初代は400万台を記録したベストセラー
パンダは伊フィアット社のコンパクトカー。初代(1980~2003年)は、名匠ジョルジェット・ジウジアーロ(ジュジャーロとも表記)の設計・デザインで知られ、今ではオリジナル・パンダ、オールド・パンダ、旧パンダ、旧パンなどと呼ばれる。23年間の累計生産台数は400万台以上と途方もなく、日本にも並行輸入を含めて1万台以上が輸入されたと言われている。正規輸入は98年までで、ポーランドでは2003年頃まで生産された。
今回とり上げる2代目パンダは2003年9月に登場。こちらは初代パンダと区別して「ニューパンダ」とも呼ばれる。2004年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを見事受賞した。
日本仕様は1.24リッター直4+5速セミATがメイン
日本での発売は2004年7月31日。日本仕様は1240cc 直4(60ps)+5速セミATが主力で、当初は標準車(157万3950円)、および大型ダブルサンルーフの「スカイドーム」、5:5分割可倒式リアシート、ルーフレール等を装備した「Plus」(169万9950円)の2グレードでスタートした。
2005年4月には「Plus」と入れ替わる形で、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)、14インチアルミホイール(標準は13インチスチール+キャップ)等を加えた「Maxi(マキシ)」を発売。今回試乗したサンプルカーはこれにあたる。
悪路も平気な「4×4」、おしゃれな「ALESSI」等を追加
「Maxi」と同時に、ビスカスカップリング式フルタイム4WDで5速MT・左ハンドルの「4×4 Climbing(フォーバイフォー・クライミング)」(188万8950円~)も発売された。これは160mmの最低地上高を確保し、フロントのアプローチアングルを24度、リアのデパーチャーアングルを42度、車体真下のランプブレイクオーバーアングルを24度としたSUV仕様。リアサスもトレーリングアームの独立式に変更されている。カッコだけのクロスオーバー車とは一線を画す仕様で、イタリア陸軍も採用しているという。
2006年3月にはアレッシィ社がデザインを手がけた、その名も「ALESSI」を追加。イタ車らしい明るい色使いの内外装を備える。カラーはオレンジ(内装オレンジ)、グリーン(内装グリーン)、ブラック(内装グリーン)の3種類が導入された。
2007年モデルからは標準車にESPを、「Maxi」にはフルオートエアコン(ダスト・ポーレンフィルター付)とリアパーキングセンサーを装備。また2007年10月には、1.4リッターDOHCエンジン(100ps、13.3kgm)を積み、6速MT・右ハンドル仕様とした130台の限定車「100HP」(207万円)を導入。専用の内外装や足まわり(スポーツサスペンション、リアディスクブレーキ、15インチアルミホイール)を装備するもので、言わばフォルクスワーゲン・ルポGTIのイタリア版といえるものだった。(2008.04)

明るく楽しいイタリアンデザイン
ボディサイズは全長3535mm×全幅1590mm×全高1535mm(ルーフレール付きは1570mm)と、軽自動車(全長3.4m以下×全幅1.48m以下)より一回り大きい程度。現在でも新車で買える4人乗りの普通車としては、ほとんど最小といえるものだろう。角張ったデザインの割に、愛嬌があるのは先代譲り。パステル調の色使いを含めて、ところどころにイタ車らしいデザインが発見できる。
色づかいに一目ぼれ
形だけ見れば機能性一本槍のインテリアだが、スカッと抜けたスカイブルーのシート生地がとにかく強烈。この鮮やかな発色はイタ車以外ではそうそうお目にかかれないものだ。内装色は他にイエロー、そして「アレッシィ」ではオレンジやグリーンになる。樹脂パーツの質感は決して高くないが、質感や高級感などより重要な、多くの日本製コンパクトカーに欠けているものがパンダにはある。
フロントシートのホールド性は特に良くないが、座り心地はまずまず。着座位置が高いのに加えて、イタリア車らしくステアリングが遠い感じはある。エアバッグは前席フロント×2、前席サイド×2の合計4個を装備。前席シートベルトはロードリミッター&プリテンショナー付きとなる。
のどかな走りが楽しめる
試乗したのは2006年式の「Maxi」。「マキシ」と聞くと何やら高性能なものを連想してしまうが、実際には電動ダブルサンルーフ「スカイドーム」、14インチアルミホイール&タイヤ、ESPなどを備えた上級グレードだ。
1.24リッターSOHC直列4気筒エンジンは、最高出力60ps、最大トルク10.4kgmと決して高性能とは言えないもので、車重も960kgと1人前にある。発進そのものは力強く、すぐに法定速度まで達するが、その後は基本的にトコトコとジョギングするがごとし。最高速がメーカー発表値(欧州仕様の1.2ガソリン車)で155km/hと言えば、なんとなくパワー感が想像つくだろう。とはいえ軽自動車のような慌(あわただ)しさはなく、のどかに楽しさが持続する。ちなみに新型フィアット500(2008年)の「1.2」(69ps、10.4kgm)のユニットはこれを少しチューンしたものだ。
オートマチック&「CITY」モードで街中ベスト
アルファの「セレスピード」同様、フィアットの5速セミAT「デュアロジック」にもクリープはないが、これは慣れ次第。またアクセルべた踏みだと1速→2速へのシフトアップ時に例の失速感が出るが、これもほんのちょっとアクセルを戻すだけで解消できる。キビキビ走るにはMTモードもいいが、ATモードも気楽で悪くない。電動パワステはとても軽く、これをさらに軽くする「CITY」モードは面白いほどステアリングをクルクル回せて駐車時には便利だ。
オーバースピード気味でもヒヤッとする動きが出ないという意味で、操縦安定性も適度に確保されている。高速道路や山岳路をハイスピードで駆け抜ける、というわけにはいかないが、街中で不満を感じることはない。ただし以前試乗した標準車の13インチより、今回乗った14インチ装着車の方が心なしか印象は良かった。
車名:Fiat Panda-Maxi(2006年モデル)
形式:GH-16912
寸法:全長3535mm×全幅1590mm×全高1570mm
ホイールベース:2300mm
車重:960kg
駆動方式:FF(前輪駆動)
エンジン:1.24リッター直列4気筒SOHC・2バルブ
最高出力:60ps(44kW) /5000 rpm
最大トルク:10.4kgm (102Nm)/ 2500rpm
トランスミッション:5速セミAT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン/35L
10・15モード燃費:-km/L
タイヤ:165/65R14
最小回転半径:-m
発売時期:2005年4月(Maxi)
当時の新車価格:179万9700円(2005年、消費税含む)
試乗車スペック
初年度登録:2006年
販売価格:152万円(消費税込み)
走行距離:7000km
ボディカラー:スパークリングブルー(メタリック)
備考:新車保証残りあり(09年1月まで)
試乗日:2008年3月
(当然ながら)同じパンダでも初代とは別物
まだまだ初代パンダの人気は高く、メンテナンス情報も極めて豊富で、今でも「旧パン」を扱った本が新刊で出るほど。裏を返せばそれだけトラブルが多いということだが、むしろ「修理してでも乗り続けたい」クルマということだろう。
さて、設計年次が20年以上も新しい新型は、同じ「パンダ」でも信頼性や耐久性は別次元だ。2004年導入ということで年式もまだまだ新しく、現代のクルマとしては構造もかなりシンプルな方だ。「イタ車は維持がたいへん」と訳知り顔で言うことは多いが、そもそもパンダはイタリア本国では庶民の生活車であり、そうそう壊れたり多額の修理費がかかったりするはずはない。
よって2008年現在で言えるチェックポイントは、内外装がきれいなもの、エアコン等の電装系がちゃんと作動するもの、走っても異音等がないものを選ぶ、といった定番に尽きる。上記の試乗インプレッションで書いたように、セミAT独特の特性はあるが、基本的には誰が運転しても安心・快適に走るクルマだ。可能ならフィアット正規ディーラーで新車時の運転感覚を経験しておいてから探してみるのも良いし、ついでにディーラーで「Uカーでもいいと思ってます」と率直に相談してみるのもアリだろう。昔からイタ車を扱っているベテランセールスマンには面白い人が多く、そういう人との出会いもイタ車にまつわる面白さだ。
なお、2008年4月現在、新型パンダはメーカー保証(発売時は2年間・6万5000km保証、現在は3年間・10万km)が失効したもの、有効なものが混在し、年式による価格のバラつきも大きい。予算との兼ね合いもあるが、出来れば何らかの保証が1年程度あると安心だ。またカム駆動はタイミングベルト式なので、いちおうその交換歴をチェック。5万km程度で無交換なら、納車前にベルト関係周辺一式を交換しておくのが望ましい。
一般的には「Maxi」と「ALESSI」がお勧め
ニューパンダ購入時の最大テーマ、それはまず、どのボディカラーを買うか、だろう。例えば日本導入時には全部で11色もあったし、アレッシィには3色、4×4には6色と、販売台数が少ない割に色数が豊富にある。
グレードに関しては、初期費用を抑えて乗るなら標準グレードを、背もたれを倒してガラスルーフ越しに空を眺めるなら「Plus」を、それに加えてアルミホイールも欲しいし奥さんも乗るというのならヒルホルダー付きの「Maxi」を選びたい。もちろん、オレンジやグリーンのカラーコーディネイトに惚れてしまったら「ALESSI」しかない。あえてお勧めするなら、装備の揃った「Maxi」と「ALESSI」だ。
クルマ好きなら「4×4クライミング」
(あのゲレンデヴァーゲンの)シュタイア・プフ社製パートタイム4WDを採用していた旧「パンダ4×4」の正統な後継者といえるのが、ニューパンダの「4×4クライミング」、およびスカイドーム付の「4×4 クライミング Plus」だ。フィアット版ジムニー(もしくはジムニーワイド?)などと言えばジムニーファンから異議が出そうだが、某外資系動画サイトでチェックできる「パンダ4×4 対 レンジローバー」という映像がなかなか面白い。パンダ4×4が最新のレンジローバーに伍(ご)してオフロードを激走しているもので、多少判官びいきなところもあるが、それなりに説得力はある。
気になるところとしては、車重が1060kg/1080kg(Plus)と1割程度重くなり、駆動抵抗も増える割に、エンジンは60psのままなこと。ゆえに高速道路はもちろん、「ヒルクライムは大丈夫か?」と思わないでもないが(全体にローギアリングにはなっている)、まあこの際そんなことには目をつぶりたい。しかも「4×4」は、日本向けニューパンダで唯一の「左ハンドル・5MT」車だ。左ハンドルのみだった旧パンの運転感覚が忘れられない人には「これしかない!」と言っておこう。
Text:Kei Niwa, DAYS


