。おそらくその両方だろう。鷹揚な乗り心地。ソフトなのに無駄な動きが生じない足回り。じわっと反応する、あるいは鈍(どん)とも言えるステアリングの手ごたえ。それら全て、最新のボルボ車(サスペンションが標準仕様のもの)と本質の部分は、何ら変わりがない。直5エンジンなど、ほとんど同じではないか、と思って後で調べたら、確かにスペックは2007年モデルの同型エンジンと同じだった。
車名:Volvo 850 2.5 20V Estate(1996年モデル)
型式:E-8B5254W
寸法:全長4710mm x 全幅1760mm x 全高1460mm
ホイールベース:2665mm
車重:1490kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直列5気筒DOHC・4バルブ
最高出力:170ps / 6100rpm
最大トルク:22.4 kg-m / 4700rpm
トランスミッション:4AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/73L
10・15モード燃費:7.8 km/L
タイヤ:205/55R 16
発売時期:1996年7月(2.5 20V Estate )
当時の新車価格:480万円(2.5 20V Estate標準車 消費税抜き)
試乗車スペック
初年度登録:1996年
販売価格:- 万円(消費税込み) ※保証なし 整備渡し
走行距離:54,000km
ボディカラー:シルバーサンド・メタリック
備考:クラシック・パッケージ、レザーシート、サンルーフ
試乗日:2007年1月
高年式・低走行の初代V70もあり
850/初代V70はマイナートラブルこそあるものの、根本的な部分は壊れにくいクルマだ。オイルのにじみを早期発見したり、10万kmごとのタイミングベルト交換など、定期的な点検と整備の手間を惜しまなければ、何十万kmも走ってくれるはず。純正パーツの供給体制もボルボはまったく問題ない。
逆に手間暇を掛ける時間や心の余裕が無ければ、高年式・低走行の初代V70を選ぶのがいい。オートプラネットの車両は、エンジン・足回りや各種消耗品・スイッチ類に至る117項目の納車前点検整備を実施しており、基本的には高年式・高品質の輸入中古車に限って取り扱う。今回の850のような掘り出し物が入庫することは多くないが、初代V70ならまだある。
おすすめの一台。セダンもおすすめ
850(と初代V70)が今でも人気なのは、「四角い」デザインをきっかけに、北欧らしい骨太の、まさに骨格というか、「背骨」みたいなものがはっきり感じられるからだろう。10年、20年経っても、決して旧びて見えないのも大きな魅力だ。クルマと言えどもポンポンと安易に買い換えるものではない、という主張が感じられる。
とにかく80年~90年代の(コンディションのいい)ボルボは、買って損はない。人気のエステートが割高という印象を持つなら、相場が安めのセダンがお勧めだ。積載量はセダンでもまったく十分と言えるし、静粛性やボディ剛性という点では言うまでもなくセダンが有利となる。また、同時代の700シリーズや、98年まで販売された900シリーズも同様に、とてもいい買い物になるだろう。スポーティばかりがプレミアムではない、ということが実感できるはずだ。(2007.02)
文・写真:DAYS・Niwa



