掲載日 : 2009年01月21日
2004 アルファロメオ アルファ 156 TI 2.0 JTS
その前に156シリーズの概要
「156」シリーズは1997年(日本では1998年)から2005年まで販売されたアルファロメオの中型スポーツセダンだ。欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したほか、日本でも大ヒットするなど、イタリア車やアルファロメオの世界を多くの人に開放した。全世界で68万台以上、日本では1万7000台以上が販売された。
156は2003年にジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン社によってフェイスリフト(外観マイナーチェンジ)が行われている。つまりフェイスリフト前(1997~2003年)とフェイスリフト後(2003~2005年)に分かれるわけだ。
フェイスリフト後のモデルは搭載エンジンによって「2.0 JTS」(166ps、21.0kgm)と「2.5 V6 24V」(192ps、22.2kgm)の2種類がある。前者の2リッター直4エンジンはアルファの伝統であった「ツインスパーク」(ツインプラグの意)ではなく、従来型の途中から新採用された直噴エンジン「JTS(ジェット・スラスト・ストイキオメトリック)」だ。後者には2.5リッターV6が前期型から継承された。
変速機は「2.0 JTS」に5MT(左ハンドル)および5速セミAT「セレスピード」(右ハンドル)を設定。「2.5 V6 24V」には6MT(右ハンドル)と4AT「Qシステム」(右ハンドル)が設定された。
内外装をスポーティに仕立てた「TI」
今回とりあげる「TI」シリーズは、フェイスリフト後の2004年から設定されたもの。17インチタイヤ、専用サスペンション、スポーツレザーシートを装備して、スポーティに仕立てたシリーズだ。言わばBMWの「Mスポーツ」、アウディで言えば「Sライン」に相当するものと言っていいだろう。なお、156と同時にハッチバックの147シリーズにも「TI」が設定されたほか、後に156スポーツワゴンにもTIが設定されている(ただし2ペダル車のみ)。
なお、156(および147)にはフラッグシップモデルとして、高性能3.2リッターV6エンジンの「GTA」シリーズ(250ps、30.6kgm、左ハンドル・6MT/右ハンドル・6速セミAT)もあったが、GTA専用のワイドボディは最後までフェイスリフト前のモデルをベースとしていた。

159を予告するデザイン
フェイスリフト前の156と159の間で、橋渡し役となったのがフェイスリフト後の156だ。フェイスリフト前、つまり156のオリジナルデザインは当時アルファロメオのデザイン部門に在籍したワルター・デ・シルバ(147等も担当。後にフォルクスワーゲングループへ移籍)によるもの。これをすでに新型159を手がけることになっていた社外のジウジアーロがリデザインしている。言ってみれば159のスタイリングを「予告」したわけだ。
ボディサイズは全長4435mm×全幅1765mm×全高1430mmで、前期型とほとんど同じ。一方、159(4690mm×1830mm×1430mm)よりはずっとコンパクトなので、狭い道やパーキングスペースでの取り回しという点では156に分があるし、デザインも引き締まって見える。
アルファと言えば定番だった左ハンドル・5MT
右ハンドルに左ハンドル、ミッションも5MT、6MT、セミAT、トルコンATなどなど、仕様が入り乱れる156シリーズ。しかし「TI」の場合は2リッター・5MTを選ぶと、自動的に左ハンドルとなる。「アルファと言えば左ハンドル・5MT」だった時代を知る人なら、最もアルファらしい仕様と思うはずだ。
インテリアにおける「TI」の特徴は、レザースポーツシート(背もたれ角度のみ電動で調整可)、レザーステアリングホイール、「TI」ロゴの入ったサイドシルプレート&フロアマットなど。中でもTI専用のシートは、いかにもイタ車らしく革の質感や仕上げに「色気」があるものだ。
「アルファらしさ」でもツインスパークに遜色ないJTS
サンプルカーは2004年式のTI 2.0 JTS(5MT)。先に触れた通り、その2リッター直4エンジンはガソリンを直接シリンダー内に噴射する、いわゆる直噴ユニットで、フェイスリフト前の156に2002年から採用されているものだ。なお、後継の159が搭載する2.2リッター JTSは、これとはまったく設計が異なる。
JTSが登場した当時は「ツインスパーク」の名が156から無くなったことをさびしく思ったもの。しかし実際のところ、156の2リッターJTSは十分にアルファらしいサウンドを聴かせてくれる。昔のツインスパークのような、アコースティックなものではないが、ここ最近のクルマでこんなにスポーツエンジンらしいエンジンは、このクラスではそうそうない。また159などの2.2リッターJTSでも味わえない。サンプルカーには、モーターサイクル用でも有名なOVER製のマフラーが付いており、適度に抜けのいいサウンドが楽しめた。
左ハンドルのマニュアルは、少なくとも最近の新型車ではめっきり減ってきたものだが、マニュアル車が運転できる人ならまず案ずることはない。156の場合はペダル配置が良いためヒール&トウもしやすい。それゆえ、「やっぱりアルファは5MT、それに左ハンドルがいい」という意見は、確かに一理ある。
「TI」標準装備のスポーツサスペンションや17インチタイヤ、専用ブレーキパッドもスポーティな走りに貢献している。「走り」を期待する向きは、これくらいのセッティングである方が、後々社外品に交換するといった面倒がないだろう。ボディや操作系の剛性感もBMWやアウディのスポーティグレードのように、とは言わないが、十分にある。
なお、サンプルカーは4年落ちだったが、走行距離1万3000kmほど。内外装のコンディションも非常に良く、運転した印象も新車時に近かった。156には低年式で走行距離の多い車両も多いが、現時点でUカーで購入を考えるならモデル末期に登場したTIの2.0 JTS、5MTは、有力候補の一つだ。
車名 Alfa Romeo Alfa 156 TI 2.0 JTS(2004年モデル)
形式 GH-932AXA
寸法 全長4435mm×全幅1765mm×全高1430mm
ホイールベース 2595mm
車重 1300kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 2.0リッター直列4気筒DOHC・4バルブ
最高出力 166ps(122kW) /6400rpm
最大トルク 21.0kgm (206Nm)/ 3250rpm
トランスミッション 5MT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 63L
10・15モード燃費 -km/L
タイヤ 215/45ZR17
最小回転半径 -m
発売時期 2004年4月
当時の新車価格 410万5500円(消費税込み)
試乗車スペック
初年度登録 2004年
販売価格 229万円(消費税込み)
走行距離 1万2700km
ボディカラー キャラミブラック
備考 キセノンヘッドライト、レザースポーツシート、Boseサウンドシステム、(以上、TIに標準装備)、社外マフラー
試乗日 2009年1月
完成度の高いフェイスリフト後モデル。新車のGTや147も参考に
156と一口に言っても、選択肢は幅広い。販売期間は1998年から2005年まで。ボディタイプはセダンとワゴン。デザインはフェイスリフトの前と後。エンジンはツインスパーク、JTS、V6と3種類。変速機は5MT、6MT、5速セミAT、4AT。そしてハンドル位置は右と左・・・・・・などなど、主な仕様だけでもこれだけある。ここではフェイスリフト後を中心にして話をしたい。
まず初期の156でトラブルが多かったセレスピードだが、フェイスリフト後のモデルではすっかり改良されており、以前のようなトラブルはまずないと思っていい。その前にセレスピード未経験の方におすすめしたいのが、正規ディーラーなどで試乗し、その運転感覚を経験しておくこと。現行車種(2009年1月現在)で運転感覚が156に近いのはアルファGT、次に147だ。
エンジンに関しては2.0リッターJTSでもチェーン駆動とはなっていないので、タイミングベルトの定期的な点検・調整と5~7万km程度での交換を行いたい。2.5リッターのV6も同様だ。いずれにしても、内外装コンディションが良好であることに加えて、年式が若く走行距離の少ないもの、あるいはメンテナンスをしっかり受けてきた車両を選びたい。
電気系のマイナートラブルは156では無いとは言い切れないもので、単純な接触不良(パワーウインドウ作動不良など)や警告灯の誤作動など原因も症状も様々だが、そう頻繁に起こるものではない。特にフェイスリフト後の156ではかなり少ないはずだ。これらは保証で対応してもらうとして、ユーザーとしてはおおらかな気持ちも忘れないでいたいところ。
ハードの完成度で言えばフェイスリフト後。装備と足の良さで「TI」がおすすめ
156の購入を考える場合、最初に考えるのはフェイスリフトの前か後か、だろう。要するにデ・シルバの156か、ジウジアーロの156か、ということだ。ここは多分に好みの問題で、言うまでもなく156のオリジナルデザインは素晴らしい。一方でメカ的な完成度という点では、やはりフェイスリフト後だ。例えば設計年次や経年変化という要素を含めて、全体(ボディから足まわり、駆動系、内装の作りまで)のしっかり感となると、できる限り高年式がいいと思えてしまう。フェイスリフト前の156を選ぶなら、そこを最初から大目に見るか、手をかけて仕上げてゆく心づもりが必要だろう。なお、エンジンに関しては、ツインスパーク(前期型途中まで)の方がより「アルファ」しているが、総合的に見てここではJTSと互角としたい。
標準モデルか「TI」かは、アルファを選ぶユーザーなら必ずや気に入るはずの足まわりを最初から備える点で「TI」がおすすめ。特にサンプルカーのような5MT・左ハンドル車は、ハンドリング、直進安定性、ブレーキ性能、そして乗り心地などのバランスがちょうどいいところにある。社外のスポーツサスペンションに交換した経験があるような人なら、とりあえず「TI」を選んでおいて損はない。専用レザーシートやキセノンヘッドライトなど装備内容もいい。
最後にエンジンと変速機だが、確かに往年の名機であるアルファ製V6の快音も魅力的だし、セレスピードもいい。しかし今回乗った「TI 2.0 JTS」の左ハンドル・5MT仕様は自信をもっておすすめできる。パワーは十分、サウンドも上々、ハンドリングもいいし、乗り心地もいい。156系は「アルファ GT」を含めて過去10年、それなりに数多く乗る機会があったが、今回の仕様がもっともトータルバランスがいいと感じられた。
Text&Photo:DAYS


