第23回:初代を彷彿させるほんわかデザインでも、走りと装備はゴルフ譲り! VWニュービートル
文字通り国民車として庶民の足として活躍した初代ビートル
通称「ビートル」として知られる“タイプ1”は、フェルディナント・ポルシェ博士による設計のもと開発された、文字通りの「国民車」。
偉大な初代のスタイリングを取り込みながらも、安全性能や快適性・走行性能などフォルクスワーゲンならではのこだわりを持って開発されたのが、今回紹介する「ニュービートル」だ。'94年のデトロイトモーターショーで「コンセプト1」という名称で披露され、次いで翌年の東京モーターショーでスタイリングをブラッシュアップしたプロトタイプを出品、ほぼこのフォルムのままで'98年に北米と欧州市場で発売が開始された。日本への導入開始は、それより1年遅れの'99年からだ。
見た目はタイプ1、中身はゴルフIV
プロトタイプの段階では「ポロ」がベースだったプラットフォームは、量産化に当たって(当時としては)最新のゴルフIVへと変更された。もちろん、初代ビートルの空冷RR(リアエンジン、リア駆動)に対して、ニュービートルではFF(フロントエンジン、フロント駆動)に変更されている。2515mmのホイールベース、フロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビーム・アクスルのサスペンション形式もゴルフと同一だ。ゴルフと同じシャシーとメカニズムという点を見れば、初代ビートルの純粋な後継車というよりも、「ゴルフの2ドアクーペ版」という表現がふさわしい。
鳴り物入りで登場したニュービートルは、日本より先に発売された北米市場では、供給が追いつかないほどの大ヒットを記録。人気は日本にも飛び火して、いまやゴルフやポロと並ぶVWの基幹車種となっている。
ベースグレードと充実装備の「プラス」の二本立てでスタート
'99年9月の販売開始時のラインナップは、ベースグレードの「ニュービートル」とその豪華装備版「ニュービートル プラス」の2つ。いずれも2L直4・SOHCエンジンにコンベンショナルな4ATが組み合わせられる。「プラス」には本革巻きステアリング&シフトノブ、シートヒーター、アルミホイール、サンルーフが奢られる。
ターボ、カブリオレを加えてバリエーションを充実
発売から2年以上2グレードのみのラインナップだったが、'02年2月には海外のマーケットはすでに投入されていた「ターボ」を追加。ゴルフGTIと同じ1.8L直4・20バルブターボは150PSを発揮する。当初は4ATのみだったが、翌年には5MTが追加され、これと同時に「スポーツエディションパッケージ」がオプションとして加わり、標準モデルとはひと味違う精悍なスタイルも選択できるようになった。
'03年には待望のオープンモデル「カブリオレ」が登場。幌をあえて車内に全て収納せずに、背負うようにして畳むオープン時のスタイルは、まさに初代ビートルを彷彿させるもの。エンジンは標準モデルと同様の2L・SOHCだが、重量増への対応のためティプトロニック式の6ATが組み合わされている。1年後にはクローズドモデルと同様、ベーシックな「カブリオレ」と豪華版の「カブリオレ プラス」の二本立てとなって。
さらに翌'04年9月には、ゴルフIV“E”と同様の1.6Lエンジン(102PS)を搭載したベーシックグレード、“EZ”が登場。2Lモデルよりも30万円安い230万円のプライスタグを下げて、敷居を低くしたエントリーモデルだ。
日本導入から6年目を迎えた'05年10月には、登場以来初となるフェイスリフトを実施。合わせてラインナップも整理され、クーペ/カブリオレ共に豪華版の「プラス」の名称は「LZ」に変更されたほか、ターボがカタログから落とされた。
特別仕様車も多数ラインナップ、中にはモンスタービートルも…
ニュービートルはほぼ毎年、台数限定の特別仕様車が出されている。ボディカラーやシート&トリムを専用色でコーディネートしたモデルが多い。唯一の例外は、'01年に登場したRSiだ。225PSを絞り出すV6・3.2Lのハイチューンエンジンを搭載し、6MTと4MOTION(4WD)を組み合わせた激辛ニュービートルで、世界で250台の限定生産、日本に導入されたのはそのうち45台という超レアなモデル。895万円という超高額車ながらも、瞬く間に完売するなど、話題をおおいに集めた。

円を3つ重ね合わせた特徴的なフォルム
円を3つ重ね合わせたサイドビューと前後対称のデザインは、登場から7年が経とうとする現在でもそのスタイリングは全く古びていない。イエローやブルーなどパステルカラーとの相性は抜群だ。
全長4090mm、全幅1730mm、全高1500mmというボディサイズは全幅を除けば意外にも初代ビートルとほぼ同じサイズ。ベースとなったゴルフIV(ハッチバック)よりも、全長が65mm短くなり、全高が45mm高められている。外観を見るかぎりにおいてはベース車の名残を微塵も感じさせない独創的なデザインはさすがのひと言。スタイル優先のボディデザイン故に空気抵抗係数(Cd値)は0.38といまひとつだが、法定速度プラスアルファのスピードで走る分には問題となるものではない。
タイプ1へのオマージュと遊び心

メーターフード、エアコンの吹き出し口、オーディオ/空調の操作部分など、随所に楕円を配しつつ、タイプ1へのオマージュとも言えるディーテールをそこかしこに配したインテリアデザイン。登場時はかなり新鮮だったが、アウディTTやNEW MINIを見慣れた今となってはニュービートルはいささか地味に感じる。とはいうものの、素材の質感や立て付けはVWクオリティと呼ぶにふさわしいものだ。
