掲載日 : 2010年10月07日
2010 トライアンフ タイガー SE
定評の3気筒エンジンを搭載したデュアルパーパスモデル
新生トライアンフから1993年に登場した「タイガー」は、オン・オフ両用のデュアルパーパスモデル。ウインドウプロテクションに優れたハーフカウル、ハイウェイから未舗装路まで幅広い領域をカバーする車体設計、そしてパワフルな並列3気筒エンジンを備えた、ロングツーリングを得意とする万能モデルだ。
初代「タイガー900」は、3気筒885ccエンジン(85ps)でデビュー。1999年に登場した2代目はインジェクションと新開発のスチール製ペリメターフレームを採用。2001年には955cc(105ps、9.8kgm)となった。タイヤは初代から2代目までは、オフロードでの操縦安定性を重視した前輪19インチ、後輪17インチだったが、2005年モデル以降は従来のスポークからキャストホイールに変更されている。
2007年に3代目が登場
2007年には、全てを一新した3代目タイガーが登場。2基のプロジェクターヘッドライトを埋め込んだハーフカウルは、伊マラベーゼ社のデザインによるもの。フレームは新開発のアルミ製ビームツインスパーとなり、フルアジャスタブルの43mm倒立フロントフォークや前後17インチタイヤも採用された。
エンジンはスピードトリプル等で定評ある1050ccの3気筒をタイガー専用チューンで搭載。最高出力は115ps、最大トルクは10.2kgmを発揮する。2008年モデル以降は、ABSが標準装備となった。新車価格は導入時期によって異なるが、参考までに2008年モデルでは154万3500円、2009年モデルでは158万5500円だった。
2009年4月には、マットグラファイト/マットブラックの2トーン外装、パニアケース、ハンドガードを標準装備した「タイガー SE」(166万9500円)を限定50台で発売。これは2010年からカタログモデルとなっており、今回試乗したのもこのタイガーSEだ。
ちなみに「タイガー」という車名は、旧トライアンフ時代の名車から受け継がれたもの。その歴史は古く、1936年に登場した単気筒エンジンの「タイガー」シリーズ(タイガー70/80/90)から始まる。さらに1938年にデビューした2気筒499ccエンジンの「タイガー 100」は、1959年に「T120 ボンネビル」が登場するまで、トライアンフのトップモデルとして君臨した。

典型的なデュアルパーパススタイル。足つきは意外に良好
ハーフカウルや150mmのロングストロークを誇るサスペンションなど、正調デュアルパーパス・スタイルをまとうタイガー。プロジェクターランプを埋め込んだデュアルヘッドライトが精緻で洗練された印象を与える。
車体はやや大柄に見えるが、シート高は835mmと意外に低く、またがった時の沈み込みも大きいため、足つきはストリート/スピードトリプルと大差ない感じ。身長166センチの取材担当者では、片足つま先がやっとだったが、国産250ccクラスのデュアルパーパスモデルが乗れる人なら、タイガーでも大丈夫だろう。さらに2センチほどシート高が下がる社外のローダウンキット装着車なら、取材担当者でも両足つま先が付き、十分な安心感が得られる。
やはり魅力のパニアケース
試乗したSEは、専用設計のハンドガードとパニアケースを標準装備する。人によってはパニアケースの左右への張り出しやツアラー然としたスタイルが敬遠されるが、こうして実際に乗って、さらに見慣れてくると、次第にパニアケース無しの姿が考えられなくなってくる。いかにもツアラーっぽいスタイリングがカッコいいのだ。
もちろん、その最大の魅力は、手荷物を確実かつ安全に積載・収納・保管できること。ケースの開閉や脱着は、通常のイグニッションキーを使って行えるので、見た目の軽快感やすり抜けのし易さを優先する場合は、外してしまえば良い。標準車に比べてSEは8万4000円ほど高いが、パニアケース分だけでも(オプションでは左右セット、アタッチメント無しで10万円ほどする)で十分に元は取れる、と断言できる。
こんこんと溢れ出るトルク感
試乗したのは2010年モデルの「タイガー SE」。トライアンフ名古屋イーストには、これとは別に、2008年モデル(標準車)のユーズドもあったのだが、基本的な仕様は同じなので、今回はあえて新車同様の試乗車に乗ってみた。新車価格は166万9500円だ。
さて当方は前述の通り、身長が166センチと小柄なので、この手の大型デュアルパーパス車には、正直ちょっと気後れする部分がある。乗るだけなら何とかなるが、撮影のためには、ちょこまかUターンしたり、止まったりもしなくてはいけない。最初はサイドスタンドを自力で払えず、トライアンフ名古屋イーストの幸田(さいた)さんに手伝ってもらう・・・・・・。右足をつくと、左足がスタンドに届かなかったからだが、これはこの後すぐにコツを覚えて、出来るようになった。
不安そうな幸田さんを残して、オートプラネット名古屋を出発。のっけから気に入ったのが、1速ギアの低さ、そして2000回転くらいから早くも使えるエンジンだ。トルク特性も、ズドン!と図太く反応するスピードトリプルとは全く異なり、タイガーでは同じ1050ccでも、まるでコンコンと湧き出るようにというか、大きな蛇口から流れ出るようにというか、大粒のトルクがすごくナチュラルに溢れ出てくる。それでいて、5000回転オーバーから1万回転レッドゾーン手前までは、1050ccトリプル独特の「コォォォォン!」という突き抜けるようなサウンドと共に、痛快に加速。特性が穏やかなせいか、1~3速あたりのギアリングが低いせいか、スピードトリプルよりも明らかに安心して全開加速できる。
オン・オフ、どちらのバイク乗りにも馴染みそう
一方でツアラーっぽく、2000~3000回転くらいで一般道をのんびり流すこともタイガーは得意だ。ハンドルバーはやや幅広だが、アップライトなポジションは文句なしに快適。100km/h巡航は3700回転ほどと低いから、急かされる感じもなく、燃費も良さそう。トライアンフ名古屋イーストの土田店長によると、パワーバンドの広いエンジン特性は、無給油で300kmを確実に走るためのものでもあるらしい。タンク容量は20リッターだ。
ストローク感のあるサスペンションは乗り心地も良く、ハンドリングもオン・オフ、どちらのバイク乗りにも馴染めるものだと思う。また急制動時のストッピングパワーも十分で、その時の姿勢変化もオンロード車にそう遜色ない。もちろんSEに標準のABSは、当然ながらウエットなどの低ミュー路で心強い装備となる。全体的にはオンロード志向の強いモデルという印象だが、「ちょっとした未舗装路も快適に走れるスポーツツアラーが欲しい」という場合には、うってつけのモデルだ。
車名 Triumph Tiger SE (2010年モデル)
形式 -
寸法 全長2110mm×全幅840mm×全高1320mm
ホイールベース 1510mm
シート高 835mm
車重(乾燥/装備重量) 201/228kg(パニアケース除く)
駆動方式 チェーン駆動
エンジン 1050cc 水冷・並列3気筒DOHC
燃料供給装置 電子制御燃料噴射
始動方式 セルフスターター
最高出力 113ps(84.6kW) /9400rpm
最大トルク 10.0kgm (98Nm)/ 6250rpm
トランスミッション 6速リターン式
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 20L
タイヤ 前 120/70ZR17、後 180/55ZR17
最小回転半径 -m
発売時期 2009年4月
当時の新車価格 166万9500円
試乗車スペック
初年度登録 2010年8月
試乗日 2010年10月
販売価格 -円(消費税込み)
走行距離 840km
ボディカラー マットグラファイト/マットブラック
備考 トライアンフ名古屋イースト試乗車
ユーズドは品薄だが、出物はある
2010年現時点で、すでに17年もの歴史がある「新生タイガー」だが、日本ではまだまだマイナーな存在。販売台数も少なく、それに応じてユーズドカーも少ない、というのが現状だ。
それでも今回、トライアンフ名古屋イーストには、2008年モデル(ABS仕様)のユーズドが1台入っていた。走行距離は1万2400kmで、コンディションも非常に良好。さらに純正グリップヒーター、社外セミアップハンドルバー、ローダウンプレート付(約20mmダウン)で、気になる販売価格は105万円と、新車価格の150万円前後に対してぐっとリーズナブル。この手のモデルを検討中の方には、かなりおすすめの一台と思えた。
エンジン、軽さ、信頼性が魅力
もちろん、このデュアルパーパスというジャンルは、目下かなりの激戦区。2010年後半は、ドゥカティの新型ムルティストラーダやヤマハの新型スーパーテネレ(XT1200Z)、そしてそれらを迎え撃つBMWのR1200GSといったモデルが大きな話題となっているし、来年にはトライアンフからも新型デュアルパーパス車が登場すると言われている。乗り手によってはオンロード系のスポーツツアラーもライバル車となるだろう。
それらを相手にした時、タイガーの魅力としてまず挙げられるのは、やはりこの3気筒エンジンならではの独特のフィーリングやパワフルな走りだろう。のんびり走っても良く、その気になればスポーツツアラーと同じペースで高速ロングツーリングにも行ける、といった万能性は、このエンジンに負うところが大きい。
加えて土田店長は、「やはり軽さですね」とその長所を挙げる。乾燥重量で201kg、装備重量でも228kgという軽量な車体によって、車重が250kg前後に及ぶことが多いライバル車では得られないハンドリングや取り回しの良さが得られているわけだ。小柄な取材担当者でもそれなりに乗れたのは、この軽さゆえかもしれない。
またご存じの方も多いと思うが、海外ラリーへの参戦やインストラクターとしても有名な2輪ジャーナリストの柏 秀樹さんは、個人所有する2代目タイガーですでに10万kmを走破しているという。その間ノートラブルだったというように、信頼性の高さもトライアンフに共通する長所だ。
いずれにしても、大型デュアルパーパス/ツアラー選びは、選ぶ当人のニーズに合っているかどうかが最大のポイント。それを確かめてみる上でも、タイガーは選択肢の中に欠かせない1台と言えるだろう。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS









