掲載日 : 2010年07月29日
2008 トライアンフ ボンネビル T100
新生トライアンフによる並列2気筒モデルの主軸
「ボンネビル(Bonneville)」は、1959年に発売された「T120 ボンネビル」を始祖とするモデル。649ccの空冷OHVバーチカルツイン(並列2気筒)を搭載した当時のモデルは、世界最良のバイクと評された名車中の名車だ。その車名はトライアンフが1950年代に世界最速記録を樹立した米国ユタ州ソルトレイクの“ボンネビル”フラッツに由来する。
そして1990年にリスタートした新生トライアンフが、2000年に発表、2001年に発売したのが、今回の新世代ボンネビルだ。エンジンは完全新設計の空冷DOHCバーチカルツインで、当初の排気量は790cc。往年のボンネビルを彷彿とさせるクラシカルなデザインで、すぐさま新生トライアンフに欠かせない人気モデルとなった。
2008年モデルからインジェクションを採用
2010年現在までの約10年間、ボンネビルの基本設計やデザインは大きく変わっていないが、それでも以下のような変更が実施された。
まず2002年には手描きラインの入った2トーンカラーの燃料タンクやタコメーター等を標準装備した上級仕様の「T100」を追加。2005年にはマフラーに触媒を追加すると共に、「T100」の排気量を790ccから865ccに拡大。2007年にはスタンダードモデルも865ccとされた。また2008年には燃料供給装置をキャブレターからインジェクションに変更している。
2009年には新しいスタンダードモデルとして、前後17インチのキャストホイール仕様を新設定。同時にその上級グレードとして「ボンネビル SE」を追加した。当時の新車価格は、この17インチ仕様の「ボンネビル」が104万7900円、「ボンネビル SE」が118万6500円。そして従来通りスポークホイール仕様でフロント19インチの「ボンネビル T100」が126万円。2010年モデルも基本的に変更はない。
派生モデルとして「スラクストン」や「スクランブラー」も
これ以外にもボンネビルの派生モデルとして、2002年にクルーザータイプの「アメリカ」(日本未導入)、2003年にはその発展版である「スピードマスター」を発売(日本には少量のみ導入)。2005年にはカフェレーサースタイルの「スラクストン」、2006年には往年のTR(トロフィー)シリーズを彷彿とさせる、右2本出しアップマフラーを備えた「スクランブラー」を発売している。
これらのエンジンはいずれもボンネビルと基本的に同じだが、チューンの度合いは各車異なり、また爆発間隔は車両キャラクターに合わせて、ボンネビルとスラクストンでは360度、アメリカ、スピードマスター、スクランブラーではより鼓動感のある270度とされている。

贅沢なメッキ処理、手描きのコーチライン
まさに“スタンダードバイク”と言うべきスタイルのボンネビル。車体やエンジンは全て新設計だが、そのイメージは1960年代のトライアンフ、そして往年の“T120 ボンネビル”だ。特に「T100」は、クランクケースカバーをはじめ、随所にメッキ処理が施された贅沢な仕様で、現代の量産バイクではまずあり得ない“手描き”のコーチラインが入った燃料タンクが美しい。
足つき良好、乗り降りも簡単
試乗したのは2008年モデルの「T100」で、キャブレターからインジェクションに変わった直後のモデル。初年度登録から2年のワンオーナー車で、走行距離はわずか3445km。当時の価格は129万1500円だったが、この車両の販売価格は99万7500円で、しかもオプションのグラブレールやセンタースタンドも付いている。「これなら新車じゃなくてもいいかも」と思える物件だ。
車重は230kg(乾燥重量205kg)ということで、押し引きの重さは750ccクラスの国産ネイキッドと大差ない。シート高は775mmと低く、乗り降りも簡単で、またがると教習車でおなじみのホンダCB750よりホッとする。
クラッチを握ってスターターボタンを押せば、すぐに「ドゥルン!」とエンジンに火が入る。個体や状況によって多少異なるだろうが、インジェクションでもエンジンが暖まるまで、例のチョーク風レバーを一段引いた方がストールしにくい。
まったくストレスなし。公道で最高に気持ちいい
新世代のボンネビルに乗るのは派生モデルも含めて5、6回目だが、その度に思うのが、この865ccの空冷ツイン、扱いやすさにかけては文句なしということ。大排気量ツインに期待されるパルス感は薄めで、最初は「ちょっと刺激がないな」などと思ってしまうが、しばらく乗っていると印象が変わってくる。
パワー感はとてもマイルドで心地よく、スロットル操作にも一切神経を使わない。およそどんなバイクから乗り換えても、「うわっ、乗りやすい!」と驚くはずだ。一方で馬力は67ps、トルクは7.0kgmもあり、しかも全域パワーバンドと言えるくらいトルクフル。シフトダウンなどしなくても、必要に応じてさらりと頼もしく加速してくれる。上体をのけぞらせたり、前輪を浮かせるような激しさは一切ないが、20を期待すればきっちり20を、60を期待すればきっちり60を返してくる。こういうバイクは、意外にありそうでないと思う。