後席はあくまでも緊急用と考えるべし
スタイル優先のフォルムのため、居住性はかなり犠牲にされている。明らかに前席優先のパッケージングで、フロントシートは身長180cm級の人でも足元に余裕がある一方、後席はかなり窮屈。足元は何とか収まるが、リアガラスに頭がつかえてしまいきちんとした着座姿勢が取れない。子供用または緊急用と割り切って考えるべきだろう。
荷室もボディサイズに比して十分とは言えず、開口部も広くない。後席をダブルフォールディングすればそれなりに広い空間ができあがるが、リアゲートが大きくスラントしているため、高さのあるものは積みづらい。クーペ以上、ハッチバック未満の積載性、といったところか。
独特の運転感覚には慣れが必要
特殊なボディ形状が災いして、前後の見切りはいまひとつ。太いCピラーにさえぎられて斜め後方の視界も良いとは言えない。とくに駐車時や細い路地に入るときは注意が必要だ。ただ、ボディが比較的コンパクトなのと、最小回転半径は5.1mと小回りが利くのが救い。慣れればそれほど苦ではなくなるだろう。
必要にして十分なパワー
ゴルフIVの初期モデルは1.8LのDOHC5バルブを搭載していたが、後に2LのSOHCへとエンジン換装がおこなわれた。だがニュービートルのパワートレーンは最初から2LのSOHC。116PSと17.3kg-mという控えめなスペックだが、意外にもキビキビ走る。中低速を重視したパワートレーンのセッティングもあろうが、車重が1280kgと比較的軽量なことも走りの軽快さに一役買っているはず。
乗り味はまさにゴルフ
ドライブフィールは総じてゴルフIVと同じ。デビュー当時のインプレッションでは足の硬さがしばしば指摘されていたが、38000km余りをあとにしたサンプルカーは足回りのフリクションが取れたせいか、むしろ快適な乗り心地だった。
車名:VOLKSWAGEN NEW BEETLE
型式:GF-9CAQY
寸法:全長4090mm x 全幅1730mm x 全高1500mm
ホイールベース:2515mm
車重:1280kg
駆動方式:FF(前輪駆動)
エンジン:2.0リッター直列4気筒SOHC
最高出力:116PS/5200rpm
最大トルク:17.3kg-m/2400rpm
トランスミッション:4AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L
10・15モード燃費:9.8km/L
タイヤ:205/55 R16
発売時期:1999年9月
当時の新車価格:239万円(消費税抜き)
試乗車スペック
初年度登録:2000年10月
販売価格:144.9万円 (消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間 距離無制限)
走行距離:38000km
ボディカラー:イエロー
試乗日:2006年6月
内装の剥がれと電装系は要確認
ニュービートルの信頼性は非常に高いが、警告灯の異常点灯やパワーウインドウの故障など、電装系のトラブルがまれに発生することがある。
また、初期モデルはインナードアハンドルのソフトフィール加工が剥がれ落ちやすく、ステアリングの塗装も擦れて落ちてしまうことも。初期モデルのニュービートルを検討する際は、外装だけでなく内装のチェックも怠りないように。
大きく重いドアのため、ドア落ちしていることもごくまれにあるとか。一見すれば容易に判断が付くので、左右のドアがしっかり開閉できるか、念のため確認しておきたい。
リコール関連では、燃調のO2センサの異常によりミスファイアを起こしてしまうトラブルが'06年の5月に報告されている。もちろんAPの在庫は対策済みなので心配は無用だが、購入後対象となったトラブルが発生することもあるので、インポーターのリコール関連ニュースには気を配っておきたい。
フォルクスワーゲン グループ ジャパン リコール関連情報ページ
VWのブランドイメージの転換に貢献したニュービートル
ニュービートルが登場する以前、VWのクルマといえば「質実剛健なドイツの大衆車」というイメージが強かった。だが、'98年に登場したゴルフIVをはじめ、ポロやパサートのマイナーチェンジモデルといった一連のニューモデルからは、車両デザインにトレンドやカジュアルさを取り入れながら、広告や宣伝でもVWのプレミアムなブランドイメージを大幅に高めていった。そのブランドのイメージ転換を決定的にしたのが、ニュービートルの登場だろう。
ニュービートルの独特のボディ形状が強調される構図だ
元は北米マーケットを狙って、初代ビートルへのオマージュといもいえる内外装をまとって登場したニュービートル。実際には初代を懐かしんで、というよりも「ポップなボディカラーをまとったキュートでスタイリッシュなクルマ」として人気を高めていった。結果としてVWのブランド価値を高めることに大きく貢献したわけだ。登場からまもなく7年が経つが、ニュービートルが持つお洒落なイメージは少しも衰えていない。ニュービートルの人気は一過性のブームではなく、すっかり定着した感がある。
クルマに何を求めるか
今回のサンプルカーは、'00年式のベースグレード。ボディカラーはイエロー・左ハンドル・4AT・走行距離38000kmという仕様だ。これで価格は144.9万円。エンジンや足回りにヤレは感じず、かなり魅力的なプライスといえるだろう。ゴルフベースの信頼性は心強いし、APでは入念な納車点検整備と1年間走行距離無制限が付いてくるので、アフターも安心。ダブルイエローのニュービートルは、あなたのライフスタイルを表現する手段として、長く付き合える良き相棒になるはずだ。
文・写真:DAYS・Kitajima


