掲載日 : 2009年12月16日
2006 フォルクスワーゲン ニュービートル カブリオレ LZ
四半世紀ぶりに復活したビートルのカブリオレ
1998年にデビュー、日本では1999年に発売されたニュービートル。そのオープンモデルとして2003年にデビューしたのが「ニュービートルカブリオレ」だ。1979年まで生産された旧ビートルカブリオレの再来と言えるモデルで、巧みに往年の雰囲気を再現している。3層構造の幌は電動で、リアウインドウは熱線入りガラス製だ。
2005年に内外装をマイナーチェンジ
日本では2003年6月に発売。エンジンは通常の(クーペタイプの)ニュービートルにも採用されている2リッター直4・SOHC(116ps、 17.5kgm)だが、変速機はそれと同じ4ATではなく、アイシンAW製の6ATが奢られた(クーペも2008年から採用)。導入当初はレザーシートやアルミホイールを備えた仕様のみで、新車価格は消費税抜きで333万円だった。
翌2004年4月には、ファブリックシートやスチール製ホイール仕様のベースグレードを新設定。従来と同等装備のグレードを「プラス」と呼ぶことにし、計2グレードとなった。
2005年10月には内外装をマイナーチェンジ。クーペ同様、前後バンパー、フェンダー、ライト形状など内外装のデザインを変更し、質感をアップ。同時の上級グレードの名称を「プラス」から「LZ」に変更した。
2008年3月にはラインナップを再編。ベースグレード、「LZ」、「ヴィンテージ」の3種類とした。この「ヴィンテージ」は2005年の特別仕様車「ダークフリント」と同じ黒(ディープブラックパールエフェクト)の外装色に、ボルドーレッドのレザー内装を組み合わせた仕様だ。2009年12月現在は、「LZ」と「ヴィンテージ」のみがラインナップされている。

旧カブリオレを現代的に再現
スタイリングは見ての通り、要するにニュービートルをオープンカーにしたものだが、クーペ同様に丸みのあるルーフラインを幌で再現するなど、そのこだわりは半端ではない。また元ネタである旧ビートルカブリオレの幌はクローズド時にかなり無骨だったから、ここは「ニュー」の方が明らかに美しいと言える部分だ。
一方、幌を畳んだ時は、一般的にはウエストラインの下にきれいに収まるのが美しいとされるが、ニュービートルカブリオレの場合はそれとは逆に、旧カブリオレのようにリアにこんもりと嵩張らせて折り畳む方法を選んでいる。これは徹底的に耐候性を重視した分厚い幌を装備するドイツ製カブリオレの伝統的な特徴だ。これによってオープン時にはクラシカルなムードが楽しめる。
なお、サンプルカーは2005年以降のマイナーチェンジモデル。2003~2005年モデルとは、前後のライトレンズ、ウインカー、前後バンパー、フェンダー等のデザインが異なる。細かいところではフューエルリッドの形状も四角から丸になっている。写真だと分かりにくいが、実車を見ると質感が増したことが一目で分かる。
一輪挿しを標準装備。4人乗りも十分可能
試乗車は純正ナビを標準装備した珍しいタイプで、専用オーディオを最上段に、ナビ等を中段に配置した変則的なレイアウト。運転席正面に旧ビートル風の一眼メーターを置き、その左側に樹脂製の一輪挿しフラワーベイス(花瓶)を置くデザインは、新旧ビートルの象徴とも言うべき部分だ。室内はいわゆるスポーツカー系のオープンカーと違って広々としていて、1950年代のアメリカ車にも通じる大らかさがある。
なおニュービートル(クーペ)の初期モデルは内装の品質感が今ひとつで、耐久性の点でも疑問のある仕上げだったが、試乗した2006年式ではそんな問題もすっかり解消され、同世代のゴルフに遜色ない質感となっている。
過不足ないパワー。バランスのよい走り
取材担当者がニュービートルのカブリオレに試乗するのは、今回が初めて。走らせた印象はクーペ同様、ベースとなったゴルフ4に似ているが、6ATのおかげでエンジンを唸らせることなく、変速ショックもなく、スムーズに走ってくれる。車重は1390kgもあるので特に速くはないが、一般道でパワー不足を感じることはまずない。エンジンも運転感覚もとてもマイルドなので、ついつい試乗であることを忘れて、のんびりクルージングしてしまう。自分の性格まで温厚になりそうだ。
ボディの剛性感は、この手のオープンカーとしては十分にしっかりしていて、ほとんどオープン化の弊害を感じない。こういったところは、長年ゴルフカブリオレ(ニュービートル カブリオレの登場と共に販売終了)で培ったノウハウだろう。
風の巻き込みは、2人乗りオープンスポーツと比べると多めだが、4人乗りカブリオレとしては普通レベル。サイドウインドウを上げて、強力なヒーター&シートヒーターを使えば、気温10度Cくらいまでは快適に走行できる。80~100km/h以上だと徐々に辛くなってくるが、それは程度の差こそあれ、カブリオレタイプとしては一般的な話だ。
一つ気になったのは、クーペ同様、狭い場所では前方の見切りが悪いこと。デザインを優先したことで、ダッシュボードが前後に長く、左のフェンダー位置やボンネットがほとんど見えない。縦列駐車などで、ちょっと気をつけたい部分だ。またオープン、クローズドを問わず、後方視界もあまり良くない。ただ、これはオープンカーにはありがちなもので、もっと悪いものもあるから大目に見たいところだ。
トップの開閉は停止中のみ
最新の輸入オープンカーに比べて一つだけ見劣りするのは、幌の開閉に手動による「ロック操作」という一手間があることだ。例えば開ける時は、頭上のレバーをゴクッと起こし、90度反転させてロックを解除してから、電動ルーフのボタンを押す必要がある。最近増えてきたフル電動タイプに比べると、「開けるぞ!」という最初の勢い?が必要だ。
また開閉時には、シフトレバーをN(ニュートラル)かP(パーキング)に入れる必要があり、つまり停止中にしか開け閉めが出来ない。最新のオープンカー、例えばポルシェの911カブリオレやボクスター、MINIコンバーチブル、アウディA5カブリオレでは、Dレンジはもちろん、低速走行中でも開閉できるが、それに比べると、信号待ちなどでは開閉に踏み切りににくい。もちろん、こんなことはかなり贅沢かつ横着な注文であり、オール手動の幌に比べれば、はるかに気軽にオープンに出来る。
車名 Volkswagen New Beetle Cabriolet LZ (2006年式)
形式 GH-1YAZJ
寸法 全長4130mm×全幅1735mm×全高1500mm
ホイールベース 2515mm
車重 1390kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 2.0リッター直列4気筒SOHC
最高出力 116ps(85kW)/5400rpm
最大トルク 17.5kgm (172Nm)/3200rpm
トランスミッション 6AT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 55L
10・15モード燃費 10.6km/L
タイヤ 205/55R16
最小回転半径 5.1m
発売時期 2003年6月(カブリオレ)、2005年10月(マイナーチェンジ)
当時の新車価格 349万6500円(消費税込み)
試乗車スペック
初年度登録 2006年2月
試乗日 2009年11月
販売価格 234万円(消費税込み)
走行距離 2万7900km
ボディカラー サルサレッド
備考 ワンオーナー、DVDナビ・TV
質感の高まったマイナーチェンジ後がおすすめ
ニュービートルカブリオレはマイナーチェンジ前のモデルが2003年6月~2005年10月の約2年少々、その後のモデルが2005年10月以降となっている。両者で基本メカニズムやデザインに大差はないが、今後Uカーで購入するとすれば、質感が高く、高年式のマイチェン後が主流になるだろう。走行距離が多めの車両も個人的にはありだと思うが、やはり距離が少ないのに越したことはない。今回の試乗車は2万8000kmだったが、走らせた印象はほとんど新車に遜色ないと思えた。
グレードに関しては、レザー内装の「プラス」「LZ」「ヴィンテージ」も魅力的だが、ファブリックシートのベースグレードも悪くない。ただしベースグレードの標準ホイールはいわゆる「てっちん」(スチールホイール)。アルミホイールがオプションで装着されていればラッキーだが、でなければ後から新品・中古でアルミホイールを手に入れるのもいいだろう。
普通のビートルとカブリオレで悩んだら
検討時に最初に迷うとすれば、普通のビートルか、ビートル カブリオレか、ではないだろうか。特にこれが初オープンカーである場合は、耐候性などの点で不安があるだろう。
しかし例えば雨漏りは、ニュービートルに限らず、現代のオープンモデルはまずないと考えていい。仮にあっても、大雨の日に水滴が特定のポイントから数滴落ちるかも、といった程度だ。いずれにしても、オープンカーに乗る以上、これくらいのことは楽しんで欲しいもの。ソフトトップに大粒の雨がパタパタと音を立てて降り注ぐ時の心細さも、オープンカーならではの醍醐味だ。発売時のビートルカブリオレのカタログには、雨に降られて濡れそぼつクルマの写真が冒頭に見開きで掲載されているが、オープンカーならでの心象をよく表現していると思う。
幌の耐久性に関しても、心配はほとんど要らない。よほど長期間にわたって保管状況が悪くない限り、今のキャンバス製幌は10年やそこらで劣化したりはしない。普段の足とするならガレージはカーポートで十分だし、おすすめはしないが青空駐車も可能だ。
何はともあれオープンカーの面白さ、そして「大丈夫さ」は、一度自分で所有し、乗ってみないことには分からない。オープンカーはより「自然」に近いクルマなので、その分、天気や季節、周囲の環境などに影響を受けやすいのは事実だが、実用性は決して低くないし、浮ついたクルマでもないし、若者に不相応なほど贅沢なクルマでもない。それにどういうわけか、オープンカーというものは愛着が湧くし、乗る人の気分を高揚させるもの。だから「普通のビートルか、ビートルカブリオレか」という選択で迷うような人は、思い切ってカブリオレを選んでしまった方がいいだろう。得るものは大きく、失うものはスチール製の屋根だけと言える。
Text:Kei Niwa, DAYS
Photo:DAYS





