第35回:イタリアン・デザインの傑作!クーペ・フィアット
フィアットが世に問うた、パワフルFFスポーツ
1993年に本国デビューしたフィアット社製のクーペ・モデル。その名もすばり「クーペ・フィアット」と命名され、1995年に日本での販売が開始されている。他の誰にも似ていない斬新なフォルムは、当時も今も注目度抜群。搭載される2.0リッターエンジンはデビュー当初の4気筒から5気筒モデルへと進化。日本市場にはインタークーラーターボ装着モデルのみが正規輸入された。駆動方式はFF。220馬力に物を言わせ、パワフルで豪快な走りが特徴だ。
斬新すぎる?弾けたデザイン
かつては「イタリアを牛耳る企業」とまで言われた巨大コングロマリット企業、フィアット。パンダ(1980~1999年)やウーノ(1990~1993年)、ティーポ(1990~1994年)などの大衆車が人気を博す中、クーペフィアットは、より斬新なデザインを持つミドル級のスポーツクーペとして開発された。デザインはフィアット社内デザインチームとピニンファリーナの共同作業。日本には1995年から発売が開始されたが、アクの強い個性的なデザインのせいか、お世辞にも人気モデルとは言えなかった。一部の根強いファンから支持されるカルトカー的要素の強いモデルだったが、2001年、折からのフィアット社の経営不振の余波を受け、生産・販売が終了している。
主なマイナーチェンジはエンジンのみ
フィアット・ティーポのシャシー&エンジンを流用する形で開発されたクーペ・フィアットは、1993年の初代モデルから2001年の最終モデルにいたるまで、特に大きな変更点はない。唯一のビッグマイナーチェンジは1996年、それまでの4気筒エンジンから5気筒20バルブエンジンにスイッチした点。これにより最高出力は220ps、最大トルクは31.0kg-mとなり、よりパワフルな走りを楽しめるようになった。
現車は最終式(2001年式)の「ターボプラス」というグレード。元々はノーマルと6速MTのリミテッドエディションの2グレードで展開していたが、モデル末期にはリミテッドエディションの装備を引き継いだ「ターボプラス」というグレードが登場している。

いまでも斬新さを失わないフォルム
クーペ・フィアットの場合、写真やカタログで見るよりも、「実物のほうがでかい」という印象を与えるクルマだ。くさび形をした戦闘的な低いノーズと、そこに備わったダブルバブル形状のヘッドライト、ボディサイドに刻まれたシャープなエッジラインが、クーペ・フィアットの印象を決定づけている。斜めにスパッと切り落としたような後部オーバーハング部のフォルムは、デビュー当時は非常に斬新だったが、いまでもその新鮮さは失われていない。
ボディサイズは全長4250mm、全幅は1765mm程度と、決して“コンパクト”ではないが、各部のデザイン処理が非常に巧みなため、写真で見た時の印象がコンパクトに感じられるのだろう。全高は1355mmと、けっこう背も高い。それでもクーペとしてのフォルムを破綻なく実現しているあたり、さすがはイタリアン・デザインといったところか。
ピニンファリーナのデザインを味わい尽くす
室内デザインは主にピニンファリーナが担当。イタ車ファンなら一目置かずにはいられない、泣く子も黙るピニン様だけに、室内に仕掛けられた数々の演出は心憎いばかり。特筆すべきはインパネからドアトリムまで連なるボディ同色パネルだ。多くのクルマは、いったんクルマに乗り込んでしまうと、自分が乗っているクルマの色など忘れてしまうことが多い。自分が乗っているクルマの色を知覚し、それを意識しながら走ることの楽しさや開放感を、ピニンファリーナは教えてくれる。
パネル中央部にはフェラーリ同様、ピニンファリーナのエンブレムがあしらわれている。オーナーは運転席にすわるたび、このクルマを所有する喜びをしみじみ実感するだろう。もうひとつ、フェラーリと同じといえば、イグニッションスタートがプッシュボタン式になっているのもしゃれた小技だ。
レザーのセミバケットは座り心地良好
シートはレカロ製のセミバケットタイプとなり、ブラックレザーを赤いステッチで縫製した高級感のある造り。サイズもゆったりと大きめでホールド感も良好だ。乗車定員は4名だが、後部座席は決して広くはない。ちょい乗り程度なら何とか我慢できる、というレベルだろう。スポーツクーペという性格から言っても、後部座席は手回り品スペース、と割り切るのが正解だ。
