メルセデス・ベンツ G320
掲載日 : 2007年05月23日
第38回:質実剛健! メルセデスの誇る“本物のヨンク”
虚飾を排した無骨なボディ、四駆のベンチマークカー
1979年のデビュー以来、現在に至るまで大きな変更もなく生産が続いているメルセデス・ベンツの本格四輪駆動モデル。デビュー当初は「ゲレンデバーゲン」という名称が与えられたこのモデルは、とにかく頑丈でシンプルなボディが特徴。特に悪路における抜群の走破性能は世界中のGクラス・ユーザーに高く支持されている。もともとはNATO軍用車として開発がはじまったという経緯もあり、タフなオフロード・ビークルとしてのポテンシャルは非常にハイレベルだ。
25年間変わらない基本構造は、メルセデスの自信の表れ
悪路における走破性能をとことん高めたGクラス(ゲレンデバーゲン)の歴史は、四半世紀以上にも及ぶ。その間、エンジンのパワーアップや安全性能の進化などを繰り返しつつも、スチール製ラダーフレーム上にボディを載せた、いわゆるセパレートフレーム構造は基本的に変更なし。サスペンションも4輪コイルスプリング式リジットアクスルをデビュー当初からずっと採用し続けている。フロント、リア、センターの3つのデファレンシャルロック機能や235mmの最低地上高を確保するなど、オフロード性能を追求する生真面目な姿勢も終始一貫している。2001年には内装の質感が大幅に高められ、ラグジュアリーな雰囲気を楽しめるようになったほか、2002年にはESPやABSなども実装。メルセデスらしく安全性への真摯な取り組みもまた、Gクラスの魅力のひとつだ。
オンロード走行性能もぬかりなし
1975年から生産を開始したGクラスは主にショートとロング、ふたつのバリエーションが存在する。ショートボディの場合、1998年より3.2リッターエンジンが直列6気筒からV型6気筒へと変更され、パワーは215馬力となった。ショートボディには一時期、カブリオレタイプもラインナップされていたこともある。
一方のロングボディには5リッターV8エンジンを搭載。こちらは296馬力と強大なパワーとトルクを誇る。
オフロード性能のみに目が行きがちなGクラスだが、そこはドイツ製だけあって高速道路のクルージングも難なくこなす。想像以上にオールマイティな性能は、さすがはメルセデスといったところ。ちなみに2006年時点でショートボディはラインナップから消滅し、現在は5ドア・ロングボディのみが販売中だ。

シンプル&無骨なカクカク・ボディ
英国・レンジローバーと並ぶトップ・オブ・オフロードビークルとして君臨してきたGクラスだが、エクステリアのデザインは、1979年のデビュー以来、大きく変わっていない。平面パネルを組み合わせた無骨でシンプルなデザインは、虚飾を排した軍用車を連想させる。ボディの堅牢さは言うまでもなく、ドアは頑強なヒンジタイプを採用するなど、極限域での過酷な使用にも耐えられる設計構造になっている。フロントウィンカーは岩やブッシュにヒットすることを想定し、フェンダー上部のボンネット面に配置。フロントマスクもデザイン的な要素はほとんどなく、アプローチアングルを確保すべくバンパーを高めにマウントするなど、とことん機能優先主義。このそっけなさや無骨さこそ、Gクラスのアイデンティティだ。ミリタリー系グッズにも共通する機能優先主義のオーラを放つ1台である。
ふるきよきメルセデスの懐かしい香り
Gクラスのインテリアは、クルマの王様として世界に君臨したメルセデス・ベンツのオイシイ部分を濃厚に受け継いでいる。質の高い本革を使ったシートは座面が平たく、まるで昔のW124あたりのメルセデス車のような、ゆったりとした乗り心地を堪能できる。ドアパネル内側に張り込まれた本革の縦じわが、室内の高級感をぐっと高めている。センタートンネル上部にはデファレンシャルのハイ&ロー切り替えシフトが備わり、いざという時は超ローギアードに切り替えて悪路を脱出、という仕掛けだ。フロントウィンドウ越しの眺めも良好。角ばったボディは見切りがいいため、想像以上にクルマがコンパクトに思えるのも好印象だ。これなら小柄な女性でも無理なく運転できるだろう。
後部座席のすわり心地も良好
ダッシュボードに目をやると、各種スイッチ類も人間工学に基づいた使いやすいレイアウトで、迷わず操作できるのがメルセデスの素晴らしいところ。控えめなウッドパネルも大人っぽくていい感じだが、最新のクルマを見慣れた目で見ると、全体的に若干の古臭さを感じるかも知れない。
また、フロントシートもさることながら、リアシートの座り心地も素晴らしい。足元のクリアランスも大きく確保され、大柄な大人4人が快適に座れる作りになっている。
