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Uカー試乗記

Uカー試乗記

掲載日 : 2011年04月11日

2008 トライアンフ スクランブラー

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新型ボンネビルをベースに、往年のTRシリーズを再現

デビュー当初のスクランブラーはカラフルなタンクカラーで始まった
(写真:Triumph)

スクランブラーとは、もともとオートバイのジャンルを指す言葉で、本格オフロード車のなかった1950年代から60年代に流行った“オンロード車ベースのオフロード車”のこと。そのパイオニアの一つが、1948年に登場し、1970年代初頭まで販売されたトライアンフのTRシリーズ(トロフィー)だ。俳優のスティーブ・マックイーンが愛用したことでもよく知られている。

それから30年以上を経て、2006年に登場したのが今回の「スクランブラー」。新型ボンネビルをベースに、片側2本出しのアップマフラー、ブロックパターンのタイヤ、アップタイプのハンドル等を与えて、往年のTRシリーズを彷彿とさせるモデルとなっている。

エンジンはボンネビル譲りの空冷2気筒865ccだが、ボンネビルの360度クランク(等間隔爆発)ではなく、クルーザータイプの「アメリカ」や「スピードマスター」と同じ270度クランク(不等間隔爆発)を採用。車両キャラクターに合わせて、低回転域での“爆発感覚”を強めている。

2007年モデルはキャブレター。2008年以降はインジェクション

当初は限定車として登場したマットカーキグリーン
(写真:Triumph)

日本では2006年11月に2007年モデルとして発売された。ボンネビルには790ccモデルもあるが、スクランブラーの排気量は当初から865ccでスタート。初年度モデルはキャブレター仕様で、価格は122万8500円。タンクカラーは、カスピアンブルー/ホワイト、トルネードレッド/ホワイト、ルーレットグリーン/シルバーの3色だった。

2008年モデルはインジェクションとなり、ユーロ3排出ガス規制をクリア。車体色は途中からカスピアンブルーがドロップし、新たにタンジェリン(オレンジ色)/アルミニウムシルバーが加わった。

2008年末にはマットカーキグリーンの限定車が登場。これは映画「大脱走」でスティーブ・マックイーンが乗ったトライアンフの軍用バイクをモチーフとしたものだが、往年のTRシリーズにも似た色があった。

2010年には従来の3色がドロップして、マットカーキグリーンのみに。また最新ボンネビルと同じ2眼メーター(距離計がデジタル式のタイプ)の採用に伴い、回転計が標準装備になった。現行の2011年モデルではマットカーキグリーンとジェットブラックの2色になり、価格は126万円となっている。(2011.4)



 

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このムリヤリ感こそ、カッコ良さの秘密

トレードマークはアップタイプの2本出しマフラー

主要パーツはボンネビルと共通だが、右2本出しのアップマフラーがイメージを一変させている。重厚でジェントルなボンネビルをベースに、無骨なオフロード車に仕立て上げたムリヤリ感こそが、まさにスクランブラーらしいところだ。他メーカーを含めて、現行モデルでこれに似たモデルはない。

他にボンネビルと異なるのは、黒の艶消しボディを持つ小径ヘッドライト、アップタイプで幅広のハンドルバー、ステップ位置、前後のショートフェンダー、シート形状、ブロックパターンのタイヤなど。またシート高はボンネビルT100の775mmより50mm増えて825mmと少々高めになっている。

 
ダートトラッカー風にも見える後ろ姿。純正を含めて専用スポーツマフラーも複数出ている
マフラーのない左側はすっきりと美しく、往年のTRシリーズを彷彿とさせる
2010年モデルまで回転計はオプションで、写真の別体タイプになる。2万6000円ほどした
 
ハンドルロックは別のキーをヘッド部分に差して行う
カラフルなタンクには職人によるコーチラインが入る。鍵付きキャップはオプション(約1万円)
軽快な印象の小径ヘッドライト。キーは左フロントフォークの後ろに差す
 
270度クランクの空冷2気筒DOHCエンジン。シルバー塗装タイプもある
一見キャブだが、中身はインジェクション。アイドルアップ用のチョーク風レバーも備える
マフラーの遮熱板は多いところで二重になっており、真夏以外はそれほど熱くならない
 

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路面を蹴る感覚が濃い

ボンネビルよりポジションはアップライトだが、ハンドルはかなり幅広になる
(Triumph)

試乗したのは2008年のインジェクション仕様。走行距離は1万km少々で、タイヤは純正のブロックパターンではなく、ボンネビルのようなメッツラー製のオンロードパターンになっていた。販売価格は、新車時の129万1500円に対して、回転計、メッキカムカバー、スキッドプレートなどの純正アクセサリーが付いた状態で89万9850円。車検が切れていたため、試乗はトライアンフ名古屋イーストがある「オートプラネット名古屋」の敷地内で行った。

小柄な人だと、まず気になるのが825mmのシート高だろう。足つきはボンネビルほど良くないが、身長166センチ、体重56kgの当方だと、両方のつま先がいちおう地面に付く。左足だけならベッタリ付くことも可能だ。身長が170センチ以上あるか、オフロードバイクに乗り慣れている人なら問題ないと思う。ただ、右側にエクゾーストパイプが出っ張っている分、右足は地面に届きにくい。

 
フォークやブレーキはボンネビルと基本的に共通。試乗車のタイヤは非オリジナル

エンジン冷間時は、スロットルボディ左側のチョーク風レバーを引いた方が掛かりがいい、というのはボンネビルと同じ。クラッチをつなげば何の気遣いも要らず走り出す。「タッタッタッタッ」という独特のエンジン音は、アップマフラーで音の出口が耳に近いせいか、ボンネよりも歯切れよく聞こえる。

270度クランクによる鼓動感は、2000回転から3000回転まで濃厚。「タカタッ、タカタッ」と馬のギャロップのように路面を蹴る感じがはっきり感じられる。3000回転以上ではボンネビルに似た滑らかな回転になり、そこからレッド手前まで一息で加速する。

最高出力はボンネビルの67psに対して60psにデチューンされているが、常用域でのパワー感は互角。ちなみに純正や社外のスポーツマフラーに換えると、まさに270度クランクによるリズミカルなサウンドが楽しめるようだ。

本来、スクランブラーには、かなり幅広のハンドルが付いてくるが、試乗車の場合は少し幅の狭いタイプに交換されていたようで、すんなりと馴染めた。乗車姿勢は少し前傾のボンネビルと違って、背筋が伸びた殿様乗りになる。高速道路ではモロに風圧を浴びてしまうが、見晴らしは良く、リラックスして走れる。

マフラーは確かに熱くなるが

アップマフラーは右側に張り出すような形で、遮熱板で覆われている

さて、スクランブラーで一番心配な部分と言えば、やはりアップマフラーの熱だろう。実際、右足の「ふくらはぎ」は直にエキゾーストパイプの遮熱板に当たるし、右足を地面に付こうとすると、今度は腿の内側が遮熱板(ここは二枚重ね)に触れる。

ただ、この遮熱板は内側のエキゾーストパイプと「点」でつながることで、熱の伝達量を小さくするもの。今回のような春先(気温20度くらい)なら、遮熱板自体は意外に熱くならなかった。ジーンズで乗ってもジワッと暖かい程度だ。ただ、以前真夏に乗った時は、かなり熱くなったので、レザーパンツを履いた方が無難ではある。まあこれは、オートバイ全般に言えることだが・・・・・・。なお、タンデムパッセンジャーのふくらはぎも遮熱板に接してしまうが、長めのブーツを履けば大丈夫だと思う。

 
上から見ると遮熱板の構造がよく分かる。腿が当たる部分は二重になっている

もう一つ気になったのは、オフロード車風にステップの上に立って走るスタンディングを行うと、エキゾーストパイプが邪魔で、右足をステップに乗せにくいこと。これがどうしても気になる場合は、社外品の大型ステップに変更する手がある。なお、この純正ステップ、ボンネビルより低い位置にあり、コーナーでは接地しやすいが、おかげで右側に倒しても、ステップ、遮熱板、グリップエンドの3点が支え、エクゾーストパイプやエンジンへのダメージを防いでくれるようだ。

その他、エンジンはトルクフルだし、シャシーはガッチリ重厚、ブレーキもよく効く。低回転でのドコドコ感を楽しみながら田舎道を流すには最高で、何よりスタイリングがいいから街中で乗るのが楽しい。

 

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年式・車名  2008 Triumph Scrambler
形式  -
寸法  全長2213mm×全幅860mm(ハンドルバー)×全高1202mm(ミラー部除く)
ホイールベース  1500mm
シート高  825mm
重量(乾燥/装備重量)   205/230kg
駆動伝達(二次減速)   チェーン駆動
エンジン  865cc 空冷・並列2気筒DOHC・4バルブ(270度クランク)
燃料供給装置  電子制御燃料噴射
始動方式    セルフスターター

最高出力   60ps(44kW) /6800rpm
最大トルク  7.0kgm (69Nm)/ 4750rpm
トランスミッション  5速リターン式
使用燃料/容量  プレミアムガソリン / 16L
タイヤ      前 100/90-19、後 130/80-17
発売時期     2006年11月(キャブレター)、2008年4月(インジェクション)
当時の新車価格  129万1500円(消費税込み、2008年モデル)


試乗車スペック

初年度登録    2008年7月
試乗日      2011年4月
販売価格     89万9850円(消費税込み)
走行距離     1万0468km
ボディカラー   タンジェリン/アルミニウムシルバー
備考       純正タコメーター、メッキカムカバー、スキッドプレート付。オンロード用タイヤを装着。非オリジナルハンドルバー、ミラーステー付

 

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キャブレターとインジェクションがある。車体カラーは今のところ6種類

オートプラネット名古屋の中にある「トライアンフ名古屋イースト」http://www.brandstreet.jp/triumph/ TEL:0561-67-1222

冒頭でも触れた通り、スクランブラーはすべて865ccエンジンで、2007年モデルがキャブレター、2008年以降がインジェクションになる。後者の方がトルク感は少し上で、馬力もカタログ値で3ps上回る。また一般論として、年に数回しか乗らないならキャブよりもインジェクションの方が手間要らずだ。

タンクカラーは選り取り見取りのボンネビルに対して、スクランブラー(正規導入車)は2011年現在までに、青、赤、緑、オレンジ、カーキ、黒の6色のみ。青はキャブレター車が多いが、いちおう全カラーでインジェクション車がある。相場は年式の旧い青、赤、緑、オレンジで値頃感があるが、カーキはまだ高く、黒は今のところ新車(126万円)がほとんどだ。

「それでも乗りたい」と思わせる

新車搬送時に使われるダンボール箱(中身はサンダーバード)と共に

トライアンフの「クラシック」シリーズは、ボンネビル、スラクストン、スクランブラーの3つだが、販売台数は圧倒的にボンネビルが多い。理由はそのバイクらしいオーソドクスなデザインにあると思うが、それだけではないと思う。単純な話、スクランブラーの場合は、車体にまたがった瞬間からアップマフラーの存在がそれなりの覚悟を迫ってくるが、ボンネビルにはそういった不安要素がまったくないのだ。乗り比べてみると、この差は実に大きい。折りしもカワサキからW800というライバル車も登場したが、それゆえに今、ボンネビルの完成度は以前よりも実感しやすいと思う。

それでも一部の人々がスクランブラーを選びたくなるのは、間違いなくその無骨なスタイリングに惚れてしまうからだ。取材担当者自身、スクランブラーは実にカッコいいと思うし、そこに理屈はない。カッコ良さこそがスクランブラーの命であり、それがこのバイクを孤高なものにしている。乗り手に不便を強いる部分も確かにあるが、「それでも乗りたい」と思わせる魅力が、このスクランブラーにはある。少々投げやりな言い方になるが、直観で買うタイプのバイクだ。

 

Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS

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