掲載日 : 2009年08月06日
2005 シトロエン C3 プルリエル
オープンカーからピックアップまで自在に変形
C3 プルリエルは、コンパクトカーのC3をベースに開発された4人乗りオープンカー・・・・・・だが、単なるオープンカーではない。その車名がフランス語で「複数」を意味するように、実用的なコンパクトカー状態の「サルーン」から、キャンバストップを開けた「パノラミックサルーン」、リアウインドウを収納した「カブリオレ」、フルオープンの「スパイダー」、そして後部を荷台にした「スパイダーピックアップ」まで、5つのボディスタイルに変身する“モジュラーボディ”を売りとした前代未聞の超意欲作だ。
日本では2005年から約3年間販売
欧州では2003年4月にデビュー。日本でもその年の東京モーターショーに出展されたが、導入自体は2年遅れて2005年4月から。欧州にはディーゼル車やマニュアル仕様もあったが、日本仕様は1.6リッター直4ガソリンエンジンと5速セミAT「センソドライブ」の右ハンドル仕様のみで、当初の価格は279万円だった。
通常のC3ハッチバックは2006年にマイナーチェンジしたが、プルリエルはボディカラー等以外に大きな変更はなく、2008年3月に日本での販売を終了した。欧州では2009年8月現在も販売されている。

見る人をハッピーにさせるデザイン
プラットフォーム(車体の土台となる部分)はC3をベースとしたものだが、外装はほぼ全てプルリエル専用。ルーフからCピラーまで半円を描く「サイドアーチ」、ゴルフボールのようにディンプル(小さな凹み)の付いたリアコンビネーションランプなど、見る人をハッピーにさせるデザインだ。
キャンバストップを開けた時の雰囲気は、どこかシトロエンの傑作大衆車「2CV」(1948~90年)を想起させるが、並べてみると実は全然似ていない。むしろグリルレス風のフロント部や丸みのあるドアパネルあたりは、シトロエンのもう一つのイコンである「DS」(1955~75年)に似ている。特にサイドアーチを全て取り去ってフルオープンにした状態は、さしずめDSのオープンカー仕様である「DS デカポタブル」のチョロQのようだ。
専用シートやボディ同色パネルがアクセント。意外に実用性は高い
インパネ部分はC3とほぼ共通だが、シートや内装のボディ同色パネルはプルリエル専用。写真では分かりにくいが、シート生地は「アピキュラ(Apicula)」と呼ばれる、サラッとしたメッシュ素材だ。なお新車時にはメーカーオプションでレザーシート(12万6000円)も選べた。
フル4シーターで、積載性も高い
後席にも大人が2人、それほど窮屈な思いをせずに座れる。トランクへのアクセスは、最初にリアウインドウを跳ね上げ、さらにロアゲートを下ヒンジで開けて行う。容量は266リッターで、後席の背もたれを倒せばさらに広大な荷室が広がる。なにしろ屋根を開けてロアゲートを開けっ放しにすれば、ピックアップトラックになる、というのがプルリエルの売りだ。ただし残念ながら日本国内の場合、ロアゲートを倒したままの公道走行は違反となる。
プルリエルの変身方法 【その1:パノラミックサルーン】
オープンカーへの変身方法だが、これには3段階ある。まず一番簡単なのが電動キャンバストップをルーフ後端まで巻き上げた「パノラミックサルーン」モードだ。これは要するに一般的なキャンバストップ車のルーフを開けた状態と同じで、安全性や安心感が高く、操作も気楽にできる。ちなみにこの電動キャンバストップは2層の芯材が入った4層構造で、風圧がかかってもバタつきにくく、洗車機の使用もOKだという。
プルリエルの変身方法 【その2:カブリオレ】
もっと開放感が欲しい、オープンカーっぽくしたい、という場合には、次の「カブリオレ」状態に進む。これはガラス製リアウインドウとキャンバストップを荷室内に収納してしまうモードで、特殊な手順とコツを要する。その方法は以下の通りだ。
| 1. | キャンバストップをリアウインドウと重なる位置まで電動で下げる。 |
| 例のダイアルを、(回すのではなく)プッシュして操作する。 | |
| 2. | 電磁スイッチを押してリアウインドウをキャンバストップごと跳ね上げる。 |
| 3. | 下開きのテールゲートを開ける。 |
| 4. | 荷室のフロアボードを外す。 |
| 5. | ルーフカセット(リアウインドウ&キャンバストップ)を元のように閉める。 |
| 6. | リアウインドウ下部の電磁スイッチ(少々場所が分かりにくい)を押して、 |
| ルーフカセットを少し持ち上げる。 | |
| 7. | そのままルーフカセットを下方向に約90度反転させ、荷室底に収納する。 |
| 8. | フロアボードを戻す。 |
| 9. | テールゲートを閉める。 |
以上だが、これらの操作方法は、取扱説明書を見るか、誰かに教えてもらわないとスムーズに行うのは難しい。ただし慣れてしまえば5分も掛からないはずだ。
プルリエルの変身方法 【その3:スパイダー】
さらには、ルーフとCピラーが一体になったサイドアーチを外し、「スパイダー」と呼ばれるフルオープン状態にすることが可能だ。これはサイドアーチのロックレバーを前後2ヵ所(左右で計4ヶ所)解除して行うが、なにしろこのサイドアーチは片側だけで12kgもあり、しかも持った時のバランスが不安定なので、うっかり落としてしまわないように注意が必要だ。また取り外しても車内に収納する場所はないので、ガレージ等での保管となる。
ということで、スパイダーモードへの変身は苦労が多く、まして出先で雨に降られたり、クルマから離れる時のことを考えると、出番はかなり少ないと思われる。どちらかと言えば、いざという時の可能性やそのアイディアを楽しむもの、と思った方がいいだろう。
さらにこの先、リアゲートを倒した「スパイダーピックアップ」状態でも走行可能だが、前述の通り日本の道交法では後部ナンバーが見えないなどの点で違反となってしまう。
5速センソドライブでキビキビ走る
サンプルカーは、導入初年度の2005年式(約4年落ち)で、走行約2万kmというコンディション。工場出荷時からと思われるタイヤはヒビ割れが激しかったが、それ以外に目立った経年変化はなかった。
プルリエルに乗るのはまさに発売時以来の4年ぶりだったが、印象は当時の新車とほとんど同じ。日本向けプルリエルのエンジンは1.6リッター直4(110ps、15.3kgm)で、車重は1210kgと重めだが、伝達ロスの少ない5速セミAT「センソドライブ」のおかげで、トルクフルかつキビキビした走りが味わえる。
クリープがない点や1速から2速シフトアップ時に生じる失速感は、慣れてしまえば大丈夫。ゆったり流す分には自動的にシフトチェンジしてくれる「オート」モードが便利だが、急ぐときはマニュアルモードがいい。ステアリングコラムから生える長いパドルシフトを引けば、すかさず空ぶかしをして回転を合わせながらシフトダウンしてくれる。
見た目を裏切る?しっかりした走り
今回は「カブリオレ」モードで試乗したが、その状態でも十分オープンカーらしい開放感が味わえるし、風の巻き込みも気にならない。オープン時に重心がリアに偏るメタルトップ車と違って、前後の重量バランスもよく、操縦安定性も予想以上にいい。
多少フロントウインドウにワナワナ感は出るが、ボディの剛性感も高く、十分に最新のカブリオレ水準に達している。プルリエルの衝突安全性はユーロNCAPで4つ星と高水準だが、横転時の乗員保護対策などを考えて補強しているうちに、操縦性に関係するボディ剛性の方もどんどん上がってしまったような感じだ。
車名 Citroen C3 Pluriel (2005年モデル)
形式 GH-A42NFU
寸法 全長3935mm×全幅1710mm×全高1560mm
ホイールベース 2460mm
車重 1210kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 1.6リッター直列4気筒DOHC
最高出力 110ps(80kW) /5800rpm
最大トルク 15.3kgm (147Nm)/ 4000rpm
トランスミッション 5速セミAT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 47L
10・15モード燃費 -km/L
タイヤ 185/65R15
最小回転半径 -m
発売時期 2005年4月
当時の新車価格 279万円(消費税込み)
試乗車スペック
初年度登録 2005年
販売価格 189万円(消費税込み)
走行距離 2万700km
ボディカラー オレンジ エーリアル Pe
備考 AIS評価点 3.5点
試乗日 2009年7月
個性的な多彩なボディカラー
プルリエルの販売期間は2005年4月から2008年春までの約3年間。購入時にまず楽しみたいのは、発売時に10色もあったボディカラー選びだろう。サンプルカーの「オレンジ エーリアル」や、独特のブルーグレー「ブルーパナマ」、淡い草色の「ベールレンツ」などはかなり個性的で、ぜひ好みの色に巡り会いたいところ。2007年最終モデルには、プルリエルで唯一の白系となる「クレームパルテノン」も加わっている。
なお、日本に導入されたプルリエルの多くはAピラー、サイドアーチ、バンパー&サイドモールがシルバーメタリック色(本国ではオプション)となっているが、途中から今回のサンプルカーのようなブラック(本国では標準仕様)も導入されている。
見た目に反して? 高い完成度
今回のサンプルカーではまったく問題なかったが、センソドライブの不具合に関しては、シフトアクチュエーターもしくはクラッチアクチュエーターの交換となる場合があるようだ。その他、電気系のマイナートラブルの類はあるようだが、見た目に反して故障は少ないというのが巷の評判だ。雨漏りもほとんどなく、今どきのオープンカーと同程度と考えていいだろう。もちろん電動キャンバストップやリアのガラスハッチの動作は購入時に要チェック。ルーフカセットの収納も、慣れている店頭スタッフがいれば一度やってもらうのがいいだろう。
最後に強調したいのは上でも何度か触れたように、プルリエルは操縦安定性から安全性、実用性にいたるまで、真面目に設計されているクルマということだ。これはその奇天烈なデザインやコンセプトからすると想像しにくいことかもしれないが、むしろその意外性こそがプルリエルの一番の魅力かもしれない。十分に日常の足となり得るクルマだ。
Text:Kei Niwa, DAYS
Photo:DAYS









