掲載日 : 2008年05月29日
2002 アウディ S3
A3ベースの高性能モデル。クワトロの6MTのみ
アウディS3はコンパクトハッチバック「A3」をベースとした高性能モデル。メルセデス・ベンツの「AMG」、BMWの「M」に相当するアウディの高性能シリーズ「S」の最小モデルだ。
エンジンは当時のゴルフ(IV)GTIや初代A3 1.8T、初代TT 1.8T等、フォルクスワーゲン/アウディの高性能モデルに広く使われていた5バルブの1.8リッター直4ターボがベース。左ハンドル・6MT・2ドアのみで、駆動方式はフルタイム4WD「クワトロ」である。
初代は2001年に発売開始
日本では2001年1月に発売。最初に導入されたこのモデルは最高出力210ps、最大トルク27.5kgm。新車価格は420万円(消費税抜き)だった。
2002年1月にはアウディTTクワトロ(クーペ&ロードスター)と同等の225ps、28.5kgmにパワーアップ。10・15モード燃費も10.8km/Lから11.6km/Lに伸びている。内外装や装備に変更はない。(2008.05)

あくまでさりげなく高性能
外寸自体はA3はもちろん、プラットフォームを共有するゴルフIVあたりに近いが、そこはやっぱり「S」シリーズ。17インチの大径ホイールを収めるべく、前後フェンダーが微妙に張り出した専用ボディとなっている。子供っぽさ、おたくっぽさはまったくない。後で触れる運転感覚もそうだが、S3は全てにおいて「さりげなく高性能」というコンセプトが貫かれている。
インテリアもさりげなく上質
ダッシュボード周辺は当然ながら普通のA3と共通だが、レザーとアルカンタラのセミバケットシート、「S3」のエンブレムを鋳込んだ3本スポークステアリング、そして6速MTのシフトノブというあたりが、ハイパフォーマンスを暗示する。ただしゴルフGTIやR32のような体育会系ではなく、あくまで品のいいスポーティさ。インテリアのデザインテイストがクルマのキャラクターにマッチしている。日本車だと往々にしてこの辺りがチグハグになってしまうものだが。
快適、豪快、リニアな加速が楽しめる高出力ターボエンジン
サンプルカーは225ps、28.5kgmにパワーアップ後の2002年モデル。走行距離は3万9000kmだが、しっかりしたボディと操作系はそれを感じさせない。新車時にあったと思われるガッチリ感、シャッキリ感こそないが、S3の本質とも言える「小さな高級車」感が走り出した瞬間から味わえる。
1.8リッター直4の5バルブ(吸気3+排気2)・シングルターボエンジンは、ゴルフGTIなら150ps、A3/A4/TTの1.8Tなら180ps、そしてこのS3(後期型)とTT 1.8Tクワトロが225psとなっている。パワー特性は今や懐かしい、ターボが効いてきた時の二次曲線的な加速感が味わえるもの。かといって、いわゆるターボラグはなく、低中回転でもかったるさは無い。爽快な吹け上がりと乗りやすさを兼ね備えた、とても洗練されたエンジンだ。正直、最近のノッペリした吹けあがりの直噴ターボより気持ち良さは上かもしれない。
R32とは性格が真逆
この日はシャシーおよび駆動方式が「遠い親戚」関係にあるゴルフのR32(2003年式)も同時に取材しており、図らずして比較試乗となったのだが、やたらレスポンスの鋭い自然吸気3.2リッターV6(241ps)のゴルフR32から乗り代えると、アウディS3の直4ターボは非常にマイルドで運転に気を使わない。パワーウエイトレシオ(6kg/ps台前半)は同等、6MTのフルタイム4WDという点も同じだが、運転した印象はほとんど真逆だった。
ゴルフR32は確かに刺激的だが、アウディS3は明らかに長距離をハイスピードかつ疲れ知らずで移動するためのツーリングカー、いわゆるGT(グランド・ツーリング)カーとなっている。前オーナーによって装着された「レグノ」(ブリヂストンのハイグレードタイヤで主に快適性を重視している)あたりを見ても納得だ。高性能な割に10・15モード燃費が11.6km/Lと良好なことや、燃料タンク容量が63リッターと大きめなのも嬉しいところ。
車名 : Audi S3(2002年モデル)
形式 : GL-8LBAMF
寸法 : 全長4150mm×全幅1765mm×全高1400mm
ホイールベース : 2520mm
車重 : 1460kg
駆動方式 : フルタイム4WD
エンジン : 1.8リッター直列4気筒DOHC・5バルブ・ターボ
最高出力 : 225ps(165kW) /5900rpm
最大トルク : 28.5kgm (280Nm)/ 2200-5500rpm
トランスミッション : 6速MT
使用燃料/容量 : プレミアムガソリン / 63L
10・15モード燃費 : 11.6km/L
タイヤ : 225/45R17
最小回転半径 : 5.1m
発売時期 : 2002年1月(改良型225psバージョン)
当時の新車価格 : 424万円(消費税別)
試乗車スペック
初年度登録 : 2002年
販売価格 : 212万円(消費税込み)
走行距離 : 39000km
ボディカラー : シルバー
備考 : 社外HDDナビ、TV、ETC、
試乗日 : 2008年5月
購入後のメンテナンスを見据えて
2008年5月現在、初代S3はすでに5~7年落ちだが、このクラスにして新車価格が400万円超という高額車であり、もともとの品質も高いため、今回のサンプルカー同様、状態の良いクルマが多いと思われる。内外装のコンディションが良く、走行距離が少なく、エンジンや駆動系にヤレがなければ、合格と考えていいだろう。変速機も普通の6MTだから、電気的な不具合とは無縁だ。計器類やスイッチなど電装系にマイナートラブルはあるようだが、自然治癒することもあるレベル。神経質になる必要はない。ちょっとした不具合が出ても、的確なトラブルシューティングと処置で直ると考えていいだろう。
もちろん、そろそろリフレッシュが必要な時期ではあり、かなりのハイパワー車でもあるので、購入後には随時、タイヤ、ブレーキ、各種オイル、ダンパーなど、走りに直結する消耗品を新品に変えてゆく、という心構えが欲しい。S3自体は日本国内では超希少車の部類だが、エンジンや駆動系のメカニズムはこの時代のフォルクスワーゲン/アウディ車でかなりポピュラーなものだから、情報やノウハウは応用できると思われる。
どちらかと問われれば後期型だが
上で書いてきたように、初代S3には2001年モデルの210psバージョン(前期型)と2002/2003年モデルの225psバージョン(後期型)がある。おそらく15psの差は直接乗り比べないと分からない程度だが、10・15モード燃費も10.8km/Lから11.6km/Lへとアップしているので、一般的には後期型の方が良さそうに見える。ただ、実際の燃費にそれが反応されるかどうかは別。特にこだわる必要は無いと思う。
大人のための全天候型コンパクト高速ツアラー
いわゆるホットハッチと言われるカテゴリーがあるが、S3はそれとは違い、言ってみればアウトバーンなら時速200km/h前後で快適に巡航し、その気になれば1日に1000kmでも楽に移動できるパーソナルなGTカー、といったところだ。フルタイム4WDによる「雨でも雪でOK!」という全天候型走破性(スタッドレスを履けば、雪道にもかなり強いようだ)、高速道路でも余裕の動力性能と高速安定性、そして最小回転半径5.1メートルとカローラ並みに小回りの効くボディ、そして実用性を兼ね備えたクルマというと、他になかなかない。
いや、実は国産の三菱ランサーエボリューションやスバル・インプレッサWRXといった、国産2リッターターボ4WDもまさにそれで、思えばアウディS3だって、同じくWRC(といっても1980年代だが)で活躍したターボ4WDのアウディ・クワトロの血と精神を受け継ぐモデルだ、と言えなくもない。
しかしそういった国産ラリーホモロゲ車と、現代のWRCラリーカーとは無縁のアウディS3では決定的に違う点がある。それはS3が大人のための快適なツアラーとして最初のコンセプト段階から作りこまれていることだ。いわば「小さな高級・高性能車」。研ぎ澄まされたもでのではなく、ある程度経験と年齢を重ねた時に良さの分かるクルマだろう。
Text:Kei Niwa, DAYS
photo:DAYS


