フォルクスワーゲン ボーラ V5
掲載日 : 2007年05月15日
第30回:ゴルフベースのプレミアムセダン、ボーラ!
ボ~ラ♪ 君はそんなにスポーティ。
いま君を走らせるのはステアリングを握る僕
このV5エンジンに、この愛を捧げる
ジェッタ(I、II)→ヴェント→ボーラ(→再びジェッタ)
4代目ゴルフをベースに3ボックスセダンとしたのがボーラ。初代ゴルフのセダン版であるジェッタ(Jetta、通称ジェッタI 1979年~)、2代目のジェッタII(1984年~)、3代目のヴェント(Vento、1992年~)を経て、4代目にボーラ(Bora、1998年~)となったわけだが、これらは全て「風」を表す言葉。ボーラとはアドリア海に吹く北風のことで、マセラティにも同名のV8ミッドシップスポーツ(1971~78年)がある。なお、再び5代目(日本発売は2006年)でジェット気流を意味する「ジェッタ」の名が復活したが、北米では初代からずっとジェッタだ。
プレミアム性を強めたボーラ
歴代モデルで共通するのは、一言で言えば「巨大なトランクを備えたゴルフ」であること。特に初代から3代目まではそうだが、4代目のボーラでは「プレミアムコンパクトセダン」という性格が一際強化されたのが特徴だ。まずルックスでゴルフ色がかなり薄まり、中身の点でも2.3リッターV型5気筒の採用など、ゴルフとの差別化がずいぶんと図られている。
直4、V5、V6の3モデル
ボーラが日本で発売されたのは1999年10月。ゴルフと同じ2.0リッター直4(116ps)、およびボーラ専用の2.3リッターV5(150ps)でスタート。2000年11月に2.8リッターV6(204ps)+「4モーション」(4WD)+6MTモデルが加わって3モデルになった。2001年9月のマイナーチェンジで、V5のATが4速から5速に格上げされ、馬力も170psに向上している。そして2006年2月に復活したジェッタに跡を譲るまで、世界で660万台以上が販売された。

地味カッコいい
ボディサイズは全長4375mm×全幅1735mm×全高1445mm。ゴルフIVより220mm長いが、幅は同じ。なだらかに下がるCピラーとルーフラインのおかげか、全高はわずかに10mm低い。「ゴルフ“セダン”」史上、最もゴルフと差別化されたフロントフェイスは独特のシンプルさと鋭さがあって、地味カッコいい。ホイールベースの2515mmはゴルフと同じだ。
リアビューはパサートセダンとよく似たイメージでちょっと無個性だが、ドイツ車らしい塊感やフェンダーの張り出し、この頃のVWアウディがこだわった継ぎ目の小ささ、それに今回のサンプルカーではリアの「V5」バッジが穏やかにプレミアムとスポーティを主張する。V5のタイヤは205/55R16サイズだ。
高い質感、機能的なレザーシート
4代目となって質感を2段階くらい上げたゴルフ同様、ビシッと樹脂パーツを組み上げたボーラのインテリア。アクセントにウッドパネル(ウッド「調」ではない)が付く。標準モデル(2.0リッターNA)の内装カラーは黒一色のほか、黒とベージュ生地の2トーンもあるが、V5やV6・4モーションは写真のような黒が圧倒的に多く、レザーシートを標準装備する(受注でベージュレザーもあった)。サンプルカーの内装は4年落ちの走行2万km余。目立った傷もヤレもなく、コンディションは素晴らしくいい。
特に気に入ったのが、サポートのしっかりしたレザーシートだ。レカロ風の形状と「骨のある」フレームが体をしっかり支えてくれるし、ポジションもとても合わせやすい。実はV6・4モーションのシートは「RECARO」製だが、このV5のシートはそうではない。しかし、だとしてもゴルフIII(標準グレード)のシートでは2時間で腰が痛くなる担当者も、このシートなら大丈夫だと感じた。
椅子のように座るリアシート
しっかり椅子のように座れる後席。ゴルフIIIまでは割とルーズな座り方も出来たが、この世代のVW車は、ポロからトゥアレグまでダラッとした姿勢を許してくれない。また、印象としてはちょっとタイトで、足元の狭さを指摘する声もある。またヘッドレストは二つしかなく、中央席のシートベルトは2点式。つまり基本的に2人掛けを想定しているようだ。
ドアの開閉音はVWらしく「バチン!」と無愛想かつ重厚な音で締まる。決して高級車風ではないが、安心感があると言えばある。センタートンネルの上には収納式のドリンクホルダー、リアウインドウには手動式サンシェイドが備わる。
歴代で最小?のトランク
「ゴルフのセダン=広大なトランク」と連想する人は多いはずだが、ボーラのそれは容量455Lと決して広くない。なにしろ初代ジェッタは520L、2代目は600L前後、そしてヴェントでは500Lもあったのだ。ボーラではゴルフバックの横積みも難しい。
そうは言っても、ストラット(サスペンションの支持部分)の張り出しは少なく、トランクリッドのアームもコンパクトに折り畳まれるダブルリンク式と、やるべきことはやってある。奥行き、幅、共にほぼ1メートルあり、さらにダブルフォールディングでリアシートを畳めば、小柄な大人が寝そべることも無理ではない。ただ、最新のジェッタが527Lと再び巨大になったところを見ると、やはりトランクの広大なセダンを求める声は今も強いようだ。
4輪車ではこのボーラだけ
ボーラV5のV型5気筒SOHCエンジンはゴルフIII時代からある狭角V6のうち、1気筒を取り去ったもの。その分エンジンは軽量・コンパクトになり、燃費もいいというわけだ。ちなみにV型5気筒というレイアウトはかなり珍しく、市販4輪車ではVWの市販車(日本ではボーラのみ)、オートバイではロードレースの最高峰であるMotoGPのホンダ「RC211V」(2002~06年)くらいしか採用例がない。
打てば響くV5
さて、ボーラV5は2001年のマイナーチェンジで、出力が150psから170psへ、変速機が4ATから5AT(ティプトロニック=マニュアルモード付)へと大幅に進化している。そのせいか2002年モデルのサンプルカーを走らせた印象は予想以上に「速い!」。ボア・ストローク(81.0×90.2mm)はV6・4モーションとほとんど同じだが、2.3リッター自然吸気でこれだけ活発なエンジンはそう多くはない。パワーウエイトレシオは約8kgで、日本の路上では速すぎず遅すぎず。市販バイクのV4と4輪車のV6のちょうど中間のようなグアーンという独特のサウンドで、打てば響くように加速してくれる。実用的で、なかなかエモーショナルなエンジンだ。個人的にはホンダが昔インスパイア等で使った直列5気筒(2.0もあったが2.5の方)を思い出した。
高い剛性感、優れた直進安定性
乗り心地は基本的にゴルフIVとよく似ているが、セダンボディだけに剛性感は高く、荷室付近からの音もしっかり遮断されている。低回転ならエンジンは十分に静かだ。足回りはもちろん固められており、俊敏な身のこなしが気持ちいい。高速では巌(いわお)のような直進安定性が味わえる。
唯一気になったのはアイドリング時の振動だ。新車時には無かったもので、この点は後のチェックポイントで触れたい。
車名:フォルクスワーゲン ボーラ V5(2002年モデル)
型式:GF-1JAQN
寸法:全長4375mm x 全幅1735mm x 全高1445mm
ホイールベース:2515mm
車重:1380kg
駆動方式:FF(前輪駆動)
エンジン:2.3リッターV型5気筒SOHC
最高出力:170ps/3300rpm
最大トルク:22.4kg-m/3300rpm
トランスミッション:5AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L
10・15モード燃費:10.2 km/L
タイヤ:205/55R16
発売時期:1999年(BORA ※V5含む)、2001年(マイナーチェンジ版)
当時の新車価格:341万2000円(2001年モデル V5、消費税抜き)
試乗車スペック
初年度登録:2002年
販売価格:180万6000円(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:21,000km
ボディカラー:ブラックマジック・パール・エフェクト
備考:レザーシート(シートヒーター付)、キセノンヘッドランプ、ワンオーナー
試乗日:2006年8月
弱点はゴルフと似ている
輸入車の中でも信頼性は国産車並みと言われるゴルフ系だが、パワーウインドウのいわゆる「窓落ち」は、この第4世代でも生じるトラブル。10年乗っても(つまりゴルフIIIでも)落ちないものは落ちないのだが。電動サンルーフ付の場合は、その動作不具合やドレンからの雨漏り、そして自動防眩ミラーの不具合も多いようだ。なおボーラは高年式モデルが多いので、修理の前にメーカー保証の無償修理が効くかどうか確認しておこう。これは意外と忘れがちなことだ。ボディは12年間、錆穴保証が付く(修復したものは除く)。
様々な対策や改良が行われている
V5でノッキングが出るようならメーカーが行っているECU(エンジン制御コンピューター)のバージョンアップを試してみたい。また、大きな振動やパワーダウンを感じたらイグニッションコイル回りを疑ってみよう(対策品があるようだ)。今回のサンプルカーではアイドリング時に独特の振動が出ており、エンジンマウントが原因のような気もするが、他の要因も考えられるのでここでの即断は控えたい。これは簡単にチェックできるものなので、試乗の際に覚えておこう。
購入時のポイントは、とにかくコンディションのいいものを信頼できるお店で買うこと。これに尽きる。結果的にその方が安上がりになる可能性が高く、しかも煩わしい思いをしなくて済む。
クルマ好きに勧めたい掘り出し物
ボーラには3モデルあるが、V6・4モーションは4駆の6MTと少々マニアックなクルマ。担当者自身も試乗経験がないし流通台数も少ないので、ここでは2.0リッターNAとV5に話を絞りたい。で、どちらがお勧めかと言えば、無難にごく普通のVW製セダンが欲しい人には2.0NAを、クルマ好きで「乗り味の違いが分かる人」にはV5をお勧めしたい。なにしろ先にも書いたように、V5エンジンは日本ではボーラでしか味わえないし、直4よりパワフルでスムーズ、V6より活発・軽快という魅力がある。いま購入するならサンプルカーのようなV5の後期型、170ps・5ATモデルをお勧めする。不動産やクルマに掘り出し物はないというが、これはそういう物件に近いクルマだ。
文・写真:DAYS・Kei Niwa


