フィアット プント HGT アバルト
掲載日 : 2007年05月12日
第27回:サソリマークはイタリアンホットハッチの証! フィアット HGT アバルト
ウーノの後継モデルとして登場
初代プントは、ウーノ('83~)を引き継ぐかたちで1993年にデビュー。パンダとティーポの中間に位置するコンパクトカーとして、フィアットの期待を一身に背負って登場した。ジウジアーロによるスタイリッシュなデザインや元気の良いエンジン、ベーシックモデルからターボ、カブリオレまでのワイドバリエーションなど、イタリア車ならではの魅力をコンパクトなボディに凝縮したプントはウーノにも劣らないセールスを上げ、2代目が登場する99年までの生産量は370万台以上に達した。
2グレードでスタート
2代目プントがヨーロッパでデビューしたのは'99年の6月。日本への販売が始まったのは翌'00年の5月から。デビュー時のラインナップは、ベーシックな1.2L&CVTを搭載した5ドアの「1.2-16V ELX スピードギア」と、今回紹介するスポーティモデルの3ドアボディ「1.8 HGT アバルト」の2機種。両車はドアの枚数のみならず、前後バンパーやハッチゲート形状も異なっている。ELXは車両価格157万円(税抜き)と、輸入車としては非常にリーズナブルな価格を実現したことでも話題になった。
デビューから1年半後の'01年11月には、1.2Lモデルの上級グレード「HLX」が登場。ボディ同色の電動ドアミラーやアルミホイールなど標準で装備し、ELXより16万円高の173万円のプライスタグを付けた。なお、HGT アバルトの発売時の価格は218万円。
折しもアルファ156、それに続く147が大ヒットしていたため、その陰に隠れた感のある2代目プントだが、イタリア車らしいスタイリッシュでスポーティなルックスを持つHGTアバルトを中心に根強い人気を保った。現在のUカー市場でもそれなりの流通量がある。
'03年に大規模なフェイスリフトを実施
登場から3年半を経た'03年11月には、大規模なフェイスリフトが行われた。複数のプロジェクターレンズ(フィアットは「プリエリプティカル」と呼ぶ)を含むヘッドライトはマルチリフレクター式の4灯式に改められてダミーのグリルが新たに置かれたほか、リアのライトレンズ形状も若干変更が加えられている。
またグレードも整理され、1.2Lが前期モデルのHLXに相当する「エモーション・スピードギア」、1.8Lは「HGT」(アバルトの名は外された)に集約された。このほか、ESP(HGTのみ)やサイド/ヘッドエアバッグの全グレードへの標準化など安全装備や快適装備の充実が図られた。
ABARTH――'50~'70年代にラリーシーンを席巻した名門チューナー
アバルトの歴史についてもここで簡単に触れておこう。アバルト社(Abarth & C.)は、オーストリア出身のカルロ・アバルトによって1950年に創業されたチューニング・メーカー。'50年代から'70年代にラリー/レース車両の製作に携わり、数多くの名車を生み出したことで知られている。フィアット500(595/695など)や600(750/850Sなど)、あるいはポルシェ356(カレラ・アバルト)などをベースにしたオリジナルレースカーの開発も手がけ、コンパクトなボディに美しいデザイン、大排気量車に劣らない走行性能で多くのエンスージャストを生んだ。アバルトの熱狂的なコレクターは日本にも少なくない。
アバルト社自体は1971年にフィアットに買収され、同社のレーシング部門として131やランチア・デルタなどラリー車の開発・製作を手がけるが、次第に活動は縮小していった。そして1997年にはフィアット・アウト・コルセに完全に吸収されるが、エアロパーツやアクセサリーなどにブランド名が残されているほか、フィアットのラリー仕様車にも「アバルト」の名が冠されている。なお、アバルトの象徴とも言えるサソリのエンブレムは、カルロ・アバルトの誕生星座に由来する。

アバルトのエアロに身を包んだウェッジシェイプデザイン
ジウジアーロの手によってデザインされた初代のデザインを引き継ぎながら、他のどのクルマにも似ていない斬新さを身につけることに成功した2代目プント。空気を切り裂くような鋭い弾丸状のフォルム、同じく矢のようなスピード感を表現する樹脂のサイドモールやクーペ・フィアットを意識したかとおぼしき2本のキャラクターライン(ボディ後端)、鉄仮面のようなフロントマスク、立体的に造形されたリアのコンビネーションランプなどなど…細部に至るまで見るべき部分は多い。
フロント/リアバンパー、サイドステップ、テールゲートスポイラーといったアバルトのエアロキットに子どもっぽさはなく、素直に「カッコイイ」と感じられる。その反面、ブルーのセミバケットシートやステアリングホイール、アルミペダルやサソリマーク入りのシフトノブが奢られたインテリアは、プントにマッチしていると捉えるか演出過剰ととるかは個人の好みによるところが大きいだろう。
プントのボディサイズは全長3820mm x 全幅1660mm x 全高1480mm(HGTアバルト)。旧型ポロやプジョー206、オペルヴィータなどと同じ、いわゆるBセグメントのカテゴリーに属する。5ドアとはリアゲートの形状が異なっており、ELX/HLX比で全長が15mm(後期型は30mm)短く、トランク容量も5ドアの297Lに対して264Lとやや容量が削られている。
ドイツ車にもひけを取らない質感
インテリアはスポーティで、質感も高い。HGTアバルトではペダル、サイドシル、サイドブレーキ、シフトノブなど各所にアルミ(調)のパーツが配されている。ステアリングも専用で、ブルー&ブラックの本革仕様だ。インパネ下部にはエアコン、中央にはフォグランプやステアリングのCITYモードスイッチが、上部には1DINのオーディオスペースと機能別に分かれており、使い勝手も上々。またHGTアバルトにはガラスサンルーフも標準で装備される。装備類は充実しており、ストイックなスポーツモデルというよりもスポーティな演出を施した豪華グレードという趣だ。サンプルカーは01年式で24000kmの走行距離を経ているが、外観・内装共にヤレを感じさせる部分はほとんどない高品質車だった。
なお、'03年以降の後期モデルではインパネの材質や意匠が変更され、エモーションにはデュアルゾーン式オートエアコンが標準装着されるなど、装備の充実が図られている。
効率的パッケージが自慢
プントのシートファンクション パッケージングの良さはプントのセリングポイントで、プレスリリースでは「クラス最大級のキャビンスペース」を謳う。ホイールベースは2460mmとこのクラスでは最長の部類で、居住性では206やポロを凌ぎ、ヴィータとほぼ同等。サイズがサイズゆえ広々とまでは行かないが、大人4人が乗っても十分に耐えられる。3ドア/5ドアのホイールベースは共通だから、居住性もほとんど同じレベルと考えて良いだろう。後席は6:4の分割可倒式。ダブルフォールディングすれば、おなじみのPower Mac G5の巨大なハコも余裕で飲み込む。サスペンションの張り出しも目立たず、使いやすいラゲッジルームだ。
リニアでスムーズ
エアロを全身にまとったアグレッシブな外観、そしてアバルトのエンブレムから想像されるほどHGTアバルトの走りはやんちゃではない。130PSを発生する1.8Lエンジンはバルケッタと同じユニットで、やや野太いエグゾーストノートを響かせながらアクセルの開度にリニアに反応する。高回転までキレイに回るが、弾けるようなパワー感はそれほど感じられない。とはいうものの、1100kgのボディにこのパワーだから加速は十分以上。シフトもスムーズで節度感があり、コクコクッと決まって気持ちが良い。ヨーロッパ仕様の最高速は205km/hと発表されている。
安定感重視のフットワーク
