掲載日 : 2010年12月21日
2009 アウディ A3 スポーツバック 1.4 TFSI
アウディで最もエコなモデル
2003年に2代目となったアウディの最小モデル「A3」(※1)。今回試乗したのは2008年9月に追加されたエントリーグレード「スポーツバック 1.4 TFSI」だ。
この「1.4 TFSI」は、前回のUカー試乗記でとりあげた5代目VWゴルフの「TSIトレンドライン」とほぼ共通の1.4リッター直噴ターボと7速DCT(※2)を搭載したモデル。10・15モード:15.8km/L(2010年3月には16.6km/Lに向上)という低燃費を実現し、価格もアウディとしては手頃な299万円(後に305万円)とするなど、当時アウディ車で最も“エコ”で、購入しやすいモデルだった。
なお、プラットフォームを共有するVWゴルフは2009年にモデルチェンジを済ませたが、2代目A3は発売から7年経った2010年12月現在も、「1.4 TFSI」「1.8 TFSI」「2.0 TFSI クワトロ」の3グレードで販売中。次期A3の登場は、今のところ2012年と噂されている。
| ※1 | かつてはA3より小さな「A2」(1999~2005年)があったが、日本では正規販売されていない。また2010年には新型「A1」が欧州でデビューしており、日本では2011年に発売予定。 |
| ※2 | DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション):2基のクラッチを交互につなぐことで途切れのない変速を可能にした新世代の自動変速機。アウディは「Sトロニック」、VWは「DSG」と呼ぶなど商標は様々だが、当記事では一般名称として定着しているDCTと表記する。 |

キセノンヘッドライト&LEDなど新デザインを採用
2代目A3は2003年の発売以後、何度かマイナーチェンジしており、「1.4 TFSI」が追加された2008年9月にもフェイスリフトを実施している。具体的には、ヘッドライトのレンズ内を新型A4(B8型)風に枠で仕切ったほか、オプションのバイキセノン仕様にLEDのポジションランプを装備。またフロントバンパーも新型A4風にエラの張ったスポイラー形状となり、リアコンビランプもアウディ車で共通の光ファイバータイプとなった。これらによって、もともと高かったクオリティ感はさらに向上している。
スッピンでもぜんぜんOK
デビュー以来、内装デザインに大きな変更はないが、もともと質感は高い。アウディのエントリーモデルで、しかもベーシックグレードだが、樹脂パーツ、スイッチ、レタリングなどに、一目でアウディと分かる精密感が漂う。またレザーステアリングの手触りも気持ちいい。レザーシートやウッドパネルといった化粧っ気のない試乗車ですら、「いいもの」感があり、つまりはスッピンでもぜんぜんOKなのだ。ゴルフのTSI トレンドラインに比べて新車価格は51万円高かったが、それも納得できる作りだ。
パワートレインは「TSI トレンドライン」とほぼ同じ
試乗したのは初年度登録から2年弱、走行距離1万8300kmの「1.4 TFSI」。受注オプションカラー「ダカールベージュ」が目を引く一台だ。新車価格はオプション分を足すと310万円超だったはずだが、当Uカーの販売価格は238万円。コンディションは文句なしで、新車保証も1年残っている。最初は「ちょっと高いな」と思ったが、新車で買うことを思えば、かなりのお買い得車ではないだろうか。
何度も触れたように「1.4 TFSI」のパワートレインは、5代目ゴルフの「TSI トレンドライン」とほぼ共通だ。最高出力こそA3の方が3ps多い125ps/5000rpmだが、最大トルクは同じ20.4kgm/1500-4000rpmで、変速機も同じ乾式クラッチの7速DCTとなる。
走りの上質感はゴルフを上回る
「1.4 TFSI」に乗るのは2年ぶりだったが、その印象は当時とまったく同じ。走りは素晴らしいの一言で、それ以上何も言っても野暮かも、と思うほど、ハードウエアの完成度は高い。トルコンATのような滑らかな発進、即座に立ち上がるトルク感、アクセル操作に対するダイレクトな反応、切れ目のない変速・・・・・・。このあたりはゴルフのTSI トレンドラインと同じだが、ではまったく同じかというとそうでもなく、「1.4 TFSI」の方が操縦性や乗り心地は、よりまろやか。静粛性も明らかにA3の方が上、標準タイヤのグリップ感も上だ。
