掲載日 : 2009年09月28日
2009 トライアンフ ストリート トリプル R
デイトナ675のネイキッド版。あるいはスピードトリプルの弟分
トライアンフの「ストリートトリプル」は、排気量的にはミドルクラスとなる675cc・3気筒エンジンを積んだネイキッドモデルだ。
そのパワーユニットはスーパースポーツであるデイトナ675(2006年発売)用の3気筒を低中速向けにデチューン(125ps→108ps)したもの。ホイールベースやキャスター/トレイルなどのディメンションを除けば、アルミ製フレームやスイングアームも、デイトナ675譲りだ。つまりメカニズム的には、「デイトナ675のネイキッド版」と言っていいだろう。
一方、デザインやキャラクターという点では、1994年に初代が登場し、2005年に4代目まで進化した「スピードトリプル」の弟分という存在。スピードおよびストリートの両トリプルは、いわゆるストリートファイターと呼ばれるジャンルのモデルだ。なお、スピードトリプルは、映画「ミッション:インポッシブル 2」(2000年)の中でトム・クルーズが乗り、世界中に新生トライアンフの存在を知らしめたモデルである。
2007年に日本で発売。2008年には「R」を追加
日本での発売は2007年9月。当初の価格は99万7500円で、ボディカラーは当時から2009年9月現在に至るまで、黒(ジェットブラック)、白(フュージョンホワイト)、緑(ルーレットグリーン)の3色となっている。
2008年12月には、足まわりやブレーキ等をグレードアップした「ストリートトリプル R」(今回の試乗車)を発売。ベース車からの変更点は、前後サスペンションへの減衰力調整機能の追加、倒立式フロントサスペンションのブラックアルマイト仕上げ(ベース車は金色)、フロントブレーキキャリパーの4ピストン対向化(ベース車は2ピストン片押し)やラジアルポンプマスター化、そしてマグラ製テーパードアルミハンドルバーや専用2トーンステッチシートの採用などだ。当初の価格はベース車より15万円ほど高い117万6000円で、ボディカラーは現在のところ艶消しのグレー(マットグラファイト)とオレンジ(マットブレイジングオレンジ)の2色が用意されている。(2009.9)

スピードトリプルと瓜二つ
デイトナ675のネイキッド版とも言えるストリートトリプルだが、そこにデイトナの面影はほとんどなく、見た目は兄貴分であるスピードトリプルにそっくり。よく見ればスイングアームは片持ちではなくデイトナ675と同じ両持ちであり、フレーム形状もアルミ楕円パイプを2本重ねたスピードトリプルのものとは違うのだが、そのあたりを見ないと瞬間的に判別するのは難しい。それでもあえて差別化しなかったのは、要するにスピードが上、ストリートが下というのではなく、上級ライダーにもストリートトリプルを積極的に選んで欲しい、というトライアンフ側の意図だろう。
凄みのあるデザインと色遣い
その外観はオートバイに詳しくない人でも「オッ」と思わせる凄みのあるもの。艶消しのフレームとスイングアーム、マットグラファイトと呼ばれる「R」専用カラー、黒のエンジンやフロントフォーク、ホイールなどに混じって、アルミ、ステンレス、メッキなどの光り物パーツが映える。このあたりは、赤などの明るい原色系が似合うドゥカティとは明確にイメージが異なる。
一方で、マットブレイジングオレンジやベース車にあるルーレットグリーンも鮮やかで個性的だ。ポールスミスを思わせる色遊びのセンスは英国車ならでは、といったところ。
車重は167kgとまさに600ccクラスで、引き回しもドゥカティほどではないが軽い。シート高は805mmで、身長167センチの担当者では、両足のつま先が同時に付く程度。モンスター696(770mm)ほど足つきは良くないが、心配な人には社外品のローダウンキットがいいという。
675ccとは思えないパワー。「打てば響く」レスポンス
キーを回すと、クククッ、バヒュンと3気筒エンジンが目覚め、回転計の針とシフトアップインジケーターが一瞬振り切れる。アイドリング音は3気筒独特で、音量は大きすぎず、大人しすぎず。軽くブリッピングすると、弾けるようなサウンドと共にビュンビュンと右手に反応する。
走り出して驚いたのは、とにかく滅法パワフルなこと。噂には聞いていたが、実際のところそれは予想を上回るもので、「3000回転で最大トルク(7.0kgm)の80%を発生」するエンジンは、下から抜群にトルクフル。それでいて一部の2気筒のような低回転時の扱いにくさはなく、4気筒並みの柔軟性がある。とにかくタコメーターの目盛り(1万3000回転がレッドゾーン)の半分も回さないうちから、「打てば響く」レスポンスと湧き上がるパワー、そして2気筒とも4気筒とも違う、刺激的なサウンドが楽しめる。そのレスポンスの良さは、2速からスロットルを開けるだけで、フロントが軽く浮き上がるほど。スロットル操作一つで思った通りにバイクが反応するので、とにかく気持ちがいいしストレスもない。
しなやかな足まわり。直進安定性も高い
「R」用のフルアジャスタブルサスは、素人的にも滑らかな動きが体感できて、街乗りでもしなやか。また同じく「R」用の4ピストンブレーキも、効き、タッチ、コントロール性など、少なくとも日常域では不満なし。ベース車と乗り比べると、違いがはっきり分かるようだ。
ツーリング派には快適性も気になるところだが、100km/h程度ではエンジン音も十分静かで、振動も4気筒並み。ストリートファイター系ではあるが、高速安定性も高く、ロングライドも良さそうに思えた。もちろんノンカウルゆえ、風圧は気になるが、オプションのフライスクリーン(いわゆるバイザースクリーン)があれば、多少は緩和できるかも。
車名 Triumph Street Triple R (2009年式)
形式 -
寸法 全長2030mm×全幅731mm×全高1250mm
シート高 805mm
ホイールベース 1390mm
乾燥重量 167kg
エンジン 水冷・675cc並列3気筒DOHC・4バルブ・横置
燃料供給装置 電子制御燃料噴射
最高出力 108ps(79kW) /1万1700rpm
最大トルク 7.0kgm (69Nm)/ 9100rpm
トランスミッション 6速リターン式
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 17.4L
タイヤ 前 120/70ZR17、後 180/55ZR17
発売時期 2008年12月
当時の新車価格 117万6000円(消費税込み、2008年12月発売モデル)
試乗車スペック
初年度登録 2009年1月
販売価格 105万円(消費税込み)
走行距離 1030km
ボディカラー マットグラファイト
備考 トライアンフ名古屋イースト試乗車
試乗日 2009年9月
評判は本当だった
今回ストリートトリプルを採り上げたのは、トライアンフ名古屋イーストの土田店長の勧めもあるが、実は試乗担当者がオートバイ専門誌のベタ褒めを読んで、「ホントかよ!?」と気になっていたことが大きい。なにしろ1050ccのスピードトリプルを差し置いて、弟分たるストリートトリプルがそれ以上に「楽しい」「バランスがいい」と絶賛されていたからだ。
今回乗ってみて実感したのは、「評判は本当だった」ということ。「知ることは感じることの半分も重要ではない」と言ったのは、レイチェル・カーソンだが、まさにそれを実感した。おそらくこれがスピードトリプルであれば、これほど気楽に全開加速を楽しめなかったはずで、速度域も相応に上がってしまったはず。そのあたりが、ストリートトリプルこそ街乗りベスト、と言われる所以だろう。
とにかくトライアンフ、特にトリプル系に乗ったことがない人で、「本当に乗って面白い」バイクに惹かれる人は、ぜひ一度乗ってみていただきたい。ライバルは国産600クラスや欧州ミドル系のドゥカティ・モンスター、BMW・F800シリーズ、あるいはビューエルなどまさに百花繚乱といった状況で、どれを選ぶかは100%好みだが、それらと比較試乗する価値は、絶対にあると断言できる。あるいは現在、ツイン(2気筒)あるいはマルチ(4気筒)に乗っている人にとっても、「こんな面白いバイクがあったのか!」と目から鱗が落ちる経験になるはずだ。少なくとも自分はそうだった。
トライアンフ名古屋イーストの土田店長に聞く
1969年生。16歳からメカニックのバイトを始める。20歳から不動のカワサキZ1を自らレストア、10年以上かけてフルチューンするものの、当時の最新高性能バイクに衝撃を受ける。国内外モデルに精通しており、2008年同店オープンより現職
---トライアンフといえば1960年代以前のモデルも有名ですが、現代のトライアンフはどんなオートバイと言えるでしょうか。
土田 「トライアンフはご存じの通り歴史のあるブランドですが、大きく飛躍するきっかけとなったのは軍用オートバイでの成功です。当時英国ではノートンやBSAなどもありましたが、トライアンフはどちらかと言えば質実剛健。一握りのライダーしか乗りこなせなかったり、パワーやコーナリング性能などを突出させたバイクではなく、誰もが日常域で楽しめて、信頼性も高いというのが特徴だったと思います。ひとことで言えば『僕らが乗って、ちょうどいい』バイクですね。その伝統は今のトライアンフにも受け継がれていると思います。
---2007年にデビューしたストリートトリプルですが、ユーズドで購入する際に知っておいた方がいいことは。
土田 「ノーマルもいいですが、『R』もおすすめです。主な違いは足まわりやブレーキですが、乗り比べると最初のコーナーですぐに良さが体感できると思います。ユーズドでは今のところスピードトリプルが主力ですが、こちらは08年モデルからはブレーキキャリパーがニッシン製からブレンボ製になり、また電子制御も改良されてトルクカーブが滑らかになり、乗りやすくなりました。どちらも信頼性に関しては国産車と変わりません。オイルやバッテリーといった消耗品のメンテナンス間隔も同じです。
---今トライアンフを選ばれるのはどんな方が多いのでしょうか。
土田 「ボンネビルなどを含めれば、リターンライダーの方はもちろん、ホンダCB1300やハーレーなどからの乗り換え、大型免許をとってすぐにトライアンフを選ばれる方など、本当にそれぞれです。でも、みなさんよくおっしゃっるのは『トライアンフは乗りやすい』『乗って楽しい』ということですね。『トライアンフに乗り始めて、よく遠出するようになった』、『何だか上手くなったような気がする』という方も多いです。まさにそこがトライアンフらしさだと思います」
Text:Kei Niwa, DAYS
Photo:DAYS








