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Uカー試乗記

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5.5リッターV12ツインターボ搭載の超高性能グレード

巷では見慣れた感のある5代目SLだが、今回の試乗車はV12の「SL600」だ

メルセデス・ベンツの最高級オープンスポーツである「SLクラス」。2001年に発売された5代目(R230型)では、SLKクラス(1997年)に続いて電動メタルトップ「バリオルーフ」を採用。わずか16秒でクーペとオープンカーを行き来できるモデルとなっている。

そのSLクラスに、Sクラス譲りの5.5リッターV型12気筒SOHC・ツインターボエンジン(500ps、81.6kgm)を搭載し、日本では2003年6月に発売されたのが「SL600」だ。先に発売されていた5.4リッターV8・SOHCスーパーチャージャーの「SL55 AMG」(500ps、71.4kgm)をトルクで上回るほか、「V12」ならではの豪華さやスムーズさも兼ね備えたモデルだ。当時の新車価格は消費税込みで1753万5000円だった。

翌年にはさらにパワフルな「SL65 AMG」が登場・・・・・・

2004年7月に発売されたSL65 AMG (写真:メルセデス・ベンツ日本)

なお翌年の2004年には、そのAMG版とも言える6リッターV12・SOHCツインターボの「SL65 AMG」(612ps、102kgm)が登場。動力性能でSLクラスの頂点を極めるほか、外観やシャシーにも大幅に手が入り、当時の新車価格は2740万5000円だった。

また2006年11月にはSL600のエンジンが若干改良され、最高出力は517ps(+17ps)、最大トルクは84.6kgm(+3.0kgm)にアップしている。

2008年5月には内外装をSLクラス全体でビッグマイナーチェンジ。両V12モデルは2010年2月現在も、SLクラスの頂点に君臨している。(2009.02)


 


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バッジ以外、外観は普通のSL

ボディサイズはSL350等と同じ全長4535mm×全幅1830mm×全高1300mm

スタイリングは見ての通り、オープンスポーツとGTクーペの要素を合わせ持ったもの。電動メタルトップ車らしく、クローズドでもオープンでもまとまりのいいデザインとなっている。一方で、いわゆる「スーパーカー」と異なり、街で目立ちすぎない点もSLクラスのいいところだ。

さて、SL「600」らしいところとなると・・・・・・、これが意外に少ない。すぐに分かるのは、リアの「SL600」とフロントフェンダー横の「V12」というバッジくらい。他は600専用デザインのアルミホイールくらいで、意外なことにフロント255/40R18、リア285/35R18というタイヤサイズもSL500と同じだ。ここまで控えめなのは、おそらく戦闘的な外観のAMGモデルに対して、SL600ではあくまで「メルセデス・ベンツ」らしい上品さを重視しているからだろう。

 
サイドウインドウおよび電動式ロールバー(ウインドウディフレクター付)を上げたところ
バリオルーフの開閉は16秒で終了。微低速(10km/h未満)でも操作可能だ
サイドスリットのエンブレムが「V12」の証

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高級感のある仕上げ。豪華装備も満載

内装色は試乗車のようなブラックのほか、ベージュ等も選べた

SL350や500とほぼ共通のインテリア。標準装備のDVDナビが社外のHDD式に変更されているが、基本的には全体にゴージャスで、装備も文句なしだ。

特に最高級のナッパレザーを使用したシートは見るからに立派。SL600には夏場にシート表面から冷風を吹き出してムレを防ぐシートベンチレーターも標準装備されている。今でこそ高級車には珍しくない装備だが、2003年当時はまだ少なかった。

 
極めて立派なシートは3桁万円ぐらいコストが掛かっていそう。ヤレの少なさにも注目

2003年式と言えば、相変わらず経年変化の少なさもメルセデス・ベンツらしいところ。年式的にはもう7年落ちだが、見た目はせいぜい最初の車検(3年落ち)くらいに見える。走行距離は約3万6000kmだが、内外装のどこを見てもそれを感じさせる形跡はほとんどない。

なお、シフトレバー付近には「ABC」というスイッチがあるが、これは電子制御式サスペンションである「アクティブ・ボディ・コントロール」のモード切替用。メルセデス・ベンツにはいわゆるエアサスの「AIRマティックDCサスペンション」があるが、ABCはコイルスプリングと油圧システム使った別のタイプだ。

 
クローズド時でも室内は広々。SL600の天井はアルカンタラ張りだ
シート調整スイッチはもちろんドア配置。シートヒーターとベンチレーターのスイッチもここ
未来的なライトグリーンのメーター照明はSLクラスの特徴
 
スイッチを跳ね上げると、電動ロールバー兼ディフレクターの昇降スイッチがある
戦闘機のトリガーカバーを思わせるスイッチはトップ開閉用
シフトレバー周辺にはABCの設定、ミラー調整、そして禁断の「ESPオフ」スイッチ
 
床下にはスペースセーバータイヤ(電動ポンプで膨らませる)とバッテリーが収まる
オープン時の容量は206リッター。荷物を積む際は電動でルーフ全体を上昇させる
クーペ時の容量は288リッターで、ゴルフバッグ1個は入りそう

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FRとしては、もはや限界を超えたパワー

V12ツインターボエンジンは量産車トップクラスのパワーを誇る

エンジンを掛けると「クククク、バウォン!」とまさしくスーパーカー的なサウンド。SL600だから6リッターかと思いきや、正確には5.5リッターのV型12気筒「ツインターボ」。最大出力500ps、最大トルク800Nm(81.6kgm)と空恐ろしいパワーを発揮する。ちなみに取材担当者、41年間生きてきたが、80kgmオーバーのトルクは自己最高記録。しかもこのクルマ、911ターボや日産GT-R、ランボルギーニ・ムルシエラゴみたいなフルタイム4WDじゃなくて、ただのFRに過ぎない。片方の後輪で40kgm以上のトルクを受け持つことになる。

でもそこはメルセデス・ベンツ。アクセルを優しく踏む限り、普通のCクラスセダンみたいに乗りやすくて平和。視界はいいし、最低地上高も十分。最小回転半径も5.1メートルしかないから、小回りも大得意だ。

 
「600」であることを特に意識しなければ、ジェントルにも走れる

慣れてきたところで、十分に安全を確認し、アクセルをグッと踏んでみる。と、しばし息をのむような静寂があった後、離陸しそうな勢いで怒濤の加速。ESPオンでも、トラクションコントロールの介入を受けながら2速でホイールスピン。それ以上は試さなかったが、試乗車のミシュラン・パイロットスポーツに溝がしっかりあって幸いだった。タイヤは絶対にケチれないクルマだと思う。

なお、安全にそのパワーの片鱗をどうしても味わいたい場合は、ティップシフト(マニュアルモード)で1速、2速を選んで走るのがおすすめ。Dレンジではパワーが盛り上がる前に速度が上がりすぎてしまう。またABC(アクティブ・ボディ・コントロール)もスポーツに設定しておくといい。もちろん路面状況にも気を配り、ドライでも必ずESPオンで走ること。じゃないと全開加速時に蛇行を始める可能性がある。もちろんスピードの出し過ぎにはくれぐれも注意したい。

真冬でも超高速?オープン走行が可能

オープン走行は至極快適。スピード感があるので、飛ばさなくても十分に楽しめる

ウインドウディフレクターを立てれば、風の巻き込みは最小限で、おおげさに言えばオープンであるのを忘れるくらい快適だった。そのまま200km/hを越えるとどうなるんだろう? なんてことも、SL600では現実的な心配である。

またトップの開閉に掛かる時間は約16秒で、微低速(約10km/h以下)なら、動きながらでも操作可能だった。なので信号待ちの間でも、割と操作に踏み切りやすい。

「SBCホールド」と「SBCストップ」

なお、SL600の電子制御ブレーキシステム「SBC」(センソトロニック・ブレーキ・コントロール)には、「SBCホールド」と「SBCストップ」という機能が備わっている。SBCホールドは、坂道発進や信号待ちなどで、ブレーキペダルを踏まなくても停止状態を維持するもの。SBCストップは15km/h以下の走行時、アクセルペダルから足を離すと車両を緩やかに停止させるものだ。実際、試乗中もこれが作動していたが、もちろんオフにもできる。

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車名  Mercedes-Benz SL600(2003年モデル)
形式  GH-230476
寸法  全長4535mm×全幅1830mm×全高1300mm
ホイールベース  2560mm
車重    1990kg
駆動方式  後輪駆動(FR)
エンジン  5513cc V型12気筒SOHC ツインターボ
最高出力  500ps(368kW)/5000rpm
最大トルク  81.6kgm (800Nm)/1800-3500rpm


トランスミッション  5AT
使用燃料/容量  プレミアムガソリン / 80L
10・15モード燃費  5.8km/L
タイヤ      前 255/40R18、後 285/35R18
最小回転半径   5.1m
発売時期     2003年6月(SL600)
当時の新車価格  1753万5000円(消費税別 1670万円)


試乗車スペック

初年度登録   2003年8月
試乗日     2010年2月
販売価格    459万円
走行距離    3万5600km
ボディカラー  アラバスターホワイト
備考      社外HDDナビ・TV&CD、バックカメラ、ETC

 


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同じ値段で、パワーはお好み次第

オートプラネット名古屋にて。右はSL600と同じバリオルーフを備えたSLK(2代目)

以前SLクラスをとり上げた時には、「おすすめはSL350、特に2006年末以降の7ATモデル」みたいなことを書いたが、それは今でも模範解答として通用するはず。街で見かけるSLクラスも、そのほとんどがSL350だ。女性と一緒に気楽にドライブを楽しむなら、350で十分だと断言できる。

一方、SL600となると性能的にはフェラーリやランボルギーニのV12モデル並み。それでいて実用性は見事に「普通のSLクラス」並みという点がこのクルマの魅力だ。しかも電動メタルトップと高い信頼性を備えた、高性能・高級GTカーでもある。

そして今回パワー以外に一番驚いたのがユーズドカーの価格だ。2003年当時、SL600の新車価格は消費税込みで1753万5000円だったが、今回の試乗車は459万円。これは何と1年前に試乗したSL500(新車時1280万円→460万円)とほぼ同じなのだ。どんな商品でも「正札がとれる」時期は来るものだが、それにしてもこの値段・・・・・・少なくともパワーに関しては「値段は変わらないので、お好きなだけどうぞ」という感じだ。

あり余るパワーと上手に付き合える方に

そして「到底使い切れないパワーを持ち歩く」という感覚は、この手の超高性能車ならではの面白さ。空手十段だけど物腰柔らか、みたいな気分が味わえるのは、SL「600」でこそだ。

ただ、やはりこれだけのパワーゆえ、それなりのメンテナンスは必須。特にタイヤ、ブレーキといった消耗品、そして駆動系に関しては、並みのスポーツカー以上にシビアに考えるべきだろう。そして今やポルシェ・ターボもフルタイム4WDだが、このSL600はそれ以上のパワーでFR。とにかく、安易にアクセルを全開にしたり、減ったタイヤで雨の日に乗ったりするなど、なめた態度でかかると手痛いしっぺ返しを食らうはず。特に若い人は、くれぐれも気を付けて運転していただきたい。

いずれにしても、バカバカしいほどの超絶パワーが要求されるのは、フラッグシップスポーツの宿命。SL600はメルセデス・ベンツの頂点に期待される圧倒的な性能と信頼性を、今や超リーズナブルな価格で手にできるクルマだと言える。

 

Text:Kei Niwa, DAYS
Photo:DAYS


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