掲載日 : 2010年03月16日
2008 MINI クーパー S クラブマン
MINIをストレッチ。観音開きドアを右側とリアに採用
MINI「クラブマン」はMINI(3ドア)がベースの個性派スモールワゴン。日本では2007年10月に発売され、実際には2008年春からデリバリーが始まった。
ボディ前半やパワートレインは2代目BMW MINIの3ドア(R56)と同じだが、クラブマン(R55)ではホイールベースを80mm延ばして後席のスペースを拡大。さらにリアのオーバーハング(後輪から後ろの部分)も伸ばして、荷室スペースも拡大している。
同時に車体右サイド(右ハンドル車の場合は運転席側)には、観音開き式のドアを追加。さらにリアドアも観音開き式に変更するなど、単にワゴンと呼ぶには留まらないユニークな仕様となっている。乗車定員は4名だ。
なお、1959年に登場したクラシックMINIにも、同じようなワゴンタイプの派生モデルがあった。1960年に発売された「モーリス MINI トラベラー」や「オースティン セブン カントリーマン」、それらを統合した1969年以降の「MINI クラブマン エステート」がそうだ。
(今のところ)「クーパー」「クーパーS」「JCW」の3グレード
発売当初は1.6リッターNAの「クーパー」(120ps、16.3kgm)と1.6リッター直噴ターボの「クーパーS」(175ps、24.5kgm)でスタート。当時の価格は3ドアモデルの23万円高で、クーパーが274万円(6MT)、287万円(6AT)、クーパーSが318万円(6MT)、331万円(6AT)だった。
2009年6月には、クーパーSをチューンナップした「JCW(John Cooper Works)」(211ps、26.5kgm)が登場。これは6MTのみで当時389万円とされた。
また2010年3月には日本専用モデルとして、「桜」をモチーフにした期間限定車「MINI Meets SAKURA. EDITION NIPPON(ミニ ミーツ サクラ. エディション ニッポン)」シリーズを発売。クラブマンではクーパーの6MTと6ATに設定されている。(2010.03)

5ナンバー枠に収まるサイズ。MINI随一の個性的なデザイン
クーパーSのボディサイズは、全長3960mm×全幅1685mm×全高1445mm。クーパーはこれより少し短いが、いずれも全長は4メートル未満、全幅は1.7メートル未満の5ナンバーサイズ。全高こそMINIは低めだが、大きさはだいたいホンダ・フィットと同じくらいだ。
スタイリングは、前から見ると普通のMINI、横から見ると胴長で、後ろからは一目でクラブマンだと分かるもの。何より面白いのが、右サイドとリアに付いた観音開きドア。メーカーは前者を「クラブドア」、後者を「スプリットドア」と呼んでいる。
クラブドアを採用。後席を拡げてフル4シーター化
クラブマンの見どころの一つが、「クラブドア」。3ドアに比べて後席の乗降性はもちろん良くなったが、ドライバーにとっては手荷物の出し入れが容易になったのが嬉しい点だ。日本に導入する際、「左側通行の日本では、助手席側にクラブドアを付けるべきではないか」と言う人もいたが、個人的には断然、「これでいいのだ」と思う。
ただ、クラブドアが少し不便なのは、リア側のドアノブが室内側にしかなく、外から開けるときでも裏側に手を回す必要があること。また後席から降りる際は、先にフロントのドアを開けなくてはいけないが、これも当然後席からはやりにくい。これらの悩みは、同じ観音開きドアを採用するマツダRX-8やトヨタのFJクルーザー(日本では並行輸入のみ)などに共通するものだ。
一方でリアシートは、ホイールベースが3ドアより80mm伸びたことなどで、格段に広くなった。これにより、3ドアではあくまで「2+2」的だったリアシートも、クラブマンでは大人2人が無理なく座れる「フル4シーター」と言えるものになった。依然、独特の囲まれ感はあるが、左側の長いクォーターウインドウからの眺めは一般的なハッチバックやセダンでは味わえないもので、居心地は決して悪くない。
パワフルで扱いやすい直噴ターボエンジン
試乗したのは初年度登録から約2年、走行1万2000kmのクーパーS(6MT)。当時の新車価格は318万円で、当車両の販売価格は309万円だ。その値付け通り、コンディションは新車同様で、このまま販売店のデモカーとしても使えそうだ。
その1.6リッターDOHC直噴ターボ(175ps、24.5kgm)はアクセルを踏めば、どの回転域からでもグィィィンと力強く加速。それでいてターボエンジンらしい瞬発力もある。VW・アウディ系の直噴ターボと並んで、今やこのクラスで最も完成度の高いエンジンだ。初代BMW MINIのクーパーS(1.6リッターSOHCのスーパーチャージャー)のようなじゃじゃ馬感、トルクステア(加速時にステアリングがとられる現象)、レスポンスの重さ、ステアリングやシフトレバーなど操作系の重さはなく、スムーズかつ速く、乗りやすい。まがりなりにもマニュアル車が乗れる人なら、誰でもすぐに馴染めるだろう。また仮に6AT仕様であっても、全体の印象に変わりはない。
3ドアより安定感があり、乗り心地も良好
そんな風に扱いやすく感じられるのも、クラブマンのロングホイールベースシャシーがあるから。初代BMW MINIよりワンランク穏やかになった第二世代のMINI(3ドア)でも、やっぱりショートホイールベース特有の敏捷さ(落ち着きの無さ)が多少残っているが、クラブマンには一クラス上の、例えばVWゴルフと比べたくなるような安定感がある。少なくとも初代クーパーSでは車体が跳ね始めるような速度域でも、クーパーS クラブマンなら余裕しゃくしゃく。乗り心地も良く、これなら快適に4人で長距離ドライブに行けるだろう。
車名 MINI Cooper S Clubman (2008年モデル)
形式 ABA-MM16
寸法 全長3960mm×全幅1685mm×全高1445mm
ホイールベース 2545mm
車重 1250kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 1598cc 直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴ターボ
最高出力 175ps(128kW)/5500rpm
最大トルク 24.5kgm (240Nm)/1600-5000rpm
トランスミッション 6速MT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 50L
10・15モード燃費 15.0km/L
タイヤ 195/55R16
最小回転半径 5.5m
発売時期 2007年10月
当時の新車価格 318万円
試乗車スペック
初年度登録 2008年4月
試乗日 2010年3月
販売価格 309万円
走行距離 1万2000km
ボディカラー ライトニングブルー
備考 ワンオーナー、ETC、新車保証残り有
AIS評価点 4.5
クーパーでもクーパーSでもOK。6MTなら燃費もいい
3ドアモデル同様、新型MINIはクーパーでもクーパーSでも、6MTでも6ATでもおすすめ。特に6MTは、燃費がすこぶる伸びるので、“マニュアル”がきらいじゃない人にはおすすめしたい。6MT車の10・15モード燃費は、自然吸気の「バルブトロニック」エンジンを積むクーパーで18.0km/L、直噴ターボのクーパーSで15.0km/L。6AT車だとそれぞれ14.2km/L、12.4km/Lになる(AT車としては十分にいいが)。
設計はBMWだけに、新生MINI、特にクラブマンを含む第2世代は、工業製品としての完成度が抜群に高い。すでに登場から8年が経つ第1世代の信頼性の高さ、ヤレの少なさも考えると、MINIの場合は年式や走行距離はそんなに気にせず、予算に合わせて選べばいいだろう。
実用性ではなく、遊び心を解する人のためのモデル
ところで2010年3月現在、すでに巷では、3ドア、コンバーチブル、クラブマンに続く「第4のMINI」として4ドアの「MINI カントリーマン」が発表されている。全長はついに4メートルを超え、デザインも従来のMINIとは少し違うものになるようだが、便利さで言えば4ドアの方がいいのは自明の理。今後はこのカントリーマンが「ファミリカーとしてのMINI」の主役になるだろう。
ではクラブマンの存在理由とは何だろうか? それはデザイン的な面白さ、ユニークさに他ならない。そもそも、左右非対称で観音開きの5ドアなどという、冷静に考えるとかなり妙ちくりんなボディ形式は、普通のメーカーなら絶対に市販化など考えないもの。左側に例の「クラブドア」を設けなかったのは給油口があったから、などとも言われるが、クラブマンのためにホイールベースをわざわざ延長し、ボディ後半を全面変更したことを考えると、理由としてはちょっと弱い。コスト高や重量増を避けたのは一因だろうが、おそらくクラブマンがこういう形になった最大の理由は、「どうせなら片方だけの方が面白いよね。いずれ4ドアも出すし」みたいな、MINI一流の遊び心のせいではないかと推測する。
そんなわけで、個性的なクルマが好きという一部の「クルマ好き」に向けた、遊び心たっぷりの贅沢なモデルがクラブマンだ。往年のトラベラーやクラブマン同様、実用性云々ではなく、オシャレで、なおかつ道具「感」のある多用途コンパクトカーとして捉えるのが自然だと思う。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS








