掲載日 : 2009年06月29日
2005 フィアット パンダ 4×4 クライミング
人気を博した先代「4×4」の後継
2004年7月に日本で発売されたフィアット・ニューパンダ。その4輪駆動モデルが、「4×4(フォーバイフォー) クライミング」だ。先代のパンダ 4×4(1983~2002年)の後継車とも言えるモデルで、国内には2005年4月から導入された。
先代のパンダ 4×4は2WDと4WDを手動で切り換えるパートタイム4WDだったが、新しい4×4 クライミングは、ビスカスカップリングを使ったフルタイム4WDを採用。さらに専用設計のサスペンションや大径タイヤなどにより、「4×4」の名に恥じない悪路走破性が追求されている。
4×4 クライミングは左ハンドル・5MTのみ
日本に導入されたのは、「4×4 クライミング」および電動ダブルガラスサンルーフの“スカイドーム”を備えた「4×4 クライミング プラス」の2グレード。当初の価格はそれぞれ188万8950円と203万5950円だった。なお、日本向けニューパンダの中でイタリア本国仕様と同じ左ハンドル+5MT車はこの4×4 クライミングのみ。通常モデルは右ハンドル・5速セミATで、高性能モデルの「100HP」が右ハンドル・6MTとなる。

専用エクステリアと最低地上高アップでSUVに変身
全長3570mm×全幅1605mm×全高1635mmのボディサイズは、軽自動車以上、リッターカー未満といったところ。4×4クライミング専用の前後バンパーや樹脂製ホイールアーチプロテクターが装着され、普通のパンダより全長で35mm、全幅で15mm大きい。またタイヤサイズを155/80R13から185/65R14へと大径化し、さらにサスペンションを専用設計とすることで、160mmの最低地上高を確保。全高も65mmほど高くなっている。
最低地上高のアップは、もちろん悪路での対地クリアランスを稼ぐためだ。フロントのアプローチアングルは24度、リアのデパーチャーアングルは42度、そして車体真下のランプブレイクオーバーアングルは24度となっている。これはいわゆる本格SUVと比べても遜色ない数値だ。
機能的かつ陽気なイタリアンデザイン
左ハンドルの5MTであることを除けば、インパネデザインはノーマルパンダと同じ。ライトグレーやイエローといったポップな色づかいも含めて、イタリアン産業デザインの典型と言えるものだ。ソフトパッドやメタル調塗装といった手間は一切省かれているが、その飾り気の無さがいかにもイタリア庶民の足らしく、また4×4 クライミングのアウトドアイメージにも合っている。
ボディサイズは日本の軽自動車より一回り大きい程度だが、アップライトな着座姿勢や余裕のある室内幅、室内高、そして明るい内装色などのおかげで、狭苦しさはない。後席の足元も外観から想像される以上に広く、短時間、短距離であれば、大人4人でも快適に過ごせそうだ。
久々に楽しいクルマに乗った!
試乗したのは2005年式(約4年落ち)、走行約3万kmの車両。外装に目立ったキズはなく、機械的なコンディションも上々の車両だ。その1.2リッター直4・SOHC・2バルブエンジン(60ps、10.4kgm)は、ノーマルパンダとまったく同じで、フィアット500の「1.2 8V」(69ps、10.4kgm)とも基本設計は同じもの。スペックだけ見ると非力以外の何物でもないが、これが実にトルキーで扱いやすい。4×4クライミングでは最終減速比と各ギア比が専用となっており、特に1速と2速は明らかにローギアード。おかげで発進はマニュアル初心者でも大丈夫なくらいイージーで、エンジンも高回転まで(といってもせいぜい6000回転くらいまでだが)小気味よく回ってくれる。
ただし車重は1060kgもあるので、乗り手の気持ちとは裏腹に実際の走りはのんびりしたもの。3速に入ったあたりから加速はガクンと伸び鈍り、追い越しが効かないことに歯がゆさを感じるが、裏を返せばそれくらい運転している本人には非力感がないということ。どの回転域でもトルク感があり、アクセルを踏み込めば一生懸命「加速しようとしてくれる」のがその理由か。とにかく、久々に楽しいクルマに乗った、という感じだ。
街乗りにおいて、フルタイム4WDの恩恵を明確に感じることはないが、ノーマルパンダに比べて車重が100kgほど増え、前後重量配分が多少後ろよりになったせいか、全体にドッシリ感は増している。重心も上がっているはずだが、普通に走る限り、操縦安定性はノーマルパンダと大差ない気がした。
その気になれば悪路走破性はレンジローバー並み?
なおオフロードでの走破性については、某有名動画サイトでレンジローバーと一緒に悪路を走らせている映像(http://www.youtube.com/watch?v=fAg4DdXAp7Y)が参考になるだろう。当然ながら絶対的な走破性はレンジローバーが優るが、小型軽量ボディにモノを言わせた「こしゃくな走り」はそれ以上に魅力的だ。
なお4×4 クライミングのビスカスカップリング式フルタイム4WDは、1980年代頃から主にFF車ベースの4WDに使われたもの。最近のFFベース4WD車は電子制御多板クラッチ式が主流となっているが、ビスカス式では複雑な制御が要らず、オンロードからオフロードまで常に適切な駆動力が得られるといったメリットがある。前後のタイヤが同時に浮く(もしくはスリップする)ような過酷な状況では、いわゆる対角線スタックを起こしやすいが、4×4 クライミングのような軽量車の場合、特性をうまく活かして走れば十分な悪路走破性を発揮する。
車名 Fiat Panda 4×4 Climbing (2005年モデル)
形式 GH-16912Q
寸法 全長3570mm×全幅1605mm×全高1635mm
ホイールベース 2305mm
車重 1060kg
駆動方式 フルタイム4WD
エンジン 1.24リッター直列4気筒SOHC・2バルブ
最高出力 60ps(44kW) /5000 rpm
最大トルク 10.4kgm (102Nm)/ 2500rpm
トランスミッション 5速MT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン/30L
10・15モード燃費 -km/L
タイヤ 185/65R14
最小回転半径 -m
発売時期 2005年4月
当時の新車価格 188万8950円(2005年、消費税含む)
試乗車スペック
初年度登録 2005年
販売価格 129万円(消費税込み)
走行距離 29,800km
ボディカラー ドライターコイズ
備考 ETC
試乗日 2009年6月
メカニズムは現代のクルマとしては最もシンプル
左ハンドルのMTのみというマニアックな仕様であり、販売台数も多くない4×4 クライミング。まずは物件を見つけるのが大変だが、見つけてしまえば2009年現時点では最初期モデルでも4年落ちと、まだまだ新しいモデルだ。サンプルカーは約3万kmの距離を刻んでいたが、機械的なコンディションは新車時にほとんど見劣りしなかった。
タイミングベルトの交換時期やオイル管理には気を配っておきたいクルマが、変速機は5MTのみであり、エンジンもシングルカムの2バルブであるなど、メカニズムは現代のクルマとして最もシンプル。なのでコンディションに対して神経質になることはないだろう。年式が新しければメーカー保証期間内の個体もあるため、これを探してみるのも手だ。
「速さは要らないが、楽しさは欲しい」という人に
クルマと言えばATが当たり前の昨今だが、今回4×4 クライミングに乗って思ったのは、「やっぱりマニュアル車って楽しい!」ということ。取材では同時に2代目アウディTT 2.0TFSI (6速DCTで200ps)という、パンダの対極に位置するような現代的スポーツカーにも試乗したのだが、運転の面白さという点ではまったく劣っていないと感じた。
確かに4×4 クライミングは速くはないし(率直に言って遅い)、各種性能もかなりプリミティブだが、「クルマの原点」を感じさせる点では、4×4 クライミングの方が上手(うわて)。同時に、「クルマの楽しさは絶対的なスピードとは関係ない」というのも今回再確認したことの一つだ。
そんなわけで、オフロード色の強い4×4 クライミングではあるが、むしろちょっと個性的な輸入コンパクトカーとして、広くクルマ好きの方におすすめしたい。昔はローバーMINIや初代パンダといったクルマがそうだったのだが、現代においてはこの4×4 クライミングがそれらに代わる存在だと思う。
しかも今回試乗したサンプルカーはこのコンディションで129万円。正直、取材してから知り合いのクルマ好きにすすめまくってしまったほど、太鼓判を押せるクルマだった。
Text&Photo:DAYS




