第43回:「SUV」の固定概念を打ち破ったビーエム製ヨンク
BMWが考える理想のクロスロード・ビークル
北米市場を中心としたSUVブームを受け、BMWが開発したクロスロード・ビークル、X5。主にアメリカのBMW工場で生産される同車は、2000年10月に日本発売がはじまった。4.4リッターV8エンジンと3.0リッター直6エンジンの2種類がラインナップされ、電子制御式のエア・スプリング機構を採用するなど、随所に独自のテクノロジーが投入されている。その結果、従来のSUVの常識を覆す卓越したオンロード走行性能を確保している。その後の高級SUVブームの発端となった名車だ。
SUVならぬSAVを主張する新ジャンルのモデル
かつてSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)といえば、ハイラックスやパジェロ、あるいはレンジローバーといった、オフロード走破性能を高めたモデルを指すのが一般的だった。BMWが開発したX5というクルマは、「SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)」と表現されている。オンロード走行性能をとことん高めることで、日常的な使い勝手も高まり、世界的なブームを巻き起こして今に至る。ポルシェ・カイエンやVWトゥアレグ、あるいはハリアー、ムラーノなど、様々なメーカーからこのジャンルに向けたモデルが続々とリリースされているのはご存知の通りだ。BMWからは、5シリーズをベースに開発された「X5」のほか、3シリーズをベースとする「X3」もリリースされており、いずれも高い人気を博している。
2007年にフルモデルチェンジ実施
BMW5シリーズをベースに開発されたX5は、BMWお得意の高級サルーンづくりのノウハウがそのまま活かされている。センターデフを搭載したフルタイム4WDシステムは、通常時のトルク配分を後輪駆動に近いフロント38%・リヤ62%とし、オンロード走行性能を高めている。トランスミッションはティプトロニック式5速ATを搭載する。日本国内での正式リリースは2000年に開始され、BMWらしい優れた走行性能は大好評となった。その後、1~2年おきに細かなマイナーチェンジが繰り返され、2006年8月には待望のフルモデルチェンジが行われた。日本への導入はおそらく2007年中と予想される(2007年2月現在)。

5シリーズ(E60)をベースに四輪駆動化
伝統のキドニーグリルをはじめ、BMWらしい正当的なフロントフェイスを備えるX5。5シリーズのワゴンボディをそのままリフトアップしたような印象だ。ヘッドライトの造形は、どことなくE36っぽい。リアのコンビネーションランプもいたってオーソドックス。アルミホイールは17インチと、このクラスにしては少々控えめだ。ピラー部にはカーボン地のようなデザインが施され、精悍な印象を強めている。全体的に、奇をてらわず丁寧に作り込んだ各部の造形が、ボディ全体の質感を高めている、といったエクステリアだ。X5の場合、デザインに関して分かりやすい“華”はない。その代わりに、何年でも乗り続けていられるような、飽きのこないデザインを備えている、といえそうだ。
室内は高級サルーンの雰囲気そのまま
アイポイントが高い点を除けば、しっとりと落ち着いた、それでいてしゃきっとしたシャープなインテリアの雰囲気はBMWの高級サルーンそのもの。インパネやステアリング、シフトノブ等にシルバーパネルを効果的に配置することで、室内をモダンな雰囲気に仕立て上げている。ダッシュボードにはアルカンタラ素材が使われるなど、主張しすぎない控えめな高級感も心地いい。シートのサイズや、電動シートのポジションレンジも申し分なし。全般的にSUVとは思えない(というよりスポーツワゴンそのものだ)適度なホールド感が、ドライビングへの集中を促してくれる。後部座席のスペースも、まさに5シリーズのサルーンと同様の快適性を備える。センタートンネル部には後部座席用カップホルダーを備えるなど、後席に座るゲストへの気配りもうれしいポイントだ。
大きなラゲッジスペースは使い勝手良好
後部ラゲッジドアは上下に二分割するタイプ。上のウィンドウ部だけを開けることもできるから、ちょっとした荷物の出し入れ時にたいへん便利だ。またさりげない工夫だが、上下分割ドアの下側ドアを開くと、床面パネルがドアの隙間を隠すようになっているのもありがたいポイント。ラゲッジスペースを覆うトノカバーも欧州車らしくしっかりした作りになっている。ホイールハウスの出っ張りもあまり気にならないレベルで、大きな荷物でもじゃんじゃん積み込める空間が確保されている。後部座席は6:4の分割可倒式だから、実用車としての使い勝手はとても良好だ。
ハイトな四駆らしからぬスポーティな走り
俊敏な加速や、驚くほど安定したコーナリング性能など、いわゆる一般的な意味合いにおける「SUV」とは一味もふた味も違うピリッとスパイスの効いた走行性能に、まずは拍手喝さいを送りたい。試乗したのは3.0リッター直6モデルだが、ボンネットを開けてみると、フロントミッドに縦置きされたエンジンがぎりぎりまで低くマウントされ、ワゴンボディを単にリフトアップしただけではないことが分かる。走行性能をとことん追求するBMWのこうした姿勢には、ある種の凄みすら感じる。サスペンションはフロントがダブルジョイント・スプリング・ストラット、リヤにはインテグラル・アーム式を採用。これに電子制御エア・スプリングが組み合わされ、コーナリング時のロールをきっちり抑えてくれる仕組みだ。フルタイム4WDだが、通常時のトルク配分は38:62と、後輪のトラクションを重視するセッティングだ。ティプトロニック5ATはスムーズで扱いやすいが、欲を言えば6ATが欲しいところ。
残念ながら今回は試せなかったが、X5は悪路走破性能も侮れない。搭載される「HDC(ヒル・ディセント・コントロール)」は、急な下り坂でクルマが自動的にABSを効かせ、速度を5~10km/hに保ってくれるシステムだ。また、各輪のブレーキを個別に制御することでLSDと同様の効果が得られる「ADB-X(オートマチック・ディファレンシャル・ブレーキ)」なども採用されている。
車名:BMW X5 3.0iスポーツパッケージ(2001年モデル)
型式:GH-FA30
寸法:全長 4665mm x 全幅1870mm x 全高1740mm
ホイールベース:2820mm
車重:2080kg
駆動方式:フルタイム4WD
エンジン:3.0リッター直列6気筒DOHC
最高出力:231ps/5900rpm
最大トルク:30.6kg/3500rpm
トランスミッション:5AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/93L
10・15モード燃費:7.2 km/L
タイヤ:235/65R17
発売時期:2001年1月
当時の新車価格:645万円(消費税別)
試乗車スペック
初年度登録:2001年
販売価格:396.9万円 (消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:32,000km
ボディカラー:トパーズブルー
試乗日:2007年2月
重大なトラブルは皆無に等しい
試乗車は2001年式の6年落ちモデルだが、ボディ表面の劣化はほとんど気にならないレベル。ボディ剛性もたいへん高く、がっしりと安定した印象だ。ちなみにX5はセンターデフ付きのフルタイム4WDシステムを採用しているが、デフロック機構を持たないため、通常のクロカン四駆と比べてメカにかかる負荷は少ない。したがって、四駆ならではの機械的な劣化は(比較的)少ないと思われる。エンジンや足回りなどの駆動系トラブルは皆無といっていいが、定期的なメンテナンスを施された車両を選べればベストだ。また、走行距離が3万~5万キロ程度の車両になると、運転席シートのヘタリが気になる、という方もいるかも知れない。このあたりは予算との兼ね合いになるから、自分なりの妥協点を探っていただきたい。
二代目X5が登場した今、初代は狙い目
二代目X5は2006年8月に本国で発表されている。これを受け、日本国内でのユーズド市場では、X5の価格が下落中だ。初代X5を所有する現オーナーにとって、リセールバリューが比較的高い今のうちに売却を考えている方は少なくない。つまり、X5のユーズド在庫は現在豊富で、理想に近い1台を探しやすい状況にあるといえる。しかも二代目X5の日本デリバリーがはじまれば、ユーズド市場価格はさらに下落するはずだ。ちなみに同年式4.4リッターV8モデルは3.0リッター直6モデルよりも約150万円ほど高くなるが、いずれにせよ購入するなら2007年は重要な年になる。たとえば登録済みの未走行車両、新車保証期間内(BMWは2年)車両など、限りなく新車に近いコンディション車両を選ぶのも、モデルチェンジイヤーならではの賢い選択といえそうだ。
文・写真:DAYS・Yasuhara


