掲載日 : 2010年12月28日
2010 トライアンフ サンダーバード
トライアンフが提案する、大排気量・並列2気筒の新世代クルーザー
新型「サンダーバード」は、2009年にデビューしたトライアンフの大型クルーザー。このために白紙から開発された「T-16」エンジンは、並列2気筒(パラレルツイン、バーチカルツイン)で世界最大の1597ccを誇る。同社のクルーザーとしては、2294cc 直列3気筒のロケットIIIと865cc 並列2気筒のアメリカ/スピードマスターの中間に位置するモデルだ。
登場以来、大型クルーザーの本場である米国での評価も高く、最も権威ある老舗オートバイ専門誌「サイクルワールド」は、2009年、2010年と2年連続で「ベストクルーザー」にこのサンダーバードを選んでいる。
■外部リンク>サイクルワールド>10ベスト バイクス 2010(英語)
http://www.cycleworld.com/motorcycle_roadtest/ten_best_bikes_2010
2009年秋に日本上陸。限定車「SE」も登場
日本では2009年10月に発売。車体カラーはジェットブラック、そして2トーンのパシフィックブルー(フュージョンホワイトストライプ付)、同じく2トーンのアルミニウムシルバー(ジェットブラックストライプ付)の計3色を用意。ABSを標準装備として、価格はモノトーンが195万3000円、2トーンが198万4500円だった。
2010年3月には、ツーリング仕様の限定車「サンダーバード SE」を発売。大型スクリーン、ロアーディフレクター、レザー製パニアバッグ、フットボード 、パッセンジャーフットボード、シーシーバー、リアキャリア、ツーリングシートなど54万円相当のオプションを装備したもので、車体カラーはカーニバルレッドを設定。30台限定で、価格は219万4500円だった。
なお、2010年10月に独ケルンで開催された二輪車ショー「インターモト」では、高性能バージョンの「サンダーバード ストーム」が発表されている。エンジンは約100ccアップの1699ccで、最高出力は98psへ向上。ヘッドライトは「ロケット III」を彷彿とさせる丸目2灯タイプとなっている。こちらの日本導入は未定だ。
“過去の”サンダーバード
「サンダーバード」と言えば、4輪の世界では1955年に登場したフォード・サンダーバードが有名だが、それより一足早くデビューしたのがトライアンフの「6T サンダーバード」(1949~1966年)だ。649ccのパラレルツインを搭載した当時のフラッグシップで、後に続く名車「T110 タイガー」(1953年~)や「T120 ボンネビル」(1959年~)の布石ともなったモデルだ。
第二世代のサンダーバードは、初代の生産終了から約30年後の1995年に登場。現代的な水冷3気筒エンジンを採用しつつ、新生トライアンフ車では当時少なかったクラシカルなデザインで人気を集めた。
なお、英語でサンダーバードとは、北米ネイティブアメリカンの伝説で雷を起こすと信じられた巨鳥のこと。その名称からも、もともと米国市場を意識したモデルだったことがうかがえる。ちなみに北米ではトライアンフのサンダーバードも、4輪車同様に「Tバード」という愛称で呼ばれている。

典型的なクルーザールック。英車らしい気品も
1615mmのロングホイールベース、700mmの低いシート高、そして足を前に置く「フォワードフットコントロール(フォアコン)」など、典型的なクルーザールックのサンダーバード。ただしVツインではなくパラレルツインとなるエンジンが、トライアンフらしさを堂々と主張している。
同様に、シンプルで、英国車らしい気品のあるスタイリングも、まさにトライアンフらしいところだ。また上から見下ろした時には大きく、横から見た時には薄く見えるタンクのデザインも美しいし、アルミ素材やクロームメッキを多用した各部の質感も高い。やはりクルーザー大国の北米に打って出る以上、そうとうな覚悟で開発されたことが細部からもうかがえる。
フォアコンのポジションは慣れ次第か
700mmのシート高はトライアンフ史上最も低いとのことで、足つきはもちろん問題なく、乗り降りも楽々。その点では身長150センチ台でも、おそらく不安はないだろう。ただしフォアコンのステップは少し遠目で、小柄な人では足が少々伸び気味になる。身長が170センチ台ならOKだろうが、このあたりはフォアコンに慣れているかどうかでも印象が違ってきそうだ。
Vツインっぽいサウンド。3000回転以上ではスポーティに変身
試乗車は2010年モデルで、トライアンフ名古屋イーストの試乗車。走行距離は2500kmで、コンディションはまさにデモカーレベルだ。当時の新車価格は198万4500円だが、当車両の販売価格はオプションのレザー製パニア付(アタッチメント込みで12万円ほど)で、149万9400円となっている。
シート下にキーを差してイグニッションをオンにすると、燃料ポンプがウィーンと始動。取材当日は日中でも気温10度を下回る寒い日だったが、クラッチレバーを握ってスターターボタンを押すと、ウゥンウゥンと重そうにクランキング、と思う間もなくエンジンに火が入り、安定したアイドリングを開始した。ハーレーのVツインみたいに下腹を揺するようなアイドリング振動はないが、「ドッドッドッドッ」という鼓動感はボンネビルよりも明らかに大きい。
1気筒あたり約800ccの2気筒となり、トルクもまさに期待通り。クラッチをつないだ直後から、力強く、バババババン!と軽快に加速する。並列2気筒ゆえか、回転上昇は素直でスムーズだが、そこは不等間隔となる270度クランクのなせる技か、音自体は限りなくVツイン風。3000回転までは「バッバッバッバッバッ」というリズミカルなサウンドが常に楽しめる。ギアノイズなど、雑味のあるメカニカルノイズはまったくない。
