掲載日 : 2008年09月01日
2003 メルセデス・ベンツ バネオ 1.9 アンビエンテ
Aクラスをベースにした「多目的車」
欧州で2001年にデビュー、日本では2003年10月に発売されたバネオは、メルセデス言うところの「コンパクト・マルチパーパス・ビークル」。初代Aクラスのコンポーネントを流用しつつ、積載性や汎用性をさらに高めたコンパクトカーであり、同時に様々な使い方ができる小型ワゴンやバンでもある。Aクラスに比べてボディサイズ(全長と全高)は大幅に大きく、両側にスライドドアを採用しているのが特徴だ。当時の販売価格は300万円超と、Aクラスより高価なモデルだった。
日本に導入されたのは、1.9リッターSOHC・直4エンジンと5速ATの「1.9アンビエンテ」のみ。デビュー以来、マイナーチェンジも特になく、2007年11月に国内ラインナップから外れている。(2008.8)。

Aクラスベースだが、サイズは立派にミニバン並み
全長4205mm×全幅1740mm×全高1845mmのボディサイズは、Aクラス(ショート版)に対して590mm長く、20mm広く、270mm高い。全長はホンダ・フリード(4215mm)と同程度だが、幅は3ナンバーサイズ、全高はトヨタ・ヴォクシー(1850mm)や日産セレナ(1840mm)に匹敵する。さらにAクラスより475mmも長い2900mmのホイールベースは、トヨタの初代アルファードとまったく同じだ。つまり、顔つきこそAクラスとほぼ同じだが、ボディの大部分はまったくの別物。曲面よりも直線メインのスタイルは、乗用車やミニバンというより、道具感の強いバンという感じでもある。
質感を求めるべきクルマではない
元々のAクラス同様、バネオのインテリアも質感という点ではかなり割り切ったもの。スイッチの操作感なども、新車で300万円以上したとは思えないのが正直なところ。操作性は当時のメルセデス・ベンツ車におおむね倣ったものだが、パワーウインドウスイッチがドア側ではなくセンターコンソールにあるのは、一昔前の欧州車風で慣れが要る。
シート調整は全て手動で、足を前に投げ出すドライビングポジションも初代Aクラス譲り。前席の座り心地はまずまずで、後席もクッション自体は平板だが、十分快適なレベルだ。
安全性と機能性に活きる設計哲学
安全性に関しては、メルセデス・ベンツの哲学が存分に発揮されている。大型車並みの衝突安全性を確保すべく、フロアを二重構造とした「サンドイッチ・コンセプト」はAクラス同様で、フロントおよびサイドエアバッグも標準装備する。
開口部の大きな両側スライドドア(手動)は、人の乗り降りはもちろん、カーゴとして使うときにも威力を発揮する。荷室付近に備えられた12Vソケットや、サンドイッチ・コンセプトによって実現した平らな床など、ワゴンとしての使い勝手は相当に高い。
アレンジ自由自在の荷室空間
バネオの売りである荷室部分は、開口部分の高さが約1100mm。車高の割に意外と低いのは、二重構造フロアということで、フロア高が絶対的には高いからだが、大人が片膝をついて車内で作業するだけの天井高は確保されている。
特筆すべきはシートアレンジ方法で、2:1分割の後席タンブルフォールディング(前に跳ね上げて畳む)は、ほんの2ステップで完了する。後席に加えて、助手席の取り外しも可能なようだが、頑強な作りのシートは重く、男性でもかなりの重労働となる。ただしよほどの大荷物を運ぶ場合でない限り、タンブル状態でも荷室容量は十分だろう。
パワーはとりあえず十分。操縦性は安定志向
取材担当者がバネオに乗るのは2004年の新車時以来。エンジンは初代AクラスのA190アバンギャルドと同じ1.9リッター4気筒(125ps、18.4kgm)だが、A190に対して車重が270kgも重いので、動力性能としては1.6リッターのA160並みといったところか。一般道で走る限り、パワー不足を感じることはない。試乗車は2003年式の初期モデルで、走行距離は3万2000kmだったが、印象としてはパワー感から乗り心地に至るまで、新車時とほとんど変わらない、という感じがした。
二重フロア構造のおかげで、静粛性が意外に高いのはAクラス共通の特徴。ドライバーの視点が高いため視界は良好だが、やや腰高感はある。乗り心地が固めなのは、荷物満載時の安定性を考慮してのことだろう。
延長されたホイールベースとトレッドの恩恵か、背が高いわりに安定性は高い。最新の国産・輸入車に比べてパワーステアリングはやや重めだが、これも新車時からのものだ。その気になればキビキビ走らせることも可能だが、やり過ぎた時はすかさずESP(エレクトリック・スタビリティ・プログラム)が介入して、車両を安定させる。高速道路で積極的に右車線を走り続けるには不向きだが、法定速度+アルファで流す分には割と快適だ。
車名 : Mercedes-Benz Vaneo 1.9 Ambiente(2003年モデル)
形式 : GH-414700
寸法 : 全長4205mm×全幅1740mm×全高1845mm
ホイールベース : 2900mm
車重 : 1430kg
駆動方式 : 前輪駆動(FF)
エンジン : 1.9リッター直列4気筒SOHC・4バルブ
最高出力 : 125ps(92kW)/5500rpm
最大トルク : 18.4kgm(180Nm)/4000rpm
トランスミッション : 5速AT
使用燃料/容量 : プレミアムガソリン / 54L
10・15モード燃費 : 10.6km/L
タイヤ : 195/50R16
最小回転半径 : 5.4m
発売時期 : 2003年10月
当時の新車価格 : 320万円(消費税別)
試乗車スペック
初年度登録 : 2003年
販売価格 : 149万円(消費税込み)
走行距離 : 3万2000km
ボディカラー : アークティックホワイト
備考 : -
試乗日 : 2008年8月
造りは丈夫、ドアロックまわりに注意
Aクラス最初期のモデルにはATの不具合などトラブルも散見されたようだが、後期モデルがベースのバネオでは、基本設計に起因するトラブルはまず発生しないと思われる。Aクラス/バネオ系の4気筒エンジンも基本的に丈夫だ。またシャシー関係もメルセデス・ベンツらしく、またAクラス同様、ボディ剛性などのヘタリ感の出にくいクルマと言える。
注意したいのはドアロックで、特にスライドドアに関しては時にトラブルがあるようだ。購入前には念のため動作をチェックしておきたいところ。試乗してみる場合は、初代Aクラスやバネオに乗ったことのある人が一緒だとベターだ。
ガンガン使い倒してこそ「ベンツ」
ルノー・カングーなどの成功を横目に「ならばウチも」と思って開発された……かどうかは定かではないが、「トールバン」とも言えるバネオは、メルセデス・ベンツの中では異端の存在。先にAクラスがあったとはいえ、高級車を志向するメルセデス・ベンツにとっては実験的なモデルだったはずだ。「VAN」の「NEO」たるVANEOという名前からも、その心境が少なからず感じ取れる。
そもそも生産コストがきわめて高かったと言われる「サンドイッチ・コンセプト」のおかげで、高級車並みの衝突安全性を確保し、当時のSクラスに迫るロングホイールベースで独自のパッケージングをモノにした点など、今思うと実にバネオは画期的なクルマだった。デビュー当時、Aクラス最上級モデルより25万円も高かった320万円という車両価格は、決してブランド代だけではなく、実際に高コストだったから、と言える。
さて、今回のサンプルカーはコンディション良好の5年落ちで149万円。これならさすがに割高感はないだろうし、道具として使い倒せる値段である。日本ではたいがい高級車として知られるメルセデス・ベンツだが、その前に大小トラック、バス、特殊車両といった商用車の大メーカーであることを忘れてはいけない。バネオはそのボトムレンジにある、多機能ツールみたいなクルマなのだ。
Text&Photo:DAYS


