Z3の跡を継ぐ2人乗りオープンスポーツ
2002年にデビューしたZ4(ゼットフォー)はBMWの2人乗りオープンスポーツで、Z3の後継モデル。駆動方式はもちろんフロントエンジン・後輪駆動のFR。ベースは「E46型」3シリーズ(1999~2006年)で、エンジンは直列6気筒のみだ。
日本では03年1月に受注開始し、6月からデリバリーが始まった。生産はZ3やX5と同じ米国サウスカロライナ州のスパータンバーグ(Spartanburg)工場で行なわれる。
当初は「2.5i」「3.0i」、そして「2.2i」の3モデル
03年初年度は多少発売に時間差はあるが、以下のラインナップでスタートした。
- 「2.5i」(450万円 ※) 2.5リッター直6(192ps)+5AT
- 「3.0i」(550万円 ※) 3リッター直6(231ps)+5AT
- 「3.0i」(560万円 ※) 3リッター直6(231ps)+6速SMG(セミAT)
- 「2.2i」(398万円 ※) 2.2リッター直6(170ps)+5AT <03年10月発売>
06年にマイナーチェンジ。「M」と「クーペ」が登場
06年4月には新型の直6ユニット+6ATを搭載した「2.5i」(177ps)と「3.0Si」(265ps)でラインナップを再編。「2.2i」は廃止。この時からステアリングに待望のパドルシフトが付き、「2.5i」にも電動トップが標準装備になった。
同時に、BMWのモータースポーツ部門であるM社(M Gmbh)が手がけた3.2リッターエンジン(343ps)+6MTを積む「Mロードスター」が加わったほか、ファストバッククーペの「クーペ 3.0si」ならびに「Mクーペ」が登場している。(2007.09)

「好きか、嫌いか」迫ってくる
2002年デビューから5年も経つのだが、デザインの奇抜さは相変わらず。現在のBMWデザイン部門を統括するクリス・バングルが監修したもので、一時は賛否両論というか、拒絶する声も多かったが、どうだろう、いまだもって古びて見えないのは確か。「飽きられるより話題になった方がいい」と腹をくくり、「好きか嫌いか、どっちなんだ」と返事を突きつけてくる攻めのデザインだ。
ヒトが乗っているとカッコいい
取材してて気付いたのはこのZ4、人が乗っているとやたらカッコよく見えること。カッコいい人が乗ればもちろんカッコいいのだろうが、全然パッとしないUカー試乗記スタッフが乗っていても、それなりに似合って見えてしまう。醜男(ぶおとこ)さえ引き立ててしまいそうな、不思議な能力がZ4にはある。
質感・高級感も文句なし
ヘアライン加工されたアルミパネル(「2.2i」ではオプション、標準はメタル調塗装)がT字型に走るインテリア。変に高級ぶっていないのが、スポーツカーらしい。お金を掛けている部分や車両価格が違うので良い悪いではないが、国産オープンスポーツはもちろん、グレードや年式によって仕上げがマチマチの某高性能スポーツカーより質感やセンスを感じる。
低くてタイトだが、居心地がいい
着座位置は「低め」ではなく本当に低いが、乗り降りは割と楽だし、視界も悪くない。足もとは広く、ポジションもほぼ完璧に決まる。「着るように乗る」とはまさにこのこと。一体感があり、しかも着心地がいい。
デビューから4年、いまだ最速
オープンカーに日々乗ると分かるが、電動ルーフの開閉タイムは実はけっこう重要なポイントだ。これが遅いと、開けるのが億劫(おっくう)になり、やがて「雨が降りそうだから」「(開閉するのが)恥ずかしいから」「信号がすぐに変わりそうだから」などの理由で、閉めたまま走ってしまう。こうならない電動トップの目安は遅くても25秒以内、15秒以内なら文句なし、というのが個人的な物差しだ。
中でもZ4の電動トップは抜群に速い。電動式は「2.2i」や「2.5i」でオプションだったが、06年からは全車に標準装備となっている。スイッチを押し続けるだけのフルオート(手動のロック解除が不要)にして、カタログ数値は「約10秒」、実際には8~9秒といったところ。感覚的には一瞬に近い。走行中は開閉不可だが(現行ポルシェ911は50km/h以下で可能)、停止中に「D」レンジのまま操作できるだけで十分ありがたい。2007年9月現在、担当者の知る限り、ロック手動タイプではホンダS2000の6秒が最速のはずだが、ロック自動タイプではZ4が最速だ。
ランフラットタイヤを装着
ランフラットタイヤ(パンクしても一定の距離を走れる)が標準のため、スペアタイヤは無し。おかげでトランク容量は260リッター(幌を降ろすと20リッター減)と、この手のFRスポーツとしては大きめだ。例えばパンク修理キットを採用した現行マツダ・ロードスターは150リッターに過ぎない。
なお、ランフラットタイヤはパンクに気付きにくいため、指定数値より空気圧が低下した場合は、ランプとブザーが警告してくれる。室内にタイヤ空気圧基準値のプリセット用ボタンが備わる。
3シリーズよりはっきり味わえる、極上のシャシー性能
サンプルカーは05年式の「2.2i」。走行1万3200kmというコンディションの良い1台だ。Z4の取材は03年デビュー時に試乗した「2.5i」以来で、この「2.2i」は初めてだが、久々に試乗したZ4の印象は、簡単に言って「シャシーがイイ」。3シリーズよりコンパクトなボディ、より低い重心、体感的に遜色ないボディ剛性ゆえに、E46型3シリーズはもちろん、E90型3シリーズよりもはっきり、BMWならではのシャシー性能が味わえる。極端な話、現行3シリーズに乗って「なんかよく分からない」と思う人でも、Z4なら理屈なしに「イイモノ」だと分かるはず。乗り心地も良く、足を固めただけのスポーツセダンなどよりずっと快適だ。
またコーナーでステアリングをわざと素早く切ると、「お見事!」と思わず声が出るくらい、間髪を入れず後輪が絶妙な量で流れ、すぐさまピタッと流れが止まる。この動きは3シリーズセダンのベーシックモデルでも味わえるが、Z4は重心が低い分だけ動きがナチュラルで、安心感がある。オープンスポーツでこういう自然なハンドリングが味わえるクルマは、ありそうでなかなかない。
飛ばさなくても楽しい
2.2リッター直6(170ps、21.4kgm)だと、正直言ってパワーは並み。スムーズな回転感とスポーティなサウンドは味わえるが、ズバッと前方を貫くような豪快なダッシュは効かない。これは車重が1380kgもあるのと、1シリンダーあたりの排気量が362ccしかないという小排気量6気筒ゆえ。また、5ATをマニュアルシフト(BMW流に引いてアップ、押してダウン)した時のレスポンスも半テンポほど遅い。
しかしこれが逆に「ゆったりスポーティな走りを味わおう」と思わせる。実際、今回はあまりの気持ちよさに「ずっと試乗していたい」と思ったほど。「飛ばさなくても楽しい」点はオーナーの間でも評価が高いようだ。速さ、パワー、刺激で上回るライバル車はいくつかあるが、Z4の走りは、甘すぎず、辛すぎず、脂っこくもなく、でも美味しい。
車名:BMW Z4 2.2i(2005年モデル)
形式:GH-BT22
寸法:全長4100mm×全幅1780mm×全高1285mm
ホイールベース:2495mm
車重:1380kg
駆動方式:後輪駆動(FR)
エンジン:2.2リッター直列6気筒DOHC
最高出力:170ps(125kW) / 6100rpm
最大トルク:21.4kgm (210Nm)/ 3500rpm
トランスミッション:5速AT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L
10・15モード燃費:9.5km/L
タイヤ:225/45R17(標準:205/55R16)
発売時期:2003年10月(2.2i)
当時の新車価格:417万9000円(04年6月モデル、標準仕様、消費税含む)
試乗車スペック
初年度登録:2005年
販売価格:309万9000円(消費税込み)
走行距離:1万3200km
ボディカラー:チタンシルバー
備考:以下のオプションを装備
【レザーパッケージ、17インチアルミホイール、電動ソフトトップ、キセノンヘッドライト】
試乗日:2007年9月
エンジン、シャシーは頑強
デリバリーが始まったのは03年後半からで、07年10月現在、最大4年落ちとなるZ4だが、クルマの性格から言って、ヘビーに使われたクルマは少ない。今回乗ったサンプルカーは1万3000km台だったが、エンジンはもちろん、シャシーのヤレの少なさは驚異的。10年後に乗ると、どう感じるかが楽しみなくらい頑強だった。特にこの「E46」系のがっしり感は、それ以前のBMWの比ではない。直6エンジンに関しても心配不要だが、いずれにしても当然ながら、予算の範囲内で年式は高く、走行距離は少ない方がいい。もちろん信頼できるお店で買うことが必須だ。
購入時に見るべき点は、内外装のほか、下回り(車高が低いのでそれなりにヒットしやすい)、幌(手動と電動の両方がある)の開閉など。補修してもらうべきは補修し、目をつぶるべきところは目をつぶり、納得して購入しよう。
あえて「2.2i」や「2.5i」
購入時に迷うのが、排気量だろう。「2.2i」「2.5i」「3.0i」(もしくは「3.0si」)があり、Uカー購入の原則としては「上級グレードの方がお得」なのだが、個人的には「もしパワー信仰がないのなら」という条件付きで、「2.2i」「2.5i」もOKと思う。Z4は絶対的な速さが売りのクルマではないし、日本の高速道路なら「2.2i」でも性能は十分。むしろこれくらいのパワーの方が全開に出来て面白いと思う人が多いだろう。もちろん高回転まで回せば十分に速い。
あえて5AT。電動トップはぜひ
もう一つの悩みが変速機。前期型は5AT、06年以降の後期型は6ATが主力だが、5速でも大きな不満はなく、無理に6速にこだわる必要はない。後期型6ATのパドルシフトはうらやましい装備だが、必須というほどでもない。また「3.0i」の前期型には6速SMG(セミAT)もあるが、フォルクスワーゲン/アウディのDSG(ツインクラッチ式セミAT)ほど万人向けではないから、お好み次第ではどうぞ、というところ。
なお、純粋なMT車は06年以降のMロードスターもしくはMクーペのみ。これだと価格もパワー(343ps)も乗り味も完全に別クラス。「趣味はクルマ」と言える方はどうぞ。
Z4でパワーよりもむしろ大事なもの。それは電動トップだ。前期型は下位グレードでオプションだったので、付いていない可能性がある。電動ならば購入後、確実にオープン頻度と「気持ちいい! 人生って素晴らしい!」と思う回数が増えることを保証しよう。
文:Kei Niwa, DAYS


