掲載日 : 2009年11月09日
2006 ルノー ルーテシア 1.6 eLe
欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したBセグコンパクト
「ルーテシア」は、プジョーなら207、VWならポロ、トヨタならヴィッツに相当する、いわゆるBセグメントのコンパクトカーだ。初代は名車サンク(Cinq=5)の後継車として1990年にデビュー。欧州では「クリオ」と呼ばれるが、日本では商標の関係で使用できず(ホンダの販売系列名で使われていた)、1991年の初代発売時からルーテシアを名乗っている。
通称クリオIIIと呼ばれる3代目は、2005年に欧州でデビュー。欧州カー・オブ・ザ・イヤーをクリオIに続いて受賞し、さらに欧州の衝突安全テストであるユーロNCAPで最高評価の5つ星を獲得するなど、現地での評価は高く、欧州ではとてもポピュラーなモデルだ。
3ドア、5ドア、4AT、5MT、豪華版までいろいろ
3代目ルーテシアは、2006年3月に日本で販売をスタート。全車1.6リッター直4(112ps、15.4kgm)・右ハンドル仕様で、ラインナップはベースグレードの3ドア(5MT)と5ドア(5MTと4AT)、そして3ドアと5ドアの上級グレード「eLe(エル)」(4AT)で、当初の価格は189万8000円~219万8000円だった。eLeはアルミホイール、オートエアコン、コーナリングランプ等を標準装備する。その後はeLeをベースに、ボディカラーや装備などをアレンジした特別仕様車が多数リリースされている。
2007年12月には、最上級グレードとして5ドア・4ATの「イニシアル・パリ(Initiale Paris)」を設定。これは専用ボディカラー(ブラックもしくはベージュ)、専用レザーシート(ベージュ)、本木パネル、16インチアルミホイール&195/50R16タイヤ、電動パノラミックグラスルーフなどを備えた豪華なモデルで、1980年代の「サンク バカラ」(あのクリスタルガラス製品のバカラ)の現代版となっている。価格は285万円だった。
2009年には待望の「RS」が登場
2009年10月にはファン待望の高性能バージョン「ルノー・スポール(RS)」(299万円)が追加された。自然吸気2リッター直4・DOHCエンジン(202ps、21.9kgm)を搭載し、トランスミッションは6MTのみ。全幅1770mm(標準比+50mm)のワイドボディは専用エアロパーツでかためられ、室内には専用バケットシートを装備。サーキット走行を想定した足まわりには、ブレンボ製4ピストンフロントブレーキキャリパー、TRW製リアブレーキキャリパー、専用215/45R17タイヤ等々が奢られている。ハンドル位置は右のみだ。
最後に2009年11月現在のラインナップを整理すると、ベースグレード(5ドア・5MTのみ)、eLe(3ドアと5ドアの4AT)、eLe グラスルーフ(5ドア・4AT)、イニシアル・パリ(5ドア・4AT)、ルノー・スポール(3ドア・6MT)となっている。(2009.11)

3ナンバー幅となるも、全長は4メートルを切る
トヨタ・ヴィッツくらいのサイズだった初代や2代目ルーテシアに比べて、一回り大きくなった3代目。デビュー当時は「ついにルーテシアも3ナンバーか」と思ったものだが、実際には5ナンバー幅に対して20mmはみ出た程度で、運転中にサイズを意識することは皆無だ。ちなみにプジョー207(4030mm×1750mm×1470mm)と比べても、全高以外は少しずつルーテシアの方が小さい。
ずんぐりむっくりして愛嬌のあった先代ルーテシアと異なり、スタイリングはスポーティに変身。スポーツ仕様が似合いそうなので、「ルノー・スポール」の登場を待ちわびていた人は多いはずだ。
デザインから室内空間まで実用重視
ベースグレードとeLeの内装は黒基調。随所にアルミ調パーツを配して質感を高めているが、基本的には樹脂そのものの質感や表面処理(シボ付け、マット処理、ソフトパッド化など)で勝負するのがフランス流だ。生産性などのメリットもあるだろうが、その方がデザイン的に面白いと考えるからでもあるだろう。
毎回ルノーで感心するのがシートに腰を下ろした時のシットリ感だが、3代目ルーテシアのフロントシートはやや硬め。しかし作りそのものには手抜きがなく、長距離を走っても疲れなさそうだ。
一方、リアシートは全体にサイズが小さめで、座り心地もフロント以上に硬めとなる。ただし頭上から足もとまでの広さは十分で、先代ルーテシアのような閉所感はなく、ひょっとすると上級のメガーヌ(後席はあまり広くない)より余裕があるかも。総じて、デザインよりも実用性を重視した正統派と言っていいだろう。
パワーはそこそこ、シャシーは上級クラス並み
3代目ルーテシアに乗るのは、約3年半ぶりの2回目。当時試乗したのは「eLe」の5ドア・4AT車だったが、今回試乗したのもそれと同じ仕様で、走行距離が1万6100kmのワンオーナー車。販売価格は新車時の219万8000円に対して119万円だ。コンディションはとても良くて、タイヤの山もしっかりある。
エンジンはメガーヌの1.6にも使われている1.6リッターDOHC(112ps、15.4kgm )。フラットトルク型なので面白みはないが、毎日乗って疲れないのはこういうエンジンだろう。前回試乗した時には、切り始めが軽くてその後で重くなる電動パワステに違和感を覚えたが、今回はほとんど気にならなかった。
先代ルーテシアではシフトショックが出ることもままあったようだが、新型の4ATには変速プログラムも含めてずいぶん改良が入っているようで、基本的には別物と考えてよさそうだ。減速時に律儀にシフトダウンするのがフランス車らしいところ。
急ぐときはシフトレバーを左に倒し、マニュアルモードで走らせることになる。車重1190kgに対して112ps、つまりパワーウエイトレシオは10.6kg/psに過ぎないので、上まで回してもパワーは必要十分を越えないが、そもそもフランス車とは小さなエンジンを使い切って走らせるのが本来の姿。今どき日本仕様にちゃんと5MTをラインナップしているのも、多分そういう意図があってのことだろう。
そんな走りに応えるべく、シャシー性能は余裕たっぷりだ。サスペンションは構造だけ見ても異様に凝っていて、気合いが入っているのは一目瞭然。実際に走らせてみても、並みのコンパクトカーなら「ダン!」と突き上げがある段差や凹凸を、ルーテシアは平然と受け止め、やり過ごす。この点では高速道路や郊外の国道など、速度域の高い状況で真価を発揮するタイプだ。
車名 Renault Lutecia 1.6 eLe (2006年式)
形式 ABA-RK4M
寸法 全長3990mm×全幅1720mm×全高1485mm
ホイールベース 2575mm
車重 1190kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 1.6リッター直列4気筒DOHC・4バルブ
最高出力 112ps(82kW)/6000rpm
最大トルク 15.4kgm (151Nm)/4250rpm
トランスミッション 4AT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 55L
10・15モード燃費 -km/L
タイヤ 185/60R15
最小回転半径 -m
発売時期 2006年3月
当時の新車価格 219万8000円(消費税込み。5ドアモデル)
試乗車スペック
初年度登録 2006年7月
販売価格 119万円(消費税込み)
走行距離 1万6100km
ボディカラー メチルブルー
備考 ワンオーナー、ETC
試乗日 2009年10月
予算があれば「イニシアル・パリ」がおすすめ
購入にあたっては、3ドアか5ドアか、4ATか5MTか、ベースグレードか「eLe」か。はたまた豪華な「イニシアル・パリ」か、といった選択肢があるが、これは好みと予算次第で選んでしまっていいだろう。個人的には5MTモデルに絞り、後はボディカラーにこだわって選びたいところ。
しかしあえて人におすすめするとすれば、それは「イニシアル・パリ」だ。センスの良さやレザーシートの座り心地も含めて、かつてのサンク・バカラのように満足度の高い一台になるはず。新車価格が285万円もしたので流通台数は少なく、Uカー相場も高めにはなるだろうが、それだけの価値は絶対にあると思う。
Text:Kei Niwa, DAYS
photo:DAYS









