第29回:PTクルーザーで街を流せば景色はカリフォルニアに見えてくる!?
ネオンベースのコンパクトハッチ
1998年のジュネーブショーに出展されたコンセプトカー「プロントクルーザー(Pronto Cruiser)」をもとに開発されたコンパクトハッチバックがPTクルーザーだ。ベースとなったのは日本車キラーとして一時期話題となったコンパクトセダンの「ネオン」。
アメリカ本国での発売は'00年の1月で、日本には半年後の'00年7月に登場した。ちなみに"PT"は"Personal Transportation"の頭文字を取ったもの。生産はメキシコのトルーカ工場のほか、一時期は日本仕様も含めてオーストリアのグラーツ・ユーロスター工場でも生産された。
アメリカ本国のみならず、世界でも人気モデルに
グレーの樹脂バンパーが初期モデルの識別点だ
(写真:モーターデイズ)
最大の特徴はその超個性的なデザイン。1950~60年代にアメリカで流行したホットロッド(アメリカ流ゼロヨン車)の要素を盛り込んだという。アメリカ本国では発売直後から数ヶ月のバックオーダーを抱えるほどの人気車に。日本では、定評のデザインに加え、コンパクトなサイズ、使い勝手に優れたラゲッジなど高い実用性が評価されて、本国に劣らぬ人気モデルとなった。発売初年だけで世界で31万台以上を売上げ、苦境続きだったクライスラーに光明をもたらすスマッシュヒットとなった。
シンプルなグレード構成でスタート、徐々にバリエーションを拡大
発売当初のグレード構成はベーシックな「クラシック」、サンルーフや本革シートなどを奢った豪華仕様の「リミテッド」の2種類。エンジンは共に136PSを発揮する2リッター直4DOHCを搭載した。
アメリカ車ということで、イヤーモデル制を採用しており、毎年秋頃に仕様変更が行われている(変更箇所についてはモデル変遷の図表を参照)。'03年モデルから中間グレード「ツーリング」が仲間入り。内外装の各部にクロームメッキを使用し、アメリカンな雰囲気をより一層引き立たせたのが特徴だ。
カブリオ、ターボモデル、標準モデルのエンジン換装
販売開始から約4年が経過した'04年7月には、待望のオープンモデル「PTクルーザーカブリオリミテッド」が登場。カブリオだけの2ドアボディに、アメリカ本国ではすでに搭載済みの2.4Lエンジン(143PS)が組み合わされた。
同年秋には、カブリオ以外の全車が2.4Lエンジンになると同時に、同エンジンにターボチャージャーを搭載したトップグレード「GT」(343.4万円:消費税込み)が登場。224PSのハイパワーで前輪を駆動し、往年のホットロッドを思わせる豪快な走りを身上とする。
'05年10月に大規模なフェイスリフトを実施
'05年10月にはフェイスリフトが実施され、前後バンパーやグリル、ヘッドライト形状、インテリアではインパネ、ドアトリム、シートと各所が一新。メカニズム面では、エンジンは’05年モデルをそのまま引き継ぐが、静粛性の向上や安全装備の充実が図られた。
なお、PTクルーザーには特別仕様車も年ごとにリリースされている。「ストリートクルーザー シリーズ1」('02年)、同「シリーズ2」('03年)、「リミテッドプラス」「ウッディークラシック」「カブリオリミテッド」('04年)、「GTストリートスター」('05年)、「ストリートクルーザー ルート66」('06年)など。どれも魅力的な装備を加えて価格をリーズナブルに抑えたもので、Uカー市場でも引き合いは多い。

サイズはゴルフ並み
ボディサイズは全長4330mm・全幅1750mmとVWゴルフやアルファ147よりも少しだけ長い程度。だが、数値以上に大きく感じられ、存在感は抜群だ。ホイールベースは2615mmで、全長に比して長め。パッケージングを重視したディメンションであることが見て取れる。
圧倒的な存在感
ひと目でPTクルーザーと分かる独特のデザインだ。強調されたグリル、グラマラスなフェンダー造形やボリューム溢れるリア回りのデザインなど、欧州車にはない独特の個性を放っている。
おおらかなインテリアデザインもひとつの個性
センターコンソールを中心に、左右対称の柔らかな線でデザインされたPTクルーザーのインテリア。ボディ同色にペイントされたダッシュパネルがユニークだ。有機的なインパネデザインといい、フカフカの座り心地といい、よく言えばアメリカ車らしくおおらかな、悪く言えば緻密さや質感に欠けるが、クルマの性格には合っており大きな不満点にはならないだろう。居住性は、いわゆるCセグメントのハッチバック車として考えれば必要十分。
荷室の使い勝手は想像以上
"PT"は"Personal Transportation"を意味しているだけあって、シートアレンジや荷室の使い勝手は秀逸。5名乗車時のラゲッジスペースは538Lあり、脱着式の後部座席を外しさらに助手席シートバックを前方に畳んだときの荷室総容量は3405Lと超巨大
なおリアシェルフパネルはトノカバーとしてだけでなく、テーブルにもなる。実際に使う機会があるかどうかは?だが…。
シートアレンジ例
ポケッテリアも各所に配置されており、カップホルダーもセンターコンソール前後に計4つ用意されている。前席のシートバックは前方に倒した際にテーブル代わりになるほか、12Vの電源アウトレットもインパネ、カーゴルームに配置されている。このあたりは、日本や欧州のコンパクトカーを徹底的に参考にした努力が見受けられるところだ。
2.4Lモデルなら不満はないが…
「グランドチェロキーよりも大きい」(プレスリリース)と謳われるPTのシートは余裕たっぷり。前席は着座位置が高く見晴らしはいいが、1630mmという全高のわりに、頭上の空間にそれほど余裕はない。だが、狭苦しいという印象はなく、走り出してしまえば気になるほどのレベルではなかった。フェンダーの峰が左右に張り出しているので車両感覚はつかみやすい。
サンプルカーは'04年式の「リミテッド」。エンジンが2.4Lの直4DOHC(143PS)に変更された後のモデルだ。初期モデルの2L直列4気筒エンジンは軽快だが、高速走行では物足りなさを感じるのも事実。その点、2.4Lエンジンならパワー不足の不満は解消される。ただ、それでも1460kgの車重には必要十分といった印象。アメリカン・ホットロッドよろしくトルクの塊で突っ走る!という感覚を望むのであれば、ターボエンジンを搭載する「GT」を選ぶべきだろう。ただ、個人的には3LクラスのV6エンジンあたりを積んでもらって、ゆるゆる走るのがPTクルーザーのキャラクターには合っていると思うのだが…(V6は本国にもラインナップしていない)。
シッカリ感のあるハンドリング
PTクルーザーのサスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット、リアはツイストビーム付のコイルリジッド。サンプルカーはスタッドレスタイヤを履いていたため、シャシーに対してタイヤのグリップがやや負け気味だったが、それでもコーナーでだらしなくロールしたり腰砕けになるということもなく、安定した姿勢を維持してくれた。
アメリカ車というとひたすらソフトな足回りを想像するが、PTクルーザーは適度にダンピングが効いた足回りで、シッカリ感のある乗り味が印象的だ。最小回転半径は6.1mと大きいが、ボディの見切りは良好で、狭い路地でも苦労することはないだろう。
車名:CHRYSLER PT-CRUISER Classic
型式:GH-PT24
寸法:全長4330mm x 全幅1750mm x 全高1630mm
ホイールベース:2615mm
車重:1460kg
駆動方式:FF(前輪駆動)
エンジン:2.4リッター 直列4気筒 DOHC 16バルブ
最高出力:143PS/5200rpm
最大トルク:21.8kg-m/4000rpm
トランスミッション:4AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/56L
10・15モード燃費:8.7 km/L
タイヤ:195/65R15 9H
発売時期:2004年10月
当時の新車価格:260.4万円(消費税抜き)
試乗車スペック
初年度登録:2004年9月
販売価格:203.7万円(消費税込み) ※新車保証付(2007年9月まで)
走行距離:14,000km
ボディカラー:マリンブルー
試乗日:2006年8月
ベーシックカーを基本にしているだけあって信頼性は高い
メカニズムの多くはベーシックセダンのネオンと共通のもので、PTクルーザーの信頼性は高い。ごくまれに水回りのトラブルが散見されると言うことで、念のためラジエータタンクやホースなどのチェックはしておきたい。
電装系ではエアコンやパワーウインドウの故障がまれにあるが、登録から5年近くが経っているモデルならPTクルーザー固有の問題というより経年劣化によるものと考えるべきだ。また、初期モデルには内装の剥がれやガタつきが発生しているケースもあるということで、内張りのチェックは怠らずに。収納類のバネやスイッチを操作して気になる部分がないかも確かめておこう。
いま旬のブランド、クライスラー
クライスラーは、このPTクルーザーとそれに続くラージセダン300Cのヒットで、日本では急激にそのブランドバリューを高めつつある。日本車・欧州車から学んだユーティリティをプロダクトに反映させたPTクルーザー、HEMIの豪快な走りを堪能できる300C。そしてどちらにも共通しているのは、アメリカのメーカーでしか発想できないような大胆なデザインワークだ。「どこの、なんてクルマ?」と思わせるだけの吸引力が、PTクルーザー、そして300Cにはある。とくにPTクルーザーはUカー市場での流通量も豊富で狙い目の存在と言える。
ジャストサイズのアメ車
アメリカ車の持つ強烈な個性に魅力を感じていても、日本で乗るにはいかんせんボディが大きすぎ、購入となると二の足を踏んでしまう人は多いはず。その点、Cセグ並みのコンパクトボディを持つPTクルーザーは、日本の道路事情でも気兼ねなく「らしさ」を堪能できるとあって、登場時からバックオーダーを多数かかえるほどの大人気モデルとなった。
斬新なスタイルもさることながら、必要十分のエンジン性能、200万円台前半からのプライスなど、人気モデルになるべくしてなったクルマといえる。Uカーになれば、コスト面での魅力はさらに高まる。スタイルで気に入って購入した後は、その実用性の高さにもきっと驚くはず。信頼性も高く、安心感がある。長い人生、一度はアメリカ車を相棒にしてみるのも悪くない。
文:DAYS・Kitajima / Washio 写真:DAYS・Washio


