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第21回:飛べない翼、サーブ 9-3カブリオレで白夜を走れ!

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スポーツカーでもない、単なる高級車でもない。肩の力が抜けた4シーターオープンが欲しくなったら、ちょっと旧いSaabだ!

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86年の900カブリオレが始まり

photo_1-s.jpg サーブカブリオレを語る上で、欠かせないのが初代900カブリオレ(1986~93年)。(画像:ゼネラルモーターズ・アジアパシフィック・ジャパン)

サーブは同じ北欧スウェーデンのメーカーでもボルボとはまた一味異なる、独特の設計思想を持ったブランドだ。創業期の92(1949年~)に始まり、70年代の99(1967~87年)、99の進化版である初代900(1978~93年)と発展しながらブランドイメージを世界的に確立。さらに900を4座のオープンカーとした初代900カブリオレ(1986~93年)は、同社のユニークさとこだわりを象徴するモデルとなった。

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2代目900カブリオレ≒初代9-3カブリオレ

2代目900カブリオレのビッグマイナーチェンジ版が、98年の初代9-3カブリオレだ(画像:Saab Automobile AB)

90年にGMと提携したサーブ(その後100%子会社になった)は、徐々にラインナップをアップデート。15年もの長寿車(99から数えれば26年!)となった初代900を、93年に全面変更。シャシーは99から続くエンジン縦置・前輪駆動から、オペル車ベースの横置・前輪駆動に変更された。さらに98年には9-3(ナインスリー)へと名称変更およびマイナーチェンジを行っている。

同様に、7年間販売した人気車900カブリオレも、93年にフルモデルチェンジ(日本導入は翌年)、98年に9-3カブリオレと名を改めた。今回採り上げるのはその初代9-3カブリオレだ。

 

カブリオレモデルとしては大まかに言って3世代目となる2003年登場の現行9-3カブリオレ(画像:ゼネラルモーターズ・アジアパシフィック・ジャパン)

すでに9-3シリーズは2003年にフルモデルチェンジ済み。9-3カブリオレも新型へ移行している。なお、北米やUKでは今でも9-3コンバーチブルと呼ばれており、日本でもかつてそう呼ばれた時期がある。(2006.06)

 

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サーブ独特の雰囲気が漂う

ディテールはもちろん、スタイリング全体がいかにもサーブ。ボディカラーは、先代までサーブカブリオレを象徴していたモンテカルロイエロー

ボディサイズは全長4650mm x 全幅1710mm x 全高1430mm。中型セダン並みだが、古典的なデザインのせいか、大きさを感じさせない。900シリーズの船のような(個人的にはカモノハシを連想する)スタイリングに比べると個性は薄まったが、それでも北欧デザイン独特の中性的かつ、知的な雰囲気が漂う。新車では500万円オーバーの高級車だが、そう見えない素朴さも魅力だ。

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高級というよりは丁寧

ほとんど傷一つなく、やれていないサンプルカー。ナビは社外品。キーの差込口は真ん中にあり、いざという時は助手席からでもエンジンオフ出来る。

北欧車らしい温かみのある造形、操作しやすい大ぶりのスイッチ、いかにも「たっぷり樹脂が詰まってる」感じの樹脂パネルなど、高級というより、丁寧な仕事が心地いい。丸くて柔らか、腰のあるシートの座り心地も最高だ。現行サーブにもこの味わいは残っているが、こっちの方がより濃厚に味わえる。

サーブの思想

豪華さなど眼中になく、あくまで操作性と心地よさにこだわったインテリア。まさに北欧デザインの世界だ

サーブの伝統通り、キーはセンターコンソールに差す。これは確か、パーキングレバーやシフトレバーに連動していた頃の名残りとか、衝突時にキーが大腿に刺さるのを防ぐためとかだったはずだ。夜間のまぶしさを防ぐため、速度計を残してメーター類の照明を消す「ナイトパネル」は、元飛行機屋サーブの伝統。こうしたところに独特の思想が生きている。

サンプルカーは6年落ちながら、走行たった6000kmの極上車。インテリアもまったくやれていない。おかげで販売価格は相場より高めだが、初代9-3カブリオレのイエローが欲しい人には、またとない出物だろう。

フル4シーターとして使える

おそらくロールオーバーバーとしての機能もあるのだろう、枕のように立派なヘッドレスト。シートベルトのアンカー部分もゴツく、安全性確保を「義務でやってる」感じがまったくない

リアシートが2人掛けとなるのはカブリオレモデルの通例。しかし2605mmのホイールベースは伊達でなく、足元には余裕がある。シートの造りも良く、居心地も良く、安心感も十分。サンプルカーの場合、乗り降りの際にフロントシートが電動でスライドしてくれる小技も嬉しい。幌のクローズド時は穴倉のようにちょっと暗くなるが、それすらも心地いい。季節のいいリゾート地で、友だちや家族を乗せて軽く流した時の楽しさ、気持ちよさは、言うまでもない。

後席と併用すれば、積載性も高い

写真のようにトランクスルーが可能。ホイールベースがあるので、こんな立派なヘッドレストがあっても、パタンとそのまま畳めてしまう。スルー部分は狭く、想定しているのはスキーやスノーボードくらいだろう。後席に大物を積むことは可能で、デスクトップコンピューターの大きなダンボール箱も余裕で収まった。

 
クローズド時は写真のようにストラップで絞って、容量が増やせる

トランク自体も見た目以上に広い。上方は幌の収納スペースで蹴られてしまうが、横幅を生かせば大きなバッグも入ってしまいそうだ。

カブリオレ作りがよく分かっている

幌を開けるときは実測で24秒、閉める時は27秒で完了した(ロック操作とサイドウインドウ開閉を除く)

幌を開ける時は、まずサイドウインドウをワンボタンで全て降ろし、ロックレバー(この年代では1ヵ所に統合されている)を手動で解除。後はスイッチを押し続けるだけだ。リアウインドウ部が跳ね上がり、幌の収納リッドが開き、そこへ幌が収納されるまで、実測わずか24秒。今時のオープンカーと比べても、これは十分に早い。しかもDに入れたまま、徐行しても動き続ける。これを2000年時点ですでに採用しているあたりは、さすが初代900で早くも電動・ガラスリアウインドウを採用したサーブ。カブリオレ作りがよく分かっている。

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すべてがちょうどよくバランス

風の巻き込みも適度で、なおかつフロントシールドが顔から遠く、空が広く感じられるサーブ。他メーカーもこの点は頑張っているが、上品なたたずまいはサーブが一枚上手だ

全体の印象はすべてがほどほどに、まるーく収まっている、という感じだ。まず、2リッターターボで最大出力154ps、最大トルク22.3kg-mという、スペックから見れば、どうということもないエンジンがいい。最大トルクを1800回転で発生とあるように、ほとんどアクセルを踏んだ瞬間から過給が始まり、実にナチュラルにレスポンスしてくれる。踏み込んだ瞬間のマイルドな加速も気持ちよく、特にオープン走行時には、他のエンジンが考えられないほどの絶妙なマッチングを見せる。ATは4速だが、このクルマには十分だ。

ボディ剛性は気にすべきではない

ボディ剛性はもちろんセダン並みのはずはないが、4座オープンカーの基準で考えれば、これはこれで全く問題のないレベルだ。全体に緩い感じはあるが、エンジンや操縦性、乗り心地、そしてクルマ自体のキャラクターにはピッタリで、別に気にならなくなる。そもそもサーブもボルボも、北欧車はセダンでさえ(少なくとも旧い世代は)鷹揚な乗り味が特徴だ。大き目の段差では強めのハーシュネスが入ってくるが、そういうものもひっくるめて受け入れるところが、古典的カブリオレの心得でもある。

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車名:サーブ 9-3 2.0t カブリオレ(2000年モデル)
型式:GF-DB204
寸法:全長4650mm x 全幅1710mm x 全高1430mm
ホイールベース:2605mm
車重:1440kg
駆動方式:FF(前輪駆動)
エンジン:2.0リッター直列4気筒DOHC・ターボ
最高出力:154ps/5500rpm
最大トルク:22.3kg-m/1800rpm





トランスミッション:4AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/68L
10・15モード燃費:7.7km/L
タイヤ:195/60R15
発売時期:1998年(9-3 2.0t カブリオレ)
当時の新車価格:480万円(消費税抜き)

 

試乗車スペック

初年度登録:2000年
販売価格:247万8000円(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間 距離無制限)
走行距離:6,000km
ボディカラー:モンテカルロイエロー
備考:ワンオーナー、電動レザーシート、社外ナビ
試乗日:2006年5月

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とりあえず98年以降がお勧め

初代900シリーズのクラシカルな垂れ尻から、一転して普通になった後姿。キャンバス布と防水ゴムの3層構造からなる幌がいい雰囲気。リアウインドウは当然ガラス製だ

今回、採り上げたのは、サーブにとって第2世代カブリオレの後期型となる初代9-3カブリオレ(98~03年)。その直前のモデルには、2.3リッター直4のNA(自然吸気)やオペル製の2.5リッターV6もあったが、9-3となってからはサーブ伝統の2リッター直4ターボのみ。信頼性の点から言って、お勧めはやはり98年以降の9-3カブリオレだ。

01年以降モデルは改良型エンジンを積む

主力は2リッターターボ+4AT。特にオートマチックの状態がポイントだ。

2001年に採用された低圧の「エコパワーターボ」(150ps、24.5kg-m)は10・15モード燃費が9.4km/リッターと、従来より+1.7kmも向上、トルクも強化されている。続いて設定された「エアロ2.0TS」は、強力なハイプレッシャーターボ(205ps、25.5kg-m、MT仕様は28.6kg-m)を採用。トランスミッションは通常は4ATだが、モデル末期の02~03年には5MTも受注生産オプション化されたようだ。予算に余裕があるか、あるいはもう少し年数が経って値頃になれば、熟成の極みと言える01~03年モデルがベストチョイスと言えるかもしれない。

高年式なら特別なチェックポイントは無いが、当然ながらこの手の輸入車に詳しいスタッフがいるお店で購入するのが大前提。オートプラネットなら正規販売店のサーブ名古屋から直接バックアップが受けられるので安心だ。低年式で走行距離が多いクルマの場合、やはりエンジン、4AT、エアコン、電動幌のコンディションは最低限チェックすべきだろう。また、外観にもこだわりたい。良いオーナーの元で車庫保管されていたサーブカブリオレなら、例え20年落ちでも幌はほとんど痛んでいないはずだ。

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一世を風靡したサーブ900カブリオレ

こちらは98年式の900カブリオレ。おそらく2.0SEターボ(185ps、23.5kg-m)で、左ハンドルの4ATだ。新車当時の価格は530万円(税抜)だが、APでの販売価格は128万1000円。ただし、保証なし販売になる(2006.06)

「900カブリオレが実は昔から気になっていた」。そんな人は意外に多いと思う。サーブ900がブームだった80年代末、担当者自身は高校生でそれほどの思い入れはないが、それでも「尻尾のように黒いウイングが後ろに突き出た、舟みたいなクルマ」は強く印象に残っている。バブル期の東京でも、独特の個性を放っていたものだ。もちろん2006年現在、これから初代900を手に入れて乗るのはいろんな意味で大変だ。トライアンフ直系の直4エンジンや3ATも時代を感じさせる。


北欧家具と暮らすように

一方、現行の9-3カブリオレの完成度は素晴らしいが、サーブらしい理屈っぽさや民俗性はかなり想像力がないと体感しにくい。そもそも新車価格も600万円前後と高く、Uカーとしても手が届きにくい(そもそも流通量が少ない)。いやそれよりも、今なら積極的に98~03年の先代9-3カブリオレを、肩の力を抜いてゆるーく味わうことをお勧めしたい。80年代までの孤高だったサーブの香りを残しつつ、近代化も図られたバランスの良いモデルだ。アンティークの北欧家具なんかを直して使ってしまう人に、ぜひ大切に長く乗ってもらえるといい。


文・写真:DAYS・Niwa

 

 

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