ボルボ V70 XC 2.4T
掲載日 : 2007年05月19日
第34回:荒野を駆けるエステート、クロスカントリー!
V70ベースの四輪駆動SUV
ボルボXC(クロスカントリー)シリーズは同社のステーションワゴン「V70」をベースに、車高を上げてSUVとしたモデル。北米では元々ジープ・チェロキーなどのワゴン系SUVが人気を集めていたが、それを乗用車ベースで作ったのがスバル・アウトバック(1995年)であり、ボルボ・V70XC AWD(1997年)だ。この初代XCはメーカーの予想を越える年間約2万台(全V70生産台数の約2割に相当)のヒット車となった。
2000年に2代目が登場
1999年にV70が新型に移行したため、V70XCも2000年にフルモデルチェンジ。日本では2000年9月からベースグレードの「2.4」(490万円 消費税抜き)と豪華仕様の「2.4T」(530万円 同)の2グレードで発売された(いずれもエンジンは共通の直5ターボ)。新型XCには専用の前後バンパー、オーバーフェンダー、215/65R16サイズの大径タイヤが装着されたほか、ロードクリアランスはV70より55mm高い215mmとなり、さらに精悍なスタイルとなった。
2002年に「XC70」へ名称変更、パワートレインを改良
2002年11月には新型車「XC90」に倣って、車名を「XC70」へ変更。同時に直5ターボエンジンも排気量を拡大し(2434cc→2521cc)、最高出力(200ps→209ps)と最大トルク(29.1kg-m→32.6kg-m)が高められた。駆動システムもビスカス式のフルタイム4WDから、前輪のホイールスピンを検知すると走行状況に応じて後輪にトルクを分配する電子制御クラッチ「ハルデックス・カップリング」を使うものに変更された。
2004年9月導入の05年モデルでは、3500ヵ所に及ぶ改良を実施。ライト類やスキッドプレート、ルーフレールといった外装パーツをデザイン変更した。
2005年8月導入の06年モデルでは各種装備を底上げしたほか、電子制御4WDシステムをさらに改良。停止状態から発進する際に、あらかじめ80Nm(約8kg-m)のトルクを後輪に配分する「プレチャージ」機能を追加して、悪路での発進性能を向上させている。(2006.11)

最低地上高は+55mm、幅は+45mm
サンプルカーは2002年式、つまり名称が「V70XC」時代のモデルで、その150台限定車「オーシャン・リミテッド」だ。215mmの最低地上高や、黒い樹脂製バンパーとサイドプロテクションモール、ボディ前後のスキッドプレートが悪路走破性をアピールする。ちょっとバンパーをコスるくらいなら平気そう?なのが嬉しい。サスペンションは通常のコイルスプリング式で車高調節はできない。全高はベース車のV70より90mm高い1560mmで、タワーパーキングはギリギリ大丈夫なところが多いだろう。
「オーシャンブルーメタリック」は2002年の「オーシャン・リミテッド」(150台)と2005年の「オーシャン・レース・リミテッド」(400台)だけに与えられた限定カラー。XCシリーズのボディカラーはシルバーやアース系が多く、これは稀少色の部類に入る。
高めの視点が嬉しい
独特のステッチで縫われたレザーシートや、センターコンソールに付いた助手席パッセンジャー用のアシストグリップはXCの専用装備だ。シートはボルボらしく大柄で、例の頑丈そうなヘッドレストが備わる。クッションはソフトだが、長距離でも意外に疲れない。高めの視点が嬉しい。初めて乗る時はドアステップ(サイドシル)の高さに少し戸惑うが、慣れると普通のセダンより乗り降りしやすい。
居心地のいいリアシート
全幅が1860mm、ホイールベースが2765mmもあるだけに、後席の空間はまずまず。見晴らしも良く、乗降性も悪くない。センタートンネル上には「ボトル&バックホルダー」と呼ばれる樹脂製の枠が備わる。このオーシャン・リミテッドはハーマン・カードン製の11スピーカーを配した325W・CD/MDオーディオを標準装備する。
長尺物と大人4人が快適に同居できる
荷室は天地が狭く、例えば26~27インチのスポーツ自転車を立てて積み込むのは、前輪を外しても難しい。自転車乗りはルーフキャリアの使用を考えた方がいい。
一方、最大荷室長は180cm以上と余裕たっぷりなので、スキー板や釣竿といった長尺物は得意だ。リアシートは40:20:40の3分割なので、真ん中だけ倒してそれらを積み、大人4人が快適に座れる。
ボルボらしい、ゆったりとした走り
試乗したのは2002年モデルの特別限定車「オーシャン・リミテッド」。直列5気筒ターボエンジンの加速はボルボ車らしいゆったりとしたもの。グイとアクセルを踏み込めば、わずか1800回転で湧き出る29.1kg-mのトルクで、グゥーンと穏やかに1710kgのボディを走らせる。パワーは十分だ。
先に書いたように、XCの長所は通常のセダンやステーションワゴンに比べて視点が高く、見晴らしがいいところだ。小回り(最小回転半径5.7メートル)も予想よりずっとよく効き、いわゆる5ナンバーの国産ワゴン車と大差ない。
オンロードでのシャシー性能も○
重心が高くなったことで気になる操縦安定性だが、これがオーバースピード気味にコーナーに入ってもあっさりクリアしてしまうなど、なかなかのもの。V70より限界は低いはずだが、単独で乗る限りは全くもって不満がなく、むしろXCの方に安心感を感じてしまった。乗り心地も標準のV70より固めのはずだが、元々ボルボの乗り味はマイルドなので、これくらいがちょうどいい。サンプルカーの走行距離は3万2000kmだが、ブッシュやダンパーの性能低下は感じられず、気になるピッチング(縦方向の揺れ)も一切なかった。
オフロード走行は適わなかったが、やはり4WDシステムと215mmの最低地上高は精神的に頼もしく、「道らしきもの」があれば大丈夫という自信が湧いてくる。スタッドレスタイヤさえ履けば雪道では安心だろう。ただしXCをはじめボルボの4WDシステムは程度の差こそあれ前輪駆動を基本としたもの。車重も1700kg台とヘビーなので、走破性を過信するのは禁物だ。
車名:VOLVO V70 XC 2.4T Ocean Limited(2002年モデル)
型式:TA-SB5244AWL
寸法:全長4735mm x 全幅1860mm x 全高1560mm
ホイールベース:2765mm
車重:1710kg
駆動方式:4WD(四輪駆動)
エンジン:2.4リッター直列5気筒DOHCターボ
最高出力:200ps/6000rpm
最大トルク:29.1kg-m/1800-5000rpm
トランスミッション:5AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/72L
10・15モード燃費:9.2 km/L
タイヤ:215/65R 16
発売時期:2000年9月(クロスカントリー)、2002年1月(Ocean Limited)
当時の新車価格:570万円(2002年1月 Ocean Limited、消費税抜き)
試乗車スペック
初年度登録:2002年
販売価格:327万6000円(消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:32,000km
ボディカラー:オーシャンブルー・パープル
備考:150台限定車 ワンオーナー サンルーフ付
試乗日:2006年8月
オートマチックのチェックは必須
チェックポイントは基本的にV70とほとんど同じ。特に購入時は、試乗してアイシンAW製5ATの動作チェックをお勧めする。試乗もせずに値段が安くて保証無しのV70/XC70系に手を出すのは禁物だ。それ以外は走行に関係ないマイナートラブルが主で、それらは購入後にその都度対処すればいい。具体的にはヘッドライトウォッシャー不良→チェックバルブもしくはポンプの交換、オートエアコンのセンサー不良→清掃もしくはセンサー交換などだ。一方、サスペンションはごく普通のコイル式で壊れようがないし、エンジン本体の信頼性・耐久性も高い。たまにオイルラインからオイルがにじむことがあるので、定期的にオイルレベルやエンジン下回りをチェックしたいが、神経質になる必要は全くない。タイミングベルトは常識的な10万km毎の交換で大丈夫だ。
購入時はモデルイヤー毎の仕様の違いにも注意したい。ボルボ車の通例として、年式が新しいほど装備内容は良いし、改良も進んでいる。例えば4WD一つとっても、2002年秋までの初期モデルはビスカス式4WD、それ以降はハルデックス電子制御4WDで、さらに2005年夏には後輪にあらかじめトルクをかけておくプレチャージ機能を追加している。まあ、しかし筆者個人としては「雪道でも前輪駆動で十分、FR車でもスタッドレス&チェーンでOK」と思っているので、むしろ最低地上高が確保されているだけで大満足だ。
高い完成度でボルボ車の中でもイチオシ
以前から印象の良かったクロスカントリーだが、今回改めてそのバランスの良さに感心した。ベースのV70の車高を55mm上げて、オールシーズンタイヤを付けたモデルと言えば、何となくイビツなものを想像してしまうが、実際には全然そんなことはない。むしろV70より視点が高く、乗りやすいというのが率直な感想だ。ボルボ特有の、ドイツ車や国産車と全く違う価値観に基づいた作りも味わい深い。
個人的には趣味の自転車を積みにくいのが残念だが、それも前後輪を外せば問題ないし、ルーフキャリアという方法もある。悪路走破性が物足りないという声もあるが、そもそも日本の険しい山に踏み込むならもっと小さな本格SUVがいいし、歩いて行った方がいい。
XC70で得られる恩恵は、もっと実際的なところにある。例えば高められた最低地上高のおかげで、無神経なクルマ止めにアゴをぶつける心配がないし、段差で腹を打つこともない。バンパーも無塗装ゆえ、塀に当てても修理代に心を沈ませずに済む。この手のSUVの中ではメカニズムがシンプルなのも好ましい。そしてタイプは違うが、往年の名車ボルボ・アマゾンや240シリーズのように、オシャレ過ぎず、無骨過ぎず、ユニークなデザインがいい。それらと同じように何十年経っても人気の衰えないクルマになるのではないか。そう思わせる、ボルボ車きっての憎めない個性派モデルだ。(2006.11)
文・写真:DAYS・Kei Niwa


