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第44回:名車M3で直6を生(ストレート)で味わえ!

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3シリーズがベースの高性能モデル

名車E36-M3。代表的なカラーに写真のコスモスブラックのほか、ダカールイエローがあった

M3とは、BMW・3シリーズをベースに、BMWのモータースポーツ部門であるM社( M GmbH )が手掛けた高性能モデルだ。今回採り上げるのはE36型・3シリーズクーペがベースの2代目M3(1993年~)。その魅力は何と言ってもM社製の直列6気筒エンジン(S50型ユニット)に尽きる。E36-M3の場合は、前期型が3リッター(286ps)+5速MT、後期型が3.2リッター(321ps)+6速MT、もしくは6速セミAT「SMG」仕様となる。

Mシリーズの歴史

2001年に登場したE46ベースの3代目M3

1986年に登場した初代M3(E30型)は、当時盛んだったグループA規定のツーリングカーレース用ベース車両としてM社によって開発された。ブリスターフェンダー付きの専用ボディに、M社製2.3リッター直4ユニット(195ps)を搭載し、「M」の名を一躍有名にした名車だ。M3はその後も、3シリーズと共に進化。E36ベースの2代目(1993年)、E46ベースの3代目(2001年)と続き、今年(2007年)ついに現行E90ベースでV8を搭載する新型M3が発表される見込みだ。

Mモデルは他に、3.5リッター直6をミッドシップ搭載した「M1」(1978年)や、5シリーズベースのM5、Z3ベースのMロードスター/Mクーペ等がある。ちなみに、独立メーカーながらBMWの認可を受けているアルピナ(Alpina)社とよく比較されるが、同じ高性能でもアルピナは高級・快適なグランドツーリング志向、Mモデルはレース直系のサーキット志向という差がある。(2007.03)

 

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何となく凄みがある

スポイラーの一切無いリアビュー。「M3」のバッジだけが輝く

全長4435mm x 全幅1710mmというサイズは、今やこのクラスではあり得ないコンパクトさ。素人目にはノーマルの3シリーズ・クーペとほとんど見分けが付かないが、クルマ好きが見れば一目瞭然だ。ホイールハウスの隙間の小ささなど、高性能車だけが持つ凄みがある。「M3」の証として、いちおう左右とリア、ホイール、サイドシル等に「M3」のエンブレムを装着。また、見ただけでは分からないが、E36-M3後期型のドアはアルミ製だ(ノーマル比で-24kg)。

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シートだけでも選ぶ価値あり

BMWが当時こだわって採用していたドライバー優先のダッシュボード。純正オーディオはAM/FMカセットステレオ(オプションでCDチェンジャー)

室内は基本的に標準の3シリーズ同様だが、M3専用のバケットシートが実にいい。座面長も伸び縮みする調整自在のシートだが、座り心地、ホールド性ともに文句なし。このシートだけでもM3を選ぶ価値がある。サンプルカーは約10年落ちだが、気になるヤレは、乗り降りの際にこすれるランバーサポート(腰部分)の痛みくらいだ。

内装の質感は今見るとちょっと旧いドイツ車に共通の味があって悪くない。一見マニュアル車に見えるサンプルカーだが、実は珍しいSMG(6速セミAT)仕様だ。

 
試乗したのはM3の中でも、さらに珍しいSMG仕様
速度計は280km/hスケール。回転計は7400回転以上がレッドゾーンで、8000回転まで刻まれる
「M」の証である赤・紺・空色の3本ラインが入ったシートは秀逸。青い糸で縫われたステアリングもM3専用
 

4人乗りが十分可能。「M」でもしっかりトランクスルー

乗り降りのしやすさもクーペとしては良い方だ

元々4ドアセダン用のプラットフォームなので、大人4人乗りは十分に可能だ(いちおう5人乗り)。ヘッドレストはないが、背もたれ自体にけっこう高さがあるし、自然な姿勢が取れるので、小柄な人なら不満なく座っていられる。家まで送っていった人に恨まれない後席だ。

 
ヒンジは室内への侵入を防ぐためダブルリンク式。床に荷物を固定するためのゴム製ストラップが付く
後席のサイドウインドウは隙間を開けることができるポップアウト式で、試乗車はなんと電動。前席からボタン操作する
大人2人がまずまず快適に過ごせるリアシート
 

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20世紀の名機

「BMW M Power」と誇らしげに刻まれた3.2リッター直6「S50」ユニット

E36-M3後期型のエンジンは、3201cc・直列6気筒DOHC・4バルブユニット(321ps、35.7kg-m)。ピークパワーだけではなく、吸・排気のバルブタイミングを無段階で可変する「ダブルVANOS」により、2600~6200rpmというレンジで34.7kg-m以上のトルクを発揮する柔軟性も備える。控えめに言って、20世紀中に作られた量産直6ユニットの最高傑作の一つだろう。

エンジンを掛けた瞬間から精緻に回り始めるその直6は、製造から10年を経た今も「シュヴァーン」と濁りなく吹け上がる。純正マフラーのおかげでそれほど刺激的な排気音ではないが、今やすっかり内外新型車のV6に飼い慣らされた身としては、「ドゥルルル」という音が混ざらないエンジン音が新鮮。6連スロットルバタフライを備えたクルマらしく、アクセルを踏んだ瞬間にウワッと吹け上がるところも期待通りだ。

「M」が開発したセミAT「SMG」

M3と言えど運転はイージーだが、アクセルを踏み込めば刺激的な走り

サンプルカーはM3の中でも数少ないSMG仕様。「SMG」とはBMW M社が開発したセミATシステムで、通常の6速マニュルギアボックスを使用しながら、クラッチ操作と変速を油圧制御で行うものだ。アルファロメオのセレスピードと同種のものだが、コントロールユニットはM社製、ハイドロリック・ポンプユニットはザックス製、6MTギアボックスはゲトラグ製となる。

