掲載日 : 2009年05月19日
2006 アウディ A3 2.0 スポーツバック TFSI
ゴルフと共通のプラットフォームを持つ上級コンパクトハッチ
1997年にアウディのエントリーモデルとして日本で発売されたA3。VWゴルフとプラットフォームを共有するためエンジンは横置きで、駆動方式も主力はアウディ得意のクワトロでなくFFとなる。一言で言えば、ゴルフの使いやすさはそのままに、質感をぐっと向上させたプレミアムコンパクトハッチだ。
2003年には今回とりあげる2代目にフルモデルチェンジ。以後、幾度もマイナーチェンジを受けながら、2009年現在も販売されている。改良点で大きなものは、「5ドアモデルの追加設定」、「シングルフレームグリルの採用」、「エンジン変更」、「DSGの拡大採用」などだ。
2代目A3は先代同様、当初は3ドアモデルのみだったが、2004年10月には5ドアの「スポーツバック」シリーズが登場。2006年7月販売モデルからは全て5ドアとなっている。そしていまやおなじみの「シングルフレームグリル」は、2005年モデルからの採用だ。これにより、アウディ他車種とのブランドイメージの共通化、およびプレミアム感の演出を行っている。
DSG(S-トロニック)を徐々に拡大採用
VWお得意の「DSG」(アウディでは現在「S-トロニック」と呼ぶ)を搭載したのは2003年12月の「3.2クワトロ」から。DSG/S-トロニックは、いわゆるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)の一種。奇数段と偶数段で二つの出力軸とクラッチを持ち、それぞれを交互に繋ぐことで途切れのない変速を行う新世代のトランスミッションだ。従来通りの6速トルコンATモデルもあったが、2008年秋以降は全モデルS-トロニックに変更されている。
今回試乗したのは2006年モデルの「スポーツバック 2.0 TFSI」。ゴルフGTIと同スペックの200psを発揮する直噴2リッターターボエンジンに、6速S-トロニックを搭載。当時はGTIの約60万円アップとなる399万円というプライスがつけられていた。

上品さと押し出しを兼ね備える
2代目A3に与えられたデザインテーマは「官能美」と「精密美」ということで、ゴルフよりも明らかに質感の高さや上品さを重視したスタイリングとなっている。またシングルフレームグリルが与えられた後のA3には、それらに加えて適度な押し出し感も備わった。2009年現在、デビュー以来6年を経過しているにも関わらず今なおプレミアム感を維持しているのは見事だ。
なお、シルバーやブラック、ホワイトなどモノトーンが選ばれることが多いドイツ車にあって、サンプルカーのボディカラーは「モーリシャスブルーパールエフェクト」という希少色。深海を思わせる深い蒼色が、A3をよりシックに見せている。
ゴルフ譲りの居住性とユーティリティ
競合車種に比べて質感が高いのはアウディの持ち味のひとつ。インパネデザインなど基本的に2003年からほとんど変更を受けていないが、モデル末期となった今見ても古さは感じられない。
後席スペースは大人4人が無理なく乗れるもので、座り心地も上々だ。5ドアであれば、乗り降りもしやすい。ただしゴルフより天井は低く、サイドウィンドウの倒れ込みも大きいため、頭上スペースはゴルフより明らかにタイトだ。
荷室容量は5人乗車時でゴルフより20リッター多い370リッターを確保。シートを倒せば、フラットにこそならないが、まずまずの積載スペースが現れる。日常の使い勝手はよさそうだ。
何度乗っても感心させられる
発進時はトルコンATに比べてクリープが若干弱いのが気になるが、ステアリングを切ったままアクセルを強めに踏めば、エンジンは軽くホイールスピンするほどパワフル。電子制御で半クラッチを使うDCTの特性上、低速域は時にギクシャクするものの、走り出してしまえばまったくもってスムーズだ。シフトショックもなく瞬時にシフトアップ。普通に走っているとあっという間に6速トップに到達し、燃費を稼ぐ。パドルシフトを駆使して少々意地悪なシフトダウンを試みても、瞬時にブリッピングで回転合わせを行い、見事なシフトワークを披露。この素晴らしい出来には何度乗っても感心させられる。
快適性に関してもクラスを越える走り
サンプルカーは200psを発揮する2リッターターボエンジンを搭載するが、剛性感のあるシャシーはそのパワーをなんなく受け止める。トルクステアも皆無だ。足まわりは硬質ながら角に丸さがあり、乗り心地も上質。高速道路を使ったロングドライブでも快適かつ迅速に移動できそうな、クラスを越える走りを見せる。それこそこれ一台で何でもできてしまう優等生といった言葉がよく似合う。
車名 Audi A3 2.0 Sportback TFSI (2006年モデル)
形式 GH-8PBWA
寸法 全長4285mm×全幅1765mm×全高1430mm
ホイールベース 2575mm
車重 1470kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 2.0リッター直列4気筒DOHC・4バルブインタークーラーターボ
最高出力 200ps(147kW) /5100~6000rpm
最大トルク 28.5kgm (280Nm)/ 1800~5000rpm
トランスミッション 6速DCT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 55L
10・15モード燃費 12.4km/L
タイヤ 225/45R17
最小回転半径 5.1m
発売時期 2006年7月
当時の新車価格 399万円(消費税込み)
試乗車スペック
初年度登録 2006年
販売価格 219万円(消費税込み)
走行距離 1万3400km
ボディカラー モーリシャスブルーパールエフェクト
備考 ワンオーナー
試乗日 2009年4月
距離よりも内外装の状態と装備内容に注目
21世紀のアウディ、そしてゴルフベースのA3だけに、大きなトラブルとはほとんど無縁。国産車と同じ感覚で使い倒せてしまう。また多くのドイツ車同様、経年や走行に対しての「ヤレ」も少なく、シャシーの剛性感や駆動系のヘタリは数万km程度の走行ではまず感じさせない。なのでUカーを選ぶ際は、走行距離などよりも内外装の状態や装備品などの要素で決めるのがいいだろう。とはいえ年々小改良が加えられ、進化してきたA3だけに、やっぱり年式が新しいものを選ぶのがベター。ちなみにDSG/S-トロニックのクラッチの寿命は20万km以上とされており、実質的に車両寿命とほぼ同程度の耐久性が与えられているようだ。
プレミアム・コンパクトの模範的存在
ゴルフは世界でもっとも優れたハッチバックのひとつだ。で、そのゴルフにアウディの品質感とネームバリューを与えたのがA3。乱暴な言い方をすればそうなるが、その内容には価格差を納得させるものがある。モデル末期の今も新車の販売は好調で、やはりいいものは市場の理解を得ているということなのだろう。様々なシーンをこれ一台でカバーできる、プレミアム・コンパクトの模範的存在と言える。
次期モデルの誕生目前。タマ数増加に期待
先に述べたとおり、A3に乗るなら基本的に年式は新しいものがオススメ。とはいえ2代目A3なら初期モデルでもATは6速だし、2005年以降はシングルフレームグリルで、5ドアモデルも選べる。予算と相談しながら、自分なりに妥協点を探りつつ選んでいくのがいい。なお近年フォルクスワーゲン・アウディはターボなどの過給器付き小排気量エンジンに7速DSGを組み合わせたモデルを次々に開発している。それら動力性能と燃費・環境性能を両立した最新モデルは今後Uカー市場でも間違いなく人気を集めてゆくはずだ。
ちなみに今回のサンプルカーは走行1万5000km未満で程度極上といえるもの。しかも5ドア、シングルフレームグリル、6速DCTと、とりあえずA3に付いていて欲しい装備がひと通り揃っている。それを新車のほぼ半値で買えてしまうのは、贔屓目抜きにして「買い」だと感じた。
なお、2009年4月から6代目ゴルフ、通称ゴルフVIがついに国内でも販売が開始された。これに続いて次期A3の登場も来年以降に予想されるが、そうなれば現行A3も多数市場に流入し、ますます選択の幅が広がると思われるので、ぜひ好みの一台を見つけていただきたい。A3はきっと期待以上の性能を発揮してくれるはずだ。
Text:G.N,DAYS
Photo:DAYS




