掲載日 : 2007年12月20日
2001 ポルシェ ボクスター 2.7
ポルシェのミッドシップ・オープンスポーツ
ボクスター(Boxster)は、水平対向6気筒エンジンをミッドシップに搭載した2人乗りオープンスポーツカー。ポルシェの代名詞でもある「911」(リアエンジンで2+2の4人乗り)に対してエントリー的なモデルだが、ピュアスポーツとしての魅力に不足はない。初代ボクスター(986型、1996~2004年)は多くの部品を同世代の911(996型、1998~2004年)と共有している。
初期は2.5。99年以降は2.7と3.2。2002年からガラスウインドウ
1996年秋の発売当初は2.5リッター(204ps)でスタート。1999年秋に登場した2000年型から2.7リッター(220ps)となり、同時に3.2リッター(252ps)の「ボクスターS」を追加。 2002年秋発売の2003年型から、それぞれ228psと260psにパワーアップし、同時にリアウインドウが塩化ビニール製から熱線入りガラス製となった。初代ボクスターの累計生産台数(世界)は約16万台と言われている。
2005年型から構成部品の80%を変更した通称「987」型に進化。これは、多くのパーツを部品点数ベースで50~55%ほど共有する911のモデルチェンジ(996型→997型)に準じたもので、ヘッドライトは従来の「涙目」から、カレラGT風(ウルトラマン風?)になっている。翌年には兄弟車でクーペモデルの「ケイマン」も登場した。(2007.12)

涙目ヘッドライトが初代ボクスターの印
磨り減った石鹸みたいに薄く長いボクスターのプロポーションは、人によっては911シリーズよりカッコよく見えるはず。往々にして小型ミッドシップ車は、見た目が妙に寸詰まりになったり、荷物を積むスペースがほとんど無くなったりするものだが、ボクスターは見た目のバランスが良く、室内空間、積載性、衝突安全性もしっかり確保している。オープン/クローズドに関わらず、常にグッドルッキンな点も嬉しい。
インテリア質感は初期と末期で大違い
同じ986ボクスターでも、初期と末期ではインテリア質感がかなり異なり、初期の「2.5」はかなりプラスチッキー。ユーズドカーの今でこそ「オープンスポーツなんだから、それでいいじゃん」と思えるが、諸経費込み600万円オーバーだった新車当時はいろいろ言われていたものだ。
それも2000年モデルの「2.7」と「S」あたりからは改善され、2003年以降の後期型ではさらに質感をアップしている。2005年からの2代目ボクスターでは911(997型)のベースモデルに迫るレベルだ。
個人的には2001年式であるサンプルカーのレベルで十分。豪華で高級なインテリアが欲しいなら、他に選択肢はいくらでもある。
ビニールかガラスか、それが問題だ
幌は電動(ロック操作は手動)で開閉スピードは12秒と速い。これは前期型のビニールウインドウでも、後期型のガラスウインドウでもまったく同じだ。2代目ボクスターではさらに50km/h以下でなら走行中の開閉まで可能になっている。
サンプルカーは2002年以前のビニールウインドウ。この場合は、オープンにする時は必ず途中でいったん止めて、ビニール窓が変な風に折れ曲がらないか確認した方が良い。特に気温が低くてビニールが固くなる真冬は、オープンにするのを諦めるか、室内のヒーターで十分に温めてからにするのがおすすめ。
最も乗りやすい2.7
試乗したのは2001年式のボクスター2.7(前期型)。8年にわたる初代ボクスターのモデルライフのうち、ほぼ真ん中に位置するモデルだ。市場には5AT「ティプトロニック」も多いが、サンプルカーは5MT。
今回の担当者は初期の2.5・MTから最新のケイマンSまで、ボクスター系のほぼ全仕様に試乗しているが、今回の2.7(前期・後期)がボクスターの中で一番、リラックスして運転できる。発進はイージーだし、トルクも十分。ボディの剛性感、ミッドシップ独特のバランスのいい操縦性、軽くて正確なステアリング、カチッとしたブレーキ、操作系など、まさに「こうあるべき」ものの集合という感じ。快適性という点でも、空冷時代の911(964や993)あたりより良好だと思う。
これぞまさしくスポーツカー
そして決定的なのが高回転での刺激的な走り。フラットシックス独特の「クワァーーン」という吸気音と共に、一般的なV6やV8では太刀打ちでない快音と鋭さで瞬間的に回りきる。中吹かしの「ファン!」という炸裂音も、これまた刺激的。同じようなことを911やフェラーリでやると、すごく暴力的になってしまうが、ボクスターはそこまでやっても爽やかなのがいい。ドライバーが感じるほど速くないとも言えるが、もちろんこの2.7でも最高速は250km/h。「これぞスポーツカー」という走りが200%誰でも味わえる。
なおサンプルカーは外装が黒ということで、フロント部の飛び石キズの多さが気になったが(ポルシェではまったく珍しくない)、動的コンディションで気になる部分はほとんどなかった。展示状態からエンジンを掛けた当初はタペット音があったが、しばらく走行するうちに消えてしまった。ポルシェの場合、完全冷間時のエンジン異音や気難しさには、それほど神経質になる必要はない。
車名:Porsche Boxster 2.7(2001年モデル)
形式:GF-98665
寸法:全長4315mm×全幅1780mm×全高1290mm
ホイールベース:2415mm
車重:1300kg
駆動方式:ミッドシップ後輪駆動(MR)
エンジン:2.7リッター水平対向6気筒DOHC(水冷)
最高出力:220ps(162kW) / 6400rpm
最大トルク:26.5kgm (260Nm)/ 4750rpm
トランスミッション:5速MT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/65L
10・15モード燃費:8.8km/L
タイヤ:前:205/50ZR17/後:255/40ZR17(オプション)
最小回転半径:5.4m
発売時期:2001年9月
当時の新車価格:550万円(消費税含まず)
試乗車スペック
初年度登録:2001年
販売価格:345万円(消費税込み)
走行距離:3万2000km
ボディカラー:ブラック
備考:標準ハーフレザーシート、社外HDDナビ、17インチアルミホイール
試乗日:2007年11月
多くの対策品が出ている
ユーズドのポルシェ選び、ボクスター選びは難しい。最近の水冷エンジン世代のトラブル事情も刻々と変わっているので、ここでは紹介しきれないが、基本的なところには触れておこうと思う。
まずエンジン・駆動系は一般的に丈夫と言われており、特に2.7以降のモデルは信頼性も高まっている。冷却水のエア噛み→警告ランプ点灯というトラブルがあるとも聞くが、基本的にはエア抜きするだけで対処可能なもの。マイナートラブルに対しては、すでに多くの対策品が出ている。
なお、ポルシェ側は徹底したメインテンスフリーを謳っており、例えばカム駆動はベルトではなくタイミングチェーン、点火系はプラグ以外はメンテナンス不要で、プラグも9万kmないし4年毎の交換、オイル交換も3万kmないし2年毎で良い、としている。つまり国産車よりメーカー指定の交換スパンは長い。
ソフトトップに関して
気になるのはソフトトップ(幌)だろう。初期の1997~98年式は幌の可動システムに問題があり、無理に開閉して壊れてしまうトラブルが多発したようだが、これもすでに対策品が出ている。ここが交換済みかどうかは要確認で、もちろん試しに開閉してみた方がいい。なおボクスターでは幌が直接の原因で、雨漏りすることはまずない。
もちろん前期型ボクスター(2002年まで)であれば、ビニールウインドウの状態は要チェック。この部分と幌は一体式で、折り畳んだ時に折れ曲がってしまうために折れ目が付きやすく、真冬には割れてしまうこともある。もちろん樹脂だからキズが付いたり、曇ったりもする。幌と一体式であるため、正規の修理を行なうには幌一式の交換が必要になり、工賃込みで30万円程度が必要となるようだ。ただし幌の修理業者に持ち込めば、ウインドウだけの交換も可能とのこと。
後期型のガラスウインドウ幌への交換という手もあるが、フレーム構造がまったく異なるため高額になり、それよりも2003年以降のモデルを買った方が手っ取り早い。最近ではアメリカ製の社外品ガラスウインドウ幌があるので、興味のある人は調べてみるといいだろう。いざとなれば純正のアルミ製ハードトップを装着するという手もあるが、35万円と高価で、中古の流通量も少なく、またフィッティング次第でギシギシと音が出やすいのが欠点。1人での着脱も難しい。
あとは、とにかく内外装がきれいなもの、そして記録簿がしっかり付いてるものを選ぶこと。整備・修理は基本的に正規販売店(ポルシェ・センター)で受けているため、素性がはっきりしているクルマには必ず記録簿があるはず。
同価格帯の新車スポーツカーが気の毒
中古になっても値段がさっぱり落ちないポルシェ。特に空冷末期にあたる993系の911はかなりの高値をキープしている。そんな中でボクスターは300万円台が増えて、ますます買いやすくなった。6~7年落ちで300万円台というと「高い!」と思うかもしれないが、フラットシックスの噛み付くようなレスポンス、世間一般のオープンカーとは格の違う剛性感、オープンドライビング、そしてバランス抜群の操縦性を味わうと、この価格はむしろバーゲンに思える。正直、同価格帯で買える他の新車スポーツカーが気の毒に思えることもある。
さて、そんな中でもお勧めのボクスターは、無難なところで2.7/S(3.2リッター)の「後期型」(2003年以降)だ。よく言われるとおり、2.5リッターはボトムエンドトルクが薄く、最近の市販車ではベスト・オブ「エンストしやすいクルマ」の一台。また信頼性とコンディションの点でも、後の2.7に準じてしまう。ただし、純粋なクルマ好き、ライトウエイトスポーツカー好き、低予算の場合には「2.5の5MTもアリ」。エンストしやすい特性も、運転の練習になっていいではないか(なお、半クラッチは極力使わないのがポルシェ乗りの流儀)。「S」もいいが、軽快感が薄れるし相場も維持費も高めなので、パワーを求めないなら「2.7」で十分。もちろん、マニュアルミッションが乗れる人ならぜひ5MTを。逆にオートマ限定の人には5MTとの体感差が少ないという点で、「2.5」ではなく、「2.7」もしくは「S」の5ATがいい。
「後期型」にこだわるのは、もちろんリアウインドウがガラス製だから。特にオープンにして楽しみたい人には必須条件と言っていいと思う。逆に「オープン走行は暖かい季節に、気が向いた時にするだけ」という場合は、あえて前期型ビニールウインドウでもいいのでは。そういう気楽な乗り方も、オープンカーと長く付き合うためのコツだと思う。
文・写真:Kei Niwa, DAYS


