掲載日 : 2007年08月30日
2004 スマート フォーフォー
4人のためのスマート
フォーフォー(forfour)はダイムラー・クライスラー(当時)がスマートブランド向けに開発した5ドアコンパクトカーだ。「for four」ではあるが、実車は5人乗り。フォーフォーの登場により、従来の2人乗りスマートは「フォーツー(fortwo)」とモデル名を変えている。
土台となるプラットフォーム(車台)は三菱コルトと共有するが、ボディはフォーツー同様に「トリディオンセーフティセル」なる強靭なモノコックボディと樹脂製ボディパネルから構成される。生産も欧州向けコルトと同じオランダのネッドカー(NedCar)工場で行われた。 エンジンはダイムラー・クライスラーと三菱がドイツに設立した合弁企業MDCパワー社(MDC=Mitsubishi/Daimler-Chrysler)が開発・生産。つまり今や昔話だが、ダイムラー(メルセデス・ベンツ)、クライスラー、三菱が同じ傘下にあった時代のモデルだ。
「1.3」と「1.5」でスタート、「1.3パッション」を追加
欧州では2003年、日本では2004年9月に販売をスタート。日本仕様は「フォーフォー1.3」(184万8000円)と「フォーフォー1.5」(228万9000円)の2種類で始まり、変速機はいずれもクロール機能(弱めのクリープ)付きの6速セミAT「ソフタッチ・プラス」だった。1.3リッターが95ps、1.5リッターが109psを発揮する。 欧州には1.1リッター3気筒(75ps)や.1.5リッター3気筒ディーゼルターボ(68psと 95ps)、そして5MTもあった。
「1.3」と「1.5」の違いはエンジンのほか、ガラス張り天井のパノラミックグラスルーフ(はめ殺し)、アルミホイール、革巻きステアリングなどの有無、スピーカー(2個から7個へ)、後席パワーウインドウ(1.3にもコンフォートパッケージとして追加可能)など。オプションで電動ガラスルーフやDVDナビ、1.5にはレザーシートがあった。 また、05年2月には1.3に15インチアルミホイールやガラスルーフ等を標準装備した中間グレード「1.3 パッション」(197万4000円)を追加した。
なおフォーフォーは2006年に生産を終了したが、日本では現在(2007年8月)も在庫限りで販売を継続している。(2007.08)

外板はポリカーボネイト製
デザインは超個性的だ。Bセグメント車(VWポロやプジョー206などのクラス)で、随一の個性派といってもいい。予備知識がないと気付かないが、実はサンプルカーの濃いグレー(チタニウムグレー)の部分はスチール製(トリディオン・セーフティセル部分)で、明るいシルバーメタリック(スターライトシルバー)の部分、つまりボンネット、フェンダー、ドア、バンパーなどは全てポリカーボネイトで出来ている。ポリカーボネイトは多少凹んでも割れないし、傷も付きにくい丈夫なプラスチック素材。1.3標準車の屋根も樹脂製だが、上級グレードはガラスルーフとなる(オプションで電動にも出来た)。
10×3で30通りのボディカラー
さらに面白いのが、このポリカーボネイト製パネルが新車時に10色も用意されて、自由に選べたこと。スチール部分もブラック(1.3用)、シルバー(1.5用)、チタニウムグレー(1.3と1.5にオプション)と3色あった。つまり10×3で30通りのカラーコーディネイトが出来たわけで、つまりはUカーのカラーにも30通りあるということ。購入後もパネル部分を簡単に交換できるので、「フェンダーだけ黒」とか「ドアだけ赤」とかにも出来る。
デザインも質感も、今の国産車はフォーフォーに負けている
今あらためてフォーフォーの内装を見ると、デザインが秀逸であるのに驚かされる。最近の国産車の、まるで仕事を放棄したかのような内装とありきたりな表面仕上げ(メタル調塗装やシボ付けのオンパレード)に比べて、この内装をデザインした人たちのココロザシは高い。フォーツー(もちろん初代)風の有機的なデザインを取り入れつつ(植物っぽいシフトノブやアームレストなど)、樹脂のチリ合わせや全体の統一感もよく配慮されていて、しかも機能的だ。でもって専用パーツだらけ。結局コスト的には厳しいクルマになったはずだが、スマートの理想主義はフォーフォーにも生きている。
フォーツーが異様に優れたシートを付けている以上、フォーフォーのそれも固めのクッションとまずまずのホールド性を備えているが、座り心地はフォーツーに似て、フォーツーほどではない。前席に前面およびサイドエアバッグ、フォースリミッター付きシートベルトと安全装備はバッチリだ。
セミATだが、実にキビキビ走る
試乗したのは「1.3」。スポーツカーのような6速セミATだが、クロール機能(弱めのクリープ)付きなので、トルコンATからの乗り換えでも違和感は少ない。アクセルを踏み込めば、1332ccの直4エンジン(95ps、12.8kgm)が欧州車にしては軽い1030kgのボディを力強く引っ張る。最近は燃費重視の国産新型CVT車に試乗することが多いせいか、久々に「生き生きした」エンジンのクルマに乗った、という感じだ。運転すると、BMW・MINIの走りを意識しているのが分かる。
1速→2速のシフトアップ時に軽い失速感があるのは、自動で変速してくれる「ATモード」でも、シフトレバーを前後に動かすMTモードでも同じ。セミATであることを意識させるが、ならばとアクセルの踏み方を変速時に少し緩める方法にチェンジすると気にならなくなる。これは特に難しいテクニックではなく、誰でも習得できるものだ。MTモードでも6500回転あたりで自動シフトアップ。スマートロードスターやアルファロメオではシフトダウン時に回転合わせのブリッピング(アクセルの空ぶかし)が派手に入るが、フォーフォーでは最小限だ。
軽快感のある走り
乗り心地は固めだが、さすがフォーツーの上級モデルだけにボディの剛性感が高く、シャキッとした感じが気持ちいい。サンプルカーは走行2万kmだったが、まるで新車同様の印象を受けた。ブレーキはこの1.3でも4輪ディスク。このクラスだとリアブレーキは輸入・国産限らずドラムブレーキが普通だ。
2004年のデビュー時にも1.3に試乗しているが、その時は高速道路を走り、6速トップでは約2500回転で100km/h巡航をこなすのを確認している。その時は風切り音が少々気になったが、今回のような一般道での試乗ではまったく気にならなかった。10・15モード燃費は15.6km/Lと優秀で、最近のようなガソリン高のご時世では嬉しい性能だ。
車名:smart forfour 1.3(2004年モデル)
型式:GH-454031
寸法:全長3790mm×全幅1685mm×全高1460mm
ホイールベース:2500mm
車重:1030kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直列4気筒DOHC
最高出力:95ps(70kW)/6000rpm
最大トルク:12.7kg・m(125N・m)/4000rpm
トランスミッション:6速セミAT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/47L
10・15モード燃費:15.6km/L
タイヤ:175/65R14
発売時期:2004年9月
当時の新車価格:184万8000円(1.3、消費税含む)
試乗車スペック
初年度登録:2004年
販売価格:102万9000円(消費税込み、新車保証残4ヶ月)
走行距離:2万3000km
ボディカラー:チタニウムグレー×スターライトシルバー
試乗日:2007年8月
セミATをチェック。エンジンの信頼性は高い
これを書いている07年8月現在、導入からまだ3年未満だが、セミATの不具合はたまにあるようだ。センサーが異常を感知してフェイルセーフモードに入る(ゆっくりと走ることは可能)ケースなどで、その場合は対策プログラムへの書き換えなどが行なわれる。ちなみにスマートのメーカー新車保証は登録時から3年間、走行距離4万km以内。サンプルカーにも取材時点でメーカー保証が残っていた。
カルトカーゆえの楽しさ
フォーフォーのオーナーはまず、そのデザインに惚れて購入し、その後運転の楽しさに惚れ直して、さらに愛着を深める人が多いようだ。ユーザー同士の情報交換も盛んで、いい意味でマニアックな世界となっている。面白いことにインターネットなどの世界ではこうしたマイナーなクルマの方が、実用的な「濃い」情報が多い。いわゆる「カルトカー」となっているのだ。名車の条件とは「見て楽しく、乗って楽しく、持って楽しい」だと思うが、フォーフォーは相手を選ぶがゆえに、その度合いが深い。
その上で、これからユーザーになる人の背中を押すのがUカー相場だ。新車は素の「1.3」でも184万8000円だったが(これもかなり戦略的な価格だった)、今回のサンプルカーは登録から3年未満、走行2万kmで(しかもコンディションはすごくいい)100万円少々。クルマ本来の出来から言っても、個体コンディションから言っても、これは「不当に安い」というのが率直な感想だ。新車時に定価で買った人には本当に申し訳ないのだけど。
文:Kei Niwa, DAYS


