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Uカー試乗記

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あらためて「Jeep」とは?

1996年から約10年にわたって生産された2代目ラングラー。ちなみに「Wrangler」はカウボーイの1種を指す (写真:ダイムラー・クライスラー日本)

先回の2代目グランドチェロキー(WJ型) と少々ダブるが、もう一度Jeepの歴史をおさらいしておこう。

Jeep(ジープ)の起源は、第2次大戦中に米軍向けに開発され、実戦に大量投入された偵察・連絡用の小型4輪駆動車だ。正確にはウイリス社のMBであり、そのフォード版のGPWだが、兵士はそれらをまとめて「Jeep」と呼び、その名が世界中で定着した。

戦後、ウイリス社が市販した「CJシリーズ」(CJ=シビリゼーション・ジープ)は、新種のレジャービークルとして捉えられ、快適性や走行性能を改良しながら、CJ-2、CJ-3、CJ-5、CJ-6、CJ-7、CJ-8と進化した。特にCJ-7では、パワフルな直6やV8エンジンの搭載、ボディの大型化などで功罪両面はありながらも人気を得た。

日本では三菱がノックダウン生産した「三菱Jeep」(1953~98年)が自衛隊車両や、市販RVとして一般化。三菱ジープはライセンスの関係上、CJ-3から進化を止めたまま90年代まで黙々と生産されたもので、ある意味オリジナルJeepに極めて近いJeepだ。

ちなみにウイリス社は1963年にカイザー社に買収され、69年には米国第4のメーカーだったAMC社(アメリカン・モーターズ・コーポレーション)に再び買収された。その後、70年にルノーの資本介入を受けたAMC社は、87年に今度はクライスラー社に買収された。こうして親会社の名が次々に消えていく間、Jeepの名だけが残ったのは、考えてみるとスゴイことである。ちなみにクライスラーは98年にダイムラーと対等合併したが、2007年の今年それを解消した。Jeepを持つ企業には10年周期で何かが起こるのか?

それじゃあ「ラングラーとは?」

長く続いたCJシリーズは1986年に生産を終了。チェロキーなどの登場により、名称をはっきり区別するためだろう、1987年に出た新型は「Wrangler」と称するようになった。2007年現在は3代目まで進化している。

■初代ラングラー(YJ型) 1987年~95年
Jeep史上、初めて角型ヘッドライトとなった初代「ラングラー」(YJ型)だが、それ以外の外観や悪路走破性はほぼCJ-7を踏襲。前後サスもまだこの頃まではリーフスプリング(板バネ)だった。エンジンは当初4.2リッター直6・OHV(110ps)で、変速機は3ATもしくは5MTだった。95年に生産終了。

■2代目ラングラー(TJ型) 1996年~2006年
今回採り上げる2代目ラングラー(TJ型)は1996年に登場した。約10年ぶりに丸型ヘッドライトが復活するなど、Jeepの原点を強く意識したモデルだ。エンジンはXJ型チェロキーと基本設計の同じ4リッター直6・OHV(175ps)。前後サスは乗り心地のいいコイルスプリングとなり、途中から4速AT(2002年末~)を採用するなど実用車としての完成度も高めた。一方、米国では「ルビコン(Rubicon)」と呼ばれる硬派向けモデルも用意され、マニアにも強く支持された。このYJ型は2005年に生産終了した。

■3代目ラングラー型(JK型) 2007年~
2006年(日本導入は2007年)には3代目ラングラーとなる通称JK型が登場。角度の寝たフロントグリル、4ドア・5人乗りの「ラングラー・アンリミテッド」の登場、新世代のV6エンジンなどが特徴で、時代に合わせた近代化が図られている。(2007.07)

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全長は4メートルに満たない

Jeepはクルマ単体としてより、人が乗ることでカッコよく見える

見た目は「ジープ」そのもので、説明は要らないだろう。写真で見るより、実物はさらにカッコよく、街で見るとさらに見映えがする。ボディサイズはコンパクトで、全長3915mm×全幅1740mm×全高1800mm。背の高さや幅を除けばトヨタbBと大差なく、ホイールベースは2375mmと軽自動車並みだ。取り回しの感覚はスズキ・ジムニーと大差ない。

 
サンプルカーは幌を備えた「スポーツ」で、フルメタルドア仕様。低年式モデルには布と塩ビ製サイドウインドウ(窓の開閉はファスナー)からなるロールアップドア仕様もある
ボンネットのロックはゴム製のバンド式。作りはとてもしっかりしている
ドアヒンジももちろん?剥き出しのアウター式。昔のクルマはみんなこうだった

オリジナルはもっと小さかった

標準タイヤは15インチだが、16インチの方がカッコよく、ジープ本来のサイズだ(オリジナルJeepもルビコンも16インチ)。ただし舗装路での性能は落ちる

第二次大戦で使われたオリジナル Jeepは、実はさらに小さかった。全長は3.4メートル弱、全幅は1.6メートル余、ホイールベースはたった2030mmで、この「小ささ」が兵士だけでなく、一般の市民にも親しまれた理由だろう。今のハマー(軍用版はハンヴィー:HMMWV)が半ば装輪装甲車と化し、あたりを威圧するような「軍用車両」となっているのと対照的だ。なお、Jeepの戦略上の用途は偵察・連絡用で、実際には兵士のための便利な「足」だったが、いずれにしても本格的な戦闘は考慮されていない。ほとんどの戦争がゲリラ戦・対テロ戦となり、「前線」も「後方」もなくなった現代戦では、心もとない乗り物だろう。

 
幌(「スポーツ」のほとんどがこれ)の場合、リアクオーター左右とリアウインドウが塩ビ製となる。真冬など気温が低い場合は取扱いに注意が必要
フューエルリッドなんていうものはない。キャップは鍵式
ノーマル車高ならステップはそう必要ないが、インチアップした場合や悪路を走る場合はありがたい
 

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機能性まるだし

一見乗用車風だが、目の前に迫ったフロントウインドウ、平板なダッシュボードなど、今のクルマにはない「味」がある。横方向に余裕があり、狭苦しさはない

樹脂製パーツに覆われ、一見乗用車風に見えるインパネだが、よく見ると普通のクルマではありえない「機能性まるだし」の部分がたくさんあって痛快だ。ドアヒンジのストッパーは、単にナイロン製のストラップを引っ掛けるだけ。それが無いとドアは家の勝手口のドアのようにパタンと180度開いてしまう。もちろんパワーウインドウなんてものも無く、窓は手回し式(信頼性抜群)。内装カーペットはペラペラで、ボディの鉄板が透き間から見えるが、「だからどうだ? これはジープだ!」と言わんばかり。もちろん、これでいい。

なお、ここまで内装が簡素だと静粛性が気になるが、車内騒音はそれほど大きくない。おそらくアスファルトシートやブッシュなどによる防振対策がしっかりしてるからだろう。

なお、フロントウインドウは昔のJeep同様、前に倒すことができる。一般道での走行は不可のようだが、そもそも風がモロに顔に当たり、ほとんどノーヘルのオートバイ状態(これも違法だが)で、とてもじゃないがスピードは出せない。この機能は前線で敵に見つからないようにガラスの反射を防ぐ、ガラスが割れても運転できる、運転席越しに射撃できる、といった戦時の理由が主だ。

 
06年モデルには自動防眩機能とコンパス機能付きのバックミラーを装備。同じ風景が続く米国では、道路標識がない郊外だとうっかり逆方向に向かってしまうことがある
サンプルカーには米国で必須のクルーズコントロールが備わる。日本でも高速道路では意外と便利な装備だ
ところどころ見える「鉄板」の色がアクセント。小物入れは少ないが、センターにドリンクホルダーあり。アームレストの収納はやたら大容量

夏場ならオープンカー以上の楽しさ

いちおう4人乗りで、後席にもちゃんと人が乗れる。フロントシートが前に跳ね上がるため(特に助手席側は移動量が大きい)、乗り降りもそうたいへんではない。後席クッションの作りもまずまずで、短距離なら実用に適う。

幌を開けるとビュービューと吹きすさぶ走行風が気持ちよく、友達どうしでワイワイ乗ればこんなに楽しい乗り物はない。その点では下手なオープンカーを上回る。ただし、後席に人を乗せている場合は、せいぜい40km/hくらいが上限。冬場は死ぬほど寒い。

後部には鍵付きトランクがあるが、容量は小さい。リアシートはタンブル(背もたれを前に倒して跳ね上げる方法)で畳める
透明な塩ビの部分をいっぱいに取り、閉塞感を抑えたリアシート。スピーカー内蔵の頑丈なロールバーで囲まれるため、それなりに守られ感はある
ドアのストッパーはナイロン製のストラップ。ドア自体を簡単に外せるようにするための工夫だ

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「ウワッ」と発進、ゆったり巡航

言うまでもなくオンロードを飛ばすクルマではない。しかし操安性に慣れてしまえば、これはこれで別にOK。むしろ快適ですらある。

試乗したサンプルカーは2006年モデルの「スポーツ」(4AT)。TJ型ラングラーの正真正銘、最終モデルだ。エンジンはチェロキーと同じ、ただしローチューンの4リッター直6(175ps、29.6kgm)で、アクセルをあおるとボディをグラッと傾けるのがワイルド。この感覚が味わえる新型車は今や絶滅したと言っていいだろう。

副変速機を2WD-Hiにセットして発進。低回転のスロットルレスポンスはやたら鋭く、ウワッと車重1600kgほどのボディが前に出る。この「ウワッ」がアメ車らしい、あるいはアメリカ人が好きなパワー感だ。ただし、そこから上のスピードの伸びはない。ガツンと加速して、あとはユルユル走ってくれ、という、古典的アメ車風だ。

直進性はけっこうある。意外に快適

半世紀かけてオンロード性能を引き上げてきたジープだが、やはり基本は本格オフロード車。1.6トンの車重を2375mmの短いホイールベースで支え、サスペンションは前後リジッド。タイヤは225/75R15(75扁平!)と、まるでトラックのようなタイヤなので、高速走行は苦手。ブレーキも現代のクルマと比べるといまいち効かない。

しかしあくまで「Jeep」として冷静に判断すると、直進性そのものは立派なレベル。要するに実用的には困らないものになっている。おそらく旧世代のJeep(三菱ジープやCJ-7、初代ラングラーあたり)をよく知る人からすれば「すげー良くなった」と思える部分だろう。その気になれば100~120km/hくらいの巡航は平気だ。ドライバーはそれなりに運転に集中する必要があるが、先を急がなければ意外と快適である。風切り音だけはかなり大きいが、幌のバタツキはまったくない。

意外だったのは、助手席の方が運転席よりずっと快適だったこと。乗り心地もよく、見晴らしもよく、幌を閉めていても「楽しい」と思ってしまった。これは下手なスポーツカーと違って、乗り心地が良い、見晴らしが良い、そして守られ感がある、などのせいだろう。とりあえずデートカーに使っても大きな不満は出ないクルマだと思う(相手によるが)。

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車名:Jeep Wrangler Sport(2006年モデル)
型式:GH-TJ40S
寸法:全長3915mm×全幅1740mm×全高1800mm
ホイールベース:2375mm
車重:1610kg
駆動方式:パートタイム4WD
エンジン:4.0リッター直列6気筒OHV
最高出力:175 ps(129 kW) / 4600rpm
最大トルク:29.6 kg-m (290 Nm)/ 3600 rpm





トランスミッション:4AT
使用燃料/容量:レギュラーガソリン/71L
10・15モード燃費:6.2 km/L
タイヤ:225/75R15
発売時期:1996年(TJ型)
当時の新車価格:291万9000円(06年モデル、消費税含む)

 

試乗車スペック

初年度登録:2007年
販売価格:258万3000円(消費税込み)
走行距離:7,000km
ボディカラー:ソーラーイエロー
備考:運転席・助手席エアバッグ、ABS、CDプレーヤー、ワンオーナー
試乗日:2007年7月

