掲載日 : 2011年03月11日
2009 BMW 740i
デザインはオーソドクスに、エンジンは直噴ターボに刷新
BMWの最高級セダン「7シリーズ」は1977年に登場。2008年11月にドイツ本国でデビューしたのが、その5代目だ。斬新過ぎるほど斬新だった先代とは異なり、5代目はスポーティながらもオーソドクスなデザインに変身。「iDrive」などの操作系も大幅に改良された。また主力エンジンを直噴ツインターボ化するなどパワートレインも刷新され、ハイブリッド車も設定されている。
なお、長年BMWは開発コード名を「E+二桁の数字」で表してきたが、5代目7シリーズでは標準ホイールベース車を「F01」、ロングホイールベース車を「F02」、ハイブリッド車を「F04」と呼ぶようになった。
日本仕様は直6/V8/V12ターボ、そしてV8ターボのハイブリッド
日本では2009年3月に発売された。当初は3リッター直6ツインターボ(326ps、45.9kgm)の「740i」、4.4リッターV8ツインターボ(407ps、61.2kgm)の「750i」、そしてロングホイールベース版(140mm延長)の「740Li」と「750Li」の計4モデルでスタート。これらは全車6速ATで、価格は1010万~1330万円。オプションでBMWナイト・ビジョン(歩行者検知機能付)などが用意された。
2009年7月には、6リッターV12ツインターボ(544ps、76.5kgm)と8速ATを搭載した「760Li」を追加。こちらの価格は1920万円だった。
2009年10月には「アクティブ ハイブリッド7」および「アクティブ ハイブリッド7L」を発売。4.4リッターV8ツインターボ(449ps、66.3kgm)、モーター(20ps、16.3kgm)、8速AT、リチウムイオン電池を搭載したハイブリッド車で、750iを上回る動力性能と10・15モード燃費10.0km/L(「L」は9.3km/L)を達成。左ハンドルのみで、当初の価格は1280万円~1405万円だった。
2011年3月現在も、これら計7モデルで販売中だ。

堂々たるサイズ、手堅いデザイン
「でかいなあ」というのが第一印象。デザインは新型5シリーズに通じるものだが、実車はいかにも大きく、一目で7シリーズと分かる。全長は5070mm、ホイールベースは3070mmと大台を軽く超え、さらにロングホイールベースの「L」になると、それぞれ140mm伸びて、全長は5210mmにもなる。ただ、このクラスの最高級セダンとしては平均的なサイズで、後で触れるが、取り回しも決して悪くない。
デザインは見ての通り、先代の強烈なインパクトは影を潜め、手堅くまとまっている。巨大なキドニーグリルに始まり、4灯ヘッドライトやL字型のリアコンビランプまで、いかにもBMWらしいデザインだ。それでいて流れるようなラインや短いフロントオーバーハングなど、現代的なスポーティさも備えている。
操作性は良好。快適装備も満載
エクステリア同様、インテリアもオーソドクスに変身。ダッシュボードは先代の左右シンメトリーデザインを活かしつつ、BMWの伝統通り微妙にドライバー方向に向いている。また先代で採用されたコラムタイプの電子制御シフトセレクターは、あれはあれで使いやすかったが、一般的なフロア配置に変更された。操作方法は相変わらず独自だが、一日乗ればすぐに慣れるはず。またiDriveコントローラーも、先代初期のものより格段に使いやすくなった。
全体の高級感や装備は申し分なし。試乗した740iは最も安いグレードだが(それでも新車価格は1000万円を超える)、地デジチューナー付HDDナビ、ベンチレーション機能付フロントシート、後席サイドウインドウの電動ブラインドなどが揃う。また試乗車には、740iではオプションだったクローザー付ドア(軽く閉めるだけでドアを中に引き込む)や電動トランクリッドも装備されていた。
ただし「L」モデルとの差別化はしっかり行われており、この標準ホイールベース車だと後席はそんなに広くない。贅沢に聞こえるかもしれないが、重要人物を丁重にもてなすなら「L」が欲しいところだ。
直6ツインターボで、豪快パワフルな走り
試乗車は2009年式の[740i」で、登録からまだ1年半。走行距離も1万km余と少なく、内外装コンディションも文句なしだった。販売価格は新車時の1010万円に対して678万円だ。
全長5メートル超のボディには少々威圧感があるが、ステアリングを握ってしまえば大きさは気にならない。現行7シリーズには「インテグレイテッド・アクティブステアリング」、つまりアクティブ・ステアリング(電子制御でギア比を可変)と後輪操舵を組み合わせたシステムが付いており、回転半径はわずか5.5メートル(740i)。交差点でのUターンも割と普通の感覚で行ける。
さて「740i」と言えば「4リッターV8」と思いきや、正解は冒頭で触れたように3リッター直6ツインターボ。昨今のBMWは車名と排気量が一致しないことが多いが、これもその一例だ。
確かに740iは最高出力326ps、最大トルク45.9kgmと4リッター並みにパワフルで、車重は2トン弱(1980kg)もあるが不足はない。走行モードが「ノーマル」や「コンフォート」なら割と穏やかだが、ひとたび「スポーツ」を選ぶと、トルクがグワワワッと湧き出て、豪快に路面を蹴り飛ばす。このあたりの豹変ぶりは、比較的ナチュラルにパワーが盛り上がってくる自然吸気のV8と違うところだ。
もちろん、車体はそのパワーをしっかり受け止めるし、ボディバランスもすごくいい。例えるなら「巨大な335i」みたい。タイヤはランフラットで、足まわりは標準ホイールベース車の場合、前後共に一般的なコイルサスになるが、乗り心地もぜんぜん不満ないと思った。試乗車の場合は、ちょうどあたりが出ていた、ということもあるかもしれない。
ただ以前試乗した先代7シリーズ初期の「745i」(4.4リッターV8)や「760iL」(6リッターV12)と比べると、静粛性やスムーズさはV8以上の多気筒モデルに及ばない、という印象も受けた。この点については、他メーカーのV8車と比べても同じだ。このBMWの直6ツインターボは、良くも悪くもパワー志向で、スポーティな印象が強い。
年式・車名 2009 BMW 740i
形式 ABA-KA30
寸法 全長5070mm×全幅1900mm×全高1490mm
ホイールベース 3070mm
車重 1980kg
駆動方式 後輪駆動(FR)
エンジン 2979cc 直列6気筒DOHC・4バルブ・直噴・ツインターボ
最高出力 326ps(240kW) /5800rpm
最大トルク 45.9kgm (450Nm)/ 1500-4500rpm
トランスミッション 6速AT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 82L
10・15モード燃費 7.8km/L
タイヤ 245/50R18
最小回転半径 5.5m
発売時期 2009年3月
当時の新車価格 1010万円
試乗車スペック
初年度登録 2009年10月
試乗日 2011年2月
販売価格 678万円(消費税込み)
走行距離 1万0500km
ボディカラー ソフィストグレー
備考 -
AIS評価点 -点
「740i」は知的な選択
現行ラインナップを見渡して驚くのは、現時点での日本向け7シリーズが、全てターボ車!ということだ。試乗した740iをはじめ、V8の750iもツインターボ。さらにはエコなイメージが強いアクティブハイブリッド7ですらが、750iと同じ4.4リッターV8ツインターボを積み、しかもハイパワー化されている(そしてモーターも積む)。その速さは「E90型のM3でも富士のメインストレートで追いつけなかった」(実話です)というくらいだ。まして6リッターV12ツインターボの760iに至っては・・・・・・「ターボ要りますか?」と思わず聞きたくなるほど。もはやこのレベルになると、常識や理屈は通用しないが、まあSクラスのAMGやベントレーあたりに対抗するには、これくらいじゃないといけないのだろう。
それからすると、今回試乗した740iなどは非常に理性的で、現実的な選択だ。正直なところ試乗時の印象は、やっぱりV8の滑らかさは欲しいなあ、という感じだったが、よくよく考えてみると、これまで散々V8やらV12やらに乗ってきたクルマ道楽者なら、「いや、3リッターで十分だよ。よく走るよ」などと言いながら、涼しい顔で740iのステアリングを握るのではないか。「740i」は、今さら背伸びをする必要もなく、自分で運転するのが好きで、時代の空気が読める知的な人に向けて用意された、正真正銘のフラッグシップなのだ。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS










