掲載日 : 2010年11月16日
2006 BMW 116i
日本では「116i」「118i」「120i」の5ドアでスタート
2004年にデビューしたBMWの1シリーズは、FR(フロントエンジン・リア駆動)方式を採用し、上級モデルに匹敵する操縦性や乗り味を備えたコンパクトカー。もちろんボディサイズは現行BMWの中で最小であり、価格的にも手頃なモデルとなっている。
日本では2004年10月に販売をスタート。海外には3ドアモデル(E81型)もあったが、日本仕様のハッチバック車はすべて5ドア(E87型)とされ、1.6リッター直4(115ps、15.3kgm)の「116i」、バルブトロニック機構を備えた2リッター直4(129ps、18.4kgm)の「118i」、その高出力版(150ps、20.4kgm)の「120i」という3モデルを投入。全車6AT仕様で、価格は288万8000円~366万5000円だった。
「130i」、2ドアの「135i クーペ」、カブリオレも登場
2005年10月には、バルブトロニック付3リッター直6(265ps、32.1kgm)の「130i Mスポーツ」(6MT)を発売し、2006年4月にはパドルシフト付の6AT仕様を追加。価格はそれぞれ487万円、498万円だった。
2007年5月には、内外装をマイナーチェンジして質感を向上。また118iがラインナップからドロップする一方、120iのエンジンが156psに向上した。
2008年2月には1シリーズベースの2ドアクーペ(E82型)に、「335i」譲りの3リッター直6直噴ツインターボ(306ps、40.8kgm)を搭載した「135i クーペ」(6MT/6AT)を発売。3月には約22秒で開閉可能な電動ソフトトップを備えた4人乗りオープンモデル(E88型)の「120i カブリオレ」(6AT)が加わった。
2010年には燃費を大幅アップ
2010年5月には、BMW Efficient Dynamics(エフィシェント・ダイナミクス)なる環境コンセプトに基づき、1シリーズ全車に様々な低燃費技術を採用。全車にブレーキエネルギー回生システムが採用されたほか、116iと120iのエンジンは直噴化され、116iでは最大出力が115p→122ps、最大トルクが15.3kgm→16.3kgmに、120iではそれぞれ156ps→170ps、20.4kgm→21.4kgmに向上。10・15モード燃費は116iで11.8km/L→14.2km/L、120iで11.6km/L→14.4km/Lへと大幅に向上した。
また135iクーペでは、6ATに代えて最新の7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を採用。同時に「120iクーペ」(6AT)も新設定されている。
2010年11月現在も初代1シリーズは販売中。来年春には3リッター6気筒ツインターボを搭載する「1シリーズ Mクーペ」の登場が予告されている。なお、フルモデルチェンジは早ければ2011年、おそらくは2012年中と予想されている。(2010.11)

特異なスタイリングには訳がある
全長4240mm×全幅1750mm×全高1430mmというボディサイズは、5代目ゴルフあたりと同等。ただし一般的なFFハッチバック車とはシルエットが全く異なり、ボンネットは長く、キャビンは後ろに寄り、ホイールベースは2660mmと極端に長い。これらはカッコ云々ではなく、エンジンを出来る限りホイールベースの中央に寄せて、前後重量配分を50:50に近づけつつ、十分なキャビンスペースを得るためのものだ。
試乗車は「ジャパンレッド」なる鮮烈なボディカラーが印象的。まさに漆を思わせるような深みのある赤で、ホワイトやシルバー、ブラックといったモノトーンが多いドイツ車の中にあって、紅一点の華がある。
クルマとの一体感が味わえる前席。乗降性が弱点の後席
シートに腰を落とすと、着座位置が低く、足を前に伸ばすような姿勢になり、まるでパズルのピースを収めるようにクルマとの一体感が得られる1シリーズ。運転席での乗車感覚は、車体の基本設計を一部共有する現行3シリーズ(E90型)にもけっこう近い。
試乗車はエントリーグレードの「116i」で、装備は簡素だが、不足なし。化粧パネルもアルミ製ではなく、シルバー塗装だが、安っぽさもまったくない。むしろこれくらいシンプルな方がBMWらしいと言える。
後席も着座位置が低いため、天井まで余裕があるほか、足のつま先も前席シート下に入るので、空間自体は十分だ。ただし1シリーズを紹介する際、触れざるを得ないのが、後席における乗降性の悪さだ。乗り込む時には頭をルーフやドアに当てないように屈む必要があるほか、降りる時には体を持ち上げるのにけっこうな力を要する。ファミリカーとして後席を頻繁に使用する場合は、ここが1シリーズ最大の弱点となる。
相対的に高まった「シャシーの極上感」
今回試乗したのは1シリーズで最小排気量車の「116i」(2006年式)。1シリーズに試乗するのはかれこれ4度目、「116i」に試乗するのは2度目だったが、2リッターの「118i」や「120i」と比較すると、パワー感はなく、また今回一緒に試乗したゴルフ5のTSIトレンドライン(1.4ターボで122psと20.4kgmを発揮)と比べても、加速時にはどうしても離されてしまう。そんなわけで、「BMW=高性能エンジン」といった期待をもって乗ってしまうと、その線の細さに少々戸惑ってしまう可能性は、ないとは言えない。
それでもそこはBMWエンジン。アクセルを踏み込めば、高回転まで淀みなく回り、快音を放って元気よく加速してくれる。トルクも全域で出ており、6速ATの変速も小気味いい。パワフルではないが、元気がよく、ハンドリングもシャープといったところは、同じBMWのMINIクーパーあたり(排気量は同じ1.6リッター)とよく似ている。ちなみにパワーステアリングは据え切りや低速でかなり重く、この点ではクーパーS並み?という感じだ。
そして「116i」で印象的なのは、1シリーズの中で最もパワーがない分、相対的に高まった「シャシーの極上感」だ。フロアは荒れた路面でもビクともせず、剛性感はむしろ過剰なほど。そして重めの小径ステアリングに手を添えているだけで、真っ直ぐ突き進み、ステアリングを切れば鋭く、かつ素直に反応する。これは十把一絡げにFR車ならでは、というものではなくて、BMW共通の、BMWでしか味わえない感覚。それがボディの四隅をしっかり把握できるボディサイズで味わえるのが、1シリーズのいいところだ。
なお、試乗車は初年度登録から4年余り、走行距離は1万5000kmで、コンディションは非常に良く、走らせた時のしっかり感は新車時に比べて大差なかったが、タイヤは何と新車時からそのままと思しきコンチネンタル製のランフラットだった。すでに表面はトレッドからショルダーにかけてボロボロであったが、劣化の影響が少なかったのは、やはりパワーがない分、操縦安定性に関してはタイヤ性能への依存度が低いからだろう。一方、乗り心地に関しては、飛ばした時に小刻みな上下動が多めに出ていたが、パワステの重さを含めて、これはタイヤをリフレッシュすれば、おそらく見違えるように改善されるはず。特に最新設計のランフラットやコンフォート系タイヤに変更すれば、新車時以上になるかもしれない。
車名 BMW 116i (2006年式)
形式 GH-UF16
寸法 全長4240mm×全幅1750mm×全高1430mm
ホイールベース 2660mm
車重 1350kg
駆動方式 後輪駆動(FR)
エンジン 1596cc 直列4気筒DOHC・4バルブ
最高出力 115ps(85kW)/6000rpm
最大トルク 15.3kgm (150Nm)/4300rpm
トランスミッション 6速AT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 50L
10・15モード燃費 11.6km/L
タイヤ 195/55R16
最小回転半径 5.1m
発売時期 2004年10月
当時の新車価格 293万円(2005年9月発売モデル、オプション含まず)
試乗車スペック
初年度登録 2006年5月
試乗日 2010年11月
販売価格 168万円(消費税込み)
走行距離 1万5000km
ボディカラー ジャパンレッド
備考 ワンオーナー、キセノンヘッドライト(純正オプション)、社外HDDナビ・TV・CD、ETC付
AIS評価点 4.5点
116iでも魅力は同じ。ただし118iや120iに越したことはない
「116iでもパワーは十分か?」という問いは、1シリーズを購入するにあたって、誰もが抱くものだろう。まさにその点が今回の試乗で確認したかったことの一つだが、印象は上にも書いた通りで、確かにパワフルではないが、個人的には1シリーズの魅力を削ぐものではない、と考える。なぜなら、1シリーズ最大の魅力は、3シリーズといった上級モデルに全く引けを取らない、贅沢なシャシー性能や運転感覚にあるからだ。
もちろん、116iよりパワフルな118iや120iで、さらに希望のボディカラーや予算通りのUカーが見つかれば、それに越したことはない。と言うと、何だか無難な物言いだが、新車時のようにグレード間で価格差がはっきりしないUカーの場合は、それが正直なところだ。また個々の車両によってオプション装備もけっこう異なるので、そのあたりもチェックポイントの一つだろう。
年式に関しては、モデルライフを通じて劇的な変化は今のところないので、ある意味デビューイヤーの2004年式以降、全ておすすめできる。ただし細かく言えば、2007年のマイナーチェンジで外観の質感が上がっているほか、2リッターエンジンも新しくなっている。また2010年5月には、1シリーズ全体でパワートレインに大幅なテコ入れがあったから、何年か先にUカーで購入する場合は、この2010年以降のモデルが狙い目かもしれない。
残念ながら130iには試乗経験がないのでコメントは控えるが、135iクーペに関しては、そのスペックから過激な走りを期待すると、少々当てが外れてしまうと思う。この3リッター直6ターボは、「BMW M」製エンジンのようなサーキット志向のものではなく、扱いやすさや燃費性能に重きを置いた万能エンジンであり、135iクーペは6MT仕様でも、言わば「小型グランドツーリングカー」的なモデルになっている。刺激的な走りを求めるなら、現時点では旧M3あたりのUカーがその期待に応えてくれるはずだ。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS










