掲載日 : 2009年05月25日
2005 メルセデス・ベンツ A170 エレガンス リミテッド
「Aクラスの完成型」となった2代目
Aクラスはメルセデス・ベンツ初のコンパクトカーと言えるモデル。初代(W168型)は1997年にデビュー。大型車と対等の衝突安全性を確保すべく「サンドイッチ・コンセプト」と呼ばれる二重フロアのシャシーを備えるなど、極めてユニークな設計をもって生まれた。
今回とりあげる2代目(W169型)は欧州で2004年にデビュー。基本コンセプトは初代を踏襲するが、内外装の質感や各種性能を飛躍的にアップ。変速機はメルセデス・ベンツ初のCVT(無段変速機)となり、燃費性能も向上させている。ある意味、Aクラスの完成型と言えるのがこの2代目だ。
エンジンは1.7、2.0、2.0ターボの3種類
日本で2代目Aクラスが発売されたのは2005年2月。当初は1.7リッター直4(116ps、15.8kgm)の「A170」、その上級仕様の「A170 エレガンス」、2リッター直4(136ps、18.9kgm)の「A200 エレガンス」の3グレードでスタート。2005年11月には2リッターターボ(193ps、28.6kgm)の「A200 ターボ アバンギャルド」が追加され、計4グレードとなった。変速機は全車CVTだ。
その後は特別限定車を設定しつつ、このグレード体系をしばらくキープ。2008年に2リッターと2リッターターボがラインナップから落ちて、2009年現在は「A170」と「A170 エレガンス」の2グレード構成となっている。(2009.06)

見た目よりずっとコンパクト
サイズ面で初代と2代目に共通するのは、とにかく全長が短く、背が高いことだ。2代目のサイズは初代のロングホイールベースモデルに近いが、それでも全長はフォルクスワーゲンで言えばゴルフはもちろん、ポロよりも短い。にも関わらず、中は広々。それがAクラスのパッケージング面での大きな特徴だ。
もちろんサンドイッチコンセプトも初代と2代目で共通する部分だ。これは分厚い二重フロアの上に乗員を乗せて、側面衝突などから乗員を守るほか、前面衝突時にエンジンを二重フロアの下に落とすことでクラッシャブルゾーンを確保するというもの。これにより、メルセデス・ベンツの最高級車であるSクラスとの正面衝突を想定した高い受動安全性を確保している。
質感は初代とは比べものにならないほど高い
インテリアの質感や操作系は、同世代のメルセデス・ベンツに通じるもの。初代Aクラスの内装は途中かなり改良されたものの、最後まで高級感があるとは言えないレベルだったが、2代目ではついにその汚名を返上している。実際のところ、メルセデス・ベンツのバッジに恥じない質感と言っていいだろう。
気になるのは、初代ほどではないが、乗り降りにも多少コツが必要なこと。特に降車時には地面が遠く感じられ、つま先を下の方に伸ばして降りる格好になる。また床の高いサンドイッチ構造ゆえにドライビングポジションも独特だ。とはいえこれらは慣れてしまえば、そうは気にならない。
二重フロアによる重厚感が印象的
担当者が2代目Aクラスに乗るのは約4年ぶり。基本設計が近いBクラスと合わせれば、4度目の試乗となる。サンプルカーは2006年式(登録から約2年半)で走行1万5400kmだったが、コンディションは記憶の中の新車に遜色ないと思えた。
その2代目Aクラスだが、運転感覚は独特だ。まずはBクラス同様、分厚い鉄骨の上に乗っているような剛性感が乗員に伝わってくる。この異様なほどのフロアのガッチリ感は、このAクラスかBクラスでしか味わえない。
電動パワーステアリングの操舵感は決してクイックではないが、しっとりした手応えで正確。操縦安定性もスタイリングから想像されるよりはるかに高く、乗り心地もいい。なおAクラスのフロントサスペンションには減衰力を走行状況に応じて自動調整する「セレクティブ・ダンピングシステム」が、リアサスには乗車人数にかかわらず車体の姿勢を一定に保つ「スフェリカル・パラボリック・アクスル」が採用されている。もちろんESPは標準装備だ。
自然な運転感覚のCVT
エンジンはメルセデス・ベンツ初のCVT(無段変速機)である「オートトロニック」とのマッチングを重視したもので、低回転から粘り強い。発進用にトルクコンバーターを備えることもあり、クルマに詳しくない人なら普通のATと思って乗ってしまうだろう。
普通にDモードで走る場合は、燃費重視で低回転をキープするプログラムだが、ボタンで「S」モードを選択するか、シフトレバーを左右に振って7速マニュアルモードを駆使すれば、山道などでメリハリあるレスポンスが期待できる。
総じて2代目Aクラスの走りは、このクラスの中で特にスポーティではないが、静粛性は高く、見晴らしもよく、ゆったりと走るのに向いている。そしてなによりサンドイッチコンセプトによる独特の重厚感と衝突安全性が印象的なクルマだ。
車名 Mercedes-Benz A170 Elegance Limited (2006年モデル)
形式 DBA-169032
寸法 全長3850mm×全幅1765mm×全高1595mm
ホイールベース 2570mm
車重 1310kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 1.7リッター直列4気筒SOHC・4バルブ
最高出力 116ps(85kW) /5500rpm
最大トルク 15.8kgm (155Nm)/ 3500-4000rpm
トランスミッション CVT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 54L
10・15モード燃費 12.2km/L
タイヤ 195/55R16
最小回転半径 5.3m
発売時期 2006年9月(A170 エレガンス リミテッド)
当時の新車価格 315万円(消費税込み、A170 エレガンス リミテッド)
試乗車スペック
初年度登録 2006年
販売価格 184万円(消費税込み)
走行距離 1万5400km
ボディカラー コスモスブラック
備考 ワンオーナー、DVDナビ・TV、ETC、6連奏CDチェンジャー
試乗日 2009年4月
性能的にはA170で十分
同じプラットフォームとパワートレインのBクラス同様、メカニカル面で2代目Aクラスにはこれといった弱点はない。構造上ボディのヘタリは出にくいし、パワートレインもシンプルだ。Uカーを選ぶにあたって走行距離が少ないに越したことはないが、そう神経質になることはないだろう。ただし高年式モデルの方が変速プログラムや燃費などの改良が行われている可能性が高い。
性能的にはA170で十分。装備や仕様に特に不足を感じなければ、ベースグレードでもいいだろう。もちろんA200になれば2リッターらしいトルク感があるが、排気量は2034ccとなり年に一度払う自動車税が2リッター以下のクラスより5500円高くなるのは知っておきたい。パワフルなA200ターボは燃料代がそう気にならない人には良い選択だ。
オプション装備の有無をチェック
アルミホイール、レザーステアリング、レザーシート、キセノンヘッドランプ、純正ナビなどはグレードによって標準、設定なし、オプションと分かれるので、これは個体ごとに確認したい。ただし最近のハロゲンヘッドランプはけっこう明るいし、交換コストも安いので、キセノンにこだわる必要は特にないとも言える。ナビについても最近はPND(フラッシュメモリーを使った簡易ナビ)が高性能化しているので、ことさら純正にこだわる必要はないだろう。
ポリカーボネイト製の電動サンルーフである「パノラミック・ラメラールーフ」は全車オプションで、装着例は少ない。パークトロニックなども基本的にはオプションなので有無が分かれる。
先入観のない若者から、旧来のクルマに飽き飽きした玄人まで
このクラスのドイツ車にはVWゴルフをはじめ、アウディA3、BMW・1シリーズなどがあり、どれも個性的だが、中でもAクラスはかなりの個性派。ゴルフあたりと比べて検討する場合もあると思うが、実際にはまったくの別物で、コンセプトも構造も他のコンパクトハッチとはまるで違う。
初代の反省を踏まえて、2代目Aクラスは洗練されたクルマとなっているが、本質的には自動車の革新を目指した異端児だ。この革新性に魅力を感じる人なら、Aクラスはもちろん買いだが、逆にブランドや伝統的な手堅さをとるなら、少し高価にはなるがFR車のCクラスを選んだ方がいいだろう。
伝統的なスリーボックス型のセダン、重心が低くてスポーティなコーナリング、優れた加速性能や最高速・・・・・・、そういったものを半ば否定したところにAクラスはある。その意味で、クルマというものに先入観のない若いユーザーや旧来のクルマ像に飽き飽きした玄人におすすめしたい。
Text:Kei Niwa, DAYS
Photo:DAYS