その気になればハイスピードもOK
車体まわりのガッシリ感や安定感もボンネビルの大きな長所。レトロっぽい外観とは違って、フレームはガッチリ、サスペンションはしなやか、ブレーキもまったく不満なく効く。特に一般道や高速道路を法定速度+α程度で走る時の平穏ぶりは、“スーパースポーツ命”のライダーでも、何か感じるところがあるはずだ。
また風圧さえ気にしなければ、130~160km/hくらいの巡航も余裕だし、パワー的にはもっと上だって可能(最新の2010年モデルには160km/hで作動する速度リミッターが付いたらしいが)。ある程度のハイスピード域までカバーする、守備範囲の広さがトライアンフらしい。
もちろんボンネビルは、目を三角にして飛ばしたくなるバイクではない。普段は“乗り手が気持ちいいと思う”速度で巡航し、たまにズバッと追い抜き加速を試みる、みたいな走り方が、最高にピッタリくるバイクだし、次第にそういう走り方になる。その間、エンジンは「ドゥルルルルル」と穏やかに回るだけ。景色を眺めながら「オートバイって楽しいなあ」と豊かな気持ちになれる。
車名 Triumph Bonneville T100 (2008年モデル)
形式 -
寸法 全長2230mm×全幅740mm×全高1100mm
シート高 775mm
ホイールベース 1500mm
乾燥重量 205kg
車両重量 230kg
エンジン 空冷・865cc 並列2気筒DOHC・4バルブ(360度クランク)
燃料供給装置 電子制御燃料噴射
最高出力 67ps(49kW) /7500rpm
最大トルク 7.0kgm (69Nm)/ 5800rpm
トランスミッション 5速リターン式
燃料タンク容量 16.0L
タイヤ 前 100/90-19、後 130/80R17
発売時期 2008年7月
当時の新車価格 129万1500円(消費税込み、2008年7月発売モデル)
試乗車スペック
初年度登録 2008年8月
試乗日 2010年7月
販売価格 99万7500円(消費税込み)
走行距離 3445km
ボディカラー ジェットブラック/フュージョンホワイト
備考 ワンオーナー、純正グラブレール、センタースタンド、サイドバッグ用ステー付
おすすめは2008年以降のインジェクション。ただしユーズドは品薄
ボンネビルは2001~2006年の「790ccモデル」と2005年からある「865ccモデル」(キャタライザー付)、そして2008年以降の「865cc・インジェクションモデル」の3つに大別できる。このうち、新車に近い感覚で乗り出せる、という条件で言えば、やはり高年式の865ccモデル、できれば2008年以降のインジェクション車がおすすめだ。
「キャブ車の方が味があって、パワフルなのでは?」と思う人がいるかもしれないが、実際にはむしろインジェクション車の方が季節や状況を選ばず力強い、と言われる。少なくとも、その差はわずかで、取材担当者が以前、キャブとインジェクションを乗り比べた時の印象も、「言われてみればそうかな」くらいだった。
いずれにしても、ボンネビルのユーズドは現在かなり品薄な状態にあり、相場も高め。その点では2年間・距離無制限の新車保証がある新車も、十分にアリだ。
また2009年以降の「ボンネビル」には、前後17インチ・キャストホイール仕様(チューブレスタイプ)もある。こちらは軽快な走り、パンク時における対処の容易さ(空気が一気に抜けにくい、パンク修理が割と簡単)、足つきが良い、といった点がメリットだ。一方で、前輪19インチのスポークホイール仕様のクラシカルな雰囲気も捨てがたいところ。どちらを選ぶかは好みの問題だが、スポーク仕様に魅力を感じるなら、その気持ちに従った方がスッキリするかも。
選ぶ楽しさで言えば、豊富なタンクカラーもボンネビルの大きな魅力だ。下に紹介したものを含めて、おそらく何十種類ものカラーバリエーションが存在するし、今後もニューモデルでいろいろ出てくるはずだ。また、あるいは自分好みのオリジナルカラーに塗ってみても面白いかもしれない(T100のタンクを塗り直すのは勿体ないが)。
“スタンダードバイク”の良さが知られていない
いずれにしてもオートバイ好きを自認する方には、ぜひ一度ボンネビルに乗ってみて欲しい。と言うのもこのボンネビル、まだまだ日本のユーザーには過小評価というか、その良さが知られていない気がするからだ。あるいはボンネビルが、と言うより、いわゆる“スタンダードバイク”の良さが、と言ってもいい。
十分な排気量による無理のないパワー、不安とは無縁のシャシー性能、そして常用域での気持ちよさと共に、所有する歓びもある。そんなボンネビルは、「本当はこういうバイクに乗りたかったんだよな」と思わせる、スタンダードバイクの王様と言えるモデルだと思う。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS









