掲載日 : 2008年05月01日
2003 BMW 318ti M-Sport
3シリーズベースのFRハッチバック
BMW「3シリーズ」ベースの3ドアハッチバック、それが3シリーズの「ti」(ティーアイ)だ。見た目はハッチバックながら、3シリーズ譲りのFR(フロントエンジン・リア駆動)というのが最大の特徴。1シリーズ(日本導入は2004年10月)登場以前の、BMWのエントリーモデルでもある。
もともと「ti」の名称は、BMWの傑作スポーツセダン「2002」(ニーマルマルマルニ、通称マルニ)の高性能版「2002ti」(1968年~75年)に由来するもの。同社にとっては思い入れの深い呼び名だ。
約20年のブランクを経て登場した初代3シリーズ「ti」(96年まで「ti コンパクト 」と称した)は、1994年に欧州で発売され、1995年に日本導入をスタート。この初代モデルは外観こそ当時の3シリーズ(E36型)のハッチバック風だったが、シャシー自体は一世代前の3シリーズ(E30型)がベースだった。
2代目3シリーズ「ti」のモデル概要
そして今回とり上げるのが、2代目の「ti」だ。日本では2001年に発売。プラットフォームは当時のE46型3シリーズをベースとし、さらに世界初の「バルブトロニック」機構を採用するなど、エントリーモデルでありながら最新の技術が盛り込まれている。
2001年11月導入時のラインナップは、1.8リッター直4(115ps)の「316ti」(5AT・右ハンドル)、2リッター(143ps)の「318ti」(5MT・左ハンドル/5AT・右ハンドル)の2グレード。いずれも車名と排気量が一致しないことに注意されたい。当時の新車価格(消費税含まず)は、316tiが299万8000円、318tiの5MTが313万円、318tiの5ATが323万円と、おおむね300万円前後だった。
2002年5月には全グレードにエアロパーツ、ホワイトレンズ、17インチアルミホイール、スポーツシート、専用トリム等を備えた「Mスポーツ」仕様が設定されている。
その後、3シリーズ「ti」は2004年秋の1シリーズ導入に伴い、販売を終了。事実上、この1シリーズが3シリーズ tiの後継車となっている。(2008.04)

ハッチバックボディに丸型4灯ライトが個性的
E46型3シリーズのボディ後半部分をスパッと切り落とし、クーペ風にアレンジしたスタイリングだが、それ以上に目を引くのが小径丸型4灯ヘッドライトの顔だろう。当時これを見た時は、かなり特異な印象を受けたものだが、不思議なもので2008年の今あらためて見ると、愛嬌や未来感があって面白い。思えばこの後に出てきたE60型5シリーズ、E65/66型7シリーズ、Z4等のデザインはさらに過激だったわけで、逆に先代のE46型3シリーズやE36型3シリーズなどはクラシカルに見えてしまう。
全長は4.3メートル弱と最近のVWゴルフ並み。オープンスポーツを除けば、FR車でこれだけコンパクトなものは、そうそうないはずだ。
BMW流の、すぐになじめる運転環境
運転席まわりはE46型3シリーズと基本的に同じ。品質感や高級感より機能性を重視したもので、ドライバー側に傾けたセンターコンソール、素っ気ないレタリング(文字や数字)や操作系などは、この頃のBMWに共通する作りだ。オプションで加飾パネルも装着できたようだが、この簡素な雰囲気も悪くない。FRスポーツセダン系のお手本とも言うべき運転環境は、「M」モデルにも通ずるもの。特にこの「M-Sport」仕様のスポーツシートならドライビングポジションは完璧に決まる。
サンプルカーは希少&お勧めの5MT・左ハンドル仕様
サンプルカーはクルマ好きなら素通りできない5速マニュアル・左ハンドル仕様の318ti M-Sport。取材時点で5年落ち・走行3万2000kmだったが、社外サブウーファー等で強化されたオーディオ(前オーナーはオーディオ好きでもあったようだ)を除けば、内外装のコンディションは上々。「イモラレッド」の退色もまったくない。
「ti」に乗るのは、2002年の316ti (1.8リッター・115ps・5AT)試乗以来。その時の印象としては、「駆けぬける歓び」を味わうにはやや非力だったこと、エンジン振動がほとんどなく快適だったこと、操縦性が良かったこと、などなど。
で、今回の318ti・5MT(143ps、20.4kgm)だが、まずはマフラーからの野太い音に驚く。社外マフラーか? と思うほど「ブボボボン」と低音を響かせ、ちょっと楽しい。もちろん純正マフラーなので絶対的な音量は小さく、走り始めればメカニカルノイズの方が主になる程度だ。
繊細な運転感覚が味わえる。「M」よりもひょっとすると楽しい?
低回転でのトルク感はまさに2リッター級で、DSCをオフにすればコーナーの立ち上がりでリアの245/40R17タイヤを軽く空転させるくらいの力がある。5MT・左ハンドルといっても、運転はまったくイージーで、国産・マニュアル車がちゃんと乗れる人なら、走り出して3分で慣れるだろう。
車重は1350kgと少々重めで、パワー感自体は「高回転を封印した時のアルテッツァ」といったところ。左ハンドル・5MTだったせいか、心なしか往年のE36型3シリーズクーペ「318is」にも近い印象を受けた。快適性も同時代の3シリーズとおおむね同等。音楽や会話を楽しみながら、往復500kmくらいの日帰り高速ツーリングにも行けそうだ。
今回は軽く様子を見た程度だが、ハンドリングはいつものBMW風。ボディが軽いせいか、やはりこれもE46型というより、E36型の318isに近い感覚だった。セオリー通り荷重移動や姿勢変化を使ってやれば、ゼロカウンターでコーナーを「駆けぬける」ことも可能で、その時の挙動はBMWらしく穏やかで繊細。M3のようなシャープな動き、それに自慢できるスペックやバックストーリーこそないが、個人的にはこっちの方が運転していて楽しい。
車名:BMW 318ti M-Sport(2003年モデル)
形式:GH-AU20
寸法:全長4265mm×全幅1750mm×全高1410mm
ホイールベース:2725mm
車重:1350kg
駆動方式:FR(後輪駆動)
エンジン:2リッター直列4気筒DOHC・4バルブ
最高出力:143ps(105kW) /6000rpm
最大トルク:20.4kgm (200Nm)/ 3750rpm
トランスミッション:5速MT
使用燃料/容量:プレミアムガソリン / 63L
10・15モード燃費:13.0km/L
タイヤ:前:225/45R17、後:245/40R17
最小回転半径:4.9m
発売時期:2003年4月
当時の新車価格:347万円(2003年、消費税含まず)
試乗車スペック
初年度登録:2003年
販売価格:148万円(消費税込み)
走行距離:32000km
ボディカラー:イモラレッド
備考:左ハンドル、キセノンヘッドライト付き、社外オーディオ、ETC、
試乗日:2008年4月
主流は2002年式と2003年式。今のところは内外装チェックが主
この2代目316tiおよび318tiは、実質的に2002年式と2003年式がボリュームゾーン。つまり2008年4月現在、主流は5~6年落ちとなる。おそらく5AT車の場合は女性ユーザーが多いはずなので、内外装がきれいなら、見えない部分のコンディションも悪くないだろう。あえて挙げれば、エアコンの効き、パワーウインドウの作動、ホイールベースが長いので下回りを打っていないか、バッテリーは交換済みか、といったところか。キセノンヘッドライトなど、オプション装備の有無もチェックしたい。走行距離が進んでいれば(5万kmくらいが一つの目安だろう)、ダンパー交換の要・不要といったことも考慮したい。またM-Sport仕様の17インチホイールの場合は、タイヤ交換時に標準の15/16インチより高くつくことを覚悟しておこう。
この318tiはBMWの中で、電気的にも機械的にも最もシンプルなクルマ。やっかいなトラブルなど起きようがない。乗り方や気遣いの有無にもよるが、少なくとも新車時から10年、あるいは15万kmくらいまでなら、それほど維持費や修理費の負担を感じることなく乗ってゆけるはずだ。
FFハッチバックより面白い選択
316ti(5ATのみ)に関して言えば、新車当時はシャシーが勝った感じで正直印象は薄かったが、Uカーでは逆にそれが好材料ともなる。というのも、BMWに限らず一般的に長期間キープするのが難しいのは、エンジンの性能やコンディションより、ボディの剛性「感」や足回りの安定「感」の方だからだ(例外もあるが)。余分なパワーを望まなければ、316tiで何ら問題ない。
318ti(5AT)がおそらく最も一般的な仕様だろう。乗った感じは他の3シリーズ直4搭載車と大差ないから(本当はあるのだろうが直接比較しなければ、の意)、あとはスタイルの好みや使い勝手でどうぞ、となる。あえて人と違う「ti」をスニーカーのように気軽に使いこなす、というのは楽しそうだ。同時に、意識的にしろ無意識的にしろ、FF車とは違うBMWの走行感覚を今や100万円台で味わえてしまうわけで、その意味ではたいへんお買い得だ。
318ti(5MT)は、通好みの1台
今回の主役である318ti(5MT)は、直4を積んだ3シリーズセダンや、クーペの5MTなどに近い運転感覚を持つもの。なので、あとはボディタイプの好み、使い方、予算に合わせて選べばよい。「143psじゃ、やっぱり非力では?」という心配に対しては、「一般道で楽しむならこれで十分」と答えたい。「やっぱBMWは直6じゃない?」という声に対しては、「少なくとも今回の318ti・5MTなら、2リッタークラスの直6よりパンチがあるし、振動面で遜色ない」と言える。
さらに、経済性や使いきれるパワーといった「実」をとるなら、M3よりひょっとするとハッピーかもしれないし、最近乗る機会のあった新型135iクーペ(3リッターツインターボ・6MT)より、実は断然面白かったりする。また、Uカー相場も3シリーズクーペの5MTよりリーズナブルだ。 「ハチロク」(言うまでもなくFR最後のトヨタカローラ・レビン/トレノ「AE86」のこと)のような国産小型FR車のナチュラルな運転感覚が忘れられないユーザーには、特に自信をもってお勧めしたい。
Text:DAYS, Kei Niwa
Photo:DAYS