当然ながらサスペンションはHGTアバルト専用。低速ではコツコツと細かい突き上げが気になるが、速度を上げていくと次第にフラットになる。タイヤサイズは185/55R15とことさら太いタイヤを履いているわけではないため、コーナーの出口ではトラクションコントロールが比較的頻繁に作動する。かなりのフロントヘビー&ほどほどのタイヤ&パワーのあるエンジンという組み合わせゆえ、タックインを駆使してリアを軽く流しながら8割程度のペースで楽しむ、というのがHGTアバルトのスイートスポットだろう。車重が1100kgもあるゆえ106 S16などに比べるとやはり重さを感じるが、この安定感は同時に安心感でもある。エンジンや挙動に神経質な部分がなく限界域も分かりやすいから、誰でも楽しめるハンドリングだ。
車名:FIAT PUNTO HGT ABARTH
型式:GF-188A1
寸法:全長3820mm x 全幅1660mm x 全高1480mm
ホイールベース:2460mm
車重:1100kg
駆動方式:FF(前輪駆動)
エンジン:1.8リッター 直列4気筒DOHC
最高出力:130PS/6300rpm
最大トルク:16.7kg-m/4300rpm
トランスミッション:5MT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/47L
10・15モード燃費:-km/L(未公表)
タイヤ:185/55R15
発売時期:2000年5月
当時の新車価格:218万円(消費税抜き)
試乗車スペック
初年度登録:2001年4月
販売価格:117.6万円(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:24000km
ボディカラー:ブルーム・イエロー
試乗日:2006年8月
電装系のマイナートラブルに要注意
近年のイタリア車は信頼性が著しく向上しており、日常のメンテナンスさえキチンとしていれば、路上で止まってしまうような深刻なトラブルに陥ることはまずない。ただ、やはり気をつけておきたいのはタイミングベルト。少なくとも4年おきまたは5万kmあたりで少し早めの交換を心がけた方が安心だ。またブッシュ類の消耗が早いのもイタリア車。ダンパーまで替えずとも、マウントやブッシュ類を交換しただけで乗り心地が一変することもよくある。整備記録簿には必ず目を通し、過去のメンテナンス歴を確認しておこう。
また、電装系のマイナートラブルもたまに散見される。エアコンの不調、パワーウインドウが落ちる、ワイパーモーターの損傷など、いずれも購入前にチェックできる項目なので、セールススタッフに確認を。
個性溢れるラテンホットハッチが120万円を切る価格で!
プライスボードを見た瞬間思ったのは、「安い!」。5年落ちの走行24000kmながら外装はピカピカ、内装もキレイ。足やエンジンのフリクションが取れてきたいい頃合いで、まさにこれから旬とも言える個体が、国産の新車コンパクトカーを買っておつりが来る値段とは…。これだからUカー選びはやめられない。
大人の観賞にもたえるスタイリッシュデザイン
「国産車のエアロ仕様はちょっと子どもっぽくて…」という人は多いはず。だがプントHGTアバルトは大人の観賞にもたえる品格がある。後継のグランデプントが登場した今でも、古さをまったく感じないスタイルにはイタリアのセンスを感じさせる。
走り自体には、限界まで攻め込みたくなるほどの刺激はないが、反面その落ち着いた挙動はどんなシチュエーションにも対応できるオールマイティさの証でもある。106やポロのスポーツモデルが軒並み1.6Lを搭載しているなかにあってプントは1.8Lとひとまわり余裕があり、長距離ドライブも余裕でこなせる。排気音はやや気になるところだが、振動やロードノイズもほどよく遮断され、快適性は高い。
足まわりやエンジンに手を入れてかっとび仕様にするもよし、ノーマルのアバルトルックを維持して大事に乗り続けるもよし。手に入れてからの楽しみはきっと多いはず。信頼性も高く、イタ車入門としてもうってつけの1台だ。 サソリマークのシフトノブを操りながら、ストリートを、ワインディングを駆け抜ける黄色のHGT アバルト。想像しただけでもカッコイイ(乗り手ではなく、クルマが…)、でしょ?
文・写真:DAYS・Kitajima




