軍用車として開発された質実剛健のボディ
当試乗記における「G320(ショート)」の頁でも紹介したが、おさらいの意味でもう一度ここで解説しておきたい。メルセデス・ベンツGクラスがデビューしたのは米ソによる東西冷戦最中の1979年。元々はNATO(北大西洋条約機構。アメリカ・ヨーロッパ諸国によって結成された軍事同盟)が使用する軍用車として開発がはじまった。以来、基本構造やデザインを変更することなく、現在に至るまで生産が続けられている、メルセデスの誇る名車中の名車だ。悪路走破性を高めた本格四輪駆動車の常套手段として、ラダー(梯子型)フレームの上にボディを載せる構造を採用。前・後・中央の3つのデファレンシャルギアをロックする機能も装備され、想像を絶する悪路を走りきるだけのポテンシャルを秘めている。
モデルチェンジの必要性を感じない、ラダーフレームの本格四駆
道なき道を走破するために、Gクラスはスチール製の頑強なラダーフレームを中心に据えて、リジットアクスル式の車軸、エンジン、ボディをそれぞれ架装する、という本格四輪駆動車の基本コンセプトを正しく踏襲している。約30年前に設計されたこの基本構造は今でも変わることなく、そこへ様々な改良が加えられることで現在に至っているモデルだ。主にショートとロング、ふたつのボディバリエーションが存在しており、ショートはシティユース、ロングは長距離ツアラー、といった性格分けで購入するユーザーもかつては多かったが、現行ラインナップは5リッターエンジン搭載のロングボディのみ、となっている。
通常走行時も静かにゆったり走れるクルマ
Gクラス(ゲレンデヴァーゲン)の生産がはじまったのは1975年。2つのボディ形状と搭載されるエンジンによってラインナップが分けられる。1993年にデビューしたG500(5リッターエンジン搭載)は、現在も新車で購入可能だ(2007年7月現在)。1994年以降に登場したG320(3.2リッターエンジン搭載)は2006年11月に現行ラインナップから消滅したが、中古車市場においてはいまだに根強い人気を誇っている。どちらのタイプも、高級SUVらしいゆったりとした上質な乗り心地を味わうことができる。ロングボディのGクラスは、ラゲッジスペース左右に折りたたみ式のシートが備わっており、いざという時には7名乗車も可能となっているのも特徴だ。

直線と平面を基調とした無骨なデザイン
Gクラスは1979年のデビュー以来、ボディのデザインを大きく変えていない。平らなスチールパネルを組み合わせて作られた独特のボディ形状は、機能優先主義の軍用車に通じるものがある。つまり「デザインのためのデザイン」ではなく、あくまでも機能・実利を優先して設計されているのが、このクルマの特徴だ。フロントウィンドウ、サイドウィンドウはすべて平面ガラスが使われており、質実剛健な雰囲気をさらに高めている。また、岩やブッシュ、野生動物などのヒットからボディを守るべく、ヘッドライトまで覆う巨大なフロントグリルガードが純正で用意されており(日本国内で実際に役立つシーンに遭遇するかどうかはさておき)、無骨でワイルドな印象を強めるアイテムのひとつとして人気が高い。なお、ロングボディはショートボディのホイールベースを45cm延長している。
ゆったり本革シートのすわり心地は良好
運転席に乗り込んでヒンジ式ドアを「パシャッ」と閉めると、意外なほど重厚な包まれ感を感じさせてくれるインテリアだ。上質な本革をふんだんに使ったシートのサイズも大きく、いかにもメルセデスらしい優雅な印象。マイナーチェンジを繰り返しているものの基本的な設計年次が古いため、現在のクルマを見慣れた目で見ると各部が古めかしく思えるのは否めないところ。むしろ、その古臭さがGクラスならではの味、と前向きに捉えておきたい。前方視界はたいへん良く、角ばったボディがもたらすボディ前端の見切りも良好だ。ダッシュパネルやステアリングの質感など、良くも悪くもクラシカルな印象が強い。
折りたたみ式サードシートも装備
Gクラス・ロングボディの場合、ラゲッジスペースの左右に折りたたみ式の簡易チェアが備わっている。軍用トラックよろしく左右のイスが向かい合う形になっているが、ここに大人が座るのは少々窮屈だ。せいぜい小学生くらいまでの子供が座れるスペース、と割り切ったほうがいいだろう。日本国内の安全法規上は問題ないものの、横向きに座る以上、安全性は必ずしも高くはないのも事実。あくまでもイスが足りなくなった際の補助シート、と考えるべきだろう。座面を持ち上げてサードシートを折り畳めば大容量ラゲッジスペースが出現するから、日常における使い勝手は良好。テントやBBQセットを搭載して家族4人でオートキャンプ、といった用途にもしっかり応じられるはずだ。
