掲載日 : 2010年12月10日
2008 フォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドライン
ゴルフ5きっての低燃費モデル
通称「ゴルフ5(V)」と呼ばれる5代目ゴルフ。日本での販売期間は2004年~2009年だが、今回試乗したのはモデル末期の2008年6月に追加された「TSI トレンドライン」だ。
これは1.6リッター・6ATの「E」に代わって登場した新しいエントリーモデル。エンジンは1.4リッター直噴ターボ、変速機は7速DSG(一般名称はDCT:デュアル・クラッチ・トランスミッション)で、最高出力は122ps、最大トルクは2.0リッター並みの20.4kgmとしながら、10・15モード燃費は15.4km/Lと「E」に比べて20%も向上。それでいて車両価格は従来の「E」並みで、いわばゴルフ5で最も低燃費で経済的だったモデルだ。
ゴルフ5の「TSI」モデルをおさらい
昨今フォルクスワーゲンが展開している「TSI」とは、パワーと燃費性能を両立する過給器付の直噴ガソリンエンジンのことだ。最初に搭載したのは2007年2月に発売された「GT TSI」。1.4リッター直噴エンジンにターボチャージャーとスーパーチャージャーを装着したもので、GTIに迫る高性能と10・15モード燃費:14.0km/Lを達成。価格は当初305万円だった(後に312万円に値上げ)。
第2弾は2008年1月に発売された「TSI コンフォートライン」。これはGT TSIと同じ1.4リッターエンジンに小径ターボを装着したもので、10・15モード燃費は14.2km/L。価格は289万円だった。
そしてTSIシリーズの第3弾として、ゴルフ5のトリを飾ったのが、今回試乗した「TSI トレンドライン」。コンフォートラインとの違いは、ターボの低圧化(低パワー化)、DCTの7速化とデュアルクラッチの乾式化、それらによる低燃費化、装備の簡素化などで、価格は248万円とコンフォートラインより41万円も安かった。
10ヵ月後の2009年4月には、6代目ゴルフが登場。結果としてTSI トレンドラインの販売期間は短かったが、モデル末期にあったゴルフ5の販売増に貢献したほか、新型ゴルフのハードウエアを先取りしたモデルともなった。

外観はバッジ以外、従来の「E」と同じ
ゴルフというクルマが面白いのは、マイナーチェンジによる外観変更がほとんどないことだ。それはこの5代目にも言えて、特に発売当初からのエントリーグレード「E」と今回の「TSI トレンドライン」との違いはごくわずか。リアゲートのエンブレムが直噴を示す「FSI」から、直噴の過給器付きを示す「TSI」に変わったことくらいだ。「E」の特徴でもある樹脂製ホイールキャップもそのままで、見た目はあくまで「ゴルフのエントリーグレード」。一方、後で触れるように中身のパワートレインは激変している。その落差がいかにも質実剛健のゴルフらしい。
見た目は簡素だが、安全・機能装備は手抜きなし
あくまでエントリーグレードゆえ、「TSI トレンドライン」の内装は簡素そのもの。ダッシュボードから生地まで黒基調で、ステアリングやシフトノブはウレタン樹脂製と、化粧っ気は一切ない。一方で、エアバッグは上級グレードと同じ8個となるなど、安全装備は手抜きなし。シートの作りや着座感もガッチリしており、運転席のポジション調整機構も充実している。
また燃費性能を売りとするモデルらしく、平均/瞬間燃費計や航続距離を表示する多機能モニターも完備。ちなみにエアコンはドイツ車に多いセミオート、つまり温度設定はオートで、風量や吹き出し口の切替は手動というタイプだ。個人的にはフルオートエアコンでも温度設定以外はマニュアルで使うことが多いので(そういう人が多いのでは?)、これで十分だと思える。
「1.4リッターでこんなに走るのか!」
試乗したのは2008年式で、初年度登録から2年と少々、走行距離は1万5500kmという車両。リアバンパーとホイールキャップに小キズはあったが、それ以外は新車デモカー並みのコンディションで、販売価格は新車価格の248万円に対して185万円だ。
TSI トレンドラインに乗るのは2008年以来で、今回はその復習のような感じで試乗したが、印象は当時とまったく同じ。上級モデルのTSIエンジン同様、発進はトルコンAT車並みに滑らかで、その直後に力強いトルク感がダイレクトに立ち上がる。これは7速DCTゆえに1速のギア比が低いせいもあるが、体感的には2リッターエンジン並みか、それ以上だ。発進時に慌ててアクセルを踏み込んだ時など、前輪があっけなくホイールスピンする。誰もが初めて乗ると「1.4リッターでこんなに走るのか!」と驚くはずだ。
スキのない走りにあらためて感心
中間加速も思わず唸ってしまうほど速く、一緒に取材したBMWの116iでは追いつけないほど。DCT独特の「途切れのないシフトアップ」を繰り返しながら、高回転まで回さなくてもグングンとスピードを乗せてゆく。逆に言えば、ピークパワーは122psしかないので、上まで回してもあまり意味はない。
このTSI トレンドラインの場合、標準装着のタイヤが低燃費タイプで(コンチネンタルのエココンタクト3、195/65R15)、グリップが少々心細い点は知っておきたいが、タイヤは交換してしまえば済む話(特にUカーの場合)。10・15モード:15.4km/Lという燃費をはじめ(エコ運転すれば10~12km/L台は確実に走る)、乗って感心しない人はいないだろう。本当によく出来たクルマだ。
年式・車名 2008 Volkswagen Golf TSI Trendline
形式 ABA-1KCAX
寸法 全長4205mm×全幅1760mm×全高1520mm
ホイールベース 2575mm
車重 1310kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 1389cc 直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴ターボ
最高出力 122ps(90kW)/5000rpm
最大トルク 20.4kgm (200Nm)/1500-4000rpm
トランスミッション 7速DCT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 55L
10・15モード燃費 15.4km/L
タイヤ 195/65R15
最小回転半径 5.0m
発売時期 2008年6月
当時の新車価格 248万円(消費税含む)
試乗車スペック
初年度登録 2008年7月
試乗日 2010年11月
販売価格 185万円(消費税込み)
走行距離 1万5500km
ボディカラー リフレックスシルバー
備考 新車保証残りあり
AIS評価点 5点
「TSI トレンドライン」にこだわる必要はない
冒頭で触れたように、ゴルフ5における燃費追求型のTSIモデルは、「GT TSI」、「TSI コンフォートライン」、「TSI トレンドライン」の3つ。この中で最も燃費がいいのは、もちろん「TSI トレンドライン」で、動力性能も上に書いたように十分。運転すれば、誰もが「トレンドラインで十分じゃん」と思うはずだ。
逆にトレンドラインの弱点は、あくまでエントリーグレードということで装備がかなり簡素になってしまうこと。本文でも触れたように、安全・機能装備に手抜きはないが、やはりこのクラスの輸入車となると「せめてレザーステアリングくらいは・・・・・・」とか「やっぱりアルミホイールくらいは・・・・・・」などと思ってしまうもの。またトレンドラインにはパドルシフトもない。そういった装備への煩悩がまったくない人には関係ない話だが、いつも書いているようにグレード間で新車時ほど価格差のないUカーの場合は、上級グレードである恩恵は大きい。TSI トレンドラインに試乗してこんなことを書くのは何だが、ことUカーの場合、それにこだわる必要は特にない、というのが率直なところだ。
ライバルは「GTI」?!
オートプラネット名古屋のスタッフによれば、目下ゴルフ5の売れ筋は「二極化」しているという。つまり価格の安いモデルライフ前半の「E」や「GT」か(100万~150万円あたりか)、あるいは以前より断然手が届くようになってきた初期の「GTI」(200万円前後か)がよく売れているというわけだ。それに対してTSIモデルは、最初のGT TSIですら2007年以降で、相場がまだ高い。つまり現時点では同じ値段で、初期のGTIだって買えてしまうのだ。そう思うと、確かにちょっと旧いGTIのバリューフォーマネー(パワーフォーマネーと言い換えてもいい)は魅力的かもしれない・・・・・・。
ただ、「GTIのカッコはどうも派手すぎて」という方や「あそこまでのパフォーマンスは要らない」「パワーより燃費のイイ方がいい」と考える人は、確実に存在する。というか、絶対的にはそちらの方が多数派だろう。純粋に実用モデルとして考えれば、やはりTSIモデルがゴルフ5のベストアンサーだと担当者自身は思う。
走り良し、燃費良しのオールラウンダーであるTSIモデルが、Uカーとしての旨みを増すのはこれからだろう。まずは来春で発売から早4年が経つ「GT TSI」あたりが狙い目ではないだろうか?
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS










