掲載日 : 2008年03月19日
2001 プジョー 306 カブリオレ
仏伊共作の4人乗りオープンモデル
306シリーズはフランスのプジョー社が1993年から2001年にかけて生産したコンパクトカーで、ハッチバック、セダン、ステーションワゴン等のバリエーションを持つが、中でもスペシャルメイドとなるのが4人乗りオープンモデルの「306カブリオレ」だ。
306のスタイリングはプジョーと縁の深いイタリアのピニンファリーナ社が手がけたものだが、カブリオレはボディ自体も同社製で、その証としてボディ側面には「Pininfarina」の紋章が輝く。プジョーがピニンファリーナ社に少量生産かつ特殊な架装の必要なモデルの生産委託を行うのは、1950年代の403シリーズあたりから続く伝統だ。
前期型「N3」と後期型「N5」がある
306カブリオレは日本でも大ヒットした205カブリオレの後継として、1994年8月に日本でデビュー。1998cc・SOHCエンジン(120ps)、4AT、右ハンドルという仕様で、車体価格は360万円(消費税含まず)だった。
1997年には306シリーズ全体でマイナーチェンジを実施し、カブリオレも内外装デザインを変更(特にフロントグリル)、エンジン換装(1998cc・DOHC、132ps)等を受けた。なお、その形式名から306シリーズの前期型は「N3(エヌサン)」、後期型は「N5(エヌゴ)」とも呼ばれる。
2001年に306シリーズ自体は307シリーズに移行するが、カブリオレの販売は2002年まで継続された。その後はやや小型の206CC(2001~07年)と、より大型で上級の307CC(2003年~)という、いずれも電動メタルトップを備えた「クーペ・カブリオレ」に分化している(2008.01)

美しいピニンファリーナ製ボディ
サンプルカーは2001年式で後期型の「N5」。フロントグリルの形状を見れば、前期型との判別は簡単だ。伸びやかな2ドアオープンボディはピニンファリーナ製らしくクラシカルで均整が取れている。4シーターカブリオレでこれほど繊細な美しさを持つものは、もう現れないかもしれない。
オープン時に幌がボディ内に完全に収納されるのは、「スパイダー」と呼ばれるイタリア製オープンカーの流儀に則ったもので、もちろんピニンファリーナのこだわりでもある。しゃれっ気を台無しにするロールバーのようなものはない。
写真は同時期の106にもあった「サンダンスイエロー」。他に赤(ルシファーレッドなど)、青系(チャイナブルーなど)、グリーン、黒、シルバー系、ゴールド、オレンジなどがあった。
ピニンファリーナと言えば……
ピニンファリーナ社といえばフェラーリのデザインで有名だが、もちろん他のイタリアンメーカー(アルファロメオ、マセラティ、ランチア、フィアット等)や、プジョー、ボルボ、キャデラック等とも何度かコラボレーションを行っている。日本車メーカーでは特にホンダとの関係が密接で、シティカブリオレ(1984年)が有名だ。ただし公表されていないものも多く、その関り方もアイディアのみ、デザインのみ、コンセプトカー製作、市販車のデザイン・設計、そして生産までなど様々だ。
どことなく懐かしい6番台プジョーの世界
カブリオレはレザーシートが標準となるが、インパネの作りは306そのもの。最終モデルともなると装備自体は21世紀基準だが、2008年の基準で見ればやはり「懐かしい」という印象。低めの着座位置の割に、広々した室内。大柄なクッションで、よく体をホールドするシート。およそ高級感など目指してもいない樹脂類など、この時代のプジョー車独特の居心地の良さがある。末尾が7となった現代のプジョーとは、いろいろな意味で別世界だ。
衝撃的なほどのしなやかさ
試乗したのは初年度登録から約6年、走行3万6000kmのN5型で、しかもプジョー認定中古車(初年度登録から7年以内の良質車で、1年間・走行距離無制限保証)というグッドコンディションの1台だ。後期型N5の2リッターエンジンはDOHC化されており132ps、18.7kgm。車重は1310kgで、いわゆる「1トンあたり100ps」の指標を満たし、実際の動力性能にも不満はない。クルマの性格とパワーとのバランスが完璧に取れている。
なにより驚いたのが、走行感覚の圧倒的な滑らかさ。何が滑らかかと言うと、それはもうエンジンの回転感から4ATの変速フィール、乗り心地に至るまで「全て」で、まったくカドというものがない。特に乗り心地はハーシュネス(路面からの突き上げ)知らずという感じで、まるで芝生の上を転がってゆくように走る。オープンボディのせいか、普通の306ハッチバックより、さらにしなやかだ。
サスペンションは、当時「猫足」と形容されたプジョー伝統の前ストラット、後ろフルトレーリングアーム。特にリアの「フルトレ」はシンプルな構造ながら、大きな負荷がかかってもドカンと底付きしたり、腰砕けになったり、ゴトゴトいったりしない優れもの。現代のハイスピード走行を想定したサスペンションが失った、しっとりした動きがあじわえる。
車名 : Peugeot 306 Cabriolet(2001年モデル)
形式 : GF-N5C
寸法 : 全長4180mm×全幅1695mm×全高1380mm
ホイールベース : 2540mm
車重 : 1310kg
駆動方式 : FF(前輪駆動)
エンジン : 2リッター直列4気筒DOHC・4バルブ
最高出力 : 132ps(97kW) /5500 rpm
最大トルク : 18.7kgm (183Nm)/ 4200rpm
トランスミッション : 4速AT
使用燃料/容量 : プレミアムガソリン/50L
10・15モード燃費 : - km/L
タイヤ : 195/55R15
最小回転半径 : 5.45m
発売時期 : 1994年8月(N3型)、1997年8月(N5型)
当時の新車価格 : 364万円(2000年モデル、消費税含まず)
試乗車スペック
初年度登録 : 2001年
販売価格 : 138万円(消費税込み)
走行距離 : 3万6000km
ボディカラー : サンダンスイエロー
備考 : プジョー認定中古車保証、CDチェンジャー、社外DVDナビ、ETC付き
試乗日 : 2008年2月
直すべきは直し、目をつむるべきはつむる
設計年次が90年代前半という下一桁6番台のプジョーであり、最終でも01年式か、02年式となる。よってマイナートラブルを恐れていては何も始まらない。とにかく内外装コンディションと機関の調子が良ければ、ひとまず合格とすべきだ。自ずと購入対象に挙がる97年以降の後期型(N5)は、前期型(N3)より細々と改良されており、マイナートラブルの発生頻度は一般的に少ないと言われている。
もちろん、商談の前にいちおう車両の状態は把握しておきたい。簡単なところで、タイミングベルトの交換歴(新車時から無交換なら納車前に必ず交換を)。そしてエアコン、電動トップ、パワーウインドウ(特にクォーターウインドウ)等の動作チェックなど。幌の耐久性は意外に高いが、保管方法や扱い方で大きく持ちが変わってくるのでよく見ておきたい。状態にバラツキが出るのはレザー内装も同様だ。
多少のヤレは気にせず、刑事コロンボをお手本に
今回のサンプルカーは、現在市場に流通している希少な306カブリオレの中でもベストコンディションの1台と思われるが、やはり1世代前のモデルだけに、スペック(年式や走行距離)的にも、見た目(内外装の状態)的にも、コンディションは良ければ良いほどいい。リフレッシュすべき部分が多いと、何かと後で手間やお金がかかるからだ。
とはいえ、あまりに手がかかりそうなものはともかく、「ボディカラーが好み」とか「このたたずまいが……」みたいなきっかけで、軽く乗りたいクルマでもある。多少のヤレなど気にせず、プジョー403カブリオレを足にする「刑事コロンボ」風に、気取らず乗るのが長く付き合う秘訣だろう。いざとなれば都市部にプジョーディーラーは少なくないし、巷には306自体のメカニカルな情報やノウハウ、パーツ類も多く出回っている。価格も底を打っており、クラシカルな味わいの306カブリオレに乗るなら、ここ数年がチャンスだ。
Text&Photo:DAYS


