第47回:プレミアムブランドが放つ俊足サルーン
BMWの集大成、みたいな世界を味わえる高級スポーツサルーン
アメリカ人チーフデザイナー、クリス・バングルがプロデュースするデザイン革命、i-Driveを中核に据えたコックピット革命など、最近のBMWは、イケイケ路線まっしぐら。2006年度は、全世界での販売台数と利益が、ともに過去最高を記録し、セールス面でも絶好調だ。とはいえ、新世代モデル群にいまだ戸惑いを覚えるファンや、急な変革に意識や感性が追いつかないファンがいるのもまた事実。
そうしたBMWフリークの間で、改めて価値が見直されているのが一世代前のモデルだ。1996年~2003年に生産された先代5シリーズ(E39型)は、欧州で言うところのEセグメントに属し、1972年に誕生した初代から数えて4代目となる。欧米だけでなく、日本市場も強く意識していたようで、日本でも公道テストをみっちり行った。駆動方式はもちろんFR。エンジンは2.5/2.8/3.0リッターの直6、4.4/5.0リッターのV8の計5タイプがある。乗車定員は5名。セダンのほか、ワゴンも用意されている。
大別して「標準」「ハイライン」「Mスポーツ」の3タイプ
E39型の日本導入は1996年4月。当初は「525i」「528i」の2グレードだけだったが、その3カ月後の7月にはトップグレードの「540i」が登場した。525iは2.5リッター直6DOHCエンジン(最高出力170ps、最大トルク25.0kgm)、528iは2.8リッター直6DOHCエンジン(193ps、28.5kgm)、540iは上位モデルの7シリーズ譲りの4.4リッターV8DOHC(286ps、42.8kgm)を搭載していた。
1998年3月、全グレードに対し、本革シートやカーナビ、クルーズコントロールなどを標準化したラグジュアリー仕様「ハイライン」がラインナップ。また、同年11月には、すべてのエンジンがダブルVANOS化されるとともに後席サイドエアバッグが標準装備され、環境面と安全面での向上が図られた。
1999年3月、メーカー公認のチューンドカーともいえる「M5」がデビュー。パワートレーンは新開発5リッターV8(400ps、51.0kgm)+6速MTで、モータースポーツ部門を担当する子会社M社によるレースで培われた技術を惜しみなくフィードバックされた、いわば怪物サルーンだ。このルックスを量産モデルに注入したのが今回のサンプルカー「Mスポーツ」だ。同年10月より全グレードに設定され、5シリーズを代表する“顔”となった。専用のエアロパーツ類をまとったアピアランスは、まさにM5ばりの迫力を醸し出す。
2000年11月、マイナーチェンジ。フェイスリフトと装備の充実が図られた。また、525iは192psにパワーアップされ、3.0リッター直6エンジンを搭載した「530i」が加わり、従来の528iはラインナップから外れた。以上のようにグレード構成は多岐にわたるように思えるが、基本的には、各エンジンに対して、装備の違いによって標準仕様/ハイライン/Mスポーツの3タイプが用意されるというシンプルなもの。安さ重視なら標準仕様、高級な雰囲気が欲しいならハイライン、よりスポーティな走りを好むならMスポーツという選択だ。
特別仕様車が目白押し!
数々の特別仕様車にも注目したい。例えば1998年5月に発売された528iハイラインの特別仕様車。これは専用メタリック色やツートーンカラーの本革シートのほか、電動ガラスルーフをはじめとする総額120万円相当のオプション装備を標準化しつつも、車両価格はベースモデルよりも30万円アップに抑えられたお買い得モデルだ。そのほか、2001年6月に発売されたBMWジャパン20周年記念の特別仕様車、2002年7月の「Mスポーツリミテッド」、2002年11月の「セレクション」、そしてE39の最後を飾る「525iハイラインスポーツ」などがある。いずれも実質的な値下げのお買い得仕様だ。

BMWが磨き上げてきたスタイルの集大成
ボディサイズは全長4775mm×全幅1800mm×全高1435mm。従来型(E34型)比で、それぞれ+55mm、+50mm、+20mm。また現行型(E60型)比で、-80mm、-45mm、-55mmとなっている。端正なスタイルは、歴代BMW中型サルーンの流れを汲むもので、いわば往年のBMWイズムの集大成と言っても過言ではない。その点からすれば、アクの強いE60型よりもマニア的価値は高い。
前期・後期ではここが違う
2000年10月のマイナーチェンジを境に前期型と後期型に分かれる。その違いはまずボディを囲むモールディング。前期型はブラック、後期型はボディ同色となり、洗練度がアップしている。また、ヘッドライトのウインカー部分がクリアに、グリルはM5と同様の幅広タイプになった。テールランプは光ファイバー技術を応用したことで高輝度が増した。そのほか、ホイールデザインが変更され、サマータイヤが採用された(前期型はオールシーズンのM+S規格)。
「クルマを着る」ような独自の囲まれ感
コンパクトなナセルに収めた4連メーターと、ドライバー側を向くセンターパネルを伝統とするBMWのインパネ。適度な囲まれ感は運転の集中力を高める効果もある。同様に後席も車格からすれば、それほど広いというわけではない。もちろん実用上不満はないが、センタートンネルが左右を分けるカタチとなっているため、パーソナルな雰囲気が強い。つまり後席の空間デザインも「スポーティ」というわけだ。フルトリム仕上げのラゲッジスペースの容量は460リッター。バンパーレベルからリッドが開くため、重い荷物の積み降ろしはラク。現行型E60のように分割可倒シートバックは採用されていないものの、基本機能や使い勝手に不満はない。
インパネは、i-Driveを中核とした斬新なE60と比較すると、さすがに古さは隠せない。しかし、初めての乗る人が直感的に操作できるのは間違いなくE39のほうだ。シートヒーター、左右独立温度調整可能のエアコン、DVDナビをはじめ高級車にふさわしい装備が満載されながら、操作に戸惑うことはない。スイッチはカチッカチッとした感触で、密度の高さを感じさせる。また、灰皿ひとつとっても成型の複雑さといい、素材の手触りといい、それがプッシュ一発でスーッと出てくる動きといい、喫煙者にとっては思わずニンマリしてしまうこと請け合い!?(タバコを吸わない人にとってはどーでもいいことだけど)。コスト削減の跡がみじんも感じられないどころか、E60よりもお金がかかってんじゃないの!? と思ってしまう。
M5譲りのルックスと走りが光る
時を追うごとに、クルマの心臓部ともいえるエンジンは進化してきた。4代目5シリーズ(E39型)では軽量化を狙い最初からオールアルミブロックを採用、後にアクセル開度やエンジン回転数に応じて吸・排気両方のバルブタイミング機構を無段階に調整、最適化を図る「ダブルVAVOS」を導入。今回のサンプルカーは、そういった煮詰めに煮詰めたE39型の熟成モデルだ。
排気量が2.5リッター(192ps)だけに、おせじにも力強いエンジンとは言えないが、トルクが低速域から立ち上がるため非力さは皆無。むしろ「クォーン」という官能的なサウンドとともに、レブリミットまでストレスなく吹き上がるフィーリングが好印象だ。もしこれが前期型の170ps仕様であれば、「かったる~」とグチを漏らしていただろう。22psアップの効果は加速時にテキメンに表れている。
何より光るのがハンドリングだ。まだ発展途上のアクティブ・ステアリング(速度などの条件によって舵角を調整する機能)とランフラットタイヤで武装するE60と比べれば、素直かつ的確。これほど「操る楽しさ」を備えている高級サルーンも、最新モデルを含めてそうないはずだ。今やハタ目に新鮮さはないが、乗るたびに「やっぱりいいわ」と思わせる。
車名:BMW 525i Mスポーツ(2002年モデル)
型式:GH-DT25
寸法:全長4775mm x 全幅1800mm x 全高1415mm
ホイールベース:1510kg
車重:1510kg
駆動方式:FR(後輪駆動)
エンジン:2.5リッター直列6気筒DOHC
最高出力:192ps/6000rpm
最大トルク:25.0kg/3500rpm
トランスミッション:5AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L
10・15モード燃費:8.4km/L
タイヤ:前 235/45R17、後 255/40R17
発売時期:1996年4月
当時の新車価格:563万円(消費税別)
試乗車スペック
初年度登録:2002年
販売価格:342.3万円 (消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:33,000km
ボディカラー:ブラック
試乗日:2007年4月
クルマの性格上、走行距離は全体的に多め。初期モデルでは11年も経過しているので10万kmオーバーも珍しくない。トラブルの少ないドイツ車とはいえ、購入前は念入りなチェックが大切だ。特にオイル漏れと電気系の確認は必須。乱暴に言ってしまうと、そのあたりが大丈夫なら、大抵そのほかの部分も安心できると思っていいだろう。何より重要なのは、これまでの管理状態。将来発生するトラブルポイントを探すというよりも、現状で「乗り出すまでにどれだけ出費を抑えられるか」を念頭におくべきで、ちゃんと相談に応じてくれる販売店で購入したい。
相場は100万~400万円。物件は選び放題
当時の人気は非常に高く、いまなお根強いファンを持つ。そのおかげか、中古車市場はじつに活気溢れている。まず十分すぎるほどのタマ数が出回っており、特別仕様車などの限定モデルさえ、そこそこの流通量がある。価格相場は100万~400万円。どの年式、どのグレードでも自分の条件に合う物件が見つかりそうだ。ちなみにボディカラーはシルバーが一番多く、次いでブラック、ブルー。ホワイトは人気が高く相場は高め。逆にグリーン、レッドは安めだ。
狙い目は後期型のMスポーツ
せっかく買うなら直6! といっても選択肢は2.5/2.8/3.0リッターの3種類ある。その中でコストパフォーマンスが最も優れるのは2.5リッター、それも後期型だろう。最高出力は2.8リッターのそれよりもわずか1ps低いだけの192ps。前期型よりも22psアップ、それでいて10・15モード燃費は8.1km/Lから8.4km/Lに改善されている。「黒色のモールディングが野暮ったい」という人にとっても、後期型ならボディ同色となっているので不満はないはずだし、「Mのエッセンス」を注入したMスポーツであれば、よりスポーティなカッコ良さも加味される。もっとも、高級サルーンらしく余裕のある加速感が欲しいのであれば、231psの3リッターがお勧めとなる。525iのMスポーツ(後期型)の中古車相場は300万~350万円。サンプルカーのように距離が短く、本革シートやサンルーフといったオプションが満載なら、迷わず「買い」だ!
文・写真:DAYS・Kondo