ただしラゲッジルームは十分な容量を確保している上、左後部座席の背もたれを倒せばトランクスルーにもなるから、日常の使い勝手は決して悪くはない。
パワーでぐいぐい引っ張る走り
前方視界が広く、シートポジションも自然で運転しやすい。2リッターターボエンジンは220馬力で、3000回転を超えたあたりからパワーがもりもり湧き上がってくる。いかにもターボらしい分かりやすい味付けは、このクルマに限って言えば好印象だ。ただし加速時に若干のトルクステアが出る。これはクーペ・フィアットのデビュー当初から指摘されていたことだが、ティーポベースのFF車という性格上、フロントヘビーに偏った重心がトルクステアの一因かとも思われる。この辺はある意味、クーペ・フィアットの“味”といえなくもないので、あまり細かいことは気にせず、ラテン車オーナーらしくおおらかに笑って乗るのが吉。
ちなみに試乗車に装着されていたタイヤはミシュランのパイロットスポーツ。いいタイヤだが少々使い込まれた感もあるので、購入時はさくっとニュータイヤに履き換えたい。タイヤの性能の良し悪しは、クルマを運転する楽しみを大きく左右する。
それと、シフトストロークはもう少しショートでもいいかもしれない。シフトノブをもう少し短くすれば、シフトフィールはもっと良くなる印象だ。
車名:COUPE FIAT TURBO PLUS(2001年モデル)
型式:GF-175A3
寸法:全長4250mm x 全幅1765mm x 全高1355mm
ホイールベース:2540mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:2.0リッター直列5気筒20バルブDOHCターボ
最高出力:220PS/5750rpm
最大トルク:31.0kg-m/2500rpm
トランスミッション:6MT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/63L
10・15モード燃費:- km/L
タイヤ:225/45ZR 16
発売時期:1999年11月
当時の新車価格:389万円(消費税抜き)
試乗車スペック
初年度登録:2001年
販売価格:165.9万円 (消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:56,000km
ボディカラー:パールホワイト
試乗日:2006年11月
重要なのは購入ショップのサービス体制
イタリア製スポーツカーということで、もっともに気になる点はトラブルの頻度と度合いだろう。ウィンカーやパワーウィンドウなど電装系の細かいトラブルは、正直いって「ない」とは言い切れないのが実情だ。となると、むしろ重要なのは車両コンディションよりもショップ選び、という話になってくる。オートプラネット名古屋は、同系列でフィアット正規ディーラーを運営しているから、消耗品を中心とした純正部品の調達は特に問題ないはずだ。さらには納車前整備のレベルや、購入後のアフターサポートの充実ぶりも事前にチェックしておきたい。
ちなみに購入後は、特にエンジンオイルの管理を徹底すること。ターボ車である以上、オイル交換は「ちょっと早いかな」と思うくらいのタイミングで継続的に実施したいところだ。
本気で欲しい人なら、いますぐ買うべき
基本設計は90年代前半と古いが、生産終了間際の最終モデルなら、重大なトラブルは発生しにくいはず。とはいうものの、トラブルフリーの最新モデルとは比較しないほうが精神衛生上好ましい。できるだけ走行距離が少なく、車両価格150万円以上をつけていれば、いまのところ上等なコンディションと言っていいはずだ(2006年11月現在)。
生産終了からすでに5年が経過し、当然ながらユーズド市場のクーペ・フィアット在庫は減る一方である。国産メーカーが逆立ちしても作れない独創的なフォルムと、ピニンファリーナの美意識が込められたスタイリッシュなインテリア。そんなクーペ・フィアットを手に入れたいと思う方は、なによりもまず、素早い決断が必要なのかも知れない。
文・写真:DAYS・Yasuhara


