掲載日 : 2009年04月01日
2006 フィアット グランデプント 1.4 Dualogic
人気を博した「プント」の後継車
フィアットの主力コンパクトカーとして、1993年に発表されて以来、欧州で600万台以上を販売するベストセラーモデルとなったのがプントだ。今回試乗したグランデプントはその後継車にあたり、国内では2006年6月から販売されている。
最初に導入されたのは3ドア・6MT仕様の「16Vスポーツ」。次いで2006年秋に5ドア・5速セミAT「デュアロジック」仕様の4グレードが追加されている。追加仕様には「1.4デュアロジック」「─メガ」「─ギガ」「─テラ」といった具合に、PCのHDD容量のごときグレード名を与えられているのが面白い。相違点はオートエアコンやスカイドーム(電動サンルーフ)、レザーシートといった装備にあり、後者になるほど内容が充実していく。全グレードとも前席デュアル&サイドエアバッグ、左右ウィンドウエアバッグと計6つのエアバッグを装備し、欧州の衝突安全基準であるユーロNCAPで最高ランクの5つ星をマーク。さらにESPを標準装備するなど、安全性の追求に妥協はない。
エンジンはいずれも1.4リッター自然吸気で、16Vスポーツには95psを発揮するDOHC・16バルブエンジンが、デュアロジックモデルには77psを発揮するSOHC・8バルブエンジンが搭載されている。なお16Vスポーツは2007年12月で販売終了。入れ替わるように無印デュアロジックのワングレード上となる「キロ」が追加設定され、2009年3月現在は5ラインナップで販売継続中だ。
余談ではあるが、このグランデプントをベースにした高性能モデル、「アバルト(ABARTH) グランデプント」が、日本では2009年2月から東京・大阪のアバルトオフィシャルディーラー(4月からは名古屋・福岡も含めた4拠点)で発売されている。155ps、20.5kgmを発揮する1.4リッター直4・DOHCターボエンジンは、アバルトの名にふさわしい刺激的な走りをもたらす。こちらは現時点では3ドアの6MT仕様のみだ。(2009.03)

ラテンのセンスが随所に光る
全長4050mm×全幅1685mm×全高1495mmというボディサイズは、分類上はBセグメントであるが、もはやVWゴルフクラスに近いCセグメント級。グランデ(grande=大きな)というフレーズは伊達じゃない。スポーティかつスタイリッシュなデザインを担当したのは巨匠ジョルジェット・ジウジアーロで、ボディサイドには誇らしげにジウジアーロのエンブレムが輝く。
なんといっても特徴的なのはフロントマスクで、クルマに詳しい人なら以前販売されていたマセラティ・クーペを思い出すはず。リアビューも天地幅が狭いウィンドウやルーフに向かっての絞り込みによって、ハッチバックでありながらクーペのようなスポーティさが強調されている。優雅で清潔感あるデザインはさすがイタリア車といったところ。
上級クラス顔負けの居住性
室内に入るとまずブラック×ライトブルー(サンプルカーの場合。他にもいくつかパターンが用意される)にコーディネートされたダッシュボードとファブリック製シートがお出迎え。こんな思い切ったカラーパターンが許され、しかも似合っているクルマはそう多くなく、このあたりにもさすがラテン系! と唸らされる。メーターやスイッチ類のレイアウトはシンプルで、視認性や扱いやすさは申し分無しだ。
シートのホールド感は高く、やや硬めではあるがクッション性も良好。ヘッドレストは全席分を備えており、後席足下スペースも先代に比べて広くなっているから、大人4人の移動も無理なくこなせるなど、おおむね一つ上のクラスに匹敵する居住性といえる。
荷室容量は通常時で257リッター。可倒式の後席は、6:4のシングルフォールディングで最大638リッターまで拡大可能だ。注意を要するのが、リアゲート外部にオープナーが備わっていないという点。ダッシュボード中央にあるスイッチかキーレススイッチを用いるしかなく、ここは少々不便さを感じる。とはいえこれは主に防犯を目的とした措置であり、イタリア車には多いパターンではある。
たくましいシャシーに小気味よく回るエンジン
サンプルカーは3万km近い距離を走っている「グランデプント 1.4 デュアロジック メガ」。正直試乗前には、多少のヤレは仕方ないという先入観があったが、実際乗ってみるとそれが見事に覆された。ドイツ車もかくや、といわんばかりの芯の通った剛性感に加え、適度に固さを残した足回りは実に好印象。77psのエンジンに対しては完全にシャシーが勝っている状態だ。ヤレの少なさにはとにかく驚かされた。
非力ながらもイタリア車らしくブンブン回せるエンジン、剛性感あるシャシー、そしていざという時に介入してくれるESPの備えもあって、下りの峠道なら結構なペースで流せてしまいそう。とはいえ、燃費重視の“eco”モード、さらに電動パワステがより軽くなる“CITY”モードを搭載するなど、基本的には街中をゆったり快適に走るような使い方がよく似合う。
デュアロジックの変速マナーは独特のもの。クリープなし、かつ通常のATより2テンポほど遅れて変速する感覚には少々慣れが必要だ。キビキビと走らせたいなら、マニュアルモードを活用しつつメリハリをつけてアクセルを踏むようにしたい。クリープなしとはいえ、ヒルホルダー機能がつくので、坂道発進は安心だ。
車名 Fiat Grande Punto 1.4 Dualogic Mega (2006年モデル)
形式 ABA-199142
寸法 全長4050mm×全幅1685mm×全高1495mm
ホイールベース 2510mm
車重 1150kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 1.4リッター直列4気筒SOHC・2バルブ
最高出力 77ps(57kW) /6000rpm
最大トルク 11.8kgm (115Nm)/ 3000rpm
トランスミッション 5速セミAT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 45L
10・15モード燃費 ─km/L
タイヤ 175/65R15
最小回転半径 ─m
発売時期 2006年10月
当時の新車価格 192万円(消費税込み)
試乗車スペック
初年度登録 2006年
販売価格 109万9000円(消費税込み)
走行距離 2万9300km
ボディカラー クロスオーバーブラック
備考 ワンオーナー
試乗日 2009年3月
定期的なメンテナンスは必要。もちろん保証付がおすすめ
1990年代以降、劇的に品質向上を果たしてきたイタリア車には、かつての「壊れやすい」といったイメージはもはや当てはまらなくなっている。特にグランデプントは2006年にデビューしたばかりのモデルであり、それ以前の世代とは別物と言ってもいい。とはいえ日本車のように乗りっぱなしにはせず、タイミングベルトの定期的な交換(予防的に4万km毎くらいがいいようだ)など、ディーラー等でしっかりメンテナンスすることが長く乗り続けていくコツ。電装系のマイナートラブルに関しても、多少の割り切りは必要だろう。
その他、可能性のあるトラブルとしては、パワステ不調(CITYモードを多用しすぎると生じやすい傾向にあるとのこと)、デュアロジックの故障など。備えとしては保証付き販売はもちろんのこと、サービスプログラム「フィアット・メンテナンスプログラム」や10万kmまでの延長保証「エクステンデッド・ワランティープログラム」加入車がおすすめだ。
お気楽・極楽。ラテンのノリを日常にぜひ!
アルファロメオや最近ではフィアット500の影響か、イタリア車もずいぶん身近な存在になった。フェラーリのような超高級スポーツカーから、フィアットのような大衆車にいたるまで、とにかくファッショナブルでスポーティ、それでいて信頼性もかつてないほど高くなっているのが今日のイタリア車の傾向。ならば試しに乗ってみようかなという時、フィアットは確かに魅力的だが、パンダや500では家族4人で使うには少々現実的でなく、アルファはちょっぴり敷居が高い。そんな人にグランデプントは自信を持っておすすめできる。
リーズナブルでありながらオシャレなスタイリング、使い勝手のよさ、高い居住性、必要十分なパワー、さらに燃費も良好だ。一家に一台のファーストカーとして使い倒すのもいいし、セカンドカーとして購入し、買い物や近所の足に活用するのもありだ。とにかく洒落っ気たっぷりに毎日を彩ってくれることだろう。今年の秋以降には初回車検が迫る個体も多いため、市場でのタマ数や価格が一層こなれることも予想される。お気楽イタ車生活の第一歩は、グランデプントで始めてみては?
Text: G.N,DAYS
Photo:DAYS



