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Uカー試乗記

Uカー試乗記

掲載日 : 2008年11月11日

2006 ポルシェ カイエン S

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ポルシェ初のSUVにして性能も弩級

今回のサンプルカーは前期型のカイエンS。4.5リッターV8エンジンを搭載する

カイエンは言わずとしれたポルシェ初のSUV。と同時に4ドア・5人乗りの「ファミリーカー」であり、路面を選ばず走る世界最速のSUVでもある。発売当時「次世代ポルシェ」として登場したカイエンは、今や伝統のRR(リアエンジン・リア駆動)である911シリーズ、ミッドシップのボクスター/ケイマンと並ぶ、同社にとって重要なモデルだ。

メカニズム的にはプラットフォームやパワートレインを共有するフォルクスワーゲン・トゥアレグに近く、事実ボディ自体はトゥアレグと同じVW工場で生産されるが、カイエン/カイエンSのV8エンジンはポルシェのツェッフェンハウゼン本社製となり、最終組立もライプツィヒのポルシェ工場で行われる。一方で悪路走破性についてはトゥアレグ同様、本格的なクロスカントリーSUV並みの性能が確保されている。

【前期型(2003~2006年)】V6、V8、V8ターボの3モデルで展開

日本では2002年9月に発表されたが、実際のデリバリーは翌2003年から。当初は4.5リッターV8自然吸気(340ps、42.8kgm)の「カイエンS」(860万円 ※消費税抜き この項では以下同じ)と同V8ツインターボ(450ps、63.4kgm)の「カイエンターボ」(1250万円)の2種類で、いずれも6ATだった。

2003年9月には3.2リッターV6(250ps、31.6kgm)のベーシックグレード「カイエン」(6ATで659万円)を追加。「カイエン」と「カイエンS」には6MTも用意された。

なお、特別仕様車となるが、2005年2月には「カイエンターボ ハイパフォーマンスエディション」(500ps、71.3kgm)、2006年1月には「カイエンターボS」(521ps、73.4kgm)が限定発売されている。

【後期型(2007年~)】は排気量を拡大

こちらは2007年以降の後期型カイエンS
(photo:ポルシェ・ジャパン)

2006年12月には、いわゆる後期型が登場。全エンジンで排気量拡大や直噴化が実施され、V6エンジンは3.6リッターとなり290psと39.3kgmに向上。4.8リッターとなったV8は、自然吸気が385psと51.0kgm、ターボが500psと71.4kgmに向上している。

さらに2007年9月には、専用サスペンションや21インチホイール等を備えた「カイエンGTS」(405ps、51.0kgm)を追加。2008年7月には、トップモデルとして「カイエンターボS」(550ps、76.5kgm)がカタログモデルとして登場している。(2008.11)

 

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SUVでもポルシェ流。前期と後期の違いは?

一見した印象ではかなり迫力があるカイエンだが、フロントは完全にポルシェ顔。デビュー当時の911シリーズである「996」と共通のイメージとなっている。賛否両論あったデザインだが、今では独自の存在感を放っていると言っていいだろう。そもそも911シリーズのデザイン自体が個性的だから、その点でもポルシェらしい。

今回のサンプルカーは2006年式の前期型。翌年からの後期型も基本骨格は同じだが、デザイン的にはほぼ全面変更された。ヘッドライトは横長の鋭いものになり、バンパー開口部も拡大。ボディパネルも角張ったものになり、マフラーエンドはバンパー内から突き出るタイプとなっている。全体に精悍になった後期型だが、ポルシェらしさという点では前期型も負けていない。

カイエン、カイエンS、カイエンターボの相違点

カイエンSのボディサイズは全長4800mm×全幅1950mm×全高1700mm。車重は2.4トンに及ぶ

また今回取材したのは中間グレードの「カイエンS」で、V6エンジンを搭載した「カイエン」との外観上の違いは、ブレーキキャリパーの色(カイエンは黒、カイエンSはシルバー)やホイールサイズ(カイエンは17インチ、カイエンSは18インチ)、そしてリアのバッジくらいに留まる。通常はバッジを見て判別することが多いはずだから、巷には「なんちゃってS」が意外と多いかもしれない。

逆に「カイエン ターボ」との違いは一目瞭然。ターボは巨大な開口部を備えたド迫力の専用フロントバンパーを装着するほか、フロントフードも左右にバルジを設けた専用品。専用ブレーキキャリパーは赤に塗装される。マフラーはカイエン/カイエンSの左右1本出しに対して、左右2本出しだ。もちろんリアのバッジは「Cayenne turbo」となる。またカイエンターボは標準装備のエアサスによって車高調整が可能で(カイエン/カイエンSはオプション)、それも見た目の印象を左右する。

 
前期型カイエンのヘッドライトは最初の水冷911である「996」風だが、後の「997」にも似ている
カイエンSのブレーキキャリパーはシルバー塗装。V6は黒、カイエンターボなら赤だ
カイエンとカイエンSのマフラーは両側1本出し。ターボだと両側2本出しになる
 

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デザインや仕上げで「ポルシェらしさ」を追求。内装は後期でも変わらず

サンプルカーは左ハンドル仕様だが、カイエンSとカイエンターボの6AT車では右ハンドルも選択可能。V6は全車右ハンドルとなる

視点の高さやシートの立派さ、室内幅の広さが印象的なインテリア。新車で900万円オーバーという高級車だけに各部の質感も高い。「パン」と張ったレザーシートが、いかにもドイツ車という感じだ。

計器類や操作系のデザインは911シリーズと共通のイメージで、各部の仕上げ(塗装や風合いなど)もそれに準じている。従来のポルシェとキャラクターは違っても、デザイン面では「ポルシェらしさ」を出来る限り追求した、ということだろう。なお、前期型と後期型での内装の違いは、意外にもほとんどない。このあたりもいかにもポルシェ流だ。

 
硬めのクッションを持つレザーシートだが、ポルシェらしくホールド性は高い
ポルシェ独自の変速スイッチ(上側がシフトアップ、下側がダウン)を左右に配したステアリング。ここも前期・後期で同じ
左右を特徴的なガードで挟まれたシフトレバー。後方のレバー風スイッチは4WDのモード切替用
 
ポルシェとしては初の3人掛けリアシートはドイツ車らしくカッチリ、シッカリ。ルーズな座り方は許さない。サイドウインドウは5分の2ほど残る
後席にもちゃんとドリンクホルダーが備わる
リアシートの収納方法はダブルフォールディング式。ヘッドレストを外すのが難儀
 
通常時の荷室。大容量だが、小柄な人だと開けたリアゲートに手が届きにくいのが難点
荷室を最大まで拡大した状態。全面が上質なカーペットで敷き詰められる
床下に収まるスペアタイヤは996以前の911シリーズ同様、電動コンプレッサーで空気を入れて使うスペースセーバータイプ
 

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久々に乗ったカイエンSは操縦性も乗り心地も○

操縦安定性、乗り心地、静粛性、運転のしやすさなどの点では万能と言えるカイエン

サンプルカーは試乗時点で2年落ち、走行距離1万km余の2006年式カイエンS。前期型のほぼ最終モデルで、内外装のコンディションは非常に良好。販売価格は新車時の906万円に対して655万円とかなりお買い得だ。

2003年発売時、新車のカイエンSに試乗した時は、同じ時期に乗ったVWトゥアレグに比べて、そのハンドリングの圧倒的なシャープさに驚いたものだが、同時に路面の凹凸を律儀に伝えてくる硬めのサスペンションにも別の意味で驚いたことをよく覚えている。

で、5年ぶりに試乗したカイエンSだが、そんな過去の印象も「初期型で新車だったからかな?」と思わせるほど、乗り心地はまったくもって快適。もちろんこの手のSUVにありがちな、ユサユサ、グラグラした動きは無きに等しい。要するに誰でも安心して快適なドライビングが楽しめる。なお、4WDシステムは電子制御多板クラッチ式のフルタイム4WD。前38:後62をベースに、0:100から100:0までのトルク配分を変化させるもの。オンロードからオフロードまで天候に左右されない走行性能を確保している。

サンプルカーは左ハンドルだったが、小回りが意外に効くことや見切りがいいこともあって、運転は意外にしやすい。これで右ハンドル仕様で、「ポルシェに乗っている」という最初の緊張感さえ乗り越えれば、国産の大型ミニバンやSUVとほぼ同じ感覚で乗れると思う。

迫力満点の動力性能

ブレーキ性能も秀逸。カイエン/カイエンSは前に6ポッド・モノブロックキャリパー、後ろに4ポッドキャリパーブレーキを採用する。タイヤは迫力の255/55R18

前期型カイエンSの4.5リッターV型8気筒エンジン(340ps、42.8kgm)は、まるでレーシングカーのようなアルミ製鍛造ピストンやドライサンプ式オイル潤滑システムを備えたポルシェ工場製ユニット。そのパワーは当然ながら強力で、2420kgもの車重を「並みの高性能スポーツカー」のように加速させる。「並みの」とするのは、ポルシェ911と同等を目指したカイエンターボほどではない、という意味だが、一般的な感覚で言えば「これ以上速くてどうするの?」というレベルだ。2.4トンの物体が高回転型V8特有のビートを轟かせて走るさまは、相当な迫力がある。なお、ドライバー本人にはその速さが実感されにくいため、運転中はくれぐれも自重されたい。

参考までに、前期型カイエンSの最高速度はメーカー発表値で242km/h。0-100km/h加速は7.2秒。「ポルシェだからこれくらいは当然」と思うかもしれないが、よく考えると車重2.4トンのSUVで、この数値は普通あり得ない。当時の986型ボクスター2.7(5AT)ですら、最高速度は248km/hだった。なお、カイエンSとカイエンターボのV8ユニットはポルシェ製だが、カイエンのV6ユニットはポルシェ専用チューンのVW製と発表されている。前期型カイエンの最高速度は214km/hだ。

また、450psと63.2kgmと怒濤のパワーを発揮する前期型カイエンターボともなると、最高速度は266km/hに跳ね上がり、0-100km/h加速は5.6秒に短縮される。正直、カイエンターボで全開を与えた時の速さは、911シリーズに乗り慣れた者でも言葉を失うレベル。そんな常軌を逸したパワーをシャシーが完全に手中に収めている点も含めて、まさに「最速のSUV」。あるいは「SUVの911ターボ」だ。

 

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車名  Porsche Cayenne S(2006年モデル)
形式  GH-9PA00
寸法  全長4800mm×全幅1950mm×全高1700mm
ホイールベース  2855mm
車重    2420kg
駆動方式  電子制御フルタイム4WD
エンジン  4.5リッターV型8気筒DOHC・4バルブ
最高出力  340ps(250kW) /6000rpm
最大トルク  42.8kgm (420Nm)/ 2500-5500rpm


トランスミッション 6速AT
使用燃料/容量  プレミアムガソリン / 100L
10・15モード燃費  5.8km/L
タイヤ      255/55R18
最小回転半径   5.95m
発売時期     2002年9月
当時の新車価格  906万円(消費税込み、2005年8月モデル)


試乗車スペック

初年度登録   2006年
販売価格   655万円(消費税込み)
走行距離   1万100km
ボディカラー バサルトブラックメタリック
備考     左ハンドル、社外HDDナビ(バックモニター、テレビ付)、ETC
試乗日    2008年10月


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高年式・ワンオーナーがねらい目

カイエンSのV8ユニットは正真正銘のポルシェ製。車両最終組立もポルシェ工場と言われている

日本では2003年式から始まるカイエン。現時点で5年落ちの車両が存在するわけで、コンディションも様々だが、そこはやはりポルシェ。正規ディーラー(ポルシェセンターと呼ばれる)で定期点検を受け、さらにガレージ保管が大半である点など、一般のクルマより手厚くケアされた車両が多いのは事実だ。本来ならVWトゥアレグと同様、一般的なケアでもまったく問題ないのだが、それだけ「気を遣ってもらえる」ということは、クルマにとってそう悪いことではない(神経質になり過ぎるのは不幸だし、過剰整備も不経済だが)。

 
カイエン/カイエンSにオプション、カイエンターボに標準のエアサスペンションは、最低地上高を157mm~273mmまで計6段階で調整可能。最大水深555mmの渡河性能を持つ

ということで特別なチェックポイントは、メーカー保証(ポルシェは今でも新車登録時から2年)内の車両やワンオーナーの高年式車なら特にない。内外装のコンディションや好みの仕様で選んでいいだろう。もちろん記録簿で正規ディーラーでの整備状況をチェック。タイヤに大きな負担が掛かるクルマなので、その摩耗具合を見るとそれまでの乗り方が伺えたりもする。試乗するに越したことはないが、基本性能が極めて高いクルマなので、コンディションの優劣をそれで判断するのは素人には不可能と思っていい。全体のコンディションが良ければ、エンジンを掛けて各種機能をチェックする程度でヨシとしたい。オプションでエアサスが装備されていれば(カイエンターボには標準装備)、その動作チェックをしておく。

カイエンの維持費は高いのか?

カイエンの指定オイルは「モービル1」の100%化学合成油。ちなみに日産GT-R御用達でもある

ついでに購入後のメンテナンスについても少し触れておこう。まずオイル交換などの簡単な整備作業については、他のポルシェ同様、専用テスターを備えた正規ディーラーでの実施が無難だが、一般のショップで行っても特に問題はない。診断機能を使ったトラブルシュートやメンテナンス警告灯の消灯が出来なかったり、メーカー保証期間内でも、明らかにユーザーに過失がある場合には保証対象外となる可能性はあるが、基本的には今どきの輸入車と同じと考えていいだろう。ただしもちろんポルシェや輸入大型SUVを扱い慣れたショップがいいのは言うまでもない。

 
カイエンのタイヤ交換は大きな出費だ。サンプルカーはポルシェ認証のピレリ Pゼロ・ロッソ。他にブリヂストンのTURANZAなども指定されている

もう一つ、911シリーズ同様、カイエンも「維持費が掛かる」という伝説があるわけだが、それはポルシェだからというより、これだけの超高性能車ゆえに費用が掛かる、と捉えるべきだ。例えばオイル(Mobil 1の100%化学合成油を指定。量販店でも手に入る) 、タイヤ(サイズゆえにそれなりに高価)、ブレーキ(走り方によるが、減りは早い)などにも、当然車両の性能に比した性能が求められる。逆に言えば、その圧倒的な性能に比べて、維持費自体は意外に一般的だとも言える。その点は歴代911シリーズと同じだ。

 

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カイエン、カイエンS、カイエンターボ。おすすめはどれか

オートプラネット名古屋なら、VWトゥアレグなど他の輸入SUVとの比較も容易だ

一言でカイエンと言っても、年式は2003年から2008年現在まで、グレードは大きく分けて3種類、あるいは前期(2003~2006年)と後期(2007年~)といった具合に、いくつかの選択肢がある。そこでここでは取材担当者のほか、ポルシェに詳しい複数の人から聞いた意見をまとめて、2008年現在の購入アドバイスとしてみた。あくまで主観的な印象を主としたもので、基本的にはそれぞれのカイエンにそれぞれの存在理由や価値がある。


 

スポーティさに磨きがかかった後期のカイエンV6

よく見るとキーが「カイエン」というお茶目な一面も

まず車両価格が安く、燃費の点でも最も経済的な選択であるV6のカイエンだが、前期3.2リッターに比べて後期の直噴3.6リッターはパワーが大幅に向上しており(250ps→290ps)、両者に乗った複数の人の意見では「だんぜん後期の直噴3.6リッターがパワフルで、吹け上がりも爽快。V8のカイエンSにも引け目はそれほど感じない」とのこと。もちろん前期と後期とではUカー相場にも大きな隔たりがあるので、安直に後期がいいとは言えないが、相場が接近する将来には参考になる話だろう。


 

カイエンSは前期も後期もおすすめ

今回の主役である「カイエンS」は、結論から言うと最も一般的におすすめできるカイエンだ。前期でも十分パワフルであり、後期の直噴4.8リッターに引け目を感じずに済む。特に「前期型カイエンのカッコが好き」という人には、このカイエンSがおすすめ。またカイエンSとカイエンターボは、エンジン製造や最終組立がポルシェ工場で行われることから、ポルシェファンには「よりポルシェ濃度が高い」として評価される傾向がある。なお、後期カイエンSはエンジンのほか、他のカイエン同様にシャシーも大きく進化しているようだ。

カイエンターボは一種の「スーパーカー」

最速のSUVと言えば、それはもうカイエンしかない

最後に、率直に言って「多少の維持費、特にガソリン代は気にしない」という人には、カイエンターボがおすすめできる。特に前期型カイエンターボは相場的にもかなりお買い得になってきた。なにしろ新車で1300万円以上したカイエンターボが、今やその半分程度で購入できる。実燃費は5km/Lを大きく下回ることを覚悟すべきだが、その圧倒的な性能と迫力のスタイルを思えば、間違いなくリーズナブルな選択。カイエンターボに関しては、911ターボやフェラーリ、ランボルギーニといったいわゆるスーパーカー的な魅力もある。週末しか乗らないという人なら、カイエンターボは買いだ。

デビュー以来、すでに6年以上経つが、カイエンターボに匹敵する超高性能SUVは未だ現れていない。コストパフォーマンスも含めて性能があまりに飛び抜けており、とてもまともに勝負できないからだ。その点ではオイルショック直後の1975年に、圧倒的な超高性能でもって登場した名車ポルシェ911ターボの時と状況が似ていると言えるだろう。

 

Text&Photo:DAYS


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