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Uカー試乗記

Uカー試乗記

掲載日 : 2008年07月19日

2004 ボルボ S80 2.9

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ボルボの最高級セダン。直6の前輪駆動。安全&環境性能も強くアピール

今回のサンプルカーは2004年式の「2.9」。ボディカラーはホワイトパール

S80(エスハチマル)は1998年にデビューしたボルボの最高級セダン。FR(フロントエンジン・後輪駆動)の960セダン/S90の後継車だが、S80はFF(前輪駆動)となり、しかも直列6気筒エンジンでは異例とも言える横置きとするなど、技術的に極めて独自性の強いモデルとなっていた。ステーションワゴンはなく、4ドアセダンのみとなる。

衝突安全性はボルボの旗艦モデルにふさわしく、当時の市販車で最高レベルを達成。さらに有害オゾンの分解作用を備えたラジエーター「スモッグ イーター」や国土交通省の低排出ガス車基準クリアなど、今でこそ当たり前になった環境性能に対する意識の高さも当時から抜きん出ていた。

主力は直6NAの「2.9」と同ターボの「T-6」

日本では1998年秋に2.9リッター直6の「2.9」(4AT)と2.8リッター直6ターボの「T-6」(4AT)を発売。さらにエントリーモデルとして、2.4リッター直5の「2.4」(5AT)も一時設定されたが、こちらは2001年頃に販売を終了している。

その後は仕様や装備を充実させつつ、直6の自然吸気とターボという2モデル体制を基本的に維持。また日本仕様は、最後までFFのみだった。2006年に8年ぶりに全面改良され、2代目へと進化している。(2008.07)

 

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高級車らしさの中に、スポーティな遊びも

落ち着きのあるフロントに対して、独特のスポーティさが印象的なリアビュー

基本的には風格や高級感を重視した外観だが、特徴的なのはリアフェンダーからリアコンビランプまでのショルダーライン。ここを張り出させるのはボルボの伝統的なモチーフだが、後ろでスパッと断ち切る処理は1960年代のイタリア車でよく使われた「コーダトロンカ」風で、スポーティさと洒落っ気を感じさせる。

1998年のデビュー当時、大柄に思えたボディサイズ(全長4850mm×全幅1835mm×全高1450mm)も、10年経った今では現行クラウンと大差ないレベル。「2.9」の最小回転半径は5.7メートルだが(「T-6」は5.9メートル)、輸入車の「最高級」セダンとしてはむしろコンパクトな方で、取り回しも意外に悪くない。

 

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北欧車の高級とは温かみのこと

いやみのない高級感が漂うS80のインパネ。電動昇降式モニターを備えたナビシステムもオプションもしくは一部に標準装備という形で用意された

一見してボルボと分かるインテリアだが、高級感はV70の1枚も2枚も上。ウッド調パネルやレザーの質感も高い。ドイツ車のようにメカメカした質感を追求しておらず、むしろ使い勝手や分かりやすさ、温かみのある作りを重視している点がボルボやサーブといった北欧車の特徴だ。

なお、本来「2.9」はファブリックシートが標準だが、サンプルカーは工場オプションの「エレガンスパッケージ」装着車。その内容は、本革シート、バイキセノンヘッドライト、CD/MDハイパフォーマンスオーディオ(9スピーカー、225w)、助手席パワーシート、リアサイドウインドウ&リアウインドウ用ブラインド(日除け)、電動サンルーフ、フォグランプ、17インチアルミホイールなどとなる。オプション価格は37万8000円(2004年当時)と圧倒的にお買い得で、少なくとも2004年当時導入された「2.9」の多くはこの仕様と思われる。


 

電動サンルーフも「エレガンスパッケージ」に含まれる。フロントウインドウ上部のシェイド処理は真夏の日差しをよく遮ってくれてありがたい存在
オーディオ性能の高さを訴える高級車は多いが、サンプルカーの225W「ドルビーサラウンドプロロジック」システムは期待を裏切らない
ウッド調シフトノブは全車標準。マニュアルモードはあるが、操作性は今ひとつ
 
センターコンソールに備わる運転席用ドリンクホルダーは、ボタンを押すとバネ仕掛けで展開する収納式。その後ろにもう一つ固定式がある
フロントシートには被追突時のムチ打ちを軽減する機構「WHIPS」を採用。身体の動きに合わせて瞬時にリクライニングを行い、衝撃を吸収する
サイドブラインド(これもセットオプション)が備わる後席。サイド&カーテンエアバッグ、そして全席にプリテンショナー付3点式シートベルトを標準装備する
 
荷室側からレバーを引き、6:4分割で背もたれを倒せばこの通り。組立式家具ならお持ち帰りできる。アームレスト部のトランクスルーも可能
引き出して使うナイロン製の「仕切り」(ラゲッジホールディング・ストラップバンド)。ちょっとした荷物を固定するために使う
床下にはテンパースペアタイヤ、そしてバッテリーが備わる
 

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4年落ちの「2.9」に試乗。まずは軽ーいステアリングに驚く

大柄なボディの割に、走りは軽快。パワーは十分だが、ドイツ車のように高速スタビリティ命という感じではない

サンプルカーは2004年式の「2.9」で(取材時点で約4年落ち)、走行3万7000kmという車両。なお、担当者が初代S80に乗るのは今回が初めてであることを最初にお断りしておく。

走り始めてのっけから驚くのがパワーステアリングの軽さ。その操舵力は、国産車を含めても最も軽い部類。ドイツ車のようにガシッとステアリングを握ってグイッとやると回しすぎ?になるから、指先で優雅に軽く回す、という感じがちょうどいい。

 

パワフルかつ「絹のように」スムーズな直6

コーナーではフロントの重さとパワステの軽さがやや気になる

「2.9」が積む2.9リッター直列6気筒エンジン(196ps、28.6kgm)は、ボルボ車でおなじみの直5に1気筒足したもの、というか、元々この直5と直6は基本設計を共有するモジュラーユニットだ。もちろん回転バランスに優れるのは直6の方で、その緻密で超スムーズな回転感はV6ではまず出せないもの。語弊を覚悟で言えば、BMWのストレートシックスよりシルキーかも、と思った。

4AT自体は古めかしいが、エンジンのレスポンスはかなり鋭い。ダンパーやタイヤの性能が新車レベルをどれほど維持しているかはプロでも判断が難しいところだが、このパワーにしてFFということもあり、「シャシーよりエンジンが勝ったクルマ」という印象をもった。これでターボの「T-6」(272ps、38.7kgm)あたりだと、一体どんな印象となるのだろうか? いずれにしても初代S80は、余裕のパワーと快音でゆったり優雅に走らせながら、路面の凹凸をシャットアウトしたフラットな乗り心地を堪能する、あるいはパッセンジャーをもてなす、という乗り方が似合いそう。

 

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車名 : Volvo S80 2.9(2004年モデル)
形式 : LA-TB6294
寸法 : 全長4850mm×全幅1835mm×全高1450mm
ホイールベース : 2790mm
車重 : 1630kg
駆動方式 : 前輪駆動(FF)
エンジン : 2.9リッター直列6気筒DOHC・4バルブ
最高出力 : 196ps(144kW) /5200rpm
最大トルク : 28.6kgm (280Nm)/ 3900rpm


トランスミッション : 4速AT
使用燃料/容量 : プレミアムガソリン / 80L
10・15モード燃費 : 8.3km/L
タイヤ : 225/50R17(標準は215/55R16)
最小回転半径 : 5.7m
発売時期 : 1998年9月
当時の新車価格 : 588万円(消費税込み、2004年4月モデル)


試乗車スペック

初年度登録 : 2004年
販売価格 : 218万円(消費税込み)
走行距離 : 37000km
ボディカラー : ホワイトパール
備考 : エレガンスパッケージ(本革シート、バイキセノンヘッドライト、ハイパフォーマンスオーディオ、電動サンルーフ、17インチアルミホイールなど)、センタ-スピーカー、社外HDDナビ・TV、バックモニター、ETC
試乗日 : 2008年6月

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電装系は一通り動作確認。試乗可能なら足回りも

振動の少ない直6ゆえにマウントなどへの負担は少ないと思われる。カムはベルト駆動で7~8万kmで交換したいところ

初代S80は1998年から2006年まで8年間も販売されながら、途中で目立ったマイナーチェンジを一度も受けていないという、ボルボらしいと言えばらしいが、一般的には珍しいパターンのモデルだ。当然その間も小改良は受けており、経年劣化の要素も考えると、やはりモデルライフ後半の車両の方がマイナートラブルは少ないよう。「故障が多い」という声と「意外と壊れない」という声が混在するのは、別にS80に限ったことではない。

チェックポイントは主に電装系で、エアコン、オーディオ、各種スイッチ、計器類、電動シート、パワーウインドウの作動、HIDヘッドランプ(一部オプション)の点灯などなど。試乗が可能ならば足回りもチェック。走行距離が多ければ、購入の前後にダンパーやブッシュの交換を視野に入れておくのもいいだろう。足回りがシャキッとしていないと、せっかくのストレートシックスも楽しめない。個体によってはスタビライザーあたりから異音が出ることもあるようだ。とはいえ異音関係は自然治癒することもあるし、あまり神経質になるのもつまらない。

 
ボルボ車の在庫も多いオートプラネットだが、S80は20台に1台もないだろう。S60などと比較してみるのもお勧め

元々の新車価格が500万円台から700万円超というクルマゆえ、部品代も安くはないので、そのあたりを自分なりの価値観で飲み込んで乗りたいところ。保証のない低年式車の場合、破格に安くてもメリットは少ないと考えていいだろう。やはり1年保証付きくらいがいい。

 

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「性能」より「誠意」

特殊コーティングを施したラジエイター「スモッグイーター」は、空気を通過させる際、有害オゾンの75%を触媒作用によって酸素に分解する

「ボルボといえばワゴン」という認識が隅々まで行き届いている日本において、初代S80は間違いなくマイナーなモデルだ。しかし荷物を運ぶことより、「大切な人と快適に移動することの方が大事」と考える人なら、フォーマルな装いや場に似合うセダンを選ばない手はない。そして家族はもちろん、たまに知人を乗せて「へえ、ボルボってこんなに静かで乗り心地いいんだ」と喜んでもらえるクルマ、それがS80だろう。そういえばこの日本でも個人タクシー仕様の初代S80が存在すると聞いたことがあるが、なるほどS80の後席で居心地よさそうにしている客と、それを見てこっそり喜ぶ運転手という図は、想像してみるだけでもちょっと楽しい。

 
後姿が個性的なS80。新車当時、カタログの表紙にも後姿がよく使われている

その上で、数多ある高級セダンの中でボルボを選ぶ理由は何かといえば、それはおそらく走行性能がどうこう、というより、その安全性の追求に象徴される「誠意」の部分が大きいのではないかと思う。これ見よがしの高級感や性能ではなく、そういうものに価値を感じる人が乗るクルマ。それがボルボではないだろうか。

 

Text:Kei Niwa
Photo:DAYS


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