つまりTSI トレンドラインにちょっとずつ欠けていたものが(省かれていたと言うべきか)、1.4 TFSIにはある。「プレミアムだなんて、広告代理店みたいなしゃらくせいこと言いやがって」と思う方でも、乗り比べれば、この差にはちょっと驚いてしまうだろう。もちろんゴルフはゴルフでぜんぜん良いのだが、これだけのものがTSI トレンドラインのプラス数十万円で買えるとなると、心がググッと傾いてしまう・・・・・・というのが、まあ一般的な感想ではなかろうか。
年式・車名 2009 Audi A3 Sportback 1.4 TFSI
形式 ABA-8PCAX
寸法 全長4290mm×全幅1765mm×全高1430mm
ホイールベース 2575mm
車重 1380kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 1389cc 直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴ターボ
最高出力 125ps(92kW)/5000rpm
最大トルク 20.4kgm (200Nm)/1500-4000rpm
トランスミッション 7速DCT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 55L
10・15モード燃費 15.8km/L
タイヤ 205/55R16
最小回転半径 5.1m
発売時期 2008年9月(1.4 TFSI)
当時の新車価格 299万円(消費税含む)
試乗車スペック
初年度登録 2009年2月
試乗日 2010年12月
販売価格 238万円(消費税込み)
走行距離 1万8300km
ボディカラー ダカールベージュ
備考 バイキセノンヘッドライト&LEDポジションライト(純正オプション)、新車保証残りあり
AIS評価点 5点
「FSI+6ATか、TFSI+DCTか」は用途や好み次第
今回の2代目アウディ(2003年~)と5代目VWゴルフ(2004年~2009年)は、プラットフォームやパワートレインを共有する間柄。よってUカーで購入する際もゴルフと同じパターンで、まずは自然吸気エンジン(FSI)+6AT車か、直噴ターボエンジン(TFSI)+DCT車かの二者択一で始まる。
で、どっちがいいかだが、率直に言えば、パッと乗って「これはスゴイ」と誰もが感心してしまうのは、やはりTFSI+DCT車だろう。
ただし、Uカー相場的には当然FSI+6AT車の方が安いし、タマ数も豊富。また6AT車には「ナルッ」とした運転感覚や坂道発進でのイージーさなど、トルコンならではの良さもある。なので、もっぱら近距離しか乗らない、燃費は気にしないという場合は、コンディションのいい6AT車も全然アリ。特に運転に自信のない女性の場合、そちらの方が取っつきやすいという可能性は大いにある。
必要十分な「1.4 TFSI」。非の打ち所がない「1.8 TFSI」と「2.0 TFSI」
もちろん、TFSI+DCT車はやはり魅力的で、ゴルフにしろ、A3にしろ、「買うなら絶対DCT」と決めている方も多いはずだ。特にA3のTFSI+DCT車は、見ても乗っても高級感があり、「これがプレミアムコンパクトか!」と深く納得できるクルマになっている。その意味ではゴルフとの差も明確で、実車を前にして迷う人はいないだろう。VWに親近感を持つ人はゴルフを、アウディがいいと思う人はA3を選べばいい。
最後に、A3のTFSI+DCT車でどれがいいかだが、本文にある通り「1.4 TFSI」でも走りは十分で、燃費に至ってはこのクラスの輸入車で1、2を争うほどいい。ただし裏を返せば、動力性能に関しては必要十分の域を出ないのも確か。最高出力125psと言えば、1.5リッタークラス並みで、実際のところ高速域での伸びは数値相応と言える。また7速DCTも燃費重視のせいか変速スピードが少々マッタリ気味だし、パドルシフトがないのも物足りない点ではある(なくても困らないが)。
その点で完璧なのは、やはり「1.8 TFSI」(160ps、25.5kgm)か、「2.0 TFSI」(200ps、28.6kgm)だ。特に後者は2代目アウディTTと同じパワートレインで、アウディの代名詞であるクワトロ(フルタイム4WD)も選べる。コンパクトクラスとしては、まさに非の打ち所がないモデルと言っていいだろう。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS










