掲載日 : 2009年10月27日
2007 シトロエン C6 エクスクルーシブ
DS、CX、XMに続くシトロエンの最高級セダン
欧州では2005年、日本では2006年に発売されたシトロエンの「C6」は、同ブランドにとって久々の大型高級セダン。先進的な技術とデザインで世界をあっと言わせた名車DS(1955~1975年)、その後継のCX(1974~1989年)、そしてXM(1989~2000年)に続くビッグシトロエンであり、もちろんその足まわりにはスプリングとダンパーの代わりに油圧とガスを用いる伝統の通称「ハイドロ」、正式には最新型の「ハイドラクティブ III プラス」サスペンションが採用されている。
日本仕様は3リッターV6ガソリンのみ
日本では2006年10月に発売されたが、実際のデリバリーはその年末から。当初の販売目標は年間500台とされた。欧州での主力はディーゼルエンジン車だが、日本仕様は3リッターV6ガソリン+6ATのみ。全車右ハンドルで、レザー内装とHDDナビを標準装備した。
当初の新車価格は682万円で、さらにオプションで電動スライドリアシートやサンルーフ等をセットにした「ラウンジ・パッケージ」(28万円)やサンルーフ単体(13万円)が用意された。
翌年10月には日本発売1周年を記念して、外装色を「グリアルミニウム」、内装をベージュレザーとし、さらにサンルーフを装備した特別仕様車「シルバースタイルエディション」(700万円)を20台限定で発売している。
2009年10月現在もC6は販売中だが、目下3リッターV6エンジンの生産終了に伴い、日本での販売は終了すると言われている。(2009.10)

圧倒的な存在感
言葉で表現するのは無意味と思えるほど、C6のデザインは超個性的だ。フロントノーズはロケットのように尖り、キャビン部分は長くゆったり、そしてリアは丸みこそ付けられているが、断ち切られたように短い。まるで宇宙船のようなスタイリングは、DS、CX、XMのDNAを感じさせるものだ。
ボディサイズは全長4910mm×全幅1860mm×全高1465mmとメルセデスのSクラスやBMWの7シリーズに匹敵するものだが、存在感そのものはそれら3ボックスセダンとはケタ違いと言っていいだろう。
日本仕様車のボディカラー一覧
日本に導入された外装/内装色の組み合わせは以下の8通り。ただし正規販売車でもイレギュラーなオーダー車や並行輸入車ではこの限りではない。
- ノアール オプシディアン(黒)/ワディビス(ベージュ)
- グリ ファルミネーター(ダークグレー)/ワディビス(ベージュ)
- グリ フェール(グレー) /ミストラル(黒)
- ベール ノヴァ(濃緑)/ワディビス(ベージュ)
- ブルー モーリシャス(濃紺) /ミストラル(黒)
- ガナッシュ(濃茶)/ワディビス(ベージュ)
- サーブル ド ラングリュヌ(ベージュ)/ワディビス(ベージュ)
- グリアルミニウム(シルバー、限定車のみ)/ワディビス(ベージュ)
デザイン、広さ、装備など、全て申し分ない
新車価格は700万円ほどだが、インテリアの非日常感は1000万円超クラスではないかと思う。うがった言い方をすれば、エンジンが3リッターV6とミドルクラス級である分、余ったコストをシャシーとこのインテリアにつぎ込んだ、という感じだ。デザイン、広さ、装備、シートの座り心地などなど、まったく申し分ないと思う。ベージュのレザーは汚れが目立ちそうだが、それによる高貴な雰囲気は捨てがたいところだ。
特に強調したいのはフランス車が得意とするシートで、とにかく作りが立派。広い室内空間を目一杯使った大柄なもので、座面も、背もたれも、ヘッドレストも全て驚異的に分厚い。ポジション調整も電動で自由自在だ。
細かいところでは、前後4枚全てのドアポケットに付く半円状のスライド式カバーが面白い。開けるときは上から押し下げ、閉めるときはダンパースプリングの力で静々と閉まる工芸品のような作りだ。
文字通り「滑るように走る」
今回、オートプラネット名古屋の外に連れ出したのは、2007年式(約2年落ち)で走行1万1300km、珍しいダークグリーンのC6だ。日常的に使用された形跡はほとんどなく、まるでデモカーのような車両だが、販売価格は新車時の682万円に対して379万円に過ぎない。
見た目こそ得体の知れないC6だが、運転操作自体は意外に普通だ。20世紀までのハイドロシトロエンは、ボディがべったり沈んだ状態から、エンジン始動と共に車高を持ち上げたものだが、最近のモデルは標準車高をしばらく維持するため、そんな仕草も今や昔話。パワーステアリングも軽く、ノーズの長さに注意すれば、狭い場所での取り回しも意外に気にならない。
取材担当者はC6のデビュー当時に2日間ほど試乗しており、今回が約3年ぶりの2回目。しかし幹線道路に出て100メートルも行かないうちに、そのスムーズな走りには改めて驚かされた。「滑るように走る」とはまさにこのことで、足まわりが硬いとか、乗り心地がフワフワするとか、そんな表現がまるで遠い過去の言葉に思えてしまうほど、このC6はべらぼうにスムーズかつフラットに疾走する。これまでオートプラネットのUカーを140台近く実際に試乗してきたが、いつもの試乗コースをこれほどスムーズに走ったクルマはこれまで一台も無かったと断言できる。というか、最新の高級車でも(全部乗っているわけではないが)、ここまでのものはそうそうないのではないか。
また感覚的なものだが、2006年末に乗った新車のC6より、今回乗った車両の方がスムーズさは増しているように思えた。ファンの間では一種の都市伝説のように、「ハイドロ車は当たりがついてからが本領」と言われるが、この最新のハイドラクティブIIIプラスでも同じことが言えるようだ。
静粛性はあの高級車に負けない
静粛性も非常に高く、特にロードノイズや風切り音は、何度も比較に出して申し訳ないが、1000万円クラスのドイツ車に比べても静かに思える。確かに高回転時のエンジン音はそれなりに高まるが、むしろそれは快いサウンドだ。ちなみに二重構造のサイドウインドウは、一部のスポーツモデルのようにドア開閉時に数10mm自動昇降して密着性を高める。
最後になったが、パワートレインはシトロエンのC5やプジョー407などでおなじみの3リッターV6(215ps、30.5kgm)とアイシンAW製6ATの組み合わせ。怒濤の速さこそないが、最高速はメーカー発表値で230km/hまで伸びる。動力性能はこれで十分だろう。
車名 Citroen C6 Exclusive (2007年式)
形式 ABA-X6XFV
寸法 全長4910mm×全幅1860mm×全高1465mm
ホイールベース 2900mm
車重 1820kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 3.0リッターV型6気筒DOHC・4バルブ
最高出力 215ps(155kW)/6000rpm
最大トルク 30.5kgm ( 290Nm)/3750rpm
トランスミッション 6AT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 72L
10・15モード燃費 -km/L
タイヤ 245/45R18
最小回転半径 -m
発売時期 2006年10月
当時の新車価格 682万円(消費税込み。2006年10月発売モデル)
試乗車スペック
初年度登録 2007年9月
販売価格 379万円(消費税込み)
走行距離 1万1300km
ボディカラー ベール ノヴァ
備考 バックモニター、ETC
試乗日 2009年10月
目利きが買うクルマ
先にも書いたように、今回の車両は新車時の682万円に対して379万円。あくまで相場を反映したものとはいえ、これはあまりにも安い。安すぎる。まったくもってクルマの価値を反映していない、というのが今回試乗して得た実感だ。とは言えC6を今買おうとしている人にしてみれば、これはむしろまことに喜ばしいこと。正直このC6を「安い」と思って買える人は、目利きだと思う。
ただ、そうは言っても私を含めて多くの人にしてみれば、なかなかC6のようなビッグシトロエンには手を出しにくい。仮にお金の問題をクリアしたとしても、C6はあまりに存在感があり過ぎるし、実際ボディサイズも小さくないからだ。古伊万里の逸品なら、特大の大皿といったところか。
仮にすでにSクラスや7シリーズのロングモデルをお持ちの方でも、C6はずしりと重みのある存在になるはず。正直、ロールズロイスやベントレーと一緒にガレージに並んでいても、まったく負けないクルマだと思う。
買う、買わないは別にして
シトロエンのハイドロ車を絶賛する専門誌の記事は多いし、それを熱く語るシトロエンファンも多い。個人的にも、以前仕事でよく乗ったXMでその異様にどっしり感のある走りを堪能できたのは、とてもいい経験になったと思っている。そしてあらゆる点で進化し、洗練され、完成度の高まったC6は、クルマというものの一つの理想という感じもして、クルマ好きとして非常に感激させられた。
確かに2000万円以上出して、車重が2トンを大幅に超えるような「超高級車」を買えば、これに近いスムーズな走りとこれを圧倒的に上回る速さや重厚感が得られるだろう。でも、日常域で最高の高速巡航性能が味わいたい、同乗者と一緒に最高の快適性を味わいたい、というのであれば、この379万円のC6でパーフェクトな体験が得られると思う。
一方で率直な話、C6はシトロエンが本当に好きな人だけが買えばいいクルマだとも思う。メーカーの開発者だって、本音ではそういう人向けに作ったはずだ。しかし、買う、買わないは別にして、ぜひメルセデス・ベンツやBMWユーザーにも、この性能は知っておいて欲しい。「高級車」を肌身で知っている人こそ、その実力を正当に評価できると思うからだ。
Text:Kei Niwa, DAYS
photo:DAYS









