GTIよりもお高いゴルフ
VWゴルフとは、欧州はじめ世界各国で大ヒットを飛ばした実用コンパクト・ハッチバック車である。奇をてらわないオーソドックスで真面目な作りや、欧州車ならではの足回りのしっかりした乗り味など、VWゴルフは多くの日本人に“欧州車の魅力”を伝える役目を果たしてきた。この頁を読んでいる方の中にも“ゴルフを通じて輸入車を知った”という方は少なからずいらっしゃるはずだ。
そんなVWゴルフにとって、日本国内における主な顧客といえば、『いままで国産車に乗っていた方』が中心になってくる。VWゴルフ4の場合で言うと、1.8~2.0リッターの小さなエンジンを搭載した車両に対して250万円オーバーのプライスタグが付られており、これは同クラス国産車とは比べるまでもなく高い。それはまさに「ブランド価値の差」だったり「本質的な走りの性能差」だったりするわけだが、少なくともVWゴルフというクルマにもっとたくさんの日本人が乗ってもらうには、視覚的にアピールしやすい「内外装の質感アップ」も欠かせない、とVW社は考えたと思われる。
そういう経緯を踏まえて先代(4代目)ゴルフから登場したのが、GTXというグレードである。元々VWゴルフには、走りの性能を向上させた最上級グレードとして“GTI”が存在しているが、非常にスポーティな性格ゆえに、(はじめての輸入車としてVWゴルフを考えているような)一般ユーザー向けとは言いがたい面もあった。VWゴルフGTXは、GTIのスパルタン色を薄め、よりラグジュアリーな方向に振ることで、主に日本車に慣れた日本人の感性に訴えかけようとしたグレードである。販売台数も少なく、中古車市場において今では希少といってもいい存在だ。
先代(4代目)ゴルフにGTXグレードが登場したのは1999年4月のこと。エンジンはGTIと同じ1.8リッターターボを搭載し、ミッションは前期型(取材車)は4AT、後期型には5ATが組み合わされていた。その後の2001年7月、ゴルフの主力グレードであるGLi、CLiが1.8リッターエンジンから2リッターエンジンになったが、GTIは1.8リッターターボのまま変更なし。当然、GTIのラグジュアリーバージョンであるGTXも1.8リッターターボのままだったが、2003年5月に登場した3.2リッターV6エンジン搭載の「R32」に“最上級ゴルフ”の冠を明け渡すこととなった。
2004年6月、5代目となる新型ゴルフ5が登場。翌2005年3月、最上級のラグジュアリーゴルフという位置づけで、GTXグレードが復活。遅れて6月に発売された新型GTIと同じ2リッター直噴ターボを搭載している。

ゴルフ4ならではの隙のないデザイン
全長4.2メートル弱、全幅1.7メートルちょいと、オーソドックスなCセグメント・モデル。ゴルフ3からのモデルチェンジの際、ゴルフ4はボディサイズが拡大され3ナンバー枠となっている。特にこれといった装飾的なデザインもなく、オーソドックスで地味な印象のボディだが、地味であるがゆえに、そのオーナーが知的に見えてくるのがVWゴルフのいい所。細部をよくよく見てみると、ボディパネルの合わせ目の精密さなど、非常にハイレベルな仕事をした痕跡が伝わってくる。専用アルミホイールが装着され、全体として高い質感を感じさせるモデルだ。ボディカラーは現車のサテンシルバーメタリックのほか、ブラックマジックパールエフェクト、インディゴブルーパールエフェクト等がラインナップされていた。
レカロのレザーバケット標準装備
ドライバーをすっぽりと包み込んでホールドするレカロ社製バケットシートを標準装備するのがGTXの大きな特徴のひとつ。表面はブラックレザーで覆われ、本革巻きステアリングも標準装備されるなど、高級車然とした押しの強さと存在感をかもし出している。ちなみにGTIに標準のレカロシートはファブリック仕様なので、GTXに対する満足度はますます高い、というわけだ。純正カーナビも標準装備となっており(ただしメディアはCD)、それなりのラグジュアリー感を味わうことができる。もちろん、VWゴルフならではの使い勝手の良さもそのままキープ。大人2人が快適に座れるリアシート(レザー表皮)や、大きな荷物も積み込みやすいラゲッジスペースなどもオーナーには嬉しいポイントのひとつだ。
ゆったりクルーズが心地いい
パワーユニットはGTIと同じ、ターボチャージャー付の1.8リッター20バルブエンジン。最高出力は150馬力だから、決して強大なパワーとはいえないが、ターボとは思えない滑らかな加速フィールは好印象。変速装置に関しては、GTIが5速マニュアルミッションなのに対し、GTXは4速AT。イージー&ラグジュアリーな乗り味を狙っていることが分かる。サスペンションは少々やわらかめ。トレッド幅を比較する限り、足回りはGTIではなく、どうやらGLiと共通しているように思われる。もっと硬めでコシの強いダンパーのほうがキビキビ走れるようにも思うが、この辺りもGTIとは一線を隔したラグジュアリー仕様になっている。コーナーを攻める走りではなく、ゆとりのエンジンパワーでゆったりクルーズ、というのが、このクルマのオイシイ走らせ方だろう。
素性の良さがにじみ出る乗り味
サスペンションはやわらかめ、とはいってもそれは硬派なGTIと比較した際の話。VWゴルフらしい、しゃきっとした節度ある走りはGTXにおいてもむろん健在だ。ボディ剛性についても、1世代前のモデルとは思えないほどしっかりしており、この辺りはさすがはVWゴルフ、である。運転時の見切りの良さ、取り回しのしやすさ、各部の操作のしやすさなど、ヒューマン・インターフェースもしっかり煮詰められており、違和感なく運転に集中できる。絶対的なスピードは大したことはないが、ドライバーの意のままに挙動をコントロールできるという点において、VWゴルフの優秀さが垣間見える。
VWゴルフはすでに5世代目に突入して久しいが(2007年9月現在)、今回取材した4世代目についても、既に基本性能やクオリティが完成の域に達している雰囲気がある。最新モデルと比較しても見劣りしないレベルに仕上がっているという事実に、改めてVWゴルフというクルマの完成度の高さを思い知らされた。
車名:Volkswagen Golf GTX(1999年モデル)
型式:GF-1JAGU
寸法:全長4155mm x 全幅1735mm x 全高1455mm
ホイールベース:2515mm
車重:1290kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直列4気筒DOHC20バルブICターボ
最高出力:150ps(110kW)/5700rpm
最大トルク:21.4kg・m(209.9N・m)/1750rpm
トランスミッション:4AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L
10・15モード燃費:10.4km/リットル
タイヤ:195/65R15
発売時期:1999年4月
当時の新車価格:335万円(消費税別)
試乗車スペック
初年度登録:1999年
販売価格:117.6万円 (消費税込み)
走行距離:54,000km
ボディカラー: サテンシルバーメタリック
試乗日:2007年8月
エンジンの状態とATシフトショックに注意
ターボエンジンということで、こまめなオイル交換がエンジンの調子の良し悪しを左右するモデルだ。まずはエンジンをかけ、調子を確認しておきたい。ゴルフ4のGTXは前期型が4AT、後期型が5ATとなるが、いずれの場合も変速時のシフトショックの有無を確認できればベターだ。また、内装は本革シートとなるため、特に運転席シートのやれ具合をチェック。ただしレザー表面のコンディションが良好な車両はいまや決して多くはないのが現状、ということも頭に入れておきたい。購入後にキチンとケアしてあげたいところ。特にゴルフ4になってからは、ボディの建てつけもしっかりしており、経年劣化でボディがきしむ、といった心配はしなくてもよさそうだ。
希少&不人気だからこそ狙う手もアリ
ゴルフ4のGTXはデリバリー台数に限りがあったこともあり、中古車市場の在庫は多くないのが現状だ。またGTI等と比べると人気もそれほど高くはなく、おかげで車両価格は非常にリーズナブルになっている。ただし、購入後はきちんとメンテナンスすることを前提にしたほうがいいだろう。たとえば予算が120万円なら、90万円の車両を選んで残りの30万円をメンテナンス費用に充てる、という方法を取れば、それなりに愉快なゴルフライフを満喫できるはず。ターボモデルの場合、前オーナーのメンテナンス如何によってコンディションが異なってくるため、見ただけで即決、という買い方は×。GTXのセールスポイントであるレカロ製レザーシートも、破れや穴などがないか確認しておこう。
文・写真:DAYS・Yasuhara