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幌の耐久性は高い。あえて言えば駆動系をチェック

エンジンに不具合が出ても直すのは難しくない。あえて言えば心配はATくらいか。

ある意味、とてもマニアックなクルマだが、ここでは一般のユーザーが街乗り用に購入することを前提としよう。

まずソフトトップ(主に「スポーツ」)の場合は、気になるのが幌の状態だが、実はラングラーの幌は雨漏りの少ないことで定評があり、神経質になる必要はない。なお塩ビ部分は、屋外保管だと黄濁、硬化が避けられないが、それでも10年くらい透明な状態が維持できる。樹液や鉄粉(線路の近くは多い)など酸化する物質の付着を避けるのがコツだ。

 
サンプルカーの色は当時の新色ソーラーイエロー(ソリッド)。奥に見えるのはストーンホワイトの「サハラ」

ハードトップ(主に「サハラ」が装備)はできれば試乗してガタツキがないかチェック(購入後に調整してもらってもいいが)。着脱時に生じた割れやその補修跡もチェックしておこう。なお、幌を長期間畳んだままにした車両は、ビニール同士の癒着や、硬化が進んでいる場合がある。ハードトップがあれば、とりあえず幌はなしでもいいだろう。

マニュアル車の場合は、ごく簡単な試乗で構わないので、クラッチの操作感や駆動系の異音などをチェックしたい。駆動トルクが大きいので当然クラッチやミッション(シンクロ、デフなど)等への負担は大きいと思われる。電気系が弱いという話もあるが、高年式車にイモビライザーが付く程度で、構造は単純。総じてラングラーの場合、細かいことを気にしても仕方ない。一般ユーザーの場合はやはり高年式で、内外装がきれいで、実走距離の少ないものを選ぶ、という基本に尽きるだろう。


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お勧めは03年モデル以降

今から購入しようという人にお勧めするのは、AT車なら2003年以降の4AT仕様で、マニュアルが運転できるなら、「スポーツ」の5MT車や2005年に出た6MT車も面白い。あとは好みのボディタイプとカラーで決めてしまっていいだろう。

問題は仕様だ。一目ぼれで買ってしまうのもアリだが、ラングラーは仕様によって使い勝手が大きく変わる。特にルーフ形式は、ハードトップの「サハラ」がいいか、主にソフトトップ(幌)車が中心の「スポーツ」がいいかを見極めたい。屋根付きガレージの確保が難しく、オープンが絶対条件でなければ「サハラ」がいい。

ソフトトップ車にも今やエアコンがあるので、昔の三菱Jeepのように雨の日にビニールウインドウが曇って困る、ということはないが、気密性や雨音などはそれなりにワイルド。真冬は幌が固くなり、塩ビ製ウインドウが痛む可能性が高いので、開けるのは諦めたほうがいい(どのみち寒いので開けないと思うが)。

また、01年で正規導入は終わったフルロールアップウィンドウ仕様(通称ハーフドア:ウインドウ部が塩ビ製で、ジッパーで開閉)は一般の人にはお勧めしにくい。駐車チケットを取るときなどに、どうしても不便な思いをしてしまう。分かって乗るならいいが、やはりサンプルカーのようなフルメタルドア(フルフレームドア)仕様の「スポーツ」や「サハラ」を選んだ方が無難だ。

「Jeep」の精神を受け継いでいる

オリジナルJeepは、厳しい重量とサイズ制限をクリアし、北アフリカの砂漠から東南アジアの熱帯雨林まで走リ切れるクルマとして開発された。作りは一見簡素でも、細部まで徹底的に考え抜かれたもので、それは軍用ゆえに許されたコスト度外視、性能至上主義のたまもの。当時としては最先端の乗り物だったはずだ。

そんなJeep直系ゆえか、ラングラーにもどこか商業主義に背を向けたような、理想主義的な精神が残っている。そのあたりが、理屈では説明のつかないラングラーの魅力であり、今なおJeepの人気が高い秘密だろう。快適に長距離高速移動をしたい、という用途には向かないが、クルマとして魅力的かどうかと聞かれれば、断然魅力的だ。都会のランナバウトとして、ぜひカッコよく乗り回して欲しい。

文:DAYS・Niwa

 

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