走り出せば3.2リッターエンジンで十分
3.2リッター水冷V型6気筒SOHCエンジンのトルクは太く扱いやすいが、ボディが大きくて重いため、加速は鈍重だ。しかし、室内へ入るエンジンノイズは小さく、ラダーフレーム四駆ならではの深いサスペンションのおかげで、乗り心地は良好で、加速性能の鈍さはそれほど気にならないのも事実。高速巡航も難なくこなし、ドライバーのストレスも小さくて済む。必要にして十分なオンロード性能をしっかり備えている、ということだ。また、四輪の駆動方式はセンターデフを備えた副変速機付きフルタイム4WD。前、後ろ、中央の3つのデファレンシャルギアに電子制御式デフロックシステムが搭載されており、運転席からスイッチひとつでそれぞれロック/解除が可能だ。また、オフロード走行時に最適な「クロスカントリーギア」が設けられ、これも運転席からのスイッチひとつで切り替え可能となっている。悪路(オフロードや雪道等)も安心して走りきるポテンシャルを備えつつ、街を優雅に流すのがGクラスの醍醐味のひとつである。
車名:Mercedes-Benz G320 Long(2001年モデル)
型式:GF-463245
寸法:全長4490mm x 全幅1810mm x 全高1970mm
ホイールベース:2850mm
車重:2290kg
駆動方式:フルタイム4WD
エンジン:3.2リッターV型6気筒SOHC
最高出力:215ps(158kW)/5600rpm
最大トルク:30.6kg・m(300.1N・m)/2800~4800rpm
トランスミッション:5AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/96L
10・15モード燃費:6.6 km/L
タイヤ:265/70R16
発売時期:2001年4月
当時の新車価格:890万円(消費税別)
試乗車スペック
初年度登録:2001年
販売価格:533.4万円 (消費税込み) ※AP保証付(12ヶ月間、距離無制限)
走行距離:65,000km
ボディカラー:タンザナイトブルー
試乗日:2007年6月
ショート、ロングともにボディは頑丈だ
Gクラスは本格オフローダーだが、実際に悪路走行を経験した車両はそれほど多くはない、という事実を踏まえておけば、おのずとチェックポイントも見えてくるのではないだろうか。G320ショートの頁でも解説したとおり、モノコックボディではなくセパレート式フレームを採用しているGクラスは、とにかくボディが堅牢にできている。エンジンオイル交換をはじめ、メンテナンスを定期的にきちんと実施した車両であれば、深刻なトラブルは避けられるはず。機械系トラブルは少ないものの、電装系トラブルはあるようなので、少なくとも購入時はエンジンをかけ、各部の異音チェック・動作チェックを忘れずに実施しておきたい。もちろん試乗して状態をチェックできればなお良し。インテリアは本革シートの磨耗具合を特に重点的にチェックしておきたいところだ。
市場にある豊富な在庫からじっくり選ぶべし
ショートボディとロングボディ、ふたつのボディバリエーションがあるGクラスだが、中古車市場に出回っている車両はロングボディが圧倒的に多い。その意味では、狙ったグレードの車両を比較的見つけやすい状況なので、あわてずじっくりと比較・検討することをお勧めしたい。車両の下に潜り込んでボディアンダー周りを見ても、程度の良し悪しを判断するのは難しいはず。であれば走行距離と年式を基本にして、アフターサービスの対応がしっかりしている誠実なショップで購入するのが王道だ。ショートとロングの違いについてだが、シティユースを中心に考えているのであれば、ホイールベースが短く取り回しの容易なショートがお勧め。ちょっとした長距離ツーリングや家族を乗せた小旅行、といった用途であればラゲッジスペースの大きなロングボディを選んだほうがいいだろう。また、同じ予算であればG320よりも年式・グレードの低いG500を選ぶ、という戦略も面白いかも知れない。
文・写真:DAYS・Yasuhara