それにしても、オフロードの走破性を徹底的に高めつつ、人間の感性や乗り心地を重視したインテリアの作りの良さは、さすがメルセデスというほかない。往年の角目ベンツの上質極まりない乗り味を覚えている方なら、Gクラスに乗り込んだ瞬間、昔の感覚がフラッシュバックするかも知れない。
ちなみにトランクスペースだが、ロングボディは十分な容量が確保されているが、ショートボディはさすがに大きくはないので念のため。
ゆるやかな加速に、ゲレンデバーゲンの風格を見たり
試乗したのはV型6気筒3.2リッターエンジン搭載のショートボディ。約2.2トンのボディを215馬力のパワーで推進させるわけだが、パワーウェイトレシオ値を見るまでもなく、決して俊敏な加速とは言いがたい。とはいえ、ボディの見切りや取り回しの良さは想像以上。これならシティ・ビークルとして街中でも十分使えるはずだ。いったん走り出してしまえば高速走行も軽々とこなす。騒音レベルも小さく、車内はなかなか快適だ。ステアリングを急激に切り過ぎるとボディがぐらりと揺れるが、オフロード走行を想定したサスストロークを確保しているがゆえの挙動であり、さすがにこれは許容範囲としたい。
残念ながら悪路での試乗はできなかったが、前後と中央にある3つのデフをそれぞれスイッチひとつでロック可能、という事実ひとつを見ても、走破性能の高さは容易に想像できるだろう。特にウィンターシーズンに凍結した山間部などを走る際は、非常に頼もしい存在に違いない。
車名:Mercedes-Benz G320 SHORT(2000年モデル)
型式:GF-G320S
寸法:全長4040mm x 全幅1810mm x 全高1965mm
ホイールベース:2400mm
車重:2130kg
駆動方式:フルタイム4WD
エンジン:3.2リッターV型6気筒SOHC
最高出力:215ps(158kW)/5600rpm
最大トルク:30.6kg・m(300N・m)/2800~4800rpm
トランスミッション:5AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/96L
10・15モード燃費:7.0 km/L(未公表)
タイヤ:265/70R 16
発売時期:2000年6月
当時の新車価格:790万円(消費税別)
試乗車スペック
初年度登録:2000年
販売価格:453.6万(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:54,000km
ボディカラー:ブリリアントシルバー
備考:社外アルミホイール(speedline製)
試乗日:2006年12月
ボディは頑丈。迷った時は試乗すべし
とにかく堅牢なことで有名なセパレートフレームを採用するGクラス。5万4千キロを走行した今回の試乗車の場合でも、シャシーはミシリともいわない剛性を保っていた。新車価格で税込み800万円オーバーのクルマである以上、前オーナーが無茶な運転をするケースは稀で、良好なコンディションを保った車両は比較的多いはずだ。
また、四駆ならではのチェックポイントとしてよく言われるのが、ボディ下回りを見ればオフロード走行歴が分かる、というもの。確かに、硬い岩がボディアンダー部にヒットした痕跡などを見つけることはできるかも知れないが、だからといって「ダメ」とも言い切れないのが中古車選びの難しいところ。購入に迷ったら、ショップの方にお願いして試乗させてもらうのがベターだろう。
ちなみに、ロングボディなら今でも新車として購入することはできるが(G500ロング、G55AMGロング)、コンパクトな3.2リッターエンジン搭載のショートボディ狙いの方は、ユーズド市場を注意深くウォッチするしかなさそうだ。
価格と年式がきれいに比例するモデル
Gクラスというクルマは、オーナーに著名な芸能人が多いことでも知られている。タフでワイルドな外観と圧倒的な悪路走破性を誇りつつも、室内はメルセデスの正統な文脈に則った快適空間が広がる。もちろん高速道路も、追い越し車線を余裕で飛ばせるハイパワーを備えている。
そんなGクラスをユーズドで狙う場合、ほぼ毎年のように些細な改良&装備追加が行われていることに注意していただきたい。生産年が新しくなるにつれ、機能や装備が少しずつ充実し、その分値段も高くなる。たとえば2002年モデル以降はESP(スタビリティコントロール)装備、2004年モデル以降はウィンドウエアバッグ装備、という具合だ。サイフと相談しつつ、妥協点を見いだすしかないわけだが、いっそ2000年以前のモデルをリーズナブルに入手する、という手もアリだろう。前述の通り、Gクラスのシャシー剛性は素晴らしく、少々古くても、その魅力は十分に味わえるはずだ。
文・写真:DAYS・Yasuhara