まずはブレーキを踏んだまま、「0」(ニュートラル)ポジションで、エンジン始動。押せば「R」(後退)、手前に引けば「E」(Easy:オートマチック)で、発進可能だ。クリープはないのでブレーキペダルを離しただけでは動かない。アクセルを踏み込むと、絶妙なクラッチ操作でスムーズに発進する。低速でノロノロと走り続けたり、中途半端なアクセル操作を行うとたまにギクシャクするが、「M3」という先入観からすれば、拍子抜けするほど運転はイージーだ。「E」モードはさっさとシフトアップしてゆくプログラムなので、粘りのあるエンジンとのマッチングもいい。間違いなく、AT限定免許でも乗れるM3だ。

突き抜けるような速さと快音

SMGのマニュアルシフトはBMW流に(マツダ等も同じ)、手前がアップ、奥がダウン。E36-M3のSMGにパドルシフトは備わらない

いかにもM3らしいのが「S」モードだ。アクセルを踏み込んだ瞬間、「E」モードとは打って変わって鋭く吹け上がり、「ファファーン!」と見事にダッシュを決める。変速スピードも速い。ロックキングファクター25%のリミテッド・スリップ・デフを備えるので、その気になれば245/45R17のリアタイヤ(フロントより太い)を振り出すことも造作ない。直線では突き抜けるような加速と快音が畳み掛けてくる。

意外にしなやかなボディの動きはノーマルE36やZ3にも通じるものだが、いざとなれば321psのパワーで振り回せるのがM3の魅力。電子制御で勝手にスロットルを絞ってしまう現代のクルマにはない「自由」のあるクルマだ。0-100km/h加速は5.5秒(6MT仕様)、最高速はリミッターが作動する250km/hを謳う。

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車名:BMW M3 SMG(1997年モデル)
型式:E-M3C
寸法:全長4435mm x 全幅1710mm x 全高1335mm
ホイールベース:2710mm
車重:1470kg
駆動方式:FR(後輪駆動)
エンジン:3.2リッター直列6気筒DOHC・4バルブ
最高出力:321ps/7400rpm
最大トルク:35.7kg/3250rpm





トランスミッション:SMG(6速セミAT)
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/65L
10・15モード燃費:8.9 km/L
タイヤ:前 225/45ZR17、後 245/40ZR17
発売時期:1997年(SMG )
当時の新車価格:773万円(SMG 消費税抜き)

 

試乗車スペック

初年度登録:1997年
販売価格:270万9000円(消費税込み) ※保証なし 整備渡し
走行距離:38,000km
ボディカラー:コスモスブラック
備考:レザーシート サンルーフ CDチェンジャー
試乗日:2007年2月

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エンジンは基本的に心配不要

エンジンの耐久性はお墨付き。このエンジンは構造が割とまだシンプルだった頃のもの

M3のエンジンは信頼性・耐久性ともに問題なく、通常の使い方とメンテナンスを守ったものなら10万km以上でも問題ないはずだ。アイドリングや軽い走行で、異音のチェックができればいいだろう。発進時にはクラッチのヘタリ、曲がり角や段差では足回りからの異音の有無を確認しておきたい。

むしろ気になるのは、E46型に比べると剛性の物足りないシャシーの方か。E36自体の基本設計が旧いので致し方ないが、その点ではなるべく走行距離の少ない個体を選びたい。

 

メンテナンスコストは性能相応と覚悟すべし

ブレーキ系、クラッチ、オイル等の消耗品は早めに交換したい

ブレーキパッド&ブレーキディスク、クラッチの消耗は早めと考えるべき。各種オイルの交換も早めが基本だ。リッター100psの超高性能エンジンゆえ、メンテナンス費は惜しみなく掛ける気で購入に臨みたい。そうするだけの価値があるクルマだ。

E36型のSMG(SMG-I)に関しては、初期モデルの発売直後にギクシャク感などのマイナートラブルがあったようだが、現在流通するものはほとんど対策品に変えられており、今回のサンプルカーも全く問題ないと感じた。いちおうエンジンルーム右前の「ハイドロリック・ポンプ・ユニット」(アクチュエーター)のオイル漏れの有無や、クラッチのつながり具合はチェックしておくのがいいだろう。

 

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E36-M3を手に入れるラストチャンス

この時代のM3を見ると、現代のハイパフォーマンスカーが装飾過剰にも思えてくる

E36型M3(日本への正規輸入車)は前期型の3.0(1994~96年)、後期型の3.2(1996年~)、そして後期型のSMG仕様(1997年~)の3つに大別できるが、2007年3月現在で、新しくても7年落ちと、すでにBMWアプルーブドカー(新車登録後6年以内)の対象には原則としてならないモデルだ。逆に言えば、コンディションの良いE36-M3を手頃な価格で手に入れるならここ数年が勝負となる。

お勧めはやはり排気量が211cc増えて3.2になり、ギアも1速増えて6速になった後期型だ。年式なら97~99年式あたりで、相場は200万円台後半~300万円台が目安となる。気になるE46-M3は、500万台~600万円台とまだまだ高いので、ここでは別の選択肢としてE36-M3と同じエンジン(ただし5MT)のMクーペ(1998年~。相場は300万前後~400万円前後)を挙げておきたい。

 
オートプラネットに並ぶBMW、そしてMモデル

いずれにしても、実用性も考えつつ、フロントエンジン・リア駆動の直6クーペモデルを選ぶなら「M」以外に選択肢はないだろう。BMWが好き、FRが好きな人は、思い切って手に入れて欲しい。(2007.03)


文・写真:DAYS・Niwa


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