逆に3000回転から上は爆発音がつながり、一気に鋭さを増す。特に一つか二つシフトダウンした時には、スポーツバイクみたいにズバン!とダッシュが決まり、文字通り目が覚めるほど。これはいいエンジンだ。トライアンフのカタログには「ゆっくり走るだけのクルーザーから脱却」とあるが、その文句に誇張はない。
ワインディングも楽しめる
他のトライアンフ同様、シャシーはガッシリ。キャスター角は32度と寝ているし、ホイールベースも1615mmと長めと、クルーザーのど真ん中を行くディメンションだが、倒し込み自体はボンネビル的に素直で、「曲がらない」と感じて焦ることはなかった。むしろ要領さえつかんでしまえば、おっかなびっくり乗るネイキッドスポーツより、個人的には楽しめるほど。トライアンフ名古屋イーストの土田店長によると、乗り手によってはワインディングでもかなり速く、それゆえステップも擦りやすいらしい。が、この手のクルーザーとしてかなり「走れる」タイプだと思う。車重は乾燥で308kg、装備状態で339kgだが、実際には「260kgくらい?」と思うほど、はるかに軽く感じられた。
半日に満たない試乗だったが、高速道路も少し走ってみた。オーバードライブの6速を使えば、100km/h巡航は平穏そのもの。心なしか体にあたる風も優しく感じられる。クラッチやスロットルは軽く、シフトもカチッと軽く入るので、疲れないし、神経も使わない。ただし速度をさらに上げると、やはりフォアコンによるポジションのおかげで、高まる風圧への対処には少々困ってしまった。その点ではオプションの大型スクリーンが欲しいと思ったが、もちろんそこは慣れや好み次第だろう。実燃費は専門誌の記事から察するに20km/Lくらいのようだ。このクラスとしてはかなり良い部類だと思う。文句なしにロングツーリングに使えるバイクだ。
年式・車名 2010 Triumph Thunderbird ABS
形式 -
寸法 全長2340mm×全幅880mm×全高1120mm
ホイールベース 1615mm
シート高 700mm
車重(乾燥/装備重量) 308kg/339kg
駆動伝達(二次減速) ベルト駆動
エンジン 1597cc 水冷・並列2気筒DOHC 270度クランク
燃料供給装置 電子制御燃料噴射
始動方式 セルフスターター
最高出力 86ps(63kW) /4850rpm
最大トルク 14.9kgm (146Nm)/ 2750rpm
トランスミッション 6速リターン式
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 22L
タイヤ 前 120/70R19、後 200/50R17
最小回転半径 -m
発売時期 2009年10月
当時の新車価格 198万4500円(2トーンカラー仕様)
試乗車スペック
初年度登録 2009年10月
試乗日 2010年12月
販売価格 149万9400円(消費税込み)
走行距離 2500km
ボディカラー パシフィックブルー/フュージョンホワイトストライプ
備考 トライアンフ名古屋イースト試乗車
非ハーレーのクルーザーとして
865ccのボンネビル系からすると、同じ並列2気筒ながら排気量がほぼ2倍の1597ccもあり、羨ましいほどの鼓動感とパワー感があるサンダーバード。現トライアンフユーザーにとっても気になるモデルでは、と思ったのだが、土田店長によると関心が高いのはむしろと言うか、やはりと言うか、現ハーレーオーナーが多いようだ。
言うまでもなく大型クルーザー市場は、ハーレー・ダビッドソンの独壇場だ。一方、本場の米国では、ユーザー層も日本とは比較にならないほど厚いから、「ハーレーじゃなくてもいい」と考えるユーザーも多いし、また当然ながら、コテコテの「アメリカン」ではなく、洗練されたデザインのクルーザーに乗りたい、ワインディングで思い切り走りたい、という人も多い。米国には昔からトライアンフのファンが多いことも含めて、新型サンダーバードが彼の地で歓迎される事情も、そんなところにあるのだろう。
英国車としてのプライドと強み
一方、日本では、まだまだハーレー・ダビッドソンのネームバリューは大きい。またその「味わい」も憧れの対象となり得る。そんなハーレーと性能上の優劣を語っても意味はないが、オートバイとはつくづく微妙な乗り物で、ハーレーに乗ってはみたが、どうも自分のイメージと違うと感じた人が、サンダーバードで「これでいいじゃん!」となることは、もちろんあり得る。また空冷ハーレーでここまで軽快に、伸び伸びと走らせるのは、カスタムしたとしても相当に難しいだろう。ま、実際のところ、サンダーバードのライバルは、水冷のV-Rodや日本製Vツインクルーザーなのかもしれないが、そのカテゴリーに独自のパラレルツインで参入したトライアンフには、英国車としてのプライドはもちろん、オリジナリティという強みも感じとれる。この点、国産メーカーは、ちょっとだらしないのではないか。
いずれにしても、心に響くかどうかは、あくまで乗り手の深いところにある好みやイメージに、どちらが本質的に近いか、ということだろう。現行サンダーバードも、その「T-16」エンジンも、まだ生まれてから1年少々であり、本格的な評価はこれからだ。その意味では、ハーレーなどの大型クルーザーにある程度乗ってきた方にこそ、食わず嫌いではなく、一度試乗して欲しいモデルだ。